処遇改善加算の計画書と実績報告

障害福祉の処遇改善加算計画書と実績報告書

処遇改善計画書は、算定する加算区分、加算見込額、賃金改善の方法、キャリアパス要件などを記載して年度の初めに提出するものです。実績報告書は、実際に受け取った加算額と実施した賃金改善額を突き合わせて報告します。提出期限は算定開始月や年度ごとの特例で変わるため、指定権者の手引きや年度案内で毎年確認します。

  • 計画書には加算区分・加算見込額・賃金改善の方法を記載する
  • 実績報告書で加算額と賃金改善額を照合する
  • 提出期限は毎年度、指定権者の案内で確認する

この記事で分かること

処遇改善計画書と実績報告書の役割、記載内容、提出までの年間管理、加算収入と賃金改善額の照合方法、差額が出た場合の注意点を解説します。

はじめに

処遇改善加算は、計画書を提出して終わる制度ではありません。計画に基づいて実際に賃金改善を行い、年度終了後に加算収入と賃金改善実績を集計して報告します。

給与計算、賞与、社会保険料、退職・入職、加算の入金には時間差があるため、年度末にまとめて確認すると不足や集計誤りが起きやすくなります。

この記事のポイント

    • 計画書は「これからどう改善するか」、実績報告は「実際にどう改善したか」を報告します。
    • 加算収入と賃金改善額は、事業所・年度・対象職員・賃金項目をそろえて比較します。
    • 毎月の加算額と給与データを管理し、年度途中にも見込差額を確認します。

1. 処遇改善計画書とは?

計画書は、算定する加算区分、加算見込額、賃金改善の方法、キャリアパス要件、職場環境等要件等を指定権者へ届け出る書類です。

主な記載事項は次のとおりです。

  • 法人・事業所・サービスの情報
  • 算定する加算区分と算定期間
  • 加算額の見込額
  • 賃金改善実施期間
  • 対象職員と賃金改善方法
  • 基本給等による月額賃金改善の計画
  • キャリアパス要件・職場環境等要件の実施状況
  • 職員への周知方法

新規開業と同時に算定する場合、計画書は指定申請書類の一部として提出します。ある中核市の手引きでは、指定申請の提出書類チェックリストに「処遇改善計画書(算定する場合)」が含まれ、体制等に関する届出書・体制等状況一覧表と併せて提出する構成になっています(様式番号は指定権者ごとに異なる)。

つまり、指定日から処遇改善加算を算定したい場合、指定申請の準備段階で賃金規程の改定、対象職員と配分基準の決定、職員への周知まで終えている必要があります。開業後に整備しようとすると、算定開始が数か月遅れます。

複数事業所を一括申請する場合は、事業所一覧、加算率、加算見込額、配分範囲を正確に整理します。

2. 実績報告書とは?

実績報告書は、実際に受け取った加算額と、実際に実施した賃金改善額等を報告する書類です。

計画書の見込額と実績額が異なること自体はあり得ます。利用者数や請求額が変われば、加算収入も変わるためです。重要なのは、実際の加算収入に対応する賃金改善を実施していることです。

図解1計画書と実績報告書

処遇改善計画書(事前)

  • 法人・事業所・サービスの情報
  • 算定する加算区分と算定期間、加算額の見込額
  • 賃金改善実施期間、対象職員と賃金改善方法
  • 基本給等による月額賃金改善の計画
  • キャリアパス要件・職場環境等要件の実施状況
  • 職員への周知方法

実績報告書(事後)

  • 実際に受け取った加算額
  • 実際に実施した賃金改善額等
見込額と実績額が異なること自体はあり得る(利用者数や請求額が変われば加算収入も変わる)重要なのは、実際の加算収入に対応する賃金改善を実施していること
※新規開業と同時に算定する場合、計画書は指定申請書類の一部として提出します。

3. 提出期限は毎年度確認する

計画書の提出期限は、算定開始月と年度ごとの特例によって変わります。令和8年度は、4月又は5月から算定する場合は原則として令和8年4月15日、令和8年6月から新たに対象となった計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援のみを運営する事業所が6月から算定する場合は原則として同年6月15日です。それ以外に年度途中から算定する場合は、原則として算定開始月の前々月末が目安です。

