実地指導に臨まれる事業主様へ
障がい福祉サービスは確認する内容が多く、法令順守がより一層求められています。
実地指導の目的は、利用者の尊厳を保持し良質なサービスが提供される体制を継続させることや利用者への虐待を防止することによって、障害福祉制度への信頼性を維持し、制度の持続可能性を高めることにあります。
「良質なケアが提供される体制を継続させること」は、サービスの利用者だけでなく事業者にとって非常に重要な課題です。
実地指導の結果、適正な運営が行われていないと判断されると監査に移行し、最悪の場合、返金命令及び運営の停止又は指定取消等の厳しい処分が科せられます。
永野将太行政書士事務所では、実地指導にむけた書類の準備や確認のサポートも行っております。
具体的には、実地指導における提出書類の作成や内容の確認のほか、ご希望に応じて同席対応もさせて頂いております。
「実地指導まで時間がない!」「何をして良いかわからない!」など実地指導について、ご不明点等ございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。
そもそも実地指導とは?
実地指導とは、障がい者総合支援法児童福祉法その他の関係法令に基づき、適正な事業所運営と利用者保護を目的に、概ね3年に1度、法令順守状況の確認を行うことを言います。
実施時期について、多くの市町村は実施日の約1か月前に事業所宛てに通知を行います。
その期間に行政より指示された提出書類の作成を行い、実地指導の準備を始めていきます。
実地指導の種類
集団指導
複数の事業所を集めて講習形式で行います。開催は指定権者によって差があります。
一般指導
計画的に概ね3年に一度の頻度で開催します。予め文書で通知が届きます。
随時指導
苦情が多い等の理由や情報提供を受けて特に実地指導が必要と認める場合、臨時で行われる場合は当日の通知により実地指導を行われる場合もあります。
何から準備すれば
良いの?
事前提出書類の作成
実地指導実施に関する通知が事業所に届きましたら、行政の指示通りに提出書類を作成します。
作成する書類はサービスによって異なりますが、共通事項として、事業所の設備や人員配置の状況、障害福祉サービス費における請求状況や加算・減算の状況を報告します。
運営書類の準備
事前提出書類の作成が完了しましたら、その根拠となる書類が事業所に揃っているかを確認していきましょう!
事前提出書類の記載内容と実態が伴っているかを証する疎明資料を揃えていくイメージです。
多くの場合、当日の準備資料として具体的な指示書やチェックリストがありますので、それらを見ながら書類を整えていきましょう。
また、書類整理を進めながら不備がないかも併せて確認を行うとなお良いです。
書類自体に不備があると根拠資料としては不正確になってしまいますので、記載もれや押印もれなど、入念にチェックしていきましょう!
実地指導における着眼点
人員に関する着眼点
①運営上における人員を確認
- 運営上の基準人員を満たしているか。
従業員の勤務時間実績が、運営上の基準人員を満たしているか常勤換算数を計算します。
その結果、指定基準上の人員配置を満たしているかを確認しましょう。 - 届出内容と実際の従業員の勤務状況に乖離はないか。
届出済の体制届(勤務体制一覧表)と各月の勤務表や出勤状況に乖離がないかを確認しましょう。 - 利用者の数は前年度の平均値(新規指定時は適切な推定数)となっているか。
人員配置の元となる利用者の数を適切に算出し届出をしているか。
また、実態と乖離がないか確認をします。
②加算・減算の確認
- 加算を算定している場合、該当する加算の要件を満たしているか。
届出済の体制届と各月の勤務表や出勤状況を照合しましょう。
「加算算定の対象となる職員が退職した後も加算を取得していた!」など職員の異動時は特に注意が必要です。
また、届出不要の加算は、法令の解釈が誤っていないか再度確認しましょう。
誤った算定があった場合、過誤請求と報酬返還の対象となりますのでご注意下さい。 - 減算の対象となる場合、減算として請求をしているか。
運営上の基準人員を満たしていない場合や人員欠如により減算対象となっているにも関わらず、減算対象外となっていないか確認しましょう。
減算の適用時期や減算解消時期などにも誤りがないか再度確認をお願い致します。 - 従業員の資格
有資格者により提供すべきサービスが無資格者により提供されていないかを確認しましょう。
特にサービス管理責任者や児童発達支援管理責任者の更新時など注意が必要です。
また、資格証や研修修了証を求められた際は、すぐに提出できるように事業所へコピーを保管しておきましょう。
確認書類
①体制届一式 (勤務体制一覧表含む)
行政が確認する元となる資料です。
行政へ提出する体制届の作成を誤ると根本から相違してしまうため、必ず正確に作成して下さい。
サービス管理責任者などの従業員に作成を任せる事業所もありますが、作成者の知識不足で誤った内容を届け出してしまうケースや作成者退職後の問い合わせに対応できないなどのトラブルが散見されますので、行政に関する届出書類は代表者が作成し提出して下さい。提出時は行政が受理しただけでなく、事業所の届出する内容と行政が受理した内容について、認識と根拠、経緯が一致するかも併せて確認して下さい。
