障害児相談支援の開業|指定申請の要件と流れ

障害児相談支援の開業|指定申請の要件と流れ

障害児相談支援は、児童福祉法に基づき、障害児通所支援を利用する子どもの計画を作成・見直しする事業です。障害児支援利用援助と継続障害児支援利用援助の二つの業務で構成され、対象は児童発達支援や放課後等デイサービスなどの通所支援です。実務上は、特定相談支援と障害児相談支援の両方の指定を受けるのが基本になります。

  • 対象は障害児通所支援を利用する(しようとする)子ども
  • 二つの業務(利用援助と継続利用援助)で構成される
  • 特定相談支援とあわせて両方の指定を受けるのが実務上の基本

この記事で分かること

障害児相談支援事業所の開業に必要な指定申請の要件、人員基準・設備基準、報酬の考え方、開業までの流れと費用を、初めて開業する方にも分かりやすく解説します。

はじめに

児童発達支援や放課後等デイサービスを利用するときには、原則として「障害児支援利用計画」が必要です。この計画をつくり、お子さんと保護者に伴走するのが障害児相談支援事業所です。

この記事では、障害児相談支援事業所の開業を検討している方に向けて、指定申請の要件、人員基準と設備基準、報酬の考え方、開業までの流れと費用を整理します。障害児相談支援は児童福祉法に基づく事業で、所管はこども家庭庁、指定権者は市町村です。運用や様式は自治体差が大きい点にご注意ください。

なお、障害児相談支援の基本報酬|障害児支援利用援助費・継続障害児支援利用援助費の単位数では、機能強化型を含む全区分の単位数と計画相談支援との違いを一覧表で掲載しています。収支計画を作成する際は、あわせてご確認ください。

この記事のポイント

    • 障害児相談支援は児童福祉法に基づく事業。所管はこども家庭庁で、指定権者は都道府県ではなく事業所所在地の市町村。
    • 人員基準は管理者1人と相談支援専門員(利用者35人につき1人が標準)。相談支援専門員の実務経験と研修修了が最大の関門です。
    • 報酬は計画作成時とモニタリング時の出来高が基本。機能強化型の要件を満たせるかで収支の姿が変わります。

1. 障害児相談支援とは

障害児相談支援は、児童福祉法に基づき、障害児通所支援を利用する(しようとする)お子さんの保護者を支援する事業です。根拠法が障害者総合支援法ではないため所管はこども家庭庁で、指定権者は事業所所在地の市町村です。都道府県指定の一般相談支援事業とは違います。

二つの業務で構成される

  • 障害児支援利用援助…意向を聞き取って計画案を作成し、通所給付決定後に担当者会議を経て計画を確定します。
  • 継続障害児支援利用援助…決定後に定期的なモニタリングを行い、計画の見直しや事業所との連絡調整、変更申請の勧奨を行います。

対象は「障害児通所支援」

対象は児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援です。市町村が通所給付決定をする前提として計画案の提出が求められるため、通所支援を使いたい家庭の入口にあたります。障害児入所支援は対象外です。

お子さんが居宅介護や短期入所も使う場合は、障害者総合支援法の計画相談支援(特定相談支援事業)が必要です。両方を使うお子さんは珍しくないため、実務では両方の指定を受ける事業所が多数です。窓口も同じ市町村のことが多く、同時申請が効率的です。成人の計画相談支援は別記事に譲ります。

指定権者が「両方の指定」を基本方針としている場合がある

特定相談支援と障害児相談支援の両方の指定を受けるのは、実務上の慣行というだけではありません。指定権者が基本方針として示している場合があります。ある中核市の手引きでは、障害児は障害福祉サービス(居宅介護、短期入所など)と障害児通所支援の利用を一体的に判断することが望ましいことから、特定相談支援と障害児相談支援のいずれも指定を受けることを基本とする、と明記されています。

障害児相談支援だけの指定を希望する場合は、その理由を事前協議で説明できるよう準備しておくとよいでしょう。運用は指定権者によって異なります。

セルフプランとの関係

セルフプランの利用状況には大きな自治体差があります。地域の相談支援体制やセルフプラン率は需要把握の参考になりますが、公開されている最新の自治体資料・国資料で確認してください。

