返戻と過誤の違い|同月過誤の使い方と月次チェック

返戻と過誤の違い|同月過誤の使い方と月次チェック

返戻と過誤は、支払われたかどうかで区別します。まだ入金されていない段階のエラーが返戻、入金後の訂正が過誤です。返戻は返戻等一覧表でエラーコードを確認して再請求し、過誤は市町村へ取下げ依頼書(過誤申立書)を提出します。

  • 返戻=支払前のエラー、過誤=支払後の訂正
  • 請求期間内(10日まで)に気づけば簡易入力システム等で修正できる
  • 同月過誤を受け付けるかどうかは市町村・国保連によって異なる

この記事で分かること

返戻と過誤は手続がまったく違います。支払前のエラーと支払後の訂正という違いを起点に、返戻の主な原因、過誤申立の流れ、支払がマイナスにならないための同月過誤の使い方、月次のチェックリストを整理します。

はじめに

「返戻」と「過誤」は、似ているようで手続がまったく違います。取り違えると、支払がマイナスになったり、重複請求で再び返戻されたりします。

この記事のポイント

  • 返戻と過誤の決定的な違い
  • 通常過誤と同月過誤の使い分け
  • 支払がマイナスにならないための注意点
図解1返戻と過誤の分かれ目は「支払われたかどうか」

返戻(まだお金が入っていない)

  • 審査でエラーとなり、支払われなかった
  • 過誤申立は不要
  • 翌月以降に正しい内容で再請求するだけ

過誤(もう入っている)

  • 支払決定(支払済)後に誤りが判明
  • 市町村に取下げ依頼(過誤申立)
  • そのうえで再請求
やりがちな失敗:原因を特定せず同じ内容で再送信やりがちな失敗:過誤申立をせず再請求 → 重複請求で返戻
※本文「1. 違いは「支払われたかどうか」」を図解化したものです。

1. 違いは「支払われたかどうか」

返戻過誤
いつ起きるか審査でエラーとなり、支払われなかった支払決定(支払済)に誤りが判明
手続過誤申立は不要。翌月以降に正しい内容で再請求するだけ市町村に取下げ依頼(過誤申立)をしたうえで再請求
やりがちな失敗エラー原因を特定せずに同じ内容で再送信過誤申立をせずに再請求 → 重複請求で返戻

覚え方はシンプルです。まだお金が入っていない = 返戻/もう入っている = 過誤

図解2請求から支払までの流れ
サービス提供月の翌月1日〜10日国保連へ請求情報を伝送(10日23時59分まで)
翌月11日〜16日頃国保連の一次審査(支給決定情報との突合)
翌月18日〜21日頃市町村の二次審査
サービス提供月の翌々月1日・6日頃返戻等一覧表・支払決定増減表の伝送
サービス提供月の翌々月15日〜20日頃事業所へ入金
10日までに気づけば自分で取下げ・修正 → 返戻にも過誤にもならない
※日程は一般的な目安です。実際の日程は所轄の国保連・市町村の案内をご確認ください。
あわせて読みたい障害福祉サービスの報酬計算|単位数と単価・端数処理・利用者負担

2. 請求から支払までの流れ

時期内容
サービス提供月の翌月1日〜10日国保連へ請求情報を伝送(10日23時59分まで)
サービス提供月の翌月11日〜16日頃国保連の一次審査(支給決定情報との突合)
サービス提供月の翌月18日〜21日頃市町村の二次審査
サービス提供月の翌々月1日・6日頃返戻等一覧表・支払決定増減表の伝送
サービス提供月の翌々月15日〜20日頃事業所へ入金

請求期間内(10日まで)に誤りに気づいた場合は、簡易入力システム等の「取下げ」機能で自分で取り下げ、修正して再送信できます。この段階なら返戻にも過誤にもなりません。気づいたらまず10日までに自分で直すのが最善です。

図解3返戻の主な原因(一次審査=請求情報と支給決定情報の照合)

