運営指導

障害福祉事業所の運営指導とは?確認事項・必要書類・事前準備を解説【2026年版】

最終更新日:2026年7月19日

障害福祉サービス事業所を運営していると、指定権者である都道府県・市町村による「運営指導」が実施されます。運営指導では、人員配置、個別支援計画、利用者へのサービス提供、加算の算定、虐待防止、身体拘束等の適正化、業務継続計画(BCP)など、事業所運営の幅広い項目が確認されます。本ページでは、2026年6月に示された指導指針・運営指導マニュアルを踏まえ、確認事項・必要書類・事前準備をわかりやすく解説します。

日頃から必要な記録を整備していなければ、運営指導の直前に書類を用意しようとしても、過去の支援内容や職員の勤務実績を正確に再現することは困難です。なお、具体的な提出書類・提出部数・対象期間・当日の進行等は自治体ごとに異なります。実際の対応では、指定権者から届く実施通知を優先してください。

運営指導とは

運営指導とは、障害者総合支援法・児童福祉法その他の関係法令に基づき、障害福祉サービスの質の確保と自立支援給付費等の適正な請求を目的として、指定権者(都道府県・市町村)が指定事業所に対して行う確認・指導です。

単に書類がそろっているかを確認するだけではなく、実際のサービス提供状況、利用者への支援内容、職員の配置状況、報酬請求との整合性などを、関係書類・職員への聞き取り・事業所内の確認を通じて総合的に確認します。

運営指導は「書類検査」ではなく、実際の運営と記録・請求が一致しているかを確認する手続です。

集団指導・監査との違い

障害福祉事業者に対する指導は、大きく「集団指導」と「運営指導」の2種類に分けられます。

種類主な内容
集団指導制度改正、報酬請求、過去の指摘事例などを、講義・動画配信・資料掲載等により周知するもの
運営指導個別の事業所について、書類・支援状況・人員配置・報酬請求などを確認するもの

集団指導は原則として年1回以上実施され、動画視聴後に受講報告を求める自治体もあります。未受講の場合、運営指導の対象として優先的に選定される可能性があるため、必ず受講状況を管理しましょう。

また、運営指導と監査は同じものではありません。運営指導が運営状況を確認し必要な改善を促すことを目的とするのに対し、監査は不正請求・重大な人員基準違反・虐待・不正な手段による指定などが疑われる場合に、事実関係を詳しく調査するものです。運営指導中に著しい基準違反や不正請求、虐待による生命・身体への危害等が確認された場合には、監査へ移行することがあります。

実施頻度と事前通知

2026年6月に改正された国の指導指針では、運営指導の実施頻度について次の目安が示されています。

対象サービス等実施頻度の目安
就労継続支援A型3年に1回以上
就労継続支援B型3年に1回以上
共同生活援助3年に1回以上
その他の障害福祉サービス原則として指定の有効期間内に少なくとも1回以上
新規指定事業所原則として指定後3年以内
新規の就労継続支援A型指定後おおむね6か月後に初回実施

過去に重大な指摘を受けた事業所、通報があった事業所、不適切な報酬請求が疑われる事業所などは、実施頻度にかかわらず優先的に対象となることがあります。

運営指導を実施する場合、原則として実施予定日の1か月前までに、自治体から事業所へ通知が送付されます。通知には、日時及び場所、指導担当者、事業所側の出席者、事前に提出する資料、当日準備する資料、当日の進め方などが記載されます。ただし、書類の改ざん、不正請求、虐待などが疑われ、事前に通知すると日常のサービス提供状況を確認できないと判断された場合には、事前通知なしで実施されることがあります。

運営指導の基本的な流れ

事前準備

自治体から実施通知が届き、調査票や事前提出資料を作成します。事業所内では、勤務実績、個別支援計画、サービス提供記録、加算関係資料などを確認し、当日速やかに提示できるよう整理します。

