二以上勤務者の社会保険料按分|健康保険と厚生年金で按分率が異なるケース(最高等級者の月額変更)

二以上勤務者の社会保険料按分 健康保険と厚生年金で按分率が異なるケース

二以上事業所勤務被保険者の社会保険料は、各事業所の報酬月額を合算して標準報酬月額を決め、報酬額に応じて按分します。健康保険と厚生年金で使う報酬月額が異なる場合があり、健康保険は月額変更後、厚生年金は最高等級で月額変更が行われず従前の報酬月額で計算するというケースが起こります。この場合、健康保険と厚生年金で按分率が異なります。

  • 保険料は合算して計算し、報酬額に応じて按分する
  • 健康保険と厚生年金で使う報酬月額が異なることがある
  • その場合は按分率も健康保険と厚生年金で異なる

はじめに

2か所以上の事業所で社会保険に加入する「二以上事業所勤務被保険者」は、各事業所の報酬月額を合算したうえで社会保険料を計算し、その保険料を各事業所の報酬月額に応じて按分します。

ただし、健康保険だけが月額変更となり、厚生年金は最高等級のため月額変更しない場合は、按分の考え方に注意が必要です。

この記事では、実際の事例をもとに、按分率の考え方を整理します。会社名・人物名は伏せ、金額は実務上の説明用として示しています。

1. 二以上勤務者の社会保険料は「合算して按分」する

二以上事業所勤務被保険者の社会保険料は、まず各事業所の報酬月額を合算したうえで計算します。そのうえで、計算した保険料を各事業所の報酬月額に応じて按分します。

通常であれば、健康保険と厚生年金は同じように計算しやすいため、按分率も同じになると考えがちです。しかし、健康保険だけ月額変更となり、厚生年金は最高等級のため月額変更しないという状況では、按分に使う報酬月額が健康保険と厚生年金で食い違います。

図解1二以上勤務者の保険料計算は「合算」→「按分」の2段階
1. 合算する各事業所の報酬月額を合算して、標準報酬月額を決定する
→
2. 保険料を計算合算した標準報酬月額をもとに、社会保険料を計算する
→
3. 按分する計算した保険料を、各事業所の報酬月額に応じて按分する
※ミスが起こりやすいのは3つ目の「按分」です。按分の分母に使う報酬月額が、健康保険と厚生年金で異なることがあります。

2. 健康保険と厚生年金で報酬月額が違うケース

今回のケース|前提となる報酬月額

二以上勤務をしている従業員について、次のような状況になった事例で整理します。

前提各事業所の報酬月額
区分A社B社
健康保険・月額変更後の報酬月額1,300,000円150,000円
厚生年金・従前の報酬月額1,133,333円150,000円
※表は横にスクロールできます

A社の報酬が変動したため、健康保険については月額変更が行われました。

一方、厚生年金については、すでに合算した標準報酬月額が最高等級に達しているため、今回の月額変更では標準報酬月額が変更されません。

そのため、健康保険と厚生年金を同じ按分率で計算するのではなく、それぞれ別に按分率を計算する必要があります。

健康保険は「月額変更後」の報酬月額で計算する

健康保険については、月額変更後の報酬月額を使います。

1,300,000円 + 150,000円 = 1,450,000円(按分計算の分母)

A社:1,300,000円 ÷ 1,450,000円 = 約89.66%

B社:150,000円 ÷ 1,450,000円 = 約10.34%

健康保険料の本人負担額を、この割合でそれぞれの事業所に按分します。

厚生年金は「従前」の報酬月額で計算する

一方、厚生年金については、今回のケースでは最高等級のため月額変更が行われません。そのため、厚生年金の按分については従前の報酬月額を使用します。

1,133,333円 + 150,000円 = 1,283,333円(按分計算の分母)

A社:1,133,333円 ÷ 1,283,333円 = 約88.31%

B社:150,000円 ÷ 1,283,333円 = 約11.69%

健康保険の按分率(約89.66%/約10.34%)とは、はっきり数値が異なります。

3. 本人負担額を按分する(計算例)