実績報告は、各事業年度における最終の加算支払があった月の翌々月末が原則です。通常どおり令和9年5月に最終支払を受ける場合、令和8年度分は令和9年7月末が目安になります。自治体が提出日、提出方法、ファイル名等を定めるため、必ず指定権者の年度案内を確認してください。

指定権者の手引きに書かれた提出期限の例

提出期限は指定権者が手引きや年度案内で示します。ある中核市の手引きでは、次のように整理されています。

区分提出期限・提出方法
新たに算定する場合算定する月の前々月の末日まで(閉庁日の場合、直後の開庁日)(必着)/郵送または持参
区分を変更する場合、対象事業所・サービス種別に増減がある場合算定する月の前月15日まで(閉庁日の場合、直後の開庁日)(必着)/郵送または持参
前年度から継続して算定する場合、4月・5月から新たに取得する場合年度末(3月下旬)に指定権者から通知される期限まで
実績報告書毎年7月末日まで(提出の詳細は6月下旬に指定権者から通知)

注目したいのは、「新たに算定する場合」と「区分を変更する場合」で期限が1か月ずれる点です。新規は前々月末、区分変更や対象事業所の増減は前月15日という組み合わせは、他の加算届(前月15日)とも異なります。

また、この例では実績報告書の期限が「最終の加算支払があった月の翌々月末」ではなく、暦月で「毎年7月末日」と固定されています。実績報告の締切の立て方は指定権者によって異なるため、申請先の自治体の年度案内を必ず確認してください。提出方法(郵送可か持参か)、必着か消印有効か、様式・ファイル名の指定も自治体ごとに異なります(様式番号は指定権者ごとに異なる)。

図解2提出期限の整理(ある中核市の例)

新たに算定する場合

  • 算定する月の前々月の末日まで(必着)/郵送または持参

区分変更、対象事業所・サービス種別の増減

  • 算定する月の前月15日まで(必着)

前年度から継続、4月・5月から新たに取得

  • 年度末(3月下旬)に指定権者から通知される期限まで

実績報告書

  • 毎年7月末日まで(提出の詳細は6月下旬に通知)
  • 原則は各事業年度における最終の加算支払があった月の翌々月末
令和8年度:4月・5月から算定する場合は原則として令和8年4月15日6月から新たに対象となった相談支援のみを運営する事業所が6月から算定する場合は原則として同年6月15日
※自治体が提出日、提出方法、ファイル名等を定めるため、必ず指定権者の年度案内を確認してください。

4. 年間管理の流れ

時期主な作業
算定前区分確認、加算見込、配分設計、規程整備、職員周知、計画書・体制届
毎月加算請求額、支払額、職員別賃金改善額、法定福利費増加分を集計
四半期・半期加算収入見込と賃金改善見込を比較し、不足・過大を調整
年度末最終見込を確定し、賞与・一時金等が必要か判断
最終支払後加算実績・賃金改善実績を確定し、実績報告書を提出
図解3年間管理の流れ
算定前区分確認、加算見込、配分設計、規程整備、職員周知、計画書・体制届
毎月加算請求額、支払額、職員別賃金改善額、法定福利費増加分を集計
四半期・半期加算収入見込と賃金改善見込を比較し、不足・過大を調整
年度末最終見込を確定し、賞与・一時金等が必要か判断
最終支払後加算実績・賃金改善実績を確定し、実績報告書を提出
実績報告時に初めて不足へ気づくのではなく、年度途中に比較する
※既に退職した職員への支給、年度をまたぐ支給、他事業所への配分は個別ルールがあります。自己判断せず通知・Q&Aと指定権者の取扱いを確認してください。
あわせて読みたい処遇改善加算の配分方法|対象職員・賃金項目・注意点を解説

