被保険者資格取得届は、従業員を採用したときに提出する届出です。適用事業所に常用的に使用される70歳未満の人は、国籍・性別・年金の受給の有無にかかわらず加入対象になります。パート・アルバイトは、まず4分の3基準で加入の可否を判定します。
- 提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所
- パート・アルバイトはまず4分の3基準で判定する
- 資格取得時の標準報酬月額は、報酬の支払形態に応じて算定する
はじめに
障害福祉サービス事業所では、開設時にサービス管理責任者・生活支援員・世話人などを一斉に採用し、その後も送迎や夜勤の体制に合わせて非常勤職員を追加していく形になりがちです。採用のたびに発生するのが、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格取得届です。
資格取得届は事実発生から5日以内という短い期限が定められており、しかも「誰を加入させるのか」の判定を誤ると、後から遡って加入手続きと保険料の納付が必要です。特にパート・非常勤の多い事業所では、判定を仕組みとして持っておくことが重要です。
この記事では、日本年金機構が公表している手続き案内をもとに、資格取得届の実務を整理します。
1. 資格取得届が必要になる場面と提出期限
資格取得届が必要になる場面
適用事業所に常用的に使用される70歳未満の人は、国籍・性別・年金の受給の有無にかかわらず被保険者になります。試用期間中であっても報酬が支払われていれば対象です。次のような場面で資格取得届が必要です。
- 新たに従業員を採用したとき
- 試用期間を経て本採用になったとき(試用期間中から報酬が支払われている場合は、その時点で被保険者となります)
- パート職員の勤務時間を増やし、加入要件を満たすことになったとき
- 70歳以上の人を採用したとき(厚生年金保険は70歳以上被用者該当届)
なお、70歳以上の人については厚生年金保険の被保険者にはなりませんが、在職老齢年金の計算のために厚生年金保険 70歳以上被用者該当届を提出します。
提出期限と提出先
| 届出の種類 | 提出時期 |
|---|---|
| 被保険者資格取得届 | 事実発生から |
| 二以上 | 事実発生から |
| 健康保険 被保険者適用除外承認申請書 | 事実発生日から |
提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所です。提出方法は電子申請、電子媒体(CDまたはDVD)、郵送、窓口持参から選べます。職員の入退社が多い事業所では、届書作成プログラムや労務管理ソフトからの電子申請にしておくと、5日以内という期限を守りやすくなります。
2. 加入対象になるかどうかの判定
パート・アルバイトの加入判定は、まず4分の3基準で行います。1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上であれば被保険者になります。
4分の3基準を満たさない場合でも、特定適用事業所・任意特定適用事業所または国・地方公共団体に属する事業所に使用され、次のすべてに該当する短時間労働者は被保険者になります。
- 週の所定労働時間が20時間以上あること
- 所定内賃金が月額8.8万円以上であること
- 学生でないこと
なお、この賃金要件(月額8.8万円以上)は廃止されることが決まっています。あわせて企業規模要件も、令和9年10月に従業員36人以上、令和11年10月に21人以上、令和14年10月に11人以上と段階的に引き下げられ、令和17年10月に撤廃される予定です。判定の際は最新の情報をご確認ください。
一方、日々雇い入れられる人、2か月以内の期間を定めて使用される人、所在地が一定しない事業所に使用される人、季節的業務(4か月以内)に使用される人、臨時的事業の事業所(6か月以内)に使用される人は適用除外です。ただし、所定の期間を超えて引き続き使用されるようになったときは被保険者となります。
障害福祉サービス事業所では、「2か月以内の契約を繰り返している送迎ドライバー」「学生アルバイトの支援補助」など、判定に迷う雇用形態が生じやすいところです。契約更新の実態が継続的であれば適用除外にはあたらないため、雇用契約書と実際の勤務実態をあわせて確認してください。
3. 標準報酬月額と記入欄の書き方
資格取得時の標準報酬月額の決め方
資格取得時の標準報酬月額は、報酬の支払形態に応じて次のように算定します。
