配分とは、取得した加算を原資として、どの職員のどの賃金項目をいくら改善するかを決めることです。福祉・介護職員への配分が基本ですが、制度上認められる範囲で事業所が判断できます。配分の対象を決める前提として、どの事業所を計画書に載せているかを必ず確認します。
- 配分できる範囲は、計画書に載せた事業所が前提になる
- 法人役員でも、労働者として勤務し賃金を得ていれば対象になり得る
- 加算区分ごとに月額賃金改善に関する要件がある
この記事で分かること
処遇改善加算の配分ルール/対象職員の考え方/基本給・手当・賞与の選び方/配分決定の手順/注意すべき配分例
はじめに
障害福祉サービス等処遇改善加算は、加算額を受け取れば終わりではありません。計画に沿って職員の賃金を改善し、実績報告で加算額以上の賃金改善を説明できる状態にする必要があります。
配分には一定の柔軟性がありますが、事業所の裁量が無制限に認められるわけではありません。対象職員、賃金項目、職種・経験に応じた配分、就業規則等との整合を整理してから決定してください。
この記事のポイント
- 加算額以上の賃金改善を、対象期間内に実施する
- 福祉・介護職員への配分を基本としつつ、事業所内の職種間バランスを考える
- 職員間で著しく偏った配分は避け、説明できる基準を作る
- 配分方法は賃金規程、雇用契約、給与台帳、計画書と一致させる
- 役員兼務者は「役員だから一律対象外・対象内」とせず、労働者性と支給項目を確認する
1. 処遇改善加算の「配分」とは?
配分とは、取得した加算を原資として、どの職員のどの賃金項目を、いくら改善するか決めることです。単に加算収入を職員数で均等に割る作業ではありません。
賃金改善額には、加算の取得に伴って新たに増額した基本給、手当、賞与等を計上します。従前から支給していた賃金を名称だけ変更しても、原則として賃金改善にはなりません。
2. 誰に配分できる?
福祉・介護職員への配分が基本です。制度上認められる範囲で、事業所の判断により他の職種を賃金改善の対象とすることもできます。ただし、福祉・介護職員への配分を全く行わない、法人本部だけへ大部分を配るなど、制度の趣旨から説明しにくい配分は避けるべきです。
対象者を決めるときは、次の事項を確認します。
- 対象サービス・対象事業所に従事しているか
- 対象期間中に在籍・勤務しているか
- 職種、経験、資格、役割、勤務時間等を配分基準にするか
- 非常勤職員、短時間職員、休業者、退職予定者をどう扱うか
- 複数事業所を兼務する職員の賃金改善をどこへ計上するか
配分の範囲は「計画書に載せた事業所」まで
配分の対象を決める前提として、どの事業所を計画書に載せているかを確認します。複数事業所を兼務する職員の賃金改善をどこへ計上するかは、この範囲の中で決める話です。
ある中核市の手引きでは、処遇改善計画書について「対象事業所・サービス種別に増減がある場合」を届出事由として明示し、算定する月の前月15日までに提出する運用としています。事業所の新設、廃止・休止、多機能型でのサービス種別の追加・廃止があれば、配分設計を変える前に届出が必要です。
計画書に載っていない事業所の職員へ配分しても、加算収入と賃金改善額の対応関係を説明できません。逆に、計画書に載せた事業所で加算を算定していない期間があれば、その分の原資はありません。年度途中に事業所が増減した場合は、次の順で確認してください。
- 増減した事業所・サービス種別を特定する
- 処遇改善計画書の変更届出の期限を確認する(算定する月の前月15日までとする例があります)
- 変更届や廃止・休止届など、指定内容側の届出の要否と期限を別途確認する
- 配分の対象職員・原資・実施期間を見直す
届出事由と期限は指定権者によって異なるため、申請先の自治体の最新の手引きと年度案内を確認してください。
役員兼務者の扱い
法人役員であっても、労働者として実際に勤務し、雇用契約に基づく賃金を受ける部分がある場合は、その労働者としての賃金改善を検討できます。一方、役員報酬そのものを賃金改善額へ含めることはできません。役員報酬と給与を明確に区分し、勤務実態、雇用契約、給与台帳等で説明できるようにします。
対象者を決めるときに確認すること
- 対象サービス・対象事業所に従事しているか
- 対象期間中に在籍・勤務しているか
- 職種、経験、資格、役割、勤務時間等を配分基準にするか
- 非常勤職員、短時間職員、休業者、退職予定者をどう扱うか
- 複数事業所を兼務する職員の賃金改善をどこへ計上するか
避けるべき配分
- 福祉・介護職員への配分を全く行わない
- 法人本部だけへ大部分を配る
- 役員報酬そのものを賃金改善額へ含める
3. どの賃金項目で配分する?