報酬の考え方

基本報酬は、計画作成時の障害児支援利用援助費と、モニタリング時の継続障害児支援利用援助費です。毎月定額ではなく、その月に実施した件数に応じた出来高です。水準を押し上げるのが「機能強化型」の区分で、常勤専従の相談支援専門員の人数や24時間の連絡体制などで分かれます。ほかに主任相談支援専門員配置加算、要医療児者支援体制加算、医療・保育・教育機関等連携加算があります。

令和6年度報酬改定では、機能強化型の要件に協議会参画など地域貢献の視点が加わり、医療・保育・教育機関等連携加算に通院同行や情報提供の区分が設けられました。要医療児者支援体制加算も、実際に医療的ケア児を支援する事業所を厚く評価する方向に見直されています。

図解1障害児相談支援の位置づけ

障害児相談支援(児童福祉法)

  • 所管はこども家庭庁/指定権者は事業所所在地の市町村
  • 対象:児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援
  • 障害児入所支援は対象外

計画相談支援(障害者総合支援法)

  • お子さんが居宅介護や短期入所も使う場合に必要
  • 両方を使うお子さんは珍しくないため、両方の指定を受ける事業所が多数
指定権者が「いずれも指定を受けることを基本」と示している場合がある窓口も同じ市町村のことが多く、同時申請が効率的都道府県指定の一般相談支援事業とは違う
※障害児相談支援だけの指定を希望する場合は、その理由を事前協議で説明できるよう準備しておくとよいでしょう。

2. 学校・保育所・医療機関との連携と、障害児ならではの計画作成の難しさ

計画の主語が「保護者」になりやすい

制度上の相手方は保護者ですが、計画の中心にいるのはお子さん本人です。保護者の希望と、発達段階から見て必要な支援が一致しないこともあります。きょうだいの状況や保護者の就労も支援量を左右するため、家庭を一つの単位として捉える視点が要ります。

学校・保育所との連携は制度の「外側」にある

お子さんの生活時間の大半は学校や保育所で過ごされますが、学校は文部科学省の所管で給付決定の枠組みには入っていません。個別の教育支援計画と障害児支援利用計画は別の書類で、自動的に共有される仕組みもありません。相談支援専門員が担任や特別支援教育コーディネーターに自ら連絡を取る必要があり、担当者会議も授業時間の調整で難航しがちです。

医療的ケア児と移行期の負荷

医療的ケア児や重症心身障害児のケースでは、主治医、訪問看護、通所先の看護職員まで関係者が一気に増えます。医療的ケア児等コーディネーター養成研修の修了者がいるかで、相談の幅も報酬の評価も変わります。

就学、進学、18歳での成人制度への移行と、数年ごとに関係機関もサービスも入れ替わります。特に18歳到達時は計画相談支援への引き継ぎが必要です。

図解2障害児ならではの計画作成の難しさ

計画の主語が「保護者」になりやすい

  • 制度上の相手方は保護者、計画の中心はお子さん本人
  • きょうだいの状況や保護者の就労も支援量を左右する

学校・保育所との連携は制度の「外側」

  • 学校は文部科学省の所管で給付決定の枠組みに入っていない
  • 個別の教育支援計画と障害児支援利用計画は別の書類で、自動的に共有される仕組みはない
  • 担当者会議も授業時間の調整で難航しがち

医療的ケア児と移行期の負荷

  • 主治医、訪問看護、通所先の看護職員まで関係者が増える
  • 就学、進学、18歳での成人制度への移行で関係機関もサービスも入れ替わる
  • 18歳到達時は計画相談支援への引き継ぎが必要
※本文「2. 学校・保育所・医療機関との連携と、障害児ならではの計画作成の難しさ」を図解化したものです。
あわせて読みたい障害児相談支援の基本報酬|障害児支援利用援助費の単位数

3. 指定を受けるための基準(人員・設備・運営)