5. 加算額と賃金改善額の比較

賃金改善額には、基本給、手当、賞与等の改善額と、その改善に伴う法定福利費等の事業主負担の増加分を含めることができます。

例えば、年間の加算収入が540万円、職員へ支払った賃金改善が500万円、賃金改善に伴う法定福利費等の事業主負担増が40万円であれば、合計540万円として比較します。

賃金改善500万円 + 法定福利費等増加分40万円 = 賃金改善等540万円

法定福利費は、従前から負担している全額ではなく、今回の賃金改善により増えた事業主負担分です。

図解4加算額と賃金改善額の比較
賃金改善500万円
法定福利費等の増加分40万円
賃金改善等 540万円年間の加算収入540万円と比較

計算が合わなくなる不一致

  • 加算額は請求ベース、賃金は支払ベースになっている
  • 事業所を一括申請したのに、一部事業所だけで比較している
  • 対象外サービスの職員・賃金を含めている
  • 賃金改善実施期間外の賞与を含めている
  • 定期昇給、最低賃金対応、処遇改善による上乗せを区分していない
  • 法定福利費を従業員控除額だけで計算している
集計表には、加算の対象月、国保連入金月、給与対象月、給与支払月を分けて記録する
※法定福利費は、従前から負担している全額ではなく、今回の賃金改善により増えた事業主負担分です。

6. 比較する基準をそろえる

次の不一致があると、計算が合わなくなります。

  • 加算額は請求ベース、賃金は支払ベースになっている
  • 事業所を一括申請したのに、一部事業所だけで比較している
  • 対象外サービスの職員・賃金を含めている
  • 賃金改善実施期間外の賞与を含めている
  • 定期昇給、最低賃金対応、処遇改善による上乗せを区分していない
  • 法定福利費を従業員控除額だけで計算している

集計表には、加算の対象月、国保連入金月、給与対象月、給与支払月を分けて記録します。

7. 実績報告の根拠資料

  • 国保連の支払決定額・加算額が分かる資料
  • 給与台帳、賃金台帳、賞与台帳
  • 給与明細、振込記録
  • 職員別の賃金改善集計表
  • 社会保険・労働保険の事業主負担計算資料
  • 就業規則、賃金規程、処遇改善手当規程
  • 職員周知資料
  • キャリアパス、研修、職場環境等要件の実施記録

提出を求められない資料も、実績報告の根拠として保存します。

図解5実績報告の根拠資料
国保連の支払決定額・加算額が分かる資料給与台帳、賃金台帳、賞与台帳給与明細、振込記録職員別の賃金改善集計表社会保険・労働保険の事業主負担計算資料就業規則、賃金規程、処遇改善手当規程職員周知資料キャリアパス、研修、職場環境等要件の実施記録
提出を求められない資料も、実績報告の根拠として保存する
※本文「7. 実績報告の根拠資料」を図解化したものです。
あわせて読みたい処遇改善加算と法定福利費|賃金改善額に含められる範囲と計算方法

8. 計画から変更があった場合

事業所の増減、会社情報、加算区分、一括申請する事業所、賃金改善方法等に変更がある場合は、変更届出書の提出要否を確認します。

職員の退職や入職に応じて個々の配分額が変わることはありますが、対象範囲・配分ルール・規程との整合を保ちます。賃金水準を引き下げる特別な事情がある場合は、別の届出が必要になることがあります。

「対象事業所・サービス種別の増減」は、届出期限が明示されている変更事由です。ある中核市の手引きでは、区分変更と同じく算定する月の前月15日までに届け出る運用とされています。具体的には、次のような場面が該当します。

  • 一括申請しているグループに新しい事業所を追加した
  • 事業所を廃止・休止した(廃止・休止届は原則として1か月前までの事前提出とされる例があります)
  • 多機能型事業所でサービス種別を追加・廃止した
  • 従たる事業所を追加・廃止した

事業所の増減は、変更届や廃止・休止届と、処遇改善計画書の変更届出の両方が必要になり、しかも期限が別建てです。計画書に載っていない事業所分の加算を算定していれば、その部分が返還対象になり得ます。事業展開を決めた段階で、両方の期限を並べて確認してください。

