36協定とは|障害福祉事業所の締結・届出と時間外労働の上限規制

36協定とは|障害福祉事業所の締結・届出と上限規制

36協定は労働基準法第36条に基づく労使協定で、時間外労働や休日労働をさせるために必要です。残業がないと考えている事業所でも、急な欠勤対応や行事などで時間外労働が生じることがあります。締結の相手方は、過半数労働組合がなければ過半数代表者で、その選び方にも要件があります。

  • 時間外労働・休日労働をさせるには締結と届出が必要
  • 締結の相手方は過半数労働組合または過半数代表者
  • 時間外労働には上限規制があり、特別条項にも要件がある

この記事で分かること

障害福祉サービス事業所を運営するうえで必要になる36協定について、締結の相手方の選び方、協定に定める事項、時間外労働の上限規制と特別条項、様式と電子申請・本社一括届出、事業所ごとに必要になる理由、就労継続支援A型の利用者の扱い、変形労働時間制や夜勤との関係までを整理します。

はじめに

障害福祉サービス事業所は、シフト勤務が基本です。急な欠員、利用者の体調不良、送迎の遅れ、行事の準備、監査や運営指導の前の書類整備。予定していた勤務時間を超える日は、必ず出てきます

そのときに必要なのが36協定です。36協定を締結して労働基準監督署に届け出ていなければ、法定労働時間を1分でも超えて働かせた時点で労働基準法違反になります。残業代を払っているかどうかは関係ありません。

この記事では、障害福祉サービス事業所の実情に沿って、36協定の締結から届出、上限規制の数え方までを整理します。労働時間や夜勤・宿直そのものの取扱いは別の記事にまとめていますので、あわせてご覧ください。

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この記事のポイント

  • 36協定がないまま法定労働時間を超えて働かせると、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になる
  • 締結は事業場ごと。複数の事業所を持つ法人は、原則として事業所の数だけ協定と届出が必要
  • 過半数代表者は管理監督者以外から、投票・挙手等の民主的な手続で選ぶ。会社が指名した人ではだめ
  • 上限は原則月45時間・年360時間。特別条項をつけても年720時間以内、単月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内、月45時間超は年6回まで
  • 届出は有効期間の開始日より前に。届け出て初めて効力が生じる
  • 就労継続支援A型の利用者は労働者。過半数の母数に含まれ、雇用契約を結んでいる以上36協定の対象にもなる
  • 電子申請なら、過半数代表者が事業所ごとに異なっていても本社一括届出ができる
図解1法定労働時間と所定労働時間の違い

法定労働時間(労働基準法32条)

  • 1日8時間・1週40時間が上限
  • ただし特例措置対象事業場(保健衛生業などで、常時使用する労働者が10人未満)は1週44時間
  • この時間を1分でも超えて働かせるには36協定が必要

所定労働時間(就業規則・雇用契約)

  • 事業所が自分で決めた勤務時間。例:1日7時間、1週35時間
  • 所定を超えても法定内であれば36協定は不要(法定内残業)
  • 割増賃金(1.25倍)の義務も、原則として法定を超えた部分から
法定休日に働かせる場合も36協定が必要届出をして初めて効力が生じる
※常時使用する労働者が10人未満の保健衛生業などは「特例措置対象事業場」として1週44時間が上限になります。障害福祉サービス事業所はこの保健衛生業に該当することが多く、小規模な事業所ほど関係します。

1. 36協定とは

36協定は、労働基準法第36条にもとづく労使協定です。正式には「時間外労働・休日労働に関する協定届」といいます。この協定を結び、労働基準監督署長に届け出ることによって、法定労働時間を超えて働かせても罰せられなくなるという効果が生まれます。

注意したいのは、36協定は免罰効果を与えるだけだということです。実際に時間外労働を命じるためには、就業規則や雇用契約に「業務上の必要があるときは時間外労働を命じることがある」という定めが必要です。36協定だけでは、労働者に残業を命じる根拠にはなりません。

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2. 障害福祉の現場で36協定が要る場面

「うちは残業がないから36協定はいらない」という事業所がありますが、次のような場面はすべて時間外労働または休日労働です。

  • 職員の急な欠勤で、別の職員がそのまま延長して勤務した
  • 利用者の体調不良で、送迎から戻るのが遅れた
  • 行事や説明会の準備で、閉所後に残った
  • 運営指導・実地指導の前に、休日に出勤して書類を整えた
  • 研修や会議を勤務時間外に行った
  • グループホームで、夜勤者が来られず日勤者がそのまま夜勤に入った
  • 月末月初の国保連請求の締めで遅くなった

