開業までの期間は「申請してから何か月」ではなく、指定を受けたい日から逆算して考えます。工程は、構想・計画、物件と人員、事前協議、申請という流れで進み、物件と人員は順番ではなく並行して進めます。最初に決めるのは、サービス種別・定員・法人・開業希望時期の4つです。
- 指定希望日から逆算して工程を組む
- 物件と人員は並行して進める
- 事前協議は計画の中身を説明する場
この記事で分かること
障害福祉サービス事業所の開業までにかかる期間について、全体の工程、最初に決めること、物件と人員を並行して進める理由、指定権者との事前協議、申請書類の提出から指定日まで、静岡市と広島市の案内例、スケジュールが遅れる典型例、6か月前から1か月前までのチェックリストを整理します。
はじめに
「障害福祉の事業所は、開業までどのくらいかかりますか」。これも開業のご相談で必ずいただく質問です。結論から申し上げると、数か月単位の準備が必要で、「何か月」と一律に言い切ることはできません。期間を決めるのは、指定権者が定める事前協議と申請書類の提出期限、物件の建築・消防の確認、そしてサービス管理責任者を確保できる時期の3つです。
たとえば静岡市は、事業開始のおおむね3か月前を目途に事前協議を行い、申請書類は指定を受けたい月の2か月前の1日までに提出するよう案内しています。広島市は、指定希望日の3か月前までに1回目の事前相談を終えるよう案内しています。いずれも「申請してから審査に数か月かかる」という話ではなく、その前段の準備を含めて逆算が必要だという意味です。この記事では、開業日から逆算して工程を組み立てる方法を整理します。
この記事のポイント
- 期間は指定権者の事前協議・提出期限から逆算して決まる。全国一律の日数はない
- 静岡市は事業開始のおおむね3か月前に事前協議、申請は指定希望月の2か月前の1日まで(2026年4月15日時点の案内)
- 広島市は指定希望日の3か月前までに1回目の事前相談。建築部局・消防部局との協議も必要と案内されている
- 物件と人員は順番ではなく並行して進める。どちらか一方が決まらないと工程全体が止まる
- 書類に不備があると指定が翌月以降にずれる。家賃と人件費はその間も発生する
先に決めるもの
- 開業(指定を受けたい)希望日
- サービス種別と定員
- 法人の形態(すでにある法人を使うか、新設するか)
逆算して決まるもの
- 申請書類の提出期限(指定権者の案内による)
- 事前協議の時期(多くはさらに1〜2か月前)
- 物件の契約時期、内装・消防工事の完了時期
- 職員の採用時期と、開所前研修の時期
1. 結論:指定希望日から逆算して組み立てる
結論として、開業までの期間は「申請してから何か月」ではなく、「指定を受けたい月から逆算して何をいつまでに終えるか」で決まります。指定権者は申請書類の提出期限を月単位で定めており、1日でも遅れると指定は翌月以降になります。
実務のご相談では、物件を先に契約してから「では何月に開所できますか」と聞かれることが少なくありません。その順序だと、空家賃が発生している間に事前協議や消防の確認を進めることになり、費用面で不利になります。開所希望日を先に置き、そこから逆算した工程表を作ってから物件を決めるほうが、結果的に早く安く開業できます。
2. 開業までの全体工程
結論として、開業までの工程は「構想・計画」「物件と人員」「事前協議」「申請・審査」「開所準備」の5段階に整理できます。このうち時間が読みにくいのは、物件の建築・消防の確認と、サービス管理責任者の採用の2つです。
指定申請の手続そのものの流れは別の記事で詳しく解説しています。ここでは、期間の見通しを立てるという観点で工程を整理します。
あわせて読みたい障害福祉サービスの指定申請とは?開業までの流れ3. 最初に決める4つのこと
結論として、工程表を作る前に「サービス種別」「定員」「法人」「開業希望日」の4つを決めます。この4つが決まらないと、必要な面積も人員も資金も計算できません。
サービス種別は、地域のニーズと自分たちが提供できる支援から決めます。放課後等デイサービスなど、地域によっては新規指定の総量規制で参入できない場合があるため、構想の段階で指定権者に確認しておきます。定員は必要な面積と人員を決める要素です。就労継続支援B型のように原則20人以上と定められているサービスもあります。
法人は、指定を受けるための前提です。新設する場合は定款の事業目的に予定するサービスを含めておきます。設立登記には数週間かかるため、事前協議に間に合うよう逆算します。開業希望日は、多くの指定権者で毎月1日が指定日です。「4月1日」「10月1日」など、区切りのよい月は申請が集中しやすい点も考慮します。
物件側で時間がかかること
- 設備基準を満たす区画がとれるかの確認
- 建築基準法上の用途と、用途変更の要否の確認
- 消防設備の要否と、設置工事の期間
- 内装工事の見積りと施工
人員側で時間がかかること
- サービス管理責任者など、要件を満たす人材の募集と採用
- 実務経験と研修修了の確認(証明書類の取り寄せ)
- 退職予定者の場合、前職の引継ぎ期間
