感染症対策の委員会・指針・研修・訓練と、業務継続計画(BCP)の策定義務は別建てです。指針を作れば足りるわけではなく、それぞれの義務を混同しないことが大切です。BCPは感染症に係るものと非常災害(自然災害)に係るものをそれぞれ作成する必要があります。
- 感染症対策とBCPは別の義務
- BCPは感染症と自然災害の2本が必要
- 就労選択支援のみ令和9年3月31日まで未策定減算の経過措置がある
この記事で分かること
感染症対策の委員会・指針・研修・訓練と、業務継続計画(BCP)の策定義務は別建てです。両者の違い、BCPが感染症と自然災害の2本必要な理由、未策定減算の減算率と経過措置の終了、非常災害対策計画との関係を整理します。
はじめに
「感染症の指針は作った」だけでは、BCP未策定減算は止まりません。感染症対策の義務とBCPの義務は別建てで、しかもBCPは感染症と自然災害の2本が必要です。
この記事のポイント
- 感染症対策で必要な委員会・指針・研修・訓練の頻度
- BCPが2本必要な理由と、減算率
- 非常災害対策計画との違い
1. 3つの義務を混同しない
| 義務 | 求められるもの | 未実施の減算 |
|---|---|---|
| 感染症対策 | 委員会・指針・研修・訓練 | (直接の減算規定はなし) |
| 業務継続計画(BCP) | 感染症BCP+自然災害BCP、研修・訓練、見直し | 施設・居住系3%/その他1% |
| 非常災害対策 | 消防設備、非常災害に関する具体的計画、通報・連絡体制、避難訓練 | (直接の減算規定はなし) |
よくある誤解は、「感染症の予防及びまん延の防止のための指針」を作れば感染症BCPになるというものです。両者は別の文書です。実際、BCP未策定減算の経過措置(令和7年3月31日まで)では、感染症の予防及びまん延の防止のための指針の整備と、非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合に減算しない、という扱いでした。裏を返せば、指針とBCPは別物だということです。
直接の減算規定はなし
施設・居住系3%/その他1%
直接の減算規定はなし
2. 感染症対策の頻度
| 項目 | 通所系・居住系・入所系 | 訪問系・相談系 |
|---|---|---|
| 感染対策委員会 | おおむね3月に1回以上 | おおむね6月に1回以上 |
| 研修 | 年2回以上+新規採用時 | 年1回以上 |
| まん延防止のための訓練 | 年2回以上 | 年1回以上 |
就労移行支援、就労継続支援A型・B型、共同生活援助、児童発達支援、放課後等デイサービスは、いずれも左列(年2回以上)に該当します。
頻度は解釈通知に基づくもので、自治体の集団指導資料では記載が分かれる例もあります。年間計画を固める前に、所轄の指定権者の資料でご確認ください。
指針に盛り込む内容
| 平常時の対策 | 発生時の対応 |
|---|---|
| 事業所内の衛生管理、標準予防策、支援に係る感染対策 | 発生状況の把握、感染拡大の防止、医療機関・保健所・自治体等との連携 |
訓練は机上・実地のいずれでも構いませんが、両者を組み合わせて実施することが望ましいとされています。
通所系・居住系・入所系
- 感染対策委員会:おおむね3月に1回以上
- 研修:年2回以上+新規採用時
- まん延防止のための訓練:年2回以上
訪問系・相談系
- 感染対策委員会:おおむね6月に1回以上
- 研修:年1回以上
- まん延防止のための訓練:年1回以上
3. 業務継続計画(BCP)
義務の内容
- 感染症に係るBCPと、非常災害(自然災害)に係るBCPをそれぞれ作成
- 従業者への周知
- 研修・訓練の定期的な実施
- 定期的な見直し
1つの文書にまとめること自体は可能ですが、両方の内容が備わっている必要があります。「災害BCPだけ作ってある」は未策定と判断されます。
研修・訓練の頻度:各年1回以上が一般的です(居住系は年2回以上とする自治体資料もあります。指定権者にご確認ください)。
業務継続計画未策定減算
| 減算率 | 対象 |
|---|---|
| 3% | 療養介護、施設入所支援、共同生活援助、宿泊型自立訓練、障害児入所施設 |
| 1% | 居宅介護、生活介護、短期入所、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、児童発達支援、放課後等デイサービス、相談系 ほか |
経過措置は終了しています。
| 時期 | 状況 |
|---|---|
| 令和6年4月1日 | 減算の規定が施行 |
| 令和7年3月31日 | 経過措置(指針の整備等で代替)が終了 |
| 令和7年4月1日〜 | BCPが未策定なら直ちに減算 |
例外として、就労選択支援のみ令和9年3月31日まで減算を適用しない経過措置が続いています。
経過措置は終了している
- 令和6年4月1日:減算の規定が施行
- 令和7年3月31日:経過措置(指針の整備等で代替)が終了
- 令和7年4月1日〜:BCPが未策定なら直ちに減算
- 例外:就労選択支援のみ令和9年3月31日まで減算を適用しない経過措置
減算率
- 3%:療養介護、施設入所支援、共同生活援助、宿泊型自立訓練、障害児入所施設
- 1%:居宅介護、生活介護、短期入所、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、児童発達支援、放課後等デイサービス、相談系 ほか