指定基準は児童福祉法に基づく厚生労働省令で定められますが、市町村が条例や要綱で独自の運用を置く場合もあります。必ず市町村の基準条例と手引きを確認してください。

区分内容
管理者1人。専従が原則ですが、支障がなければ他の職務と兼務できます。資格要件はありません。
相談支援専門員1人以上。対象保護者35人またはその端数ごとに1人が標準。特定相談支援との兼務可。
設備事業に必要な広さの区画と設備・備品。相談内容の秘密を確保できる相談スペース等を整えます。
法人格法人であること。定款・登記上の事業目的が障害児相談支援を含む予定事業をカバーしているか確認します。
運営基準必要な記録の作成・保存など。保存期間は基準・自治体の条例等で確認します。

「従業者」と「相談支援専門員」の関係

人員基準は「管理者」と「従業者」の2本立てで整理されます。ある中核市の手引きでは次のとおりです。

職種必要員数
管理者1人(業務に支障がない場合、他の職種を兼務可)
従業者1人以上(業務に支障がない場合、他の職種を兼務可)。うち1人以上は相談支援専門員

従業者のすべてが相談支援専門員である必要はなく、最低1人が相談支援専門員であれば足ります。事務職員を従業者に含める設計も可能です。ただし機能強化型の報酬区分では常勤専従の相談支援専門員の人数が問われるため、最低基準の充足と報酬区分の設計は分けて考えてください。

一定の要件を満たすと「相談支援員」を配置できる

計画相談支援・障害児相談支援に限り、相談支援専門員以外に「相談支援員」を従業者として配置できる仕組みがあります。相談支援専門員の確保が難しい分野だけに、体制拡大の選択肢として知っておく価値があります。

区分要件
資格要件社会福祉士または精神保健福祉士の資格を有する者
事業者要件次のいずれにも該当する事業者であること
・機能強化型サービス利用支援費、機能強化型障害児支援利用援助費の算定要件を満たしている
・主任相談支援専門員を配置しており、相談支援員に対して指導及び助言が行われる体制が確保されている

機能強化型の算定と主任相談支援専門員の配置が前提であるため、開業直後に使える仕組みではありません。事業所を育てたあとの拡大策として、中期の人員計画に織り込んでおくとよいでしょう。取扱いは指定権者によって異なるため、申請先の自治体の最新の手引きを確認してください。

管理者の資格要件と兼務の範囲

障害児相談支援の管理者に資格要件はありません。生活介護や就労系サービスでは社会福祉主事任用資格や社会福祉事業への2年以上の従事などが求められますが、相談支援系のサービスは資格要件なしとされています。

兼務については、次の運用が示されています。

  • 管理者と別の職種を兼務する場合、常勤の従業者が勤務すべき時間数の半分以上は管理者として従事することを基本に、適切な時間数を確保すること
  • 管理者と別に兼務できる職種は1つまで。3職種以上を兼務する場合は業務に支障があるものとみなされ、認められない
  • 管理者のみを兼務する場合は、最大3事業所まで認められる(移動時間30分以内)

「相談支援事業所の管理者と、児童発達支援事業所の管理者と、児童発達支援管理責任者」という組み方は3職種以上の兼務にあたり、認められない扱いとなります。これは指定権者の運用であり、取扱いは自治体によって異なります。申請先の自治体の最新の手引きを確認してください。

相談支援専門員の要件が最大の関門

相談支援専門員になるには、一定年数の実務経験を満たしたうえで、都道府県の相談支援従事者初任者研修を修了する必要があります。実務経験は業務の区分により異なり、相談支援業務なら3年から5年、無資格の直接支援業務では10年が必要です。

注意したいのが実務経験の数え方です。在籍年数だけでなく、対象となる業務内容や従事日数の要件を満たす必要があります。必要年数・日数は経歴や資格区分によって異なるため、実務経験証明書と研修修了証をもとに市町村・研修実施主体の基準で確認してください。現任研修による資格更新の期限管理も重要です。

実務経験は「年数」と「従事日数」の両方で判定される

記事本文でも触れたとおり、実務経験は在籍年数だけでは判定されません。年数と従事日数の両方を満たす必要があります。ある中核市の手引きでは次のように整理されています。