| 報酬の支払形態 | 算定方法 |
|---|---|
| 月給・週給等 | 資格を |
| 日給・ | 資格を |
| 算定が困難な場合 | 当該地域で |
| 複数の | それぞれの |
報酬には基本給のほか、通勤手当、残業手当、各種手当、事業所が提供する宿舎費・食事代などの現物給与も含まれます。障害福祉サービス事業所では、処遇改善加算に基づく手当や夜勤手当も労働の対償として支払われるものであれば報酬に含めて算定します。
資格取得時に決定された標準報酬月額は、その年の8月までの各月に適用されます。ただし、6月1日から12月31日までに資格を取得した場合は翌年の8月まで適用されます。
資格取得届の記入欄と書き方
資格取得届は1人1行で書きます。欄そのものは多くありませんが、障害福祉の事業所では「備考」と「報酬月額」でミスが起こりやすい書類です。欄ごとに何を書くかを整理します。
| 欄 | 書く内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| ① 被保険者整理番号 | 新規に | 年金事務所が |
| ② 氏名 | 戸籍の | 旧姓で |
| ③ 生年月日 | 年号を選んで記入 | |
| ④ 種別 | 男性・女性の | |
| ⑤ 取得区分 | 通常は | 共済組合からの |
| ⑥ 個人番号または | マイナンバーを | 本人確認書類の |
| ⑦ 取得 | 実際に | 試用期間の |
| ⑧ 被扶養者 | 扶養に | 「有」の |
| ⑨ 報酬月額 | 通貨に | 残業 |
| ⑩ 備考 | 1. | 複数の |
| ⑪ 住所 | 個人番号を | |
| ⑫ 資格確認書発行要否 | マイナ保険証を |
障害福祉の事業所でとくに多いのが、⑨の報酬月額を基本給だけで書いてしまうケースです。通勤手当、住宅手当、処遇改善手当、見込まれる残業手当まで含めた額で決めます。低く届け出ると、定時決定や随時改定のときに大きな差が出ます。
もう1つが⑩の備考です。法人内の複数事業所で勤務する職員や、他法人でも働いている職員は「二以上事業所勤務者」に当たることがあります。この場合は別に届出が必要です。
あわせて読みたい二以上事業所勤務届|複数の事業所に勤務する役員・職員の社会保険手続き あわせて読みたい健康保険 被扶養者(異動)届|認定要件と添付書類4. 添付書類とあわせて提出する届書
添付書類が必要になるケース
資格取得届は原則として添付書類なしで提出できますが、次のような場合には確認資料の添付を求められます。
- 就業規則、退職辞令の写し
- 雇用契約書の写し
- 継続再雇用に関する事業主の証明書
- やむを得ない理由により提出が遅れた場合などの理由書
特に、資格取得日を実際の入職日より後にしている場合や、遡って届け出る場合には、雇用契約書の写しなどで事実関係を確認されることがあります。採用時の書類は、届出と同じファイルで保管しておくと対応が容易です。
あわせて提出する届書
資格取得届と同時に提出することが多い届書は次のとおりです。
- 健康保険 被扶養者(異動)届 国民年金第3号被保険者関係届(扶養する家族がいる場合)
- 健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届(2か所以上の適用事業所に勤務する場合)
- 厚生年金保険 70歳以上被用者所属選択・二以上事業所勤務届
- ローマ字氏名届(外国籍の従業員の場合)
- 健康保険 被保険者適用除外承認申請書(国民健康保険組合に加入し続ける場合)
複数の法人で役員を兼務している代表者や、他法人の事業所と兼務している専門職については、二以上事業所勤務届の提出漏れが起こりやすい点に注意してください。
5. 60歳以上の再雇用と届出漏れ
60歳以上の退職者を継続して再雇用する場合
60歳以上の従業員が退職し、1日の間もなく再雇用される場合には、いったん被保険者資格を喪失し、同じ日に資格を取得する取扱いをできます。これにより、再雇用後の報酬に見合った標準報酬月額に改めることができます。
日本年金機構は、退職後1日の間もなく再雇用される従業員の資格取得届を提出する場合には、事務担当者(事業主)が資格取得日において60歳以上であることを確認のうえ届け出るよう案内しています。
この取扱いを行う場合の添付書類としては、就業規則・退職辞令の写し、雇用契約書の写し、退職日および再雇用された日に関する事業主の証明書が挙げられています。定年後の再雇用で勤務日数を減らす場合には、資格喪失届とあわせて手続きを検討してください。
