就労継続支援B型はどれくらい儲かる?|売上・工賃・人件費を仮定例で解説

B型はどれくらい儲かるか|売上・工賃・人件費を仮定例で試算する

就労継続支援B型のお金の流れは、給付費と生産活動収入の2系統です。給付費の売上は「単位数×1単位の単価×利用人数×利用日数」で決まり、工賃は生産活動の収入から経費を差し引いた範囲で支払います。収支は定員・稼働率・人員配置・工賃など複数の要素で決まり、公表データではB型の収支差率はおおむね6%から9%の範囲にあります。

  • 給付費と生産活動収入は分けて考える
  • 工賃は生産活動収入から経費を引いた範囲で支払う
  • 公的データでは収支差率はおおむね6%〜9%

この記事で分かること

就労継続支援B型の収支について、給付費と生産活動という2つのお金の流れ、売上が決まる仕組み、工賃との関係、厚生労働省と福祉医療機構の最新の経営データ、定員20名の仮定例による月次収支の作り方、利益を左右する6つのポイント、赤字になりやすいパターンまでを整理します。

はじめに

「就労継続支援B型は、どれくらい儲かるのですか」。開業のご相談で必ず出る質問です。結論から申し上げると、定員・稼働率・人員配置・平均工賃・加算・固定費の組み合わせで大きく変わり、一律の答えはありません。公的なデータでは、B型の収支差率は令和6年度決算で6.2%(厚生労働省)、2024年度決算で8.7%(福祉医療機構)です。同じ福祉医療機構の指標では、31.9%の事業所が赤字です。

この記事では、B型のお金の流れを「給付費」と「生産活動」の2つに分けて整理し、定員20名の仮定例で月次収支を組み立てる手順を説明します。記事中の金額はすべて仮定であり、実在の事業所の平均でも、収益を保証するものでもありません。

この記事のポイント

    • B型のお金は「給付費」と「生産活動」の2系統。会計も区分して経理する
    • 給付費の売上は「単位数×単価×利用人数×利用日数」。定員が上限になる
    • 工賃は生産活動の収益から支払う。給付費から充てることは原則としてできない
    • 収支差率はB型で6.2%(厚生労働省・令和6年度決算)/8.7%(福祉医療機構・2024年度決算分)
    • 稼働率が下がっても人件費と家賃は減らない。6割・8割・10割の3本で試算する

1. 結論:定員・稼働率・人員配置・工賃で大きく変わる

結論として、B型の収支は次の6つで決まります。定員、稼働率、人員配置、平均工賃月額(報酬体系による)、算定できる加算、そして家賃などの固定費です。このうち開業前に固定されるのが定員と固定費、開業後に動かせるのが稼働率と加算です。

制度上、売上の上限は定員で決まります。定員20名の事業所が30名分の報酬を得ることはできません。したがって「規模を拡大して利益を伸ばす」という発想は、事業所を増やすか定員を変更するかのどちらかになります。

図解1給付費と生産活動は別の会計

① 給付費(福祉サービス)

  • 国保連から入る公定価格の報酬
  • 単位数×単価×利用人数×利用日数で計算
  • 職員の人件費、家賃、水道光熱費などに充てる
  • 入金はサービス提供月の翌々月

② 生産活動

  • 企業からの受託や自主製品の販売などの収入
  • 材料費・消耗品費などの経費を差し引く
  • 残った額が工賃の原資になる
  • 売上が入る時期は取引条件による
※工賃の支払いに要する額は、原則として自立支援給付をもって充ててはならないとされています。会計も就労支援事業会計として区分して経理します。

2. B型の2つのお金の流れ

結論として、B型のお金は2系統あり、混ぜて考えると計画が狂います。給付費は事業所の運営費、生産活動の収益は工賃の原資です。

実務のご相談でも、この2つを合算した収支計画をお持ちになる方が少なくありません。合算すると、生産活動が赤字でも給付費で埋められているように見えてしまい、指定申請でも運営指導でも問題になります。最初から2つの表に分けて作ってください。

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図解2給付費の計算の流れ
1 単位数を決める基本報酬(報酬体系・人員配置・定員規模で決まる)+加算-減算
2 単価を掛ける地域区分ごとの1単位の単価。事業所の所在地で決まる
3 人数と日数を掛ける実際に利用した人数×利用日数。ここが唯一動かせる部分
※定員を超えて受け入れると定員超過利用減算の対象になります。売上の上限は定員です。

3. 福祉サービスの売上が決まる仕組み

結論として、給付費の売上は「単位数×1単位の単価×利用人数×利用日数」です。J-Net21が示すモデルでは、定員20名、月間稼働日数22日、人員配置6対1、基本報酬726単位、地域単価10円という仮定で、月間の基本報酬を約319万円と試算しています(稼働率100%の想定)。

このモデルは稼働率100%を前提にしている点に注意が必要です。福祉医療機構の指標では、B型の実際の利用率は80.6%です(2024年度決算分)。同じ条件でも稼働率が2割落ちれば、売上も2割落ちます。

