就労継続支援A型・B型などの障害福祉サービス事業所を運営されている皆さまにとって、就労移行支援体制加算は、利用者の一般就労への移行実績を評価してもらえる重要な加算です。
令和6年度の報酬改定で導入された「3年規制」に続き、令和8年度(2026年4月)の臨時応急的な見直しでは、年間算定人数の上限設定や3年規制の運用明確化など、さらなる適正化が行われました。
今回のコラムでは、「就労移行支援体制加算ってどういう仕組み?」「令和8年度の改定で何が変わったの?」という疑問にお答えしながら、制度の内容をわかりやすく解説します。
就労移行支援体制加算とは?
就労移行支援体制加算とは、障害福祉サービス事業所の利用者が一般企業等に就労し、6か月以上継続して雇用された場合に算定できる加算です。
この加算は、事業所が利用者の一般就労への移行と定着を支援した実績を評価するものであり、前年度の実績に基づいて翌年度の1年間、通所する全利用者に対して算定することができます。
つまり、1人でも一般就労に移行して6か月以上働き続けた方がいれば、翌年度に事業所を利用する全員の報酬に上乗せされるため、事業所全体の収益に大きなインパクトを与える加算です。
対象となるサービス
就労移行支援体制加算は、以下の5つの障害福祉サービスで算定することができます。
| 対象サービス | 概要 |
|---|---|
| 就労継続支援A型 | 雇用契約を結んで働く場を提供するサービス |
| 就労継続支援B型 | 雇用契約を結ばずに働く場を提供するサービス |
| 生活介護 | 常時介護を必要とする方に日中活動を提供するサービス |
| 自立訓練(機能訓練) | 身体機能の維持・回復を目的とした訓練を提供するサービス |
| 自立訓練(生活訓練) | 生活能力の維持・向上を目的とした訓練を提供するサービス |
ここがポイント!
就労移行支援体制加算は「就労移行支援」の加算ではありません。名前が紛らわしいですが、就労移行支援事業所が算定するものではなく、上記5つのサービス事業所が「利用者を一般就労に移行させた」実績を評価する加算です。就労移行支援には別途「移行準備支援体制加算」が設けられています。
算定要件
就労移行支援体制加算を算定するには、以下の要件を満たす必要があります。
要件① 就労定着者が1人以上いること
前年度において、事業所の利用者が一般企業等に就労し、6か月以上継続して雇用されている方(就労定着者)が1人以上いることが必要です。ここでいう「一般企業等」とは、通常の事業所で雇用される形態のことで、就労継続支援A型事業所での雇用は原則として含みません(生活介護の場合)。
要件② 都道府県知事等への届出
就労定着者がいることを都道府県知事または市町村長に届け出る必要があります。この届出は毎年度行う必要があり、届出が受理されて初めて加算の算定が認められます。
要件③ 3年規制に抵触しないこと
同一の利用者について過去3年間に就労移行支援体制加算が算定されている場合は、原則として再度の算定は認められません。令和8年度からは、この規制の適用範囲がさらに明確化されています(詳しくは後述)。
要件④ 年間算定人数が定員数以下であること(令和8年度新設)
令和8年度の臨時改定により、一事業所で年間に算定対象とできる就労定着者の人数は、当該事業所の利用定員数が上限とされました。これを超える人数での算定はできません。
単位数の考え方
就労移行支援体制加算の単位数は、サービスの種類、利用定員の規模、およびその他の要素(B型の場合は平均工賃月額、A型の場合は評価点)に応じて決まります。
算定額の計算式は以下のとおりです。
1日あたりの加算額 = 所定単位数 × 就労定着者の人数 × 地域単価
※ 所定単位数は、利用定員やサービス種別等に応じて定められた1人あたりの単価です。
就労継続支援B型の場合
就労継続支援B型では、基本報酬の算定方式(サービス費(Ⅰ)~(Ⅳ))と利用定員に応じて、加算の単位数が変わります。令和6年度改定により定員規模別区分が8段階に細分化されています。
| サービス費の区分 | 基準 | 単位数の範囲(1日あたり) |
|---|---|---|
| 加算(Ⅰ) | サービス費(Ⅰ)を算定(平均工賃月額に応じた報酬) | 7~93単位 |
| 加算(Ⅱ) | サービス費(Ⅱ)を算定(利用者の就労・生産活動参加による評価) | 6~90単位 |
| 加算(Ⅲ) | サービス費(Ⅲ)を算定 | 6~42単位 |
| 加算(Ⅳ) | サービス費(Ⅳ)を算定 | 5~39単位 |
いずれの区分も、利用定員が少ないほど、また平均工賃月額が高いほど、1人あたりの単位数は大きくなります。
就労継続支援A型の場合
就労継続支援A型では、サービス費(Ⅰ)または(Ⅱ)の区分と、利用定員および評価点に応じた所定単位数が設定されています。A型の場合も同様に、所定単位数に就労定着者の人数を乗じて算定します。
生活介護・自立訓練の場合
生活介護や自立訓練(機能訓練・生活訓練)でも就労移行支援体制加算は算定できます。利用定員に応じた所定単位数に就労定着者の数を乗じて得た単位数を加算する仕組みです。なお、生活介護の場合、就労継続支援A型事業所での雇用は一般就労に含まれませんのでご注意ください。
具体的な計算例
ここでは、実際の算定イメージをつかんでいただくために、計算例をご紹介します。