照合で不一致になりやすい点

  • 受給者証番号・支給決定期間・支給量の相違
  • 契約内容報告書が未提出(契約情報が未登録)
  • 上限額管理結果票と関係事業所の請求内容の不一致

請求内容そのものの誤り

  • 単位数・日数・加算の誤り
  • すでに支払済のデータの再送信(重複請求)
返戻等一覧表でエラーコードを確認エラーコードマニュアルを手元に保存原因を修正して翌月に再請求
※本文「3. 返戻への対応」を図解化したものです。

3. 返戻への対応

  1. 返戻等一覧表でエラーコードを確認する
  2. コードから原因を特定する
  3. 原因を修正し、翌月の請求期間に再請求する(過誤申立は不要)

エラーコードの意味は、各都道府県の国保連が「エラーコードマニュアル」を公表しています。手元に保存しておくと調べる時間が短縮できます。

返戻の主な原因

一次審査は「請求情報と支給決定情報の照合」です。したがって、次の不一致が主な原因になります。

  • 受給者証番号・支給決定期間・支給量の相違
  • 契約内容報告書が未提出(契約情報が登録されていない)
  • 上限額管理結果票と関係事業所の請求内容の不一致
  • 単位数・日数・加算の誤り
  • すでに支払済のデータの再送信(重複請求)
図解4過誤の基本の流れ
事業所が市町村へ取下げ依頼書(過誤申立書)を提出
市町村が過誤調整申立情報を国保連へ提出
事業所が訂正した請求明細書を再請求
国保連が給付実績を削除し、支払額を調整
過誤決定通知書が発行される
1日分の誤りでも、その受給者のその月全体が取下げ部分的な訂正はできない
※本文「4. 過誤への対応」を図解化したものです。

4. 過誤への対応

基本の流れ

  1. 事業所が市町村へ取下げ依頼書(過誤申立書)を提出
  2. 市町村が過誤調整申立情報を国保連へ提出
  3. 事業所が訂正した請求明細書を再請求
  4. 国保連が給付実績を削除し、支払額を調整
  5. 過誤決定通知書が発行される

重要な性質

請求を誤った箇所が1日分だけであっても、その受給者のその月全体が取下げになります。

部分的な訂正はできません。月単位でまるごと取り下げて、正しい内容で出し直す、と理解してください。

図解5通常過誤と同月過誤

通常過誤

  • 過誤申立と再請求を別の月で処理
  • 所要期間は長い
  • 一旦、当初請求額の全額が差し引かれるため支払がマイナスになり得る

同月過誤

  • 過誤申立と再請求の審査を同じ月に実施
  • 所要期間は短い
  • 差額のみの調整で済む
最重要:市町村の申立月と事業所の再請求月を同じ月にそろえる申立の締切・提出方法は自治体ごとに異なる
※同月過誤を受け付けるかどうか、処理に要する月数は市町村・国保連により運用が異なります。事前に所轄の市町村にご確認ください。
あわせて読みたい障害福祉サービスの体制届とは?提出のタイミングと注意点

5. 通常過誤と同月過誤

通常過誤同月過誤
処理過誤申立と再請求を別の月で処理過誤申立と再請求の審査を同じ月に実施
所要期間長い短い
支払への影響一旦、当初請求額の全額が差し引かれるため支払がマイナスになり得る差額のみの調整で済む

処理に要する月数や、そもそも同月過誤を受け付けるかどうかは市町村・国保連により運用が異なります(障害福祉サービスは同月過誤のみとする自治体もあります)。実際の手続の前に、所轄の市町村にご確認ください。