運営指導当日

担当職員が事業所を訪問し、関係書類の確認、管理者等への聞き取り、設備やサービス提供状況の確認を行います。必要に応じて、その場で助言や口頭指導が行われます。

運営指導後

特段の改善事項がなければ、結果通知が送付されます。改善事項がある場合には、文書による指導が行われ、期限までに改善報告書や返還関係書類などを提出します。

確認される3つの分野

国の指導指針では、運営指導の内容を次の3つに区分しています。

①サービスの実施状況

利用者に対して適切な支援が提供されているかを確認します。個別支援計画、サービス提供記録、利用者への対応、施設内の環境などが対象となります。

②最低基準等の運営体制

人員基準、設備基準、運営規程、虐待防止、身体拘束等の適正化、感染症対策、業務継続計画など、事業所の運営体制を確認します。

③報酬請求

基本報酬や各種加算が、告示・通知・Q&A等に定められた要件に従って算定されているかを確認します。

2026年からの確認方法の見直し

2026年6月に示された運営指導マニュアルでは、事業者と自治体双方の負担軽減を図るため、確認方法が全国的に整理されました。主な取扱いは次のとおりです。

  • 原則として、国が示す「確認項目及び確認文書」に基づいて確認する
  • 特段の事情がなければ、確認項目以外の事項は確認しない
  • 原則として、確認文書以外の書類は求めない
  • 確認対象は、原則として前年度から直近までの書類とする
  • 利用者の記録確認は、原則として3名以内とする
  • 自治体が既に保有している書類は再提出を求めない
  • 電子管理している書類は、パソコン画面上で確認することもできる
  • 設備や利用者の状況以外は、オンラインで確認することもできる

ただし、不正請求などが疑われる場合には、確認項目や確認文書に限定せず、追加資料の提出を求められることがあります。

人員配置と勤務実績の確認

運営指導で特に重要となるのが、人員配置基準の確認です。勤務形態一覧表上では基準を満たしていても、出勤簿やタイムカード、雇用契約書、実際の勤務内容と一致していなければ、人員基準を満たしていると認められない可能性があります。

特に確認が必要なのは、次のようなケースです。

  • 複数の職種を兼務している
  • 多機能型事業所で複数サービスを兼務している
  • 同一法人内の複数事業所を兼務している
  • サービス管理責任者等が送迎や直接支援に長時間従事している
  • 常勤換算に含める勤務時間が明確になっていない
  • 資格証や実務経験証明書が保管されていない
  • 経過措置やみなし配置の期間が終了している

勤務形態一覧表、出勤簿、雇用契約書、給与台帳、職務内容の説明が相互に一致しているかを確認します。

個別支援計画の確認

個別支援計画については、完成した計画書だけでなく、作成に至るまでの一連の過程が確認されます。一般的には、次の記録が必要です。

  • 利用者のアセスメント
  • 個別支援計画原案の作成
  • 担当者会議の開催
  • 利用者又は家族への説明
  • 文書による同意
  • 利用者及び相談支援事業者への交付
  • 定期的なモニタリング
  • 必要に応じた計画の見直し

計画書に署名があるだけでは、一連の作成過程を実施したことの証明にはなりません。作成日、会議日、説明・同意日、交付日、サービス提供開始日などの日付関係も確認されます。一連の作成過程が行われていない場合には、個別支援計画未作成等減算の対象となる可能性があります。

契約書・重要事項説明書・運営規程

利用者との契約関係では、利用契約書、重要事項説明書、運営規程、個人情報使用同意書、秘密保持に関する書類、利用者負担額等の説明・同意書などが確認されます。

運営規程、重要事項説明書、契約書の内容に矛盾がないことが重要です。営業時間、サービス提供時間、通常の事業実施地域、利用定員、従業者の職種、利用者から徴収する費用などに変更があった場合には、書類の変更だけでなく、指定権者への変更届が必要となる場合があります。古い書式をそのまま使用していないか、現在の運営実態と一致しているかを確認しましょう。