計算例:就労継続支援B型の場合
【条件】
・利用定員:20人以下
・サービス費(Ⅰ)を算定(平均工賃月額が高い区分)
・前年度の就労定着者:2人
・1日あたりの通所者数:15人
・月の開所日数:22日
・地域単価:10円
【計算】
所定単位数を仮に93単位とすると:
1日あたりの加算額 = 93単位 × 2人 × 10円 = 1,860円/人・日
月間の加算総額 = 1,860円 × 15人 × 22日 = 613,800円/月
年間の加算総額 = 613,800円 × 12か月 = 約736万円/年
このように、就労定着者が2人いるだけで年間700万円以上の増収につながる可能性があり、非常に大きな加算であることがわかります。
令和8年度改定のポイント ― 3年規制と上限設定の適正化
令和8年度(2026年4月)の臨時応急的な見直しでは、就労移行支援体制加算の適正化が大きなテーマとなりました。その背景と具体的な内容を解説します。
見直しの背景
同一の利用者が就労継続支援A型事業所と一般企業との間で短期間の離転職を繰り返し、その都度事業所が就労移行支援体制加算を取得するという、いわゆる「回転ドア」のような不適切な運用が問題視されてきました。
本来、就労移行支援体制加算は「利用者が長く働き続けるための支援を評価する」ものですが、形式的に就労・退職を繰り返すことで加算を得る事例が報道等で取り上げられ、制度趣旨に沿った運用の徹底が求められていました。
令和8年度改定の主な変更点
① 年間算定人数に上限を設定
一事業所で年間に算定対象とできる就労定着者の人数は、当該事業所の利用定員数が上限とされました。たとえば定員20人の事業所であれば、年間に就労定着者として算定できるのは最大20人までとなります。これまで制度上明確な上限がなかったため、大きな変更です。
② 3年規制の運用を明確化
令和6年度に導入された3年規制(同一利用者について過去3年間に加算算定済みの場合は原則不可)の運用がさらに明確化されました。同一事業所だけでなく、他の事業所・他の法人においても過去3年間に算定実績がある利用者については原則として算定不可であることが改めて明示されています。
③ 例外規定の具体化
ハラスメントなどやむを得ない事情で退職した利用者については、市町村長が適当と認める場合に限り例外が認められます。利用者の個別の事情を踏まえた判断が行われます。
これまでの改定の経緯
就労移行支援体制加算は近年の改定で段階的に適正化が進められてきました。主な変更の流れは以下のとおりです。
| 改定時期 | 主な変更内容 |
|---|---|
| 令和6年度(2024年4月) | 3年規制の導入/定員規模別区分を5段階から8段階に細分化/全区分で単位数引き上げ |
| 令和8年度(2026年4月) | 年間算定人数の上限(定員数まで)を新設/3年規制の運用明確化(他事業所・他法人にも適用)/例外規定の具体化 |
不適切な算定事例への対応として、回を重ねるごとにルールが厳格化されている点に十分ご注意ください。
算定にあたっての注意点
注意点① 「6か月」の起算日に注意
就労定着者としてカウントされるのは、就労を開始してから6か月が経過した日が前年度中にある方です。たとえば、3月に就労を開始した場合、6か月後は9月となるため、9月が属する年度の翌年度から加算を算定できます。起算日を正しく把握しておきましょう。
注意点② 年度をまたいだ届出のタイミング
就労移行支援体制加算は前年度の実績に基づいて翌年度に算定するものです。毎年度、年度の切り替え前に届出の手続きを行う必要がありますので、自治体の届出期限を事前に確認しておくことが重要です。
注意点③ 就労先の確認・記録の整備
就労定着者の雇用継続状況については、就労先企業への確認を行い、その記録を保管しておく必要があります。実地指導(運営指導)の際に確認される重要な書類ですので、日頃から丁寧な記録管理を心がけましょう。
注意点④ 一般就労の定義に注意
生活介護で本加算を算定する場合、就労継続支援A型事業所での雇用は「一般就労」に含まれません。あくまでも通常の事業所(一般企業等)での雇用が対象です。
注意点⑤ 上限設定と3年規制の確認を忘れずに
令和8年度からは、就労定着者の人数が定員数を超えていないか、また過去3年間に他の事業所で加算が算定されていないかの確認が必須となります。算定前に利用者一人ひとりの実績を慎重に確認しましょう。
まとめ
就労移行支援体制加算は、利用者の一般就労への移行と定着を支援する事業所を評価する加算であり、就労定着者が1人でもいれば全利用者に加算されるため、事業所の収益に大きな効果をもたらします。
一方で、令和6年度に導入された3年規制に加え、令和8年度からは年間算定人数の上限設定(定員数まで)や3年規制の運用明確化が実施されるなど、適正な運用がこれまで以上に求められています。
「加算を算定したいけど要件がよくわからない」「上限設定や3年規制にどう対応すればいいのか知りたい」とお感じの事業者さまは、ぜひ一度専門家にご相談ください。
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※本コラムの内容は令和8年度報酬改定(臨時応急的な見直し)時点の情報に基づいています。最新の情報は厚生労働省のホームページや各自治体にてご確認ください。