- 開所前の研修と、運営規程・記録様式の読み合わせ
4. 物件と人員を並行して進める理由
結論として、物件と人員は順番ではなく並行して進めます。指定の前提として、設備基準を満たす物件と、人員基準を満たす職員の両方が必要だからです。
とくにサービス管理責任者は、実務経験と研修修了の両方が必要で、要件を満たす人が地域に多くいるとは限りません。採用が決まらないまま物件を契約すると、空家賃を払い続けることになります。逆に、人材だけ先に確保しても、物件が決まらなければ勤務を開始してもらえません。実務では、物件の一次候補を絞りながら採用活動を始め、どちらも見通しが立った段階で契約と内定を同時に進める形をおすすめしています。
あわせて読みたいサービス管理責任者の資格要件|研修・実務経験の数え方と配置人数持参・提出を求められる資料の例
- 事前協議書(指定権者の様式)
- 事業所開設予定物件の平面図(部屋の用途と面積を記載したもの)
- 事業計画書、収支計画
- 法人の登記事項証明書、定款
聞かれることの例
- なぜこのサービスを、この地域で始めるのか
- 利用者の見込みと、どう把握したか
- 人員の配置予定と採用の見通し
- 就労系は生産活動の内容と収入の見込み
5. 指定権者との事前協議
結論として、事前協議は「書類を見せる場」ではなく「計画の中身を説明する場」です。指定権者は、基準を満たしているかだけでなく、その地域で継続的にサービスを提供できる計画かどうかを見ています。
実務のご相談で多いのは、事前協議の予約が取れる時期を確認しないまま工程を組んでしまうケースです。予約制の指定権者では、希望した週にすぐ相談できるとは限りません。開業希望日を決めたら、まず事前協議の予約を入れる時期を確認してください。
6. 申請書類の提出から指定まで
結論として、申請書類は指定権者が定める期限までに提出し、審査と補正、現地確認を経て指定を受けます。指定日は多くの指定権者で毎月1日です。
審査では、書類同士の整合性が確認されます。運営規程・勤務形態一覧表・平面図・資格証がそれぞれ独立して正しいだけでは足りず、記載内容が互いに一致している必要があります。補正の依頼が続くと提出期限に間に合わず、指定が翌月以降になります。
なお、令和8年4月からは指定申請等の様式が全国統一の標準様式に移行しています。指定権者ごとの独自様式を前提にした古い記事や書式は使わないよう注意してください。
あわせて読みたい【令和8年4月施行】障害福祉サービスの指定申請等の様式が全国統一へ7. 自治体の案内例|静岡市・広島市
結論として、事前協議の時期と提出期限は指定権者ごとに異なります。ここでは2つの自治体の案内を例として紹介します。いずれも各自治体の公表内容であり、他の地域には当てはまりません。
| 静岡市の案内 | 広島市の案内 | |
|---|---|---|
| 事前協議・事前相談 | 事業開始のおおむね3か月前を目途に、予約のうえ事前協議 | 指定希望日の3か月前(指定希望月の4か月前の末日)までに1回目の相談を完了 |
| 求められる資料の例 | 事前協議書、事業所開設予定物件の平面図(部屋の用途と面積を記載) | 建築部局・消防部局との協議。用途変更が必要な場合があるため建築士等へ相談 |
| 申請書類の提出期限 | 指定を受けたい月の2か月前の1日まで(例:5月指定は2月1日) | 指定希望日の1か月前まで(完成版) |
| 指定日 | 審査で適正と認められた場合、翌月1日 | 毎月1日。書類に不備があると翌月以降になることがある |
この2例からわかるのは、事前協議や事前相談の時期が「事業開始の3か月前」前後に置かれていること、そして申請書類の提出期限が指定希望月より前に設定されていることです。つまり、開業したい月の半年前には準備を始めておく必要があります。
遅れの原因
- 物件契約後に用途変更や消防設備の追加が判明した
- サービス管理責任者の採用が決まらない
- 法人の設立登記や定款変更が間に合わなかった
- 事前協議の予約が希望した時期に取れなかった
- 補正の往復が続き、提出期限に間に合わなかった
前倒しでできる対策
- 一次候補の段階で建築・消防を確認し、費用と期間を見積もる
- 求人は物件探しと同時に開始し、資格要件を先に確認する
- 定款の事業目的を設立時から広めに整えておく
- 開業希望日を決めたらすぐ予約可能時期を確認する
- 提出前に書類間の記載を突き合わせて点検する
8. スケジュールが遅れる典型例
結論として、遅れの原因はほぼ決まっています。物件、人員、法人、事前協議の予約、そして書類の不備の5つです。
なかでも影響が大きいのが物件です。契約後に用途変更が必要とわかると、設計と工事で数か月が加わります。実務のご相談でも、物件の契約を急いだために開所が2か月以上ずれた例が見られます。物件は「早く決める」より「先に確認してから決める」ほうが結果的に早くなります。
あわせて読みたい障害福祉事業所の物件選び|設備基準・用途変更・消防の確認ポイント9. 6か月前からのチェックリスト
