身体拘束等の適正化|3要件・記録・減算率

身体拘束等の適正化|3要件・記録・減算率

身体拘束等は原則として禁止で、生命や身体を保護するため緊急やむを得ない場合に限り、3つの要件をすべて満たしたときだけ認められます。判断は現場職員の個人判断ではなく、組織として行う必要があります。やむを得ず実施した場合は4項目の記録が義務づけられ、委員会・指針・研修は令和5年4月1日から適用されています。

  • 3要件をすべて満たす場合に限られ、組織として判断する
  • 実施したときは4項目を記録する
  • 身体拘束廃止未実施減算は令和6年4月から大幅に強化された

この記事で分かること

身体拘束等の適正化について、緊急やむを得ない場合の3要件、記録に残す4項目、委員会・指針・研修の義務、そしてサービスによって10倍違う減算率を整理し、現場で迷いやすい行為の判断まで解説します。

はじめに

身体拘束は「原則禁止、緊急やむを得ない場合のみ例外」です。例外に当たるかどうかは3要件で判断し、記録まで残して初めて適正化されたことになります。

この記事のポイント

  • 緊急やむを得ない場合の3要件
  • 記録に残す4項目
  • 委員会・指針・研修の義務
  • 減算率がサービスで10倍違う理由

1. 原則と例外

運営基準は、利用者または他の利用者の生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他の行動を制限する行為を行ってはならない、と定めています。

3要件(すべてを満たすことが必要)

要件内容
切迫性本人または他の利用者等の生命・身体が危険にさらされる可能性が著しく高い
非代替性身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がない
一時性行動制限が一時的なものである

重要なのは、組織として確認・判断することです。現場職員の個人判断で実施し、後から報告する運用は認められません。委員会または管理者・サービス管理責任者を含む会議で確認し、その過程を残してください。

2. 記録に残す4項目

やむを得ず身体拘束等を行った場合、次の記録が義務づけられています。

  • その態様(何を、どのように)
  • その時間(開始・終了時刻)
  • その際の利用者の心身の状況
  • 緊急やむを得ない理由(3要件の当てはめ)

「安全のため」だけでは理由になりません。どの場面で、何が切迫していて、他にどんな方法を検討して不可能だったのか。ここまで書いて初めて記録として成立します。

図解1原則禁止、例外は3要件すべてを満たす場合のみ
切迫性本人または他の利用者等の生命・身体が危険にさらされる可能性が著しく高い
非代替性身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がない
一時性行動制限が一時的なものである

組織として判断する

  • 現場職員の個人判断で実施し、後から報告する運用は認められません
  • 委員会または管理者・サービス管理責任者を含む会議で確認し、その過程を残す

記録に残す4項目

  • その態様(何を、どのように)
  • その時間(開始・終了時刻)
  • その際の利用者の心身の状況
  • 緊急やむを得ない理由(3要件の当てはめ)
※「安全のため」だけでは理由になりません。どの場面で、何が切迫していて、他にどんな方法を検討して不可能だったのか。ここまで書いて初めて記録として成立します。

3. 委員会・指針・研修

項目内容頻度
身体拘束等適正化検討委員会開催し、結果を従業者に周知徹底年1回以上
指針の整備身体拘束等の適正化のための指針常時整備
研修の実施従業者への研修年1回以上+新規採用時(新規採用時には必ず実施)

これらは令和5年4月1日から適用されています。虐待防止委員会と同日開催すること自体は可能ですが、議事録は分けて残してください。

指針に盛り込む内容の例

  • 身体拘束等の適正化に関する基本的考え方
  • 委員会その他事業所内の組織に関する事項
  • 職員研修に関する基本方針
  • 事業所内で発生した場合の報告・対応の方法
  • 利用者等への指針の閲覧に関する事項
図解2委員会・指針・研修(令和5年4月1日から適用)
身体拘束等適正化検討委員会開催し、結果を従業者に周知徹底
年1回以上
指針の整備身体拘束等の適正化のための指針
常時整備
研修の実施従業者への研修
年1回以上+新規採用時(新規採用時には必ず実施)

指針に盛り込む内容の例

  • 身体拘束等の適正化に関する基本的考え方
  • 委員会その他事業所内の組織に関する事項
  • 職員研修に関する基本方針
  • 事業所内で発生した場合の報告・対応の方法
  • 利用者等への指針の閲覧に関する事項

運用のコツ

  • 虐待防止委員会と同日開催すること自体は可能
  • ただし議事録は分けて残す
※減算の要件は、記録・委員会(年1回以上)・指針の整備・研修(年1回以上)の4つすべてです。
あわせて読みたい虐待防止措置の実務|委員会・研修・担当者と1%減算

4. 身体拘束廃止未実施減算

令和6年4月から、従前の「5単位/日」より大幅に強化され、所定単位数に対する率になりました。

区分減算率主な対象
施設・居住系10%障害者支援施設、療養介護、障害児入所施設、共同生活援助、宿泊型自立訓練
訪問・通所系1%居宅介護、生活介護、短期入所、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、児童発達支援、放課後等デイサービスほか

減算の要件(4つすべて)

  1. 身体拘束等を行う場合の記録
  2. 委員会の年1回以上の開催
  3. 指針の整備
  4. 研修の年1回以上の実施

適用期間:事実が生じた月の翌月から、改善が認められた月まで(最短3か月)

グループホームの場合、月の報酬が1,000万円規模であれば10%は100万円です。3か月続けば300万円。体制整備の手間とは比べものになりません。

図解3減算率はサービスで10倍違う
施設・居住系
10%減
訪問・通所系
1%減

施設・居住系(10%)