また、前年度の平均利用者数で最低人員基準が決定するサービスについては、前年度平均利用者数の疎明資料をあわせて準備しましょう。
②雇用契約書、シフト表、出勤簿、給与明細、賃金台帳
従業員の就業実態を疎明する書類です。
あわせて労働基準法に違反する事実がないか、適正な労務管理ができているのかも確認しましょう。
③研修修了証・資格証
資格要件が厳格なサービス管理責任者や児童発達支援管理責任者、その他の専門職員の資格証は事業所に控えを保管しましょう。
運営に関する着眼点
運営規定とは、事業所の適正な運営やサービスの提供を確保するために事業の目的や運営の方針、定員数など重要な事項を記載した規程です。運営規定に変更が生ずる際は、必ず行政へ届出を行って下さい。届出を行う際は変更点が分かる様に赤字で修正を行う様にしましょう。
- 運営規程の内容と実態に相違はないか。
- 運営規程を変更した場合、変更届を提出しているか。
- 運営規程に記載すべき事項が記載されているか。
障がい者総合支援法に基づく各サービスごとに、必要な人員配置基準を満たしているかを確認するための書類です。
従業員の入退社や異動の都度、必要になる書類ですので記載方法を正確に覚えるようにしましょう。
- 事業所ごとに月間の勤務一覧表(予定・実績)が作成され、勤務時間、職務の内容、常勤・非常勤の別、兼務関係が明確になっているか。
- 「常勤」職員として届出する場合は、事業所における勤務時間が当該事業所において定められている常勤の従業者が勤務すべき時間数に達しているか(1週間に32時間を下回る場合は32時間。)
- 兼務として届出を行う場合、同一法人内で3役職以上の兼務をしていないか。※兼務の定義がないため、届出する際は必ず事前に確認して下さい。
- 月ごとに人員基準を満たしているか。
- 出勤簿と賃金台帳と勤務表の整合性がとれているか。
- タイムカード又は出勤簿が作成され保管されているか。
- 各月の勤務予定表は作成されているか。
- 各月の勤務実績表は作成されているか。
- 雇用契約書又は労働条件通知書が適正に作成されているか。(絶対的記載事項はあるか)
- 実態として週所定労働時間数が20時間以上の場合、雇用保険に加入しているか。(法人役員、学生等は除く)
- 実態として週所定労働時間数が30時間以上の場合、社会保険に加入しているか。(学生等は除く)
- 就業規則と賃金規定は整備されているか(従業員10人以上は管轄の労基署へ提出義務あり)
- 常勤時間の根拠となる就業規則の週所定労働時間は明確となっているか。
- 職種を変更する場合、辞令等を作成しているか。
- 法人役員を勤務させる場合、登記された役員であるか。
- 職員の履歴書や資格証の写しが適切に保管されているか。(見やすい様に個人ごとにファイリングをお願い致します。)
- サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者の経歴書・研修修了証・実務経験証明書は保管されているか。
サービス提供日における当日の内容や利用者の心身の状況、課題やトラブルなどの連絡事項を事業所内で共有するための書類です。
サービス状況を可視化するために必ず業務日誌を記載し、紛失することのない様に事業所に備え付けて下さい。
- 日々の業務日誌が記録され、正しく保存されているか。
- 苦情相談等(意見含む)があった場合、内容を記録し苦情相談の内容を踏まえ、サービスの質の向上に向けた取組みが行われているか。
- 正当な理由がなくサービス提供を拒んでいないか。提供拒否した場合、経緯や理由を記録しているか。
- 事故やヒヤリハットを記録し、再発防止に向けた取組みが行われているか。
- 事故発生後、直ちに市町村へ報告し必要な指示をうけているか。
- 職員研修の機会が設けられているか。
- 研修計画について、運営規定で定めているか。また、規定内容が実施されているか。
- 人権擁護、虐待防止研修を行っていること(年1回以上の実施)
- 研修記録が作成され、研修に参加できなかった従業者にも研修内容が共有されているか。(共有したことが分かる書類も保存しておきましょう。)
- 送迎加算を取得している場合、送迎記録が整備され保管されているか。
- 平均利用者数に基づいて「勤務形態一覧表」を作成し、人員配置基準を満たしているか。
- 利用者の労働時間や工賃・賃金など報酬区分を算定するための記録がされているか。
重要事項説明とは、(「重説」と略されることもあります)事業所の基本的事項やサービス内容などを、利用者本人や法定代理人などに詳しく説明するものです。
サービス利用前に必ず説明し、同意を得た上で、署名捺印を頂いて下さい。
- 最新の重要事項説明書を作成しているか。運営規程の内容と整合しているか。
- 契約前に重要事項説明書を本人又は法定代理人に交付し、事業の内容等について説明しているか。
- 重要事項説明書の内容と実態に乖離はないか。
- 障がいの特性に応じて、ルビや拡大文字、点字など必要な配慮があるか。
- 重要事項説明書は随時閲覧可能な状態になっているか。(本人が紛失する場合があるため、随時再発行ができる状態にあるか。)
- 利用契約書や運営規定など、内容は同一か。
- 利用契約書を作成し、利用契約時に適切に説明しているか。
- 利用契約書には署名及び捺印があるか。
