社会保険手続きの電子申請には、e-Gov、届書作成プログラム、市販ソフトの3つの方法があります。利用にはGビズIDプライムの取得が前提で、令和2年4月からは資本金等の額が1億円を超える特定の法人に一部の届書の電子申請が義務づけられています。オンライン事業所年金情報サービスを使えば、毎月の保険料額情報を電子データで受け取れます。
- 電子申請の方法は3つあり、対応できる届書が異なる
- GビズIDプライムの取得が前提になる
- 特定の法人には一部の届書で電子申請が義務づけられている
この記事で分かること
社会保険手続きの電子申請について、e-Gov・届書作成プログラム・市販ソフトという3つの方法、GビズIDプライムの取得手順、資本金等1億円超の特定の法人に義務づけられている届書、オンライン事業所年金情報サービスで受け取れる情報と配信タイミング、公文書の受取方法までを整理します。
はじめに
社会保険の届出には「事実発生から5日以内」といった短い期限が多く、郵送では期限に間に合わないことがあります。電子申請であれば、支給日や入職日の当日に手続きを完了させることができます。
障害福祉サービス事業所では、非常勤職員の入退職が多く、届出の件数自体が多くなりがちです。GビズIDと届書作成プログラム(いずれも無料)を用意すれば、日常的な届出をオンラインで完結できます。
この記事では、日本年金機構が公表している案内をもとに、電子申請の準備と運用を整理します。
この記事のポイント
- 電子申請の方法は、e-Gov、届書作成プログラム、労務管理ソフト(市販ソフト・自社システム)の3つです。
- e-Gov電子申請で申請可能な届書等は約330種類とされ、ほぼすべての届書に対応しています。
- 届書作成プログラムは無料でダウンロードでき、資格取得届・資格喪失届・算定基礎届・月額変更届・賞与支払届・被扶養者(異動)届・国民年金第3号被保険者関係届を作成・申請できます。
- GビズIDプライムの取得は無料で、書類申請(申請書と印鑑証明書をGビズID運用センターへ郵送)の場合はアカウント発行まで最大1か月、マイナンバーカードとGビズIDアプリを使うオンライン申請なら最短で即日発行です。
- 資本金等の額が1億円を超える等の特定の法人は、令和2年4月から算定基礎届・月額変更届・賞与支払届の電子申請が義務づけられています。
1. 電子申請の3つの方法
| 方法 | 概要 |
|---|---|
| e-Gov | ほぼすべての届書に対応。申請可能な届書等は約330種類 |
| 届書作成プログラム | 日本年金機構が無料で提供。主要な届書を簡易に作成・申請できる |
| 労務管理ソフト・自社システム | CSV形式の届書データを作成し、届書作成プログラムの仕様チェック機能で検証したうえで提出 |
届書作成プログラムで作成・申請できるのは、資格取得届、資格喪失届、算定基礎届、月額変更届、賞与支払届、被扶養者(異動)届、国民年金第3号被保険者関係届です。日常的に発生する届出はこれでほぼカバーできます。
市販の労務管理ソフトや自社システムでCSVファイル形式の届書データを作成する場合は、届書作成プログラムの「仕様チェック」機能で検証したうえで、自社システム・市販ソフト・届書作成プログラム・e-Govのいずれかから提出します。ただし、育児休業等取得者申出書/終了届と産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届については、仕様チェックを実施できないとされています。
e-Gov
- ほぼすべての届書に対応(約330種類)
届書作成プログラム
- 日本年金機構が無料で提供
- 資格取得届、資格喪失届、算定基礎届、月額変更届、賞与支払届、被扶養者(異動)届、国民年金第3号被保険者関係届に対応
労務管理ソフト・自社システム
- CSV形式の届書データを作成し、届書作成プログラムの仕様チェック機能で検証したうえで提出
2. GビズIDの取得
GビズIDは、1つのアカウントで複数の行政サービスにアクセスできる認証システムです。社会保険手続きにはGビズIDプライムが必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 費用 | 無料 |
| 申請方法 | 書類申請(郵送)/オンライン申請 |
| 必要書類 | 書類申請:申請書、印鑑証明書(発行から3か月以内の原本)/オンライン申請:マイナンバーカード、GビズIDアプリを導入したスマートフォン、パソコン |
| 期間 | 書類申請:申請から審査、アカウント発行まで最大1か月/オンライン申請:最短で即日発行 |
取得の流れは次のとおりです。
- GビズIDのホームページから「GビズIDプライム作成」を選び、申請書を作成・ダウンロードする
- 【書類申請】必要事項を入力し、申請書と印鑑証明書(発行から3か月以内の原本)をGビズID運用センターに郵送する(申請から審査、アカウント発行まで最大1か月)
- 【オンライン申請】マイナンバーカードとGビズIDアプリを導入したスマートフォン、パソコンがあれば、最短で即日発行される
- 承認後にメールを受け取る
- メールに記載されたURLからパスワードを設定する