4. 生産活動収入と工賃の関係

結論として、工賃は生産活動の収入から経費を差し引いた額の範囲で支払います。指定基準では、生産活動に係る事業の収入から必要な経費を控除した額が、利用者に支払う工賃の総額以上となるようにしなければならないとされています。

厚生労働省の令和6年度工賃実績では、B型の全国平均工賃月額は24,141円、前年度比106.6%でした。仮に利用者20名で全員がこの水準の工賃を受け取るとすると、工賃総額は月約48万円です。この48万円を生み出すには、生産活動の経費を差し引いたうえで48万円以上が残る収入が必要です。

平均工賃月額に応じた報酬体系を選ぶ場合、前年度の工賃実績が翌年度の基本報酬の区分に影響します。工賃を上げる取組が報酬にも返ってくる一方、工賃が下がると翌年度の報酬も下がるという関係です。

5. 公的データで見るB型の経営状況

結論として、B型の収支差率はおおむね6%から9%の範囲にあります。ただし、調査によって数字が異なり、赤字の事業所も一定割合あります。

調査対象年度収支差率その他
厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」令和6年度決算6.2%給与費割合68.1%(令和5年度決算の収支差率は6.0%)
福祉医療機構(WAM)「経営分析参考指標」2024年度決算8.7%赤字施設の割合31.9%、利用率80.6%、人件費率65.1%
出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」/独立行政法人福祉医療機構(WAM)「経営分析参考指標(2024年度決算分)ダイジェスト版」。両者は母集団が異なるため、数値も異なります。

収支差率は、サービス活動収益に対するサービス活動増減差額の割合です。一般企業の営業利益率や経常利益率とは集計の範囲が異なるため、他業種と単純に比較しないでください。

注目したいのは、平均が黒字であっても31.9%の事業所が赤字だという点です。サービス種別による差より、同じB型のなかでの事業所ごとの差のほうが大きいと考えたほうが実態に近くなります。

図解3仮定例の前提(すべて仮定の数値)

収入の前提

  • 定員20名、月の稼働日数22日
  • 基本報酬726単位、地域単価10円
  • 人員配置6対1
  • 加算は初年度のため見込まない

費用の前提

  • 人件費 月126万円(社会保険料を含む)
  • 家賃 月22万円
  • 水道光熱費・通信費月8万円
  • 広告宣伝費 月5万円、その他雑費 月30万円
※費用の前提はJ-Net21のモデル(定員20名・常勤職員3名・非常勤2名・大阪府東大阪市・100平方メートル)を参考にした仮定です。地域や人員体制によって大きく変わります。

6. 定員20名の仮定例で月次収支を作る

結論として、稼働率を振って試算すると、B型の収支の姿が具体的に見えます。ここでは上の前提で、給付費側の月次収支を稼働率別に計算します。工賃は生産活動の収益から支払うため、この表には含めていません。

稼働率1日あたりの利用人数給付費の月収入費用(月)差引
100%20人約319万円約191万円約128万円
80%16人約256万円約191万円約65万円
60%12人約192万円約191万円約1万円
※すべて仮定の数値による試算です。実在の事業所の平均ではなく、収益を保証するものでもありません。加算を見込んでいないため、実際には加算の分だけ収入が増えます。

この試算からわかるのは、稼働率6割ではほとんど利益が残らないということです。福祉医療機構の指標では実際の利用率が80.6%ですから、8割前後を現実的な想定として計画を作ることになります。

J-Net21のモデルでは、稼働率100%の前提で年間の見込み損益を約1,200万円としています。一方、公的な経営調査での収支差率は6%台です。この差は、稼働率の前提と、費用にどこまで含めるかの違いによって生じます。モデルの数字をそのまま自分の計画に使わず、必ず自分の定員・地域区分・人員体制で計算し直してください。

図解46つのポイントと、動かせる時期

開業前に決まってしまうもの

  • 定員(必要な面積と人員が連動する)
  • 家賃などの固定費(契約で数年分が確定する)
  • 地域区分の単価(所在地で決まる)

開業後に動かせるもの

  • 稼働率(相談支援事業所との連携、支援の質)
  • 算定できる加算(体制の整備と届出)
  • 平均工賃月額(生産活動の設計と営業)
※開業前に決まる3つを間違えると、開業後の努力では取り返しにくくなります。とくに家賃は毎月の固定費として効き続けます。

7. 利益を左右する6つのポイント

結論として、B型の利益は次の6つで決まります。定員、稼働率、人員配置、平均工賃月額、加算、固定費です。

このうち、開業後の努力で最も効果が出やすいのが加算です。加算には体制届の提出や実績要件が必要なものがあり、算定できるはずのものを届け出ていないケースが実際にあります。新たな売上を作るより確実で、費用もほとんどかかりません。

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図解5赤字になりやすい4つのパターン
1 稼働率が上がらない利用契約が増えず、定員に対して6割前後で止まる。人件費と家賃は変わらない
2 生産活動が赤字収入より経費が大きく、工賃の原資が出ない。給付費で埋めることはできない
3 減算・返戻が続く個別支援計画の未作成、人員欠如、請求の誤り。数か月分の利益が消える
※4つ目は「固定費が重い」です。開業時に広い物件や高額な設備を契約すると、稼働率が上がるまでの赤字が大きくなります。