区分業務内容の例必要年数など
相談支援業務相談支援事業所、児童相談所・更生相談所・発達障害者支援センター・福祉事務所・保健所・市町村役場、障害児入所施設・障害者支援施設・障害福祉サービス事業所・障害児通所支援事業所・介護老人保健施設・老人福祉施設等、障害者職業センター・障害者就業生活支援センター等、特別支援学校における就学・進路・教育相談の業務など5年かつ900日以上
直接支援業務障害児入所施設・障害者支援施設・老人福祉施設・介護老人保健施設・療養病床等における介護業務、障害福祉サービス事業・障害児通所支援事業・老人居宅介護等事業における介護業務、保険医療機関・保険薬局・訪問看護事業所における介護業務など10年以上かつ1,800日以上
有資格者など(1)社会福祉主事任用資格・児童指導員任用資格・保育士等を有する、または訪問介護員2級以上相当の研修を修了した者で、上記の相談支援業務・直接支援業務に従事5年かつ900日以上
有資格者など(2)国家資格等による業務(資格取得後に限る)に従事し、あわせて相談支援業務・直接支援業務にも従事国家資格等の業務が5年かつ900日以上、相談支援・直接支援業務が3年かつ540日以上

児童分野の経歴では、保育士資格をお持ちの方が「有資格者など(1)」に当てはまるかどうかが分かれ目になることが多くあります。保育士資格を持ち、障害児通所支援事業所での直接支援業務が5年かつ900日以上あれば、この区分での判定が可能です。

国家資格等とは、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師、管理栄養士、栄養士、精神保健福祉士を指します。

詳細は厚生労働省告示に定められており、区分の当てはめは最終的に研修実施主体・指定権者の判断となります。あわせて、初任者研修(講義・演習あわせておおむね42.5時間と現場実習。日程や形式は都道府県により異なります)の修了後は5年ごとの現任研修が必要です。

設備基準は相談室がポイント

国基準では具体的な面積基準は示されていませんが、事業運営に必要な区画・設備と、相談内容の秘密を確保できる環境が必要です。自宅の一部利用や他事業との共用が認められるかは市町村の運用を確認します。

指定権者の手引きに示される設備の目安

国の基準に具体的な面積の数値はありませんが、指定権者の手引きでは運用上の目安が示されていることがあります。ある中核市の手引きでは、計画相談支援・障害児相談支援に共通して次のように整理されています。

設備内容
事務室事業の運営を行うために必要な面積を有する専用の区画を設けること。間仕切りするなど他の事業と明確に区分する場合は、同一の事務室でも可。区分されていなくても業務に支障がない場合、事業を行うための区画が明確に特定されていれば可。
相談室利用者が直接出入りできるなど利用しやすい構造とすること。利用者・相談員を含め4人程度が使用することを想定し、部屋の広さは4平方メートル以上を確保すること。他の事業と共用する場合は、来客の重複などに臨機に対応できるよう、予備の相談スペースを確保しておくことが望ましい。
便所利用者の特性に応じたものを設置すること。

障害児相談支援では、保護者ときょうだいを含めて来所されることも珍しくありません。「4人程度」という想定は現実的な目安として参考になります。数値そのものは指定権者ごとの運用であり、全国共通のルールではないため、申請先の自治体の最新の手引きを確認してください。

自宅の一部を事業所にする場合の具体的な整理

自宅の一部を事業所とする場合の取扱いも、手引きで明示されることがあります。ある中核市の手引きでは、次の条件が示されています。

  • 事務室、相談室を専用に設けること
  • 出入口に鍵を取り付けて、居宅(自宅)と明確に区分すること
  • 玄関、廊下(通路)、便所などの設備は居宅との共用が可能だが、利用者の支援に支障がない構造とすること

「事務室と相談室は専用」「出入口に鍵」が要点です。障害児相談支援では個人情報の機微性が特に高く、記録の保管場所と相談時の音漏れは必ず確認されます。間取り図を持参して事前に相談してください。

図解3指定を受けるための基準

人員

  • 管理者:1人(業務に支障がない場合、他の職種を兼務可。資格要件なし)
  • 従業者:1人以上。うち1人以上は相談支援専門員
  • 相談支援専門員は対象保護者35人またはその端数ごとに1人が標準。特定相談支援との兼務可