  • 障害者支援施設、療養介護、障害児入所施設
  • 共同生活援助、宿泊型自立訓練

訪問・通所系(1%)

  • 居宅介護、生活介護、短期入所
  • 就労移行支援、就労継続支援A型・B型
  • 児童発達支援、放課後等デイサービス ほか
※令和6年4月から、従前の「5単位/日」より大幅に強化され、所定単位数に対する率になりました。適用期間は事実が生じた月の翌月から改善が認められた月まで(最短3か月)です。グループホームの場合、月の報酬が1,000万円規模であれば10%は100万円。3か月続けば300万円です。
あわせて読みたい障害者グループホームの開業|共同生活援助の指定申請と要件

5. 「これは身体拘束か」の判断

現場で迷いやすい行為を整理します。いずれも、3要件と組織的判断・記録がなければ身体拘束等として扱われます。

  • 車いすやベッドに体幹・四肢をひも等で固定する
  • 立ち上がりを妨げるようないすを使用する
  • 行動を落ち着かせるために向精神薬を過剰に服用させる
  • 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する
  • ミトン型の手袋等を装着させる
  • 部屋の施錠、玄関の常時施錠により外に出られないようにする

「安全のためにやむを得ずやっている」ものほど、記録が残っていない傾向があります。まずは事業所内で洗い出しを行い、3要件に当たるか、代替手段はないかを委員会で検討することから始めてください。

図解4「これは身体拘束か」迷いやすい行為
車いすやベッドに体幹・四肢をひも等で固定する立ち上がりを妨げるようないすを使用する行動を落ち着かせるために向精神薬を過剰に服用させる自分の意思で開けることのできない居室等に隔離するミトン型の手袋等を装着させる部屋の施錠、玄関の常時施錠により外に出られないようにする
※いずれも、3要件と組織的判断・記録がなければ身体拘束等として扱われます。「安全のためにやむを得ずやっている」ものほど、記録が残っていない傾向があります。まずは事業所内で洗い出しを行い、3要件に当たるか、代替手段はないかを委員会で検討することから始めてください。

6. 自主点検チェックリスト

  • 身体拘束等適正化のための指針を整備しているか
  • 委員会を年1回以上開催し、議事録があるか(虐待防止委員会と混在していないか)
  • 研修を年1回以上実施し、記録があるか
  • 新規採用者に対しても研修を実施し、記録があるか
  • 身体拘束等を行った事例について、態様・時間・心身の状況・理由の4項目が記録されているか
  • 3要件の当てはめが記録から読み取れるか
  • 実施の判断が組織的に行われた記録があるか
  • 家族への説明・同意の記録があるか
  • 拘束の解除に向けた検討の経過が残っているか
図解5自主点検チェックリスト
身体拘束等適正化のための指針を整備しているか委員会を年1回以上開催し、議事録があるか(虐待防止委員会と混在していないか)研修を年1回以上実施し、記録があるか新規採用者に対しても研修を実施し、記録があるか態様・時間・心身の状況・理由の4項目が記録されているか3要件の当てはめが記録から読み取れるか実施の判断が組織的に行われた記録があるか家族への説明・同意の記録があるか拘束の解除に向けた検討の経過が残っているか
※身体拘束等の適正化は、「やらない」ことだけが目的ではありません。やむを得ず行う場面が生じたときに、3要件で判断し、組織で決め、記録に残す。この一連の流れを回せる体制をつくることが求められています。
あわせて読みたい障害福祉サービスの法定研修・委員会|年間実施頻度と減算の一覧

7. まとめ

身体拘束等の適正化は、「やらない」ことだけが目的ではありません。やむを得ず行う場面が生じたときに、3要件で判断し、組織で決め、記録に残す。この一連の流れを回せる体制をつくることが求められています。

共同生活援助では減算率が10%と重く設定されています。指針・委員会・研修・記録の4点は、優先して整備してください。

よくある質問

Q

3要件のうち1つでも満たせば身体拘束を行えますか。

A

切迫性・非代替性・一時性の3要件をすべて満たすことが必要です。加えて、現場職員の個人判断ではなく組織として確認・判断し、その過程を記録することが求められます。

Q

記録には何を書けばよいですか。

A

態様、時間、その際の利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由の4項目です。「安全のため」だけでは理由になりません。3要件の当てはめが読み取れる記述にしてください。

Q

グループホームの減算率が高いのはなぜですか。

A

身体拘束廃止未実施減算は、施設・居住系が10%、訪問・通所系が1%とされており、共同生活援助は施設・居住系に区分されるためです。指針・委員会・研修・記録の4点は優先して整備してください。

Q

玄関を施錠していることも身体拘束になりますか。

A

自分の意思で出入りできない状態は行動の制限に当たり得ます。3要件と組織的判断・記録がなければ身体拘束等として扱われますので、まず事業所内で洗い出し、委員会で検討することをおすすめします。

身体拘束等の適正化に向けた指針・記録づくりを支援します

障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、指定申請・報酬請求の実務と労務管理の両面を、ひとつの窓口でご相談いただけます。

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主な参考資料

  • 参考:「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(省令)」/「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準(省令)」/厚生労働省「身体的拘束等の適正化の推進」/「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」

※本記事は令和8年8月28日時点の法令・告示・通知等に基づく一般的な整理です。指定権者の条例・手引き・個別運用、最新の報酬告示・Q&Aを必ず確認してください。

執筆者 永野将太(行政書士・社会保険労務士)
執筆者WRITER
永野 将太
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズ 代表

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。

これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。