サービス提供記録と請求内容の整合性

報酬請求では、請求データだけでなく、請求の根拠となる記録が確認されます。主に次の資料を相互に照合します。

確認資料主な確認内容
サービス提供実績記録票提供日、提供時間、利用者確認
ケース記録・日報実際に行った支援内容
出勤簿・勤務表必要な職員が配置されていたか
個別支援計画提供した支援が計画に位置付けられているか
国保連請求資料実績に基づいて正しく請求されているか

実際に支援を行っていたとしても、その事実や加算要件を記録上確認できなければ、不適切な請求として指導される可能性があります。

加算の算定要件

各種加算については、届出を提出しているだけでは足りません。加算ごとに、必要な人員配置、資格、会議、研修、支援実績、個別支援計画への位置付けなどを継続して満たす必要があります。運営指導では、例えば次の点が確認されます。

  • 加算対象職員の勤務実績
  • 資格証及び研修修了証
  • 支援を実施した日時と内容
  • 利用者への説明及び同意
  • 個別支援計画への位置付け
  • 会議録や連携記録
  • 加算対象者の要件
  • 算定回数や算定期間

要件を満たさなくなった場合には、速やかに体制届を提出し、算定を停止する必要があります。

虐待防止・身体拘束等の適正化

虐待防止

  • 虐待防止委員会の定期的な開催
  • 委員会結果の職員への周知
  • 虐待防止研修の実施
  • 虐待防止担当者の配置

身体拘束等の適正化

  • 身体拘束等適正化委員会の開催
  • 身体拘束等適正化指針の整備
  • 職員研修の実施
  • やむを得ず身体拘束を行った場合の記録
  • 身体拘束の必要性を継続的に見直しているか

必要な措置を講じていない場合には、虐待防止措置未実施減算や身体拘束廃止未実施減算が適用される可能性があります。

BCP・感染症・非常災害対策

業務継続計画(BCP)、感染症対策及び非常災害対策についても、計画や指針を作成するだけでは足りません。職員への周知、研修、訓練、委員会、実施記録、計画の見直しまで行う必要があります。

特に静岡県内の事業所では、地震、津波、洪水、土砂災害など、事業所の所在地に応じた具体的な災害対策が求められます。浸水想定区域や土砂災害警戒区域内の要配慮者利用施設については、避難確保計画の作成、訓練の実施、訓練結果の報告が必要となる場合があります。

業務継続計画が未策定の場合には、業務継続計画未策定減算の対象となる可能性があります。

サービス種別ごとの確認事項

就労継続支援A型・B型

生産活動収支、工賃又は賃金、施設外就労、請負契約、作業日報、就労支援に関する記録などが確認されます。

共同生活援助

夜間支援体制、家賃・食材料費等の精算、金銭管理、住居ごとの人員配置、地域連携推進会議などが確認されます。地域連携推進会議については、会議の開催、構成員による事業所見学、会議記録の作成・公表が必要です。

児童発達支援・放課後等デイサービス

安全計画、送迎時の所在確認、車内置き去り防止装置、支援プログラム、自己評価結果の公表などが確認されます。

運営指導で指摘されやすい事項

実務上、次のような事項が指摘につながりやすいため注意が必要です。

  • 勤務形態一覧表と出勤簿が一致していない
  • 兼務職員の勤務時間が職種別・サービス別に区分されていない
  • 資格証や実務経験証明書が不足している
  • 個別支援計画の作成日や同意日がサービス開始後になっている
  • 担当者会議やモニタリングの記録がない
  • 利用者又は相談支援事業者へ計画を交付していない
  • サービス提供記録と国保連請求が一致していない
  • 加算を算定しているが、根拠記録がない
  • 委員会、研修又は訓練を実施していない
  • 事故報告や苦情対応の記録が不足している
  • 運営規程等の変更届を提出していない
  • 情報公表や自己評価結果等を公表していない