金額の大きい訂正では、通常過誤だと当月の入金がマイナスになることがあります。同月過誤を使えば差額調整で済むため、資金繰りへの影響を抑えられます。

同月過誤の最重要注意点

市町村が過誤申立をする月と、事業所が再請求する月が同じ月であること

ここがずれると、当初請求額の全額が差し引かれ、支払がマイナスになります。同月過誤を使うときは、必ず事前に市町村と月をすり合わせてください。

申立の締切は自治体ごとに違う

自治体の例事業所からの申立締切
A市毎月1日〜最終日(電子申請のみ)
B区毎月1日〜20日(21日以降到着は翌月扱い)
C市申立の翌月に再請求

締切も提出方法(電子申請のみ/郵送可)も自治体により異なります。所轄の市町村のページで必ず確認してください。

図解6運営指導で誤りが見つかったとき
単なる過誤自主点検と過誤調整による訂正で対応
意図的な不正請求と認定監査に移行し、返還額に加えて40%が徴収される
返還請求権の時効は5年自主的に点検し過誤調整を申し出た事実は記録に残す
※本文「6. 運営指導で誤りが見つかったとき」を図解化したものです。

6. 運営指導で誤りが見つかったとき

運営指導で加算要件の不備等が判明した場合、過去分について過誤調整による返還を求められます。

  • 返還請求権の時効は5年
  • 単なる過誤であれば、自主点検と過誤調整による訂正で対応
  • 意図的な不正請求と認定されると、監査に移行し、返還額に加え40%が徴収される

「うっかり」で済むかどうかの分かれ目は、気づいた後にどう動いたかです。自主的に点検して過誤調整を申し出た事実は、必ず記録に残しておいてください。

7. 月次のチェックリスト

請求前(1日〜10日)

  • 受給者証の内容(番号・期間・支給量・上限月額)と請求内容の突合
  • 契約内容報告書の提出状況の確認
  • 上限額管理結果票の相互一致
  • サービス提供実績記録票と請求明細書の整合
  • 体制届の受理状況(届出前の月に算定していないか)

請求後(翌月1日以降)

  • 返戻等一覧表の確認とエラー原因の特定
  • 支払決定増減表と入金額の照合

支払済の誤りに気づいたとき

  • まず市町村に連絡し、通常過誤か同月過誤か、再請求月を事前調整
あわせて読みたい運営指導で報酬返還となるケース

8. まとめ

  • 支払前のエラーが「返戻」、支払後の訂正が「過誤」
  • 返戻は過誤申立不要。過誤は申立をしてから再請求
  • 1日分の誤りでもその月全体が取下げになる
  • 同月過誤は月ズレが致命的。必ず市町村と事前調整を

手続の細部や締切は自治体・国保連により異なります。実務にあたっては、所轄の市町村および国保連の案内をご確認ください。

よくある質問

Q

返戻のときも過誤申立が必要ですか。

A

不要です。返戻はまだ支払われていない状態ですので、エラー原因を修正して翌月の請求期間に再請求すれば足ります。過誤申立が必要なのは支払済みの請求を訂正する場合です。

Q

1日分だけの誤りでも、その月全体を取り下げる必要がありますか。

A

必要です。過誤は月単位で処理され、部分的な訂正はできません。まるごと取り下げたうえで、正しい内容で再請求します。

Q

同月過誤を使うと何が変わりますか。

A

過誤申立と再請求の審査が同じ月に行われるため、差額のみの調整で済み、支払がマイナスになることを避けられます。ただし申立月と再請求月がずれると全額が差し引かれますので、必ず市町村と事前に調整してください。

Q

請求期間中に誤りに気づいた場合はどうすればよいですか。

A

10日までであれば、簡易入力システム等の取下げ機能で自ら取り下げ、修正して再送信できます。この段階なら返戻にも過誤にもなりません。

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障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、指定申請・報酬請求の実務と労務管理の両面を、ひとつの窓口でご相談いただけます。

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主な参考資料

  • 参考:「各都道府県国民健康保険団体連合会が公表する請求事務資料・エラーコードマニュアル」/「各市町村が公表する過誤申立の手引き」/「指定障害福祉サービス事業者等の指導監査に係る監査マニュアル」

※本記事は令和8年8月28日時点の法令・告示・通知等に基づく一般的な整理です。指定権者の条例・手引き・個別運用、最新の報酬告示・Q&Aを必ず確認してください。

執筆者 永野将太(行政書士・社会保険労務士)
執筆者WRITER
永野 将太
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズ 代表

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。

これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。