8. 赤字になりやすいパターン

結論として、赤字になるパターンはほぼ決まっています。稼働率が上がらない、生産活動が赤字、減算や返戻が続く、固定費が重いの4つです。

このうち、開業後に最も早く手を打てるのが3番目です。個別支援計画の作成期限、勤務形態一覧表と実際の勤務の一致、請求内容の確認という3点を毎月の業務に組み込んでおけば、多くは防げます。

9. 収支計画のチェック項目

結論として、収支計画は次の項目がそろって初めて意味を持ちます。

    • 給付費の収支と、生産活動の収支を別の表に分けている
    • 自分の地域区分の単価で計算している(全国一律の10円で計算していない)
    • 稼働率6割・8割・10割の3本で試算している
    • 人件費に社会保険料の事業主負担を含めている
    • 加算は初年度から満額で見込まず、体制が整った月から加えている
    • 生産活動の経費(材料費、消耗品費、燃料費、水道光熱費、賃借料など)を計上している
    • 目標とする平均工賃月額から工賃総額を逆算し、必要な生産活動収入を出している
    • 開所月から最初の給付費入金月までの資金繰り表がある

よくある質問

Q
B型は月にいくら儲かりますか。
A

一律の答えはありません。定員・稼働率・地域区分・人員体制・加算によって変わります。公的なデータでの収支差率は6.2%(厚生労働省・令和6年度決算)から8.7%(福祉医療機構・2024年度決算分)です。まずは自分の条件で計算してください。

Q
記事の仮定例の数字は、実際の事業所の平均ですか。
A

いいえ。すべて仮定の数値による試算です。実在の事業所の平均でも、収益を保証するものでもありません。前提を変えれば結果は大きく変わります。

Q
生産活動の売上が伸びれば、事業の利益も増えますか。
A

生産活動の収益は、原則として利用者の工賃に充てるものです。伸びた分がそのまま事業の利益になるわけではありません。ただし、平均工賃月額に応じた報酬体系を選んでいる場合、工賃が上がることで翌年度の基本報酬が上がる可能性があります。

Q
定員を増やせば利益は増えますか。
A

売上は増えますが、必要な面積と職員数も増えます。定員の変更には手続が必要で、物件の面積が足りなければ移転も必要です。稼働率が上がっていない段階で定員だけ増やしても、収支は改善しません。

Q
加算はどのくらい収入に影響しますか。
A

加算の種類と算定できる件数によります。体制届の提出が必要な加算は、届出が遅れるとその月から算定できません。算定できるはずの加算を取り漏らしていないか、定期的に点検することをおすすめします。

Q
赤字が続いたらどうすればよいですか。
A

稼働率、生産活動の収支、減算・返戻の有無、固定費の4つに分けて原因を特定してください。原因ごとに打てる手が違います。資金が尽きてから動くと選択肢が狭まるため、資金繰り表で不足が見えた時点で金融機関へ相談してください。

まとめ

就労継続支援B型の収支は、給付費と生産活動という2つの流れに分けて考えます。給付費は事業所の運営費、生産活動の収益は工賃の原資です。会計も区分して経理します。この2つを合算した計画を作ると、生産活動の赤字が見えなくなります。

先に触れたとおり、B型の収支差率は令和6年度決算で6.2%(厚生労働省)、2024年度決算で8.7%(福祉医療機構)です。一方で、福祉医療機構の指標では31.9%の事業所が赤字です。種別による差より、同じB型のなかでの事業所ごとの差のほうが大きいのが実態です。

収支計画は、自分の定員・地域区分・人員体制で計算し、稼働率6割・8割・10割の3本で試算してください。公表されているモデルの数字をそのまま使うと、稼働率の前提の違いだけで結果が大きくずれます。

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行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、指定申請だけでなく、人員配置の設計、就業規則や社会保険の手続き、処遇改善加算の取得までご相談いただけます。開業支援は20万円〜です。

静岡・神奈川・愛知を中心に、オンラインで全国対応しています。単位数と地域区分から給付費の収入を計算し、生産活動の収支と工賃の設計、加算の取得までを含めて収支計画を一緒に作ります。開業前でも、運営中の見直しでもご相談ください。

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主な参考資料

  • 参考:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」/独立行政法人福祉医療機構(WAM)「経営分析参考指標(2024年度決算分)ダイジェスト版」/厚生労働省「平均工賃(賃金)月額の実績について」(令和6年度)/厚生労働省「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン」/J-Net21(中小企業基盤整備機構)「障害者就労継続支援A型・B型

※本記事は令和8年9月5日時点の法令・通知・公表資料に基づく一般的な整理です。記事中の月次収支の数値はすべて仮定例であり、実在の事業所の平均でも、収益を保証するものでもありません。制度・運用は改正や指定権者ごとの取扱いにより変わるため、最新情報は指定権者等へ必ずご確認ください。

執筆者 永野将太(行政書士・社会保険労務士)
執筆者WRITER
永野 将太
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズ 代表

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。

これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。