指摘を受けた場合の対応

運営指導で改善事項が確認された場合には、後日、指導結果通知が送付されます。事業所は、指定された期限までに、改善内容や再発防止策を記載した改善報告書を提出します。報酬請求に誤りがあった場合には、対象利用者、対象期間、返還額を確認したうえで、過誤申立てや返還手続きを行います。

改善報告では、単に「今後気を付けます」と記載するのではなく、次の内容を具体的に示すことが重要です。

  • 指摘事項が発生した原因
  • 修正した書類や運用
  • 職員への周知方法
  • 再発防止のための確認体制
  • 改善後の証拠資料

改善報告書を提出しない場合や、改善が行われない場合には、再提出、再度の運営指導、勧告、命令等へ進む可能性があります。

日頃の運営管理が重要

運営指導への対応は、通知が届いてから始めるものではありません。過去の勤務記録、個別支援計画の作成過程、利用者への支援内容、会議や研修の実施状況などは、後から正確に作成することができないためです。毎月、少なくとも次の項目を確認することが重要です。

  • 人員基準及び加算要件を満たしているか
  • 勤務表と出勤簿が一致しているか
  • 個別支援計画の作成・更新期限を管理しているか
  • サービス提供記録と請求内容が一致しているか
  • 加算の根拠記録を保存しているか
  • 委員会、研修、訓練を計画どおり実施しているか
  • 変更届や体制届の提出漏れがないか

直前に書類を整えることではなく、日々の支援・人員配置・記録・請求を一致させることが最も重要です。

運営指導前の簡易チェックリスト

  • 勤務形態一覧表と出勤簿の勤務時間が一致している
  • 職種別・サービス別の兼務時間が区分されている
  • 資格証・研修修了証・実務経験証明書を確認できる
  • 個別支援計画の作成過程と各日付が整合している
  • 利用者及び相談支援事業者への計画交付を確認できる
  • サービス提供記録と実績記録票・請求内容が一致している
  • 算定中の各加算について根拠資料がある
  • 虐待防止・身体拘束等適正化の委員会と研修を実施している
  • BCP・感染症の研修・訓練等を実施している
  • 運営規程、重要事項説明書、契約書、届出内容が一致している
  • 事故・苦情・ヒヤリハット等の記録と対応を確認できる
  • 指定権者への変更届・体制届の提出漏れがない

当事務所の運営指導サポート

永野将太行政書士事務所では、静岡市・静岡県を中心に、障害福祉事業所の運営指導対策を支援しています。主なサポート内容は次のとおりです。

  • 運営指導通知及び事前提出資料の確認
  • 必要書類の整理・不足資料の確認
  • 人員配置基準及び勤務形態一覧表の確認
  • 加算算定要件の確認
  • 個別支援計画の作成過程及び管理方法の確認
  • 運営規程、重要事項説明書、契約書等の整合性確認
  • 虐待防止、身体拘束、感染症、BCP等の体制確認
  • 模擬運営指導の実施
  • 運営指導当日の対応支援
  • 指導後の改善報告書及び返還関係書類の作成支援

運営指導の通知が届いた事業所だけでなく、日頃の運営状況を事前に点検したい事業所からのご相談にも対応しています。

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静岡市・静岡県内で障害福祉サービス事業所を運営されている方は、運営指導の通知が届く前の日頃の点検からご相談ください。

人員配置、加算、個別支援計画、記録と請求の整合性の確認から、模擬運営指導、当日の対応、指導後の改善報告まで、一貫してサポートいたします。

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主な参照資料

  • 厚生労働省「障害福祉分野における指導監督」
  • 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等指導指針」
  • 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等に対する集団指導・運営指導マニュアル」
  • 静岡県「令和8年度 静岡県障害福祉サービス事業者等指導方針」

本ページは2026年7月時点の制度・公表資料をもとに一般的な内容を整理したものです。個別案件については、指定権者の通知、条例、取扱い、最新の告示・通知・Q&A等をご確認ください。