たとえば、厚生年金の合算標準報酬月額が650,000円の場合、本人負担額は次のようになります。

650,000円 × 18.3% ÷ 2 = 59,475円

A社:59,475円 × 約88.31% = 約52,523円

B社:59,475円 × 約11.69% = 約6,952円

合計:52,523円 + 6,952円 = 59,475円

健康保険と厚生年金で「分母」が違う

今回のケースを一覧にすると、次のとおりです。

比較表健康保険と厚生年金で按分の分母が異なる
区分健康保険厚生年金
A社の報酬月額1,300,000円1,133,333円
B社の報酬月額150,000円150,000円
按分の分母1,450,000円1,283,333円
A社の按分率約89.66%約88.31%
B社の按分率約10.34%約11.69%
※表は横にスクロールできます
※健康保険は月額変更後の報酬月額、厚生年金は従前の報酬月額を使っているため、分母も按分率も一致しません。

二以上勤務者だからといって、健康保険と厚生年金の按分率が必ず同じになるわけではありません。

特に、「健康保険は月額変更されたが、厚生年金は最高等級のため変更されない」というケースでは、健康保険と厚生年金を分けて確認することが重要です。

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4. 算定基礎届の時期にも注意

さらに注意したいのが、その後の算定基礎届です。

今回のケースのように、月額変更の時点では厚生年金について従前の報酬月額を使っていたとしても、9月以降は新しい算定基礎届の結果が反映されます。

そのため、「月額変更時の按分率をそのまま使い続ける」のではなく、9月からは新たに決定された報酬月額をもとに、按分率を計算し直す必要があります。

よくある質問

Q
二以上勤務者の社会保険料は、どのように計算しますか。
A

各事業所の報酬月額を合算したうえで社会保険料を計算し、その保険料を各事業所の報酬月額に応じて按分します。合算して計算する段階と、按分する段階の2つに分かれます。

Q
健康保険と厚生年金の按分率は、必ず同じになりますか。
A

同じになるとは限りません。健康保険は月額変更されたが、厚生年金は最高等級のため変更されないというケースでは、按分に使う報酬月額が異なるため、按分率も一致しません。

Q
なぜ健康保険と厚生年金で分母が違うのですか。
A

健康保険は月額変更後の報酬月額を使うのに対し、厚生年金は月額変更が行われていないため従前の報酬月額を使うからです。今回のケースでは、健康保険の分母が1,450,000円、厚生年金の分母が1,283,333円になります。

Q
厚生年金が最高等級だと、月額変更はどうなりますか。
A

今回のケースでは、合算した標準報酬月額がすでに最高等級に達しているため、月額変更があっても標準報酬月額が変更されません。その結果、按分には従前の報酬月額を使うことになります。

Q
按分した金額の合計は、本人負担額と一いたしますか。
A

一致します。今回の例では、本人負担額59,475円に対し、A社が約52,523円、B社が約6,952円で、合計59,475円になります。按分後は必ず合計を確認してください。

Q
8月に計算した按分率は、そのまま使い続けてよいですか。
A

使い続けることはできません。9月以降は新しい算定基礎届の結果が反映されるため、新たに決定された報酬月額をもとに按分率を計算し直す必要があります。

Q
実際の案件では、何を確認すればよいですか。
A

健康保険と厚生年金のそれぞれについて、「現在どの報酬月額が有効なのか」を確認してから保険料を按分することが大切です。標準報酬月額の決定通知や、月額変更・算定基礎届の処理状況を確認してください。

まとめ

二以上勤務者の社会保険料を計算するときは、単純に一つの按分率を健康保険・厚生年金の両方に使用しないことが重要です。

まとめ今回のケースの按分計算
区分A社B社分母
健康保険1,300,000円150,000円1,450,000円
厚生年金1,133,333円150,000円1,283,333円
※表は横にスクロールできます

特に厚生年金の最高等級者について月額変更が発生した場合は、健康保険と厚生年金それぞれについて「現在どの報酬月額が有効なのか」を確認してから保険料を按分することが大切です。

当法人では、行政書士と社会保険労務士が同一法人に在籍し、障害福祉事業所の社会保険・労働保険の手続きから給与計算まで対応しています。二以上勤務や標準報酬月額の取扱いでご不明な点があれば、ご相談ください。初回相談は0円、お返事は原則1営業日以内です。

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※この記事は、二以上事業所勤務被保険者の社会保険料按分について、実務上の考え方を整理したものです。記載の金額は説明用の設例であり、実際の取扱いは個別の事情によって異なります。個別案件では、標準報酬月額の決定通知や月額変更・算定基礎届の処理状況等を確認してください。

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主な参考資料

執筆者 永野将太(行政書士・社会保険労務士)
執筆者WRITER
永野 将太
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズ 代表

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。

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