- 契約内容報告書を市町村に提出しているか。(契約時、契約内容の変更時、契約終了時は必ず提出する様にしましょう。)
個人情報使用に関する同意書とは、事業者がサービスを円滑に実施するため、担当者会議や他のサービス事業者等と情報の共有が必要な場合に個人情報を使用するための同意書です。
- 個人情報に関する同意書を作成するとともに同意を得ているか。名及び捺印があるか。
- 個人情報について、業務の必要な範囲内を超えて使用していないか。
- 事業者及び事業所の名称、契約日、契約内容などを受給者証に記載しているか。
- 最新の受給者証の写しを利用者ごとに保管し、支給決定の有無や有効期間、支給量等の把握をしているか。
サービスの利用者を支援するために必要な内容や、サービスを受けるに至った背景などの情報をまとめた書類です。
利用者の個別支援計画を作成するために、利用者や家族に対してアセスメント(客観的な評価と事前の対策)を行う際に作成します。
アセスメントは利用者の望む生活の実現に解決すべき課題の明確化と、必要な支援を明確にするために情報を収集し分析することに意義があります。
- 利用者の心身の状況や環境、他サービスの利用状況を把握し、アセスメントシートへ記録しているか。
- アセスメントは都度見直しが行われているか。
- アセスメントにおける課題等と個別支援計画における支援内容は整合しているか。
個別支援計画書とは、サービスを利用する人の将来の目標や課題、さらには課題を解決し目標を達成するためにサービス利用者と事業所が取り組む事柄やプロセスなどを記載し、それを文書にまとめたものです。
支援の要となる重要書類ですので、サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者を中心に正しい手順に則り作成する様にして下さい。
※適切な手順で作成されていないもの、各プロセスにおける文書等の記録が不十分なものは「個別支援計画が適正に作成されなかった」ものとみなされ、個別支援計画未作成減算の対象となりますので、十分に注意して下さい。
※各利用者の個別支援計画の有効期間を把握し、更新時期を事業所内で共有して下さい。くれぐれも更新漏れによる未作成がないように管理表を作成しましょう。(前利用者のモニタリングについて、月末に実施するなど時期を統一するなども有効です。)
- 個別支援計画はサービス管理責任者・児童発達支援管理責任者が作成し、その氏名が明記されているか。
- 個別支援計画の内容を説明し、同意を得て交付しているか。作成日や説明・交付日が明記されているか。
- 具体的な支援の内容や所要時間が明記されているか。
- 個別支援計画の作成にあたって、適正な手順に沿って計画が作成されているか。また、一連のプロセスごとに実施されたことが分かる記録の保存はあるか。
(アセスメント→個別支援計画の原案作成→支援担当者会議→正式な個別支援計画の作成→正式な個別支援計画の説明・同意・交付→毎日の支援記録→モニタリング)
- サービス提供日(時間)、支援内容、実績時間数、利用者へ伝達すべき必要な事項をサービス提供の都度、記録しているか。
サービス実績記録票とは、利用者が受けた障がい福祉サービスの実績を記録する書類のことです。 この書類は、障がい者支援施設やサービス提供事業者が、支援内容や利用者の状況を記録し、適切な支援を提供するために必要なものです。
- サービスの都度、利用者から印をもらっているか。
- 就労系サービスでは、利用者へ賃金又は工賃の支払が適切になされているか。
- 工賃台帳、工賃規程、賃金台帳、就業規則、賃金規定が備え付けられているか。
障害福祉サービス費等の
請求に関する着眼点
各月の障害福祉サービス費は事業所から伝送される請求データに基づき、市町村の審査を通じて支払決定されるものです。
この審査では、事業所の請求内容と事業所台帳や受給者台帳と突合したうえで、相違する請求は返戻される仕組みですが、体制届の届出をしていなかった場合など誤って承認される可能性もあります。
必ず、最新の体制届の内容と請求内容が一致しているかを確認しましょう。
また、支給決定を行う指定権者は実績記録の相違を判断する事はできませんので、毎月、正確なデータを作成するようにしましょう。
まとめ
実地指導では、障害福祉サービスを運営するにあたって、事業所が適切に運営をしているか、コンプライアンスを遵守しているか全面的に確認を行います。
実地指導の結果、適正な運営が行われていないと判断されると監査に移行し、最悪の場合、返金命令及び運営の停止又は指定取消等の厳しい処分が科せられます。
永野将太行政書士事務所では、実地指導の実施に関わりなく、適正な事業所運営を目指して、日頃よりコンサルティングを行っております。
運営においてご不明点等ございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。
永野将太行政書士事務所が
サポートできるサービス
永野将太行政書士事務所では、開業前から開業後の運営サポートを一貫して行っております。
開所をゴールとするのではなく、事業所は利用者様の日常生活をサポートできる環境を整備し維持する事が大切です。
永野将太行政書士事業所では、事業所運営に関連する手続きは幅広く受付けておりますので、ご不明点等ございましたらお気軽にご相談下さい。