設備・法人格・運営

  • 事業に必要な広さの区画と設備・備品
  • 相談内容の秘密を確保できる相談スペース等
  • 法人であること。定款・登記上の事業目的が予定事業をカバーしているか確認
  • 必要な記録の作成・保存(保存期間は基準・自治体の条例等で確認)
従業者のすべてが相談支援専門員である必要はない最低基準の充足と、機能強化型の報酬区分の設計は分けて考える
※市町村が条例や要綱で独自の運用を置く場合もあります。必ず市町村の基準条例と手引きを確認してください。

4. 開業までの流れ

準備期間は市町村の事前協議・申請締切、相談支援専門員の確保状況で変わります。希望指定日から逆算し、早めに担当課へ確認してください。

① 開業予定地の需要を調べる

障害児福祉計画、既存の事業所数、セルフプランの割合を確認します。通所支援が多いのに相談支援が少ない地域は狙い目です。

② 市町村の担当課へ事前相談

最も重要な工程です。様式、締切、事前協議の要否、設備の考え方、同時申請の扱いを確認します。

標準的なスケジュールの一例

事前相談から指定までの工程は指定権者ごとに異なりますが、ある中核市の手引きでは、10月1日付けで指定を受ける場合の標準的なスケジュールとして次の流れが示されています。逆算の目安として参考になります。

時期手続き
指定3か月前の15日まで事前協議(予約制)。事前協議書、平面図、建築物関連法令協議記録を持参して提出
指定2か月前の7日まで申請書類の1回目提出(予約制)。修正などで少なくとも3〜4回、自治体との打合せが必要
指定2か月前の末日まで修正指示を反映させた申請書類の最終提出
指定前月の中〜下旬現地確認。事業者は現地確認までに備品の搬入、運営規程・勤務形態一覧表・重要事項説明の掲示を完了しておく
指定前月の末日指定通知書の送付
指定日毎月1日付けで指定

相談支援は設備投資が小さいため工程を短く見積もりがちですが、指定の3か月前には事前協議が始まっている計算になります。書類の不備で期限に間に合わないと、指定日が1か月単位で遅れます。締切・提出方法・予約の要否は指定権者によって異なるため、申請先の自治体の最新の手引きを確認してください。

③ 法人設立・定款の整備

既存法人は、現在の定款・登記上の事業目的で障害児相談支援をカバーできるか確認し、不足する場合に目的変更を検討します。文言は事前相談で確認すると手戻りを防げます。

定款・登記の事業目的の書き方

目的欄の文言は、申請する事業が読み取れることが必要です。ある中核市の手引きでは、次の記載例が示されています。

サービス種別記載例
障害児相談支援児童福祉法に基づく障害児相談支援事業
特定相談支援障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく特定相談支援事業

障害児相談支援は児童福祉法、特定相談支援は障害者総合支援法と根拠法が異なるため、両方の指定を受けるなら目的も両方の記載が必要です。「児童福祉法に基づく障害児通所支援事業」という文言だけでは障害児相談支援をカバーできません。設立時に両方入れておけば、あとから目的変更をする手間と費用を省けます。認められる文言は指定権者によって異なるため、事前相談で確認してください。

④ 相談支援専門員の確保と研修

実務経験証明書を揃え、初任者研修または現任研修の修了証を用意します。

⑤ 事務所の確保と設備の整備

相談室を確保し、鍵付き書庫、電話、パソコン、記録システムを整えます。

⑥ 指定申請書の提出と審査

申請書、運営規程、平面図、資格証、実務経験証明書、勤務体制一覧表などを提出します。現地確認を行う自治体も。

⑦ 指定・営業開始

通所支援事業所や基幹相談支援センター、学校・園、医療機関へ挨拶に回ります。相談支援は紹介で利用者が動くため、この関係づくりが最初の集客です。

図解4指定までの標準的なスケジュール(10月1日指定の例)
指定3か月前の15日まで事前協議(予約制)。事前協議書、平面図、建築物関連法令協議記録を持参
指定2か月前の7日まで申請書類の1回目提出(予約制)。少なくとも3〜4回の打合せ
指定2か月前の末日まで修正を反映させた最終提出
指定前月の中〜下旬現地確認。備品の搬入、運営規程・勤務形態一覧表・重要事項説明の掲示を完了
指定前月の末日/指定日指定通知書の送付/毎月1日付けで指定
相談支援は設備投資が小さいため工程を短く見積もりがち指定の3か月前には事前協議が始まっている計算書類の不備で期限に間に合わないと、指定日が1か月単位で遅れる
※ある中核市の手引きの例です。締切・提出方法・予約の要否は指定権者によって異なります。
あわせて読みたい障害福祉サービスの指定申請とは?開業までの流れ