4. BCPに書く中身(自然災害編)
- 事業所の立地と想定される災害(ハザードマップの確認)
- 優先して継続する業務と、中断できる業務の切り分け
- 参集基準と職員の安否確認の方法
- 利用者の安否確認と避難の手順
- 備蓄(食料・飲料水・医薬品・衛生用品・電源)
- 復旧の目標時間と、再開までの段取り
- 関係機関・協力法人の連絡先
5. BCPに書く中身(感染症編)
- 平時の備え(体制、備蓄、健康管理)
- 発生時の初動(報告ルート、保健所への連絡)
- 職員が感染・濃厚接触となった場合の勤務体制
- 利用者に感染者が出た場合のサービス提供の判断基準
- 一部休業・縮小時の代替サービスの調整
自然災害編
- 事業所の立地と想定される災害(ハザードマップの確認)
- 優先して継続する業務と、中断できる業務の切り分け
- 参集基準と職員の安否確認の方法
- 利用者の安否確認と避難の手順
- 備蓄(食料・飲料水・医薬品・衛生用品・電源)
- 復旧の目標時間と、再開までの段取り
- 関係機関・協力法人の連絡先
感染症編
- 平時の備え(体制、備蓄、健康管理)
- 発生時の初動(報告ルート、保健所への連絡)
- 職員が感染・濃厚接触となった場合の勤務体制
- 利用者に感染者が出た場合のサービス提供の判断基準
- 一部休業・縮小時の代替サービスの調整
6. 非常災害対策計画との違い
| 非常災害対策計画 | BCP(自然災害) | |
|---|---|---|
| 目的 | 発災直後の避難・救出 | 発災後の業務継続・早期再開 |
| 中身 | 職員の役割分担、通報・連絡体制、避難経路 | 優先業務、参集基準、復旧目標 |
| 訓練 | 避難・救出訓練を定期的に | BCP訓練を定期的に |
内容が重複することは差し支えありませんが、両方が必要です。避難訓練の回数は基準上の定めがなく、消防法上の防火管理者・消防計画に基づく訓練義務に従うことになります。
7. 自主点検チェックリスト
- 感染症BCPと自然災害BCPの2本があるか
- BCPの研修・訓練の記録があるか
- BCPを直近で見直した記録があるか
- 感染対策委員会をおおむね3月に1回以上開催しているか
- 感染症の研修・訓練を年2回以上実施しているか
- 感染症の指針を整備しているか(BCPとは別に)
- 非常災害に関する具体的計画があり、避難訓練を実施しているか
- 消防計画を所轄消防署に届け出ているか
非常災害対策計画
- 目的:発災直後の避難・救出
- 中身:職員の役割分担、通報・連絡体制、避難経路
- 訓練:避難・救出訓練を定期的に
BCP(自然災害)
- 目的:発災後の業務継続・早期再開
- 中身:優先業務、参集基準、復旧目標
- 訓練:BCP訓練を定期的に
8. まとめ
減算を避けるという観点だけで言えば、確認すべきは「BCPが2本あるか」の1点に尽きます。そのうえで、研修・訓練・見直しの記録を残す。
感染症対策の委員会・指針・研修・訓練は減算の直接の対象ではありませんが、運営指導の確認項目に含まれます。年間計画に組み込んでおいてください。
あわせて読みたい虐待防止措置の実務|委員会・研修・担当者と1%減算よくある質問
感染症の指針を作っていればBCPを作ったことになりますか。
なりません。指針とBCPは別の文書です。BCP未策定減算の経過措置では「感染症の予防及びまん延の防止のための指針の整備と、非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合に減算しない」とされていましたが、これは裏を返せば両者が別物であることを示しています。
BCPは1つの文書にまとめてもよいですか。
1つの文書にまとめること自体は可能ですが、感染症と自然災害の両方の内容が備わっている必要があります。災害BCPだけでは未策定と判断されます。
経過措置はまだ使えますか。
令和7年3月31日で終了しています。令和7年4月1日以降、BCPが未策定であれば直ちに減算対象です。例外として、就労選択支援のみ令和9年3月31日まで減算を適用しない経過措置が続いています。
避難訓練は年に何回必要ですか。
運営基準では「定期的に」とされ、回数の定めはありません。実務上は消防法上の防火管理者・消防計画に基づく訓練義務に従うことになります。
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体系的に知りたい方はこちら運営指導 完全ガイド|確認される範囲と当日までの準備の全体像主な参考資料
- 参考:「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(省令)」/「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準(省令)」/厚生労働省「障害福祉サービス事業所等における感染対策の手引き」/「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」/「各自治体が公表する集団指導資料」
※本記事は令和8年8月28日時点の法令・告示・通知等に基づく一般的な整理です。指定権者の条例・手引き・個別運用、最新の報酬告示・Q&Aを必ず確認してください。

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