あわせて読みたい健康保険・厚生年金保険の新規適用届|提出期限・添付書類届出漏れがあった場合
日本年金機構は、資格取得届の提出が必要な人について届出が提出されていないことが後で分かった場合、さかのぼって資格取得届を提出するとともに、事実が発生したときにさかのぼって保険料を支払うことになると案内しています。
遡及した保険料には従業員負担分も含まれます。すでに退職している従業員の分を事業主が負担せざるを得なくなるケースもあるため、判定に迷う雇用形態は、採用の時点で年金事務所に確認しておくことが結果的に安全です。
また、適用事業所に対しては事業所調査が実施されます。短時間労働者を多く使用している事業所や、算定基礎届・賞与支払届が未提出の事業所は訪問調査の対象になりやすいとされています。
6. 実務上の注意点
マイナンバーの確認を採用手続きに組み込む
マイナンバーまたは基礎年金番号が未記入の場合、資格取得届は返戻されます。返戻されると5日以内の期限を守れなくなるため、内定時または初出勤日にマイナンバーカード等で番号を確認し、雇用契約書・誓約書とセットで回収する運用にしておくと確実です。
シフトの実態と雇用契約書を一致させる
加入判定は所定労働時間・所定労働日数で行いますが、実際のシフトが契約を大きく上回っている場合、実態で判断されることがあります。障害福祉サービス事業所では欠員補充で非常勤の勤務が増えがちなので、恒常的に増えているなら契約を見直し、あわせて加入判定をやり直してください。
人員基準の届出と混同しない
職員の入退職があった場合、指定権者への変更届(管理者・サービス管理責任者等の変更)と、年金事務所への資格取得届は別の手続きです。どちらも期限が短いため、入退職時のチェックリストに両方を並べて記載しておくことをおすすめします。
あわせて読みたい被保険者資格喪失届|退職・死亡したときの手続きよくある質問
適用事業所に常用的に使用される70歳未満の人は被保険者になります。試用期間中であっても報酬が支払われている場合は対象です。試用期間の満了を待つ取扱いはできません。
事実上の使用関係が始まった日、すなわち実際に働き始めた日です。雇用契約書の契約開始日と初出勤日が異なる場合は、実態に合わせて判断してください。
短時間労働者として適用拡大の対象になるかどうかの判定では「学生でないこと」が要件のひとつです。ただし、4分の3基準を満たす場合は学生であっても被保険者になります。
遅れた場合でも速やかに提出してください。遅延の理由について理由書の提出を求められることがあります。届出をしないまま放置すると、後から遡って保険料を納付することになります。
労働の対償として支払われるものは報酬に含めて算定します。毎月定額で支給する処遇改善手当は報酬月額に含めます。年3回以下で支給する一時金の形であれば、賞与として賞与支払届の対象になります。
まとめ
資格取得届は、採用のたびに発生する最も基本的な社会保険手続きです。実務上のポイントは、5日以内という期限、マイナンバーまたは基礎年金番号の記載、そして加入対象かどうかの判定の3つに集約されます。
特に非常勤職員の多い障害福祉サービス事業所では、判定の基準をシフト管理と結びつけて運用することが、後からの遡及加入を防ぐ最も確実な方法です。
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障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、指定申請・報酬請求の実務と労務管理の両面を、ひとつの窓口でご相談いただけます。
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主な参考資料
- 参考:日本年金機構「就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き」
- 参考:日本年金機構「適用事業所と被保険者」
- 参考:日本年金機構「資格取得時の決定」
- 参考:日本年金機構「厚生年金保険・健康保険などの適用促進に向けた取り組み」
※本記事は令和8年8月28日時点の法令・通知・日本年金機構の公表資料に基づく一般的な整理です。実際の届出にあたっては、管轄の年金事務所・事務センターの取扱い、健康保険組合の定め、最新の様式・記載要領を必ずご確認ください。

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