5. 指定申請で提出する書類

指定申請では、申請書のほかに次の書類を提出します。書類名や様式は指定権者ごとに異なりますが、求められる内容は概ね共通です。

区分提出書類
申請書指定申請書、サービス種別ごとの付表
法人関係法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)※目的欄に申請に係る事業について記載してあること/役員等名簿
建物・設備事業所(建物)の平面図、写真/建物が法人所有の場合は登記事項証明書などの写し、賃貸の場合は賃貸借契約書の写し
運営運営規程/指定障害福祉サービス等の主たる対象者を特定する理由等(特定する場合)/利用者(入所者)又はその家族からの苦情を解決するために講ずる措置の概要/誓約書(サービスごとの別紙を添付)
人員従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表/管理者の経歴書/相談支援専門員の経歴書/相談支援専門員の研修修了証・資格証・実務経験証明書の写しなど/相談支援員の資格証の写し(配置する場合。主任相談支援専門員の研修修了証の写しを添付)
その他事業開始届/消防用設備等検査済証の写し(必要な場合)
報酬関係介護給付費等算定に係る体制等に関する届出書、介護給付費等の算定に係る体制等状況一覧表、障害児通所・入所給付費の算定に係る体制等状況一覧表(障害児相談支援)/処遇改善計画書(算定する場合)

書類作成のポイント

  • 平面図には、写真に対する番号と矢印を記載し、撮影位置と撮影方向を示します。内観の写真は死角がないように撮影し、外観の写真は1枚または2枚撮影します。
  • 事業開始届に記載のある収支予算書、事業計画書などの添付は不要とされる取扱いが一般的です。
  • 地域移行支援、地域定着支援、計画相談支援、障害児相談支援を同時に申請する場合、重複する書類は1部で足ります。地域移行支援と地域定着支援はいずれも指定を受けることが基本とされ、特定相談支援と障害児相談支援も同様ですので、まとめて申請するケースが多くみられます。
  • 暴力団員等の排除に関する誓約・同意書は、相談支援事業では不要としている指定権者があります。
  • 管理者が相談支援専門員を兼務する場合、経歴書は1つにまとめて提出できる取扱いが一般的です。

提出書類の名称・様式・部数、添付書類の要否は指定権者ごとに異なります。また、申請書類は事前予約のうえ持参提出とし、提出までに複数回の打合せを求める指定権者もあります。申請先の最新の手引きを確認し、早い段階で事前相談を行ってください。

6. 開業資金・ランニングコストの目安

障害児相談支援は送迎車も訓練設備も不要で、初期投資が小さい事業です。一方で報酬が出来高のため、件数が積み上がるまでの運転資金の確保が欠かせません。

項目目安と考え方
法人設立費用法人形態・既存法人の目的変更の有無により異なるため、登録免許税・専門家費用等を個別に積算。
物件費用敷金・礼金・仲介手数料。自宅兼用なら圧縮できますが、市町村の判断を確認。
設備・備品パソコン、複合機、鍵付き書庫、電話回線、記録ソフト等を運営方法に応じて積算。
人件費最大の固定費。相談支援専門員の給与と法定福利費。
運転資金給付費の入金までのタイムラグと担当件数の立ち上がりを踏まえ、必要な運転資金を月次で試算。

相談支援専門員の員数は、前6月平均の対象保護者数35人またはその端数につき1人が「標準」です。ただし、担当可能件数はモニタリング頻度、訪問距離、学校・医療機関との調整量で変わるため、35件を単純な売上上限や目標件数として扱わず、業務量から試算してください。