| 配分方法 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 基本給の引上げ | 毎月安定して賃金を改善できる | 加算額が変動しても固定費として継続するため、将来の資金計画が必要 |
| 毎月の手当 | 対象者・金額を規程で整理しやすい | 「加算がある月だけ任意に払う」運用にせず、支給条件を明記する |
| 賞与・一時金 | 年度の加算額と賃金改善額を調整しやすい | 支給時期、対象者、算定期間、退職者の扱いを事前に決める |
| 複数項目の組合せ | 安定的な改善と年度調整を両立しやすい | 二重計上、支給漏れ、規程間の不一致に注意する |
加算区分ごとに月額賃金改善に関する要件があります。年度の通知・Q&Aを確認し、基本給又は毎月決まって支払われる手当による改善が必要な額を先に確保してください。
基本給の引上げ
- 毎月安定して賃金を改善できる
- 加算額が変動しても固定費として継続するため、将来の資金計画が必要
毎月の手当
- 対象者・金額を規程で整理しやすい
- 「加算がある月だけ任意に払う」運用にせず、支給条件を明記する
賞与・一時金
- 年度の加算額と賃金改善額を調整しやすい
- 支給時期、対象者、算定期間、退職者の扱いを事前に決める
複数項目の組合せ
- 安定的な改善と年度調整を両立しやすい
- 二重計上、支給漏れ、規程間の不一致に注意
4. 配分基準の作り方
配分基準は、職員へ説明でき、同じ条件の職員に同じように適用できるものにします。
基準例
常勤・非常勤の別と所定労働時間に応じて配分する
職種、資格、経験年数、役職、担当業務に応じて段階を設ける
基本額を全対象職員へ配り、職責や勤務時間に応じて加算する
毎月の手当と年度末の一時金を組み合わせる
例えば、対象職員10人へ均等配分する方法も一つですが、勤務時間が大きく異なる場合は、常勤換算や所定労働時間を基準にすると説明しやすくなります。ただし、個別の事情だけで支給額を恣意的に増減させる運用は避けます。
考え方
- 職員へ説明でき、同じ条件の職員に同じように適用できるものにする
- 勤務時間が大きく異なる場合は、常勤換算や所定労働時間を基準にすると説明しやすい
避けること
- 個別の事情だけで支給額を恣意的に増減させる運用
5. 配分を決める手順
- 取得見込額と既存の賃金水準を確認する
- 月額賃金改善で確保すべき額を確認する
- 対象職員と対象外職員の基準を決める
- 基本給、手当、賞与等の支給項目を決める
- 職種、勤務時間、経験、役割等の配分基準を作る
- 会社負担の法定福利費等を含め、賃金改善総額を試算する
- 就業規則・賃金規程を改定し、職員へ周知する
- 計画書、給与計算、給与台帳、実績報告を同じ基準で管理する
配分設計は、届出の期限から逆算して進めます。ある中核市の手引きでは、処遇改善計画書の提出期限を、新たに算定する場合は算定する月の前々月の末日まで、区分を変更する場合や対象事業所・サービス種別に増減がある場合は算定する月の前月15日までとしています。前年度から継続して算定する場合や4月・5月から新たに取得する場合は、年度末に指定権者から通知される期限までの提出です。
計画書には対象職員と賃金改善方法を記載するため、就業規則・賃金規程の改定と職員への周知は、この期限より前に終えている必要があります。「加算が入ってから配分を考える」進め方では間に合いません。
あわせて、提出期限までに届出書類を提出できなかった場合、遡って報酬を請求することはできないとされている点も確認しておいてください。期限と提出方法は指定権者によって異なるため、申請先の自治体の最新の手引きを確認してください。
6. 避けたい配分・運用
- 加算額を法人の利益や設備費へ充てる
- 既存の基本給を減額し、同額を処遇改善手当へ付け替える
- 対象者や計算基準を決めず、年度末に感覚で一時金を決める
- 一部の職員だけへ極端に偏らせ、理由を説明できない
- 計画書では基本給改善とし、実際は賞与だけで支給する
- 退職者や休業者の扱いを支給直前に変更する
- 役員報酬を賃金改善額へ含める
- 支給額は合っているが、賃金規程の改定・周知をしていない
原資の使い方
- 加算額を法人の利益や設備費へ充てる
- 既存の基本給を減額し、同額を処遇改善手当へ付け替える
- 役員報酬を賃金改善額へ含める
基準と説明
- 対象者や計算基準を決めず、年度末に感覚で一時金を決める
- 一部の職員だけへ極端に偏らせ、理由を説明できない
- 計画書では基本給改善とし、実際は賞与だけで支給する
- 退職者や休業者の扱いを支給直前に変更する
- 支給額は合っているが、賃金規程の改定・周知をしていない
7. 配分ルールは職員へどう伝える?
処遇改善に関する計画、賃金改善の方法、対象者、支給時期、支給条件を職員へ周知します。個人別金額を全員へ公開する必要はありませんが、自分がどの基準で対象となり、どの賃金項目が改善されたのか分かる状態が望まれます。
周知資料、説明会記録、メール、社内掲示等を保存し、賃金規程や雇用契約書と矛盾がないか確認してください。
よくある質問
均等配分は必須ではありません。職種、役割、経験、資格、所定労働時間等に基づく合理的な基準で配分できますが、職務内容や勤務実態に照らして著しく偏った配分は避け、基準を規程化・周知します。
一律に外せるとは限りません。支給基準日、算定期間、在籍要件を賃金規程等で事前に明確にし、既に提供した労務に対応する賃金や不利益変更の問題が生じないか確認します。
まとめ
処遇改善加算の配分では、加算額以上の賃金改善を確実に行うことに加え、対象者と配分基準を合理的に決め、計画書・規程・給与計算・実績報告を一致させることが重要です。
毎月の改善額を先に確保し、年度末に取得額と賃金改善額を照合すると、支給不足や実績報告時の混乱を防ぎやすくなります。
配分設計から賃金規程・実績報告まで支援します
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズでは、処遇改善加算の計画、配分シミュレーション、賃金規程の整備、実績報告まで一体的に支援しています。
詳しくは処遇改善加算サポートのページをご覧ください。
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※本記事は令和8年8月24日時点の情報に基づいています。

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。
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