書類申請の場合はアカウント発行まで最大1か月かかるため、開業準備の早い段階で申請しておくことをおすすめします。急ぐ場合は、マイナンバーカードとGビズIDアプリを導入したスマートフォン、パソコンがあれば、オンライン申請により最短で即日発行されます。指定申請の直前に慌てて取得しようとすると、新規適用届の期限に間に合わないおそれがあります。
なお、届書作成プログラムの利用には、GビズIDのほかマイナンバーカードを使う方法もあります。マイナンバーカードは事業主または選任された事業主代理人のカードのみが有効です。
3. 電子申請が義務づけられている法人
令和2年4月から、資本金等の額が1億円を超える等の特定の法人の事業所については、次の届書の電子申請が義務づけられています。
- 健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届
- 健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届
- 健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届
障害福祉サービス事業所の多くは義務化の対象外ですが、義務がない事業所でも電子申請は利用できます。むしろ、届出件数の多い事業所ほど効果が大きい仕組みです。
義務化の対象(令和2年4月から)
- 資本金等の額が1億円を超える等の特定の法人の事業所
- 対象届書:算定基礎届、月額変更届、賞与支払届
- 障害福祉サービス事業所の多くは対象外
電子申請のメリット
- いつでも:24時間、夜間や休日でも届出できる
- どこでも:自宅や職場などインターネットを使ってどこでも
- 時間コスト削減:移動時間・待ち時間がなく、郵送コスト等の削減
4. 電子申請のメリットと公文書の受取
日本年金機構が挙げている電子申請のメリットは次の3点です。
- いつでも:時間にとらわれず24時間届出できる。夜間や休日でも届出できる
- どこでも:自宅や職場など、インターネットを使ってどこでも届出できる
- 時間コスト削減:移動時間や待ち時間がなく、郵送コスト等の削減が期待できる
公文書(決定通知書等)は、e-Govアプリケーションの「申請案件状況」画面から公文書の「詳細表示」をクリックすることで表示できます。
夜勤明けや訪問の合間に手続きができる点は、シフト勤務中心の障害福祉サービス事業所と相性が良い部分です。
5. オンライン事業所年金情報サービス
毎月の社会保険料額情報等の電子データを、e-Gov電子申請のマイページで受け取れるサービスです。利用申込みから受け取りまでオンラインで完結し、初回申込み以降は定期的に受け取れます。
受け取れる情報と配信タイミング
| 情報・通知書 | 受け取れる日 |
|---|---|
| 社会保険料額情報 | 毎月15日頃 |
| 保険料納入告知額・領収済額通知書 | 毎月20日頃 |
| 保険料増減内訳書 | 毎月15日頃 |
| 基本保険料算出内訳書 | 毎年10月15日頃 |
| 賞与保険料算出内訳書 | 被保険者賞与支払届提出による計算月の15日頃 |
| 決定通知書 | 届書処理完了次第、その都度 |
電子送付を希望する場合の登録期限は、毎月受け取るものについては毎月10日頃とされています。被保険者データについては、毎年6月第1営業日、賞与支払予定月の1か月前の第1営業日、その他希望月の第1営業日から選べます。
利用の流れと注意点
- GビズIDまたは電子証明書を取得する
- e-Govのマイページにログインする
- 「電子送達申込み」から電子送付開始手続きの申込みを行い、事業所整理記号等を入力して希望する情報・通知書を選択する
- 受け取った電子データを「電子送達一覧」で確認する
e-Govのマイページに電子データが届いてから3か月(90日)間は閲覧可能です。期限を過ぎると閲覧できなくなるため、事前にパソコンに保存してください。ファイル形式は、社会保険料額情報等がXML・CSV形式(外字を含む場合はPDF形式が追加)、被保険者データはDTA形式です。
紙または電磁的記録媒体で提出した届書の決定通知書も、この仕組みで受け取ることができます。
毎月受け取れるもの
- 社会保険料額情報:毎月15日頃
- 保険料増減内訳書:毎月15日頃
- 保険料納入告知額・領収済額通知書:毎月20日頃
その都度・年次
- 基本保険料算出内訳書:毎年10月15日頃
- 賞与保険料算出内訳書:賞与支払届提出による計算月の15日頃
- 決定通知書:届書処理完了次第、その都度
6. 郵送・窓口の場合の提出先
電子申請を利用しない場合の提出先は、郵送であれば事務センター、窓口持参であれば管轄の年金事務所です。
郵送する際は、封筒に送付先の事務センター名と郵便番号(大口事業所個別番号)を記載します。住所を記載しなくても、それぞれの事務センターに届きます。
事務センターは、年金事務所から受け付けた届書や申請書の処理および郵送による受付業務を行う機関で、窓口相談・電話相談は受け付けていません。郵送した書類に関する問い合わせは管轄の年金事務所に行ってください。