図解5開業資金・ランニングコストの考え方

初期費用

  • 法人設立費用(登録免許税・専門家費用等を個別に積算)
  • 物件費用(敷金・礼金・仲介手数料。自宅兼用なら圧縮できるが市町村の判断を確認)
  • 設備・備品(パソコン、複合機、鍵付き書庫、電話回線、記録ソフト等)

ランニング

  • 人件費が最大の固定費(相談支援専門員の給与と法定福利費)
  • 運転資金:給付費の入金までのタイムラグと担当件数の立ち上がりを踏まえて月次で試算
報酬は出来高。件数が積み上がるまでの運転資金の確保が欠かせない「35人」は標準であって売上上限や目標件数ではない。業務量から試算する
※本文「6. 開業資金・ランニングコストの目安」を図解化したものです。

7. つまずきやすいポイント

相談支援専門員の要件の勘違い

最も多い失敗です。長く福祉の仕事をしてきたのに実務経験の区分に当てはまらない、必要な従事日数に届かない、現任研修が切れていた、という例があります。まず経歴の棚卸しから。

研修日程を待って開業が遅れた

研修は都道府県が年間計画で実施し、定員があります。物件を借りてから間に合わないと分かると、家賃だけが出ていきます。募集要項の先読みを。

中立性・公正性への配慮不足

相談支援は複数の選択肢を示し、家庭が選べるようにする役割を担います。自社系列の通所支援事業所ばかりを計画に位置づけていると指摘を受けることがあるため、提示した記録を残してください。

モニタリングと記録の管理が崩れた

モニタリングは定められた期間で実施し、記録を残して初めて報酬の対象になります。件数が増えると期限管理は難しくなるため、開業時から管理表やシステムを整えることが運営指導対応になります。

相談支援専門員が併設事業所と兼務する場合の5要件

児童発達支援や放課後等デイサービスと併設し、相談支援専門員を兼務させたいという相談は多くあります。ある中核市の手引きでは、次の5つの要件をすべて満たす場合に限って、相談支援専門員を併設する事業所の業務に従事させることができるとされています。

要件
相談支援専門員は、同一相談支援事業所の管理者を兼務しないこと
相談支援専門員は、他の指定障害福祉サービス事業所などにおいて、サービス管理責任者及びサービス提供責任者を兼務しないこと
兼務する場合であっても、相談支援専門員の勤務時間は、相談支援事業所の営業日におけるサービス提供時間の半分以上となるように割り振ること。また、兼務先の事業所では、就業規則などで定める勤務時間から相談支援専門員の勤務時間を差し引いた勤務時間とすること
兼務のため、相談支援事業所のサービス提供時間帯において相談支援専門員が不在となる時間には、管理者が必ず配置されていること
兼務先の併設事業所は、相談支援専門員が相談支援業務の突発的事態に対応することがあっても、事業所の人員配置基準などに支障が生じないよう勤務体制を確保していること

②により、「児童発達支援管理責任者と相談支援専門員の兼務」はこの運用では認められません。③により、兼務先での勤務は実質的に半分以下に制限されます。自社の通所支援事業所との併設を前提に人員計画を立てている場合は、この点を先に確認してください。

なお①は、併設事業所と兼務させる場合の要件です。併設事業所との兼務をしない小規模事業所で、管理者と相談支援専門員を同一人が担うこと自体は、管理業務に支障がない範囲で認められる場合があります。判断は指定権者によって分かれるため、勤務形態一覧表の案を持って事前に相談してください。

指定後の運営まで見据えた実務ポイント

支援の流れを記録でつなぐ

相談支援では、アセスメント、計画案、本人・家族への説明と同意、担当者会議、計画交付、モニタリングまでの時系列が重要です。各書類を単独で作るのではなく、本人の希望と課題が計画の目標に反映され、モニタリングでその達成状況を確認できるようにします。

最低基準と報酬・加算要件を分けて確認

指定を維持するための最低人員・設備基準と、より手厚い配置や取組を前提とする基本報酬区分・加算の要件は別物です。開業時に算定予定の報酬を決めたら、最低基準の勤務表とは別に、加算要件まで満たしているかを確認し、月途中の退職・休職・利用者増にも対応できるよう余裕を持った配置を検討します。