結論として、次の4段階で確認していくと工程が管理しやすくなります。指定権者の案内によって時期は前後するため、実際の期限に合わせて調整してください。
- 6か月前/サービス種別・定員・開業希望日を決める。法人の設立または定款変更に着手する。地域の総量規制の有無を指定権者に確認する。資金計画の骨格を作る
- 3か月前/物件の候補を絞り、建築・消防を確認する。事前協議を行う。サービス管理責任者など主要な人員の内定を得る。内装・消防工事の見積りを取る
- 2か月前/申請書類を作成し、期限までに提出する。運営規程・重要事項説明書・各種記録様式を整える。請求システムを選定する
- 1か月前/工事の完了と消防の確認を終える。備品を搬入する。職員の研修を行う。相談支援事業所など関係機関へあいさつに回る
よくある質問
一律の最短期間はありません。指定権者の事前協議と提出期限が決まっているため、それより早くはなりません。物件が居抜きで工事が不要、法人も人員もすでにそろっている場合でも、事前協議から指定まで数か月を見込んでください。
設立登記自体は数週間で完了しますが、定款の事業目的に予定するサービスを含める必要があります。事前協議の時期から逆算し、余裕をもって着手してください。既存の法人を使う場合も、事業目的の記載が足りなければ定款変更が必要です。
変更の内容によっては再度の協議や書類の差し替えが必要になり、指定日が後ろにずれることがあります。事前協議で説明した内容と申請内容が食い違うと審査が長引くため、計画は事前協議の前に固めておくのが安全です。
多くの指定権者では毎月1日が指定日です。月の途中からの指定は原則として想定されていません。開所日は「◯月1日」で計画してください。
提出期限内に補正が完了すれば予定どおりですが、期限を過ぎると指定は翌月以降になります。1か月遅れると、その間の家賃と人件費が余分にかかります。
雇用契約の開始日からです。開所前に採用すると、収入がないまま人件費が出ていきます。一方で、開所前研修や書類整備のために一定の準備期間は必要です。管理者とサービス管理責任者を先に、他の職員は開所の直前にというように、時期をずらす設計が現実的です。
まとめ
障害福祉事業所の開業までの期間は、「申請してから何か月」ではなく、指定権者が定める事前協議の時期と申請書類の提出期限から逆算して決まります。静岡市は事業開始のおおむね3か月前の事前協議と、指定希望月の2か月前の1日までの提出を案内しています。広島市は指定希望日の3か月前までの事前相談を案内しています。いずれも、開業したい月の半年前には動き始めておく必要があるということです。
工程が遅れる原因はほぼ決まっています。物件の建築・消防の確認、サービス管理責任者の採用、法人の設立や定款変更、事前協議の予約、そして書類の不備です。このうち物件と人員は、順番ではなく並行して進めてください。どちらか一方を待っている時間が、そのまま開業の遅れになります。
開業希望日を先に決め、指定権者の案内に合わせた工程表を作ることが出発点です。遅れは家賃と人件費という形で運転資金を削っていきます。余裕をもった計画をおすすめします。
開業スケジュールの逆算から、指定申請までご支援します
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、指定申請だけでなく、人員配置の設計、就業規則や社会保険の手続き、処遇改善加算の取得までご相談いただけます。開業支援は20万円〜です。
静岡・神奈川・愛知を中心に、オンラインで全国対応しています。指定権者の事前協議の時期と提出期限を確認し、物件・人員・法人の準備を並行で進める工程表を一緒に作ります。開業希望日が決まった段階でご相談ください。
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体系的に知りたい方はこちら就労選択支援 完全ガイド|対象者・指定要件・支援員・基本報酬・中立性主な参考資料
- 参考:静岡市「指定障害福祉サービス等事業所の新規指定・指定更新・指定変更」/広島市「障害福祉サービス事業所等の新規指定等に係る事前相談及びスケジュール」/厚生労働省「障害福祉サービス事業者等の指定のガイドライン(案)」(令和8年6月5日 社会保障審議会障害者部会資料)/厚生労働省「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン」/J-Net21(中小企業基盤整備機構)「障害者就労継続支援A型・B型」
※本記事は令和8年9月5日時点の法令・通知・公表資料に基づく一般的な整理です。記載した自治体の案内は各自治体が公表している内容であり、他の地域には当てはまりません。また、厚生労働省の指定のガイドラインは令和8年6月時点で「案」の段階の資料です。制度・運用は改正や指定権者ごとの取扱いにより変わるため、最新情報は指定権者等へ必ずご確認ください。

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。
これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。