9. 不足が見込まれるとき

実績報告時に初めて不足へ気づくのではなく、年度途中に加算実績と賃金改善見込を比較します。不足が見込まれる場合は、対象職員・規程・支給時期を確認した上で、追加の手当や賞与等を検討します。

既に退職した職員への支給、年度をまたぐ支給、他事業所への配分は個別ルールがあるため、自己判断せず通知・Q&Aと指定権者の取扱いを確認してください。

10. よくある誤り

  • 前年度の計画書様式を使う
  • 加算区分変更を計画書・体制届へ反映しない
  • 実績報告書の金額を賃金台帳で再現できない
  • 法定福利費を概算した根拠がない
  • 基本給等要件を満たす支給項目が分からない
  • 職員へ計画内容・キャリアパスを周知していない
  • 実績報告の期限後に賞与を支払って帳尻を合わせる

期限を過ぎた場合の扱いも押さえておきます。ある中核市の手引きでは、提出期限までに申請・届出書類を提出できなかった場合、遡って報酬を請求することはできないとされています。計画書の提出が1日遅れれば、その月からの算定はできません。

逆に、加算の区分を下げる場合や取りやめる場合は「速やかに提出」とされ、届出が遅れると返還が生じることがあります。また、事後調査などで過大請求が発覚した場合、いかなる理由であっても過大請求分は返還するものとされ、届出内容の確認は事業者の責任とされています。計画書と実績報告は、外部へ委託する場合でも管理者が内容を理解しておく必要があります。

図解6よくある誤りと、期限を過ぎた場合

よくある誤り

  • 前年度の計画書様式を使う
  • 加算区分変更を計画書・体制届へ反映しない
  • 実績報告書の金額を賃金台帳で再現できない
  • 法定福利費を概算した根拠がない
  • 基本給等要件を満たす支給項目が分からない

期限を過ぎた場合

  • 提出期限までに提出できなかった場合、遡って報酬を請求することはできない(1日遅れればその月からの算定はできない)
  • 区分を下げる・取りやめる場合は「速やかに提出」。遅れると返還が生じることがある
  • 過大請求が発覚した場合、いかなる理由であっても過大請求分は返還する
計画書と実績報告は、外部へ委託する場合でも管理者が内容を理解しておく必要がある
※本文「10. よくある誤り」を整理したものです。

よくある質問

Q
計画書の見込額と実際の加算額が違っても問題ありませんか?
A

利用者数や請求額の変動により差が出ること自体はあり得ます。実際の加算額以上の賃金改善を行い、年度途中から見込差額を管理して実績報告へ反映します。

Q
実績報告書と一緒に根拠資料も提出しますか?
A

提出物は指定権者の案内によります。提出を求められない場合でも、賃金台帳、給与明細、振込記録、加算額資料、法定福利費の計算根拠、職員周知資料等を保存します。

あわせて読みたい障害福祉の処遇改善加算|令和8年度の区分・対象・手続

まとめ

処遇改善計画書と実績報告書は、年間の賃金改善をつなぐ一連の書類です。計画、規程、給与支払、法定福利費、加算入金、実績報告の数字が一致するよう管理します。

毎月の集計と年度途中の見込確認を行えば、年度末の配分不足や報告誤りを防ぎやすくなります。

計画書・毎月管理・実績報告を一本化します

行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズでは、加算見込、配分設計、規程整備、毎月の集計、実績報告まで一貫して支援します。

詳しくは処遇改善加算サポートのページをご覧ください。

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体系的に知りたい方はこちら処遇改善加算 完全ガイド|区分の選び方から配分・実績報告までの全体像

主な参考資料

  • 厚生労働省「福祉・介護職員の処遇改善」 (出典)
  • 福島市「令和8年度分 福祉・介護職員等処遇改善加算」 (出典)
  • 広島市「令和8年度福祉・介護職員等処遇改善加算」 (出典)

※本記事は令和8年8月24日時点の情報に基づいています。 

執筆者 永野将太(行政書士・社会保険労務士)
執筆者WRITER
永野 将太
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズ 代表

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。

これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。