実務上の注意

図解6つまずきやすいポイント

相談支援専門員の要件の勘違い

  • 実務経験の区分に当てはまらない/必要な従事日数に届かない/現任研修が切れていた
  • まず経歴の棚卸しから

研修日程を待って開業が遅れた

  • 研修は都道府県が年間計画で実施し定員がある
  • 物件を借りてから間に合わないと分かると家賃だけが出ていく

中立性・公正性への配慮不足

  • 自社系列の通所支援事業所ばかりを計画に位置づけていると指摘を受けることがある
  • 複数の選択肢を提示した記録を残す
※本文「7. つまずきやすいポイント」を整理したものです。
あわせて読みたい計画相談支援(特定相談支援事業)の開業|指定申請の要件と流れ

開業前チェックリスト

□ 相談支援専門員の実務経験・研修要件を確認した

□ 障害児支援利用計画・モニタリング様式を整えた

□ 子どもの意思を確認する方法を整理した

□ 学校・保育・医療との連携手順を作った

□ 公正中立な事業所選択支援を設計した

□ 家庭訪問・会議・移動を含む担当件数を試算した

□ 計画相談支援を併設する場合の記録・請求を分けた

よくある質問

Q
障害児相談支援の指定申請はどこに出すのですか。
A

事業所の所在地の市町村です。都道府県ではありません。様式や締切、事前協議の要否は市町村ごとに異なるため、開業予定地の担当課へ必ず確認を。

Q
特定相談支援事業の指定も一緒に受けるべきですか。
A

実務上は両方受けるのが一般的です。障害児が居宅介護などの障害福祉サービスも使う場合は特定相談支援の指定が必要ですし、18歳到達後の引き継ぎもスムーズです。人員も兼務できます。

Q
管理者と相談支援専門員を1人で兼ねられますか。
A

管理業務に支障がない範囲で管理者と相談支援専門員の兼務が認められる場合があります。ただし、少人数体制では休暇・不在時の対応や機能強化型の要件等も含め、継続運営できる体制を検討する必要があります。

Q
保護者がセルフプランを作れば相談支援事業所は不要ではないですか。
A

セルフプランでも給付決定は可能ですが、利用状況には大きな地域差があります。相談支援事業所の不足を背景とするケースもあるため、地域の相談支援体制を確認することが重要です。

まとめ

障害児相談支援は、児童福祉法に基づき、児童発達支援や放課後等デイサービスを利用するお子さんと家庭に伴走する事業です。所管はこども家庭庁、指定権者は市町村で、人員は管理者と相談支援専門員というシンプルな構成。設備投資も小さい事業です。

一方で、相談支援専門員の実務経験と研修修了という入口の要件が厳しく、ここでスケジュールが左右されます。報酬も出来高のため、件数の見通しと運転資金の確保が欠かせません。需要の地域差も大きく、事前の分析が重要です。

そして本質的な難しさは、学校・保育所・医療機関という給付決定の外側の機関とどう手を組むかにあります。ここに取り組む事業所は地域から必要とされ、報酬上も評価される設計です。制度の理解と地域への働きかけを並行して進めてください。

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障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。障害児相談支援の指定申請では、市町村ごとに異なる様式や事前協議の運用、相談支援専門員の実務経験証明の整え方、特定相談支援との同時申請まで伴走します。開業支援は20万円から承ります。

代表は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、就業規則の整備、社会保険・労働保険の手続き、処遇改善加算の届出、運営指導への備えまで一貫してお手伝いできます。静岡・神奈川・愛知を中心にオンラインで全国対応しています。要件を満たせるかの確認だけでも構いません。

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主な参考資料

  • 参考:こども家庭庁・厚生労働省「児童福祉法に基づく指定障害児相談支援の事業の人員及び運営に関する基準」/「指定障害児相談支援の提供に当たる者としてこども家庭庁長官が定めるもの」/「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定」

※本記事は令和8年8月26日時点の法令・告示・通知等に基づく一般的な整理です。指定権者の条例・手引き・個別運用、最新の報酬告示・Q&Aを必ず確認してください。

執筆者 永野将太(行政書士・社会保険労務士)
執筆者WRITER
永野 将太
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズ 代表

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。

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