事務センターは全国15か所に置かれ、複数県を管轄する広域事務センターもあります。事業所の所在地によって管轄が決まるため、複数の都道府県に事業所を展開している法人は、事業所ごとに提出先を確認してください。
実務上の注意点
GビズIDは開業準備の初期に申請する
書類申請ではアカウント発行まで最大1か月かかるため、法人設立の登記が完了した段階で申請しておくと、新規適用届の提出時期に間に合います。マイナンバーカードとGビズIDアプリを導入したスマートフォン、パソコンがあれば、オンライン申請により最短で即日発行されます。指定申請の準備と並行して進めてください。
アカウントの管理者を決めておく
GビズIDプライムは法人の代表者に紐づくアカウントです。実際の届出担当者が別にいる場合は、権限の委任やアカウント管理のルールを決めておかないと、担当者の交代時に手続きが止まります。
電子データは90日以内に保存する
オンライン事業所年金情報サービスで受け取ったデータは90日で閲覧できなくなります。月次の経理処理のタイミングでダウンロードし、事業所内で保存する運用にしてください。
GビズIDは開業準備の初期に申請する
- 法人設立の登記が完了した段階で申請しておく
- 指定申請の準備と並行して進める
アカウントの管理者を決めておく
- GビズIDプライムは法人の代表者に紐づくアカウント
- 権限の委任やアカウント管理のルールを決めておかないと、担当者の交代時に手続きが止まる
電子データは90日以内に保存する
- 月次の経理処理のタイミングでダウンロードし、事業所内で保存する運用に
実務チェックリスト
□ GビズIDプライムを取得した(または申請した)
□ 届書作成プログラムをダウンロードし、動作環境を確認した
□ 使用している労務管理ソフトが届書データのCSV出力に対応しているか確認した
□ 電子申請の義務化対象法人に該当するか確認した
□ オンライン事業所年金情報サービスの利用申込みを行った
□ 受け取る情報・通知書の種類と配信日を確認した
□ 受け取った電子データを90日以内に保存する運用を決めた
□ 公文書の受取方法(申請案件状況からの詳細表示)を担当者間で共有した
□ 郵送する場合の管轄事務センターを確認した
よくある質問
無料です。書類申請の場合は、申請書と印鑑証明書(発行から3か月以内の原本)をGビズID運用センターに郵送し、申請から審査、アカウント発行まで最大1か月かかります。マイナンバーカードとGビズIDアプリを導入したスマートフォン、パソコンがあれば、オンライン申請により最短で即日発行されます。
無料でダウンロードできます。利用にはマイナンバーカードまたはGビズIDが必要です。
義務づけられているのは資本金等の額が1億円を超える等の特定の法人の事業所で、対象は算定基礎届・月額変更届・賞与支払届です。それ以外の事業所は任意ですが、利用は可能です。
電子データを受け取れるようになるサービスです。受け取りたい情報・通知書を選択して申し込みます。取扱いの詳細は日本年金機構の案内で確認してください。
e-Govのマイページに電子データが届いてから3か月(90日)間です。期限後は閲覧できないため、事前に保存してください。
まとめ
社会保険の届出は期限が短く、件数も多くなりがちです。GビズIDプライムと届書作成プログラムはいずれも無料で用意でき、日常的な届出をオンラインで完結させられます。
あわせてオンライン事業所年金情報サービスを申し込めば、保険料額情報や決定通知書を電子データで受け取れます。90日の閲覧期限に注意しながら、月次の処理に組み込んでください。
GビズIDは、書類申請ではアカウント発行まで最大1か月かかることを踏まえ、開業準備の早い段階で取得しておくことをおすすめします。オンライン申請なら最短で即日発行されます。
開業準備から社会保険の電子申請まで、まとめてご相談ください
障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、指定申請・報酬請求の実務と労務管理の両面を、ひとつの窓口でご相談いただけます。
静岡・神奈川・愛知を中心に、オンラインで全国に対応しています。指定申請の準備と並行して、社会保険の届出体制の整備までお手伝いいたします。
関連記事
主な参考資料
- 参考:日本年金機構「事業所向けオンラインサービス(申請、各種情報・通知書の受け取り)」
- 参考:日本年金機構「電子申請(e-Gov)」「電子申請(届書作成プログラム)」「市販ソフトを利用した届書作成」
- 参考:日本年金機構「GビズID」「電子申請の義務化」
- 参考:日本年金機構「オンライン事業所年金情報サービス」「各種情報・通知書の電子データの受け取り」
- 参考:日本年金機構「全国の事務センター一覧」
※本記事は令和8年8月28日時点の法令・通知・日本年金機構の公表資料に基づく一般的な整理です。実際の届出にあたっては、管轄の年金事務所・事務センターの取扱い、健康保険組合の定め、最新の様式・記載要領を必ずご確認ください。

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。
これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。