とくに見落とされやすいのが、法定休日の労働です。週1日の法定休日に出勤させる場合も36協定が必要で、届出の様式にも休日労働の欄があります。「振替休日を取らせたから大丈夫」と考えがちですが、事前に休日を振り替えたのでなければ休日労働として扱われます。

また、シフト制の事業所では、そもそも「所定労働時間」がどこまでなのかという感覚が薄くなりがちです。就業規則で1日の所定労働時間と法定休日を明確にしておかないと、何時間目から時間外にあたるのかを判断できません。

3. 誰と締結するか(過半数代表者)

36協定は、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があればその組合と、なければ労働者の過半数を代表する者と締結します。障害福祉サービス事業所の多くは後者です。

過半数代表者の3つの要件

  • 管理監督者でないこと/労働基準法41条2号の管理監督者は代表者になれません。施設長や管理者が管理監督者に当たる場合、その人と結んだ協定は無効になります
  • 民主的な手続で選ばれていること/36協定を締結する者を選出することを明らかにしたうえで、投票、挙手、労働者の話し合い、持ち回り決議などの方法で選ばれる必要があります
  • 使用者の意向にもとづいて選出された者でないこと/会社が指名した、社員の親睦会の代表を自動的に充てた、という選び方は認められません

2021年4月からの新様式には、この3点を満たしていることを確認するチェックボックスが設けられています。チェックがないと受理されません。形式的に押印を省略できるようになった代わりに、選出手続の適正さが正面から問われるようになったということです。

「過半数」の母数に含まれる人

過半数を数えるときの母数は、その事業場で働くすべての労働者です。次の人も含まれます。

  • パート・アルバイト・非常勤職員
  • 管理監督者(代表者にはなれませんが、母数には入ります)
  • 休職中・育児休業中の職員
  • 就労継続支援A型の利用者(事業所と雇用契約を結んでいるため労働者です)

最後の点は就労継続支援A型に固有の論点です。A型の利用者は労働基準法上の労働者ですから、過半数の母数に入りますし、雇用契約を結んでいる以上、時間外労働をさせるには36協定が必要です。利用者数が職員数を上回る事業所では、過半数の計算そのものが変わってきます

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なお、使用者は、過半数代表者であることを理由に不利益な取扱いをしてはならず、代表者が事務を円滑に遂行できるよう必要な配慮を行わなければならないことも定められています(労働基準法施行規則6条の2)。

4. 協定に定める事項と有効期間

36協定に定めなければならない事項は次のとおりです。

  • 時間外労働・休日労働をさせることができる労働者の範囲(業務の種類、労働者数)
  • 対象期間(1年間に限る)と起算日
  • 時間外労働・休日労働をさせることができる具体的な事由
  • 1日・1か月・1年のそれぞれについて延長することができる時間数
  • 労働させることができる法定休日の日数と、その始業・終業の時刻
  • 有効期間
  • 1か月について100時間未満、2〜6か月平均80時間以内を満たすことの確認(チェックボックス)

「具体的な事由」は、「業務の都合上必要なとき」といった包括的な書き方では足りません。障害福祉の事業所であれば、「利用者の急病等への対応」「職員の欠勤に伴う勤務時間の変更」「行事・研修の実施」「月次の請求事務」「監査・実地指導への対応」のように、実際に起こる事由を書き出します。

有効期間は1年間とすることが望ましいとされています。対象期間が1年に限られているため、実務上も1年ごとに締結し直し、届け出るのが基本です。毎年の更新を忘れて、気づいたら失効していたというのが最も多い失敗です。起算日を4月1日にそろえ、就業規則の見直しや処遇改善加算の計画書と同じ時期に確認する運用にしておくと、抜けにくくなります。

図解2原則と、特別条項でも超えられない4本の線

原則(限度時間)

  • 1か月45時間・1年360時間
  • 1年単位の変形労働時間制(対象期間3か月超)を採用している場合は1か月42時間・1年320時間
  • この時間を超えて働かせるには特別条項が必要

特別条項をつけても超えられない線

  • 時間外労働は年720時間以内
  • 時間外+休日労働で単月100時間未満
  • 時間外+休日労働で2〜6か月平均80時間以内
  • 月45時間を超えられるのは年6回まで
年720時間は時間外のみ(休日労働は含まない)100時間・80時間は休日労働を含む2〜6か月平均は年度をまたいで数える
※「2〜6か月平均80時間以内」は、2か月平均・3か月平均・4か月平均・5か月平均・6か月平均のすべてで80時間以内である必要があります。協定の対象期間の起算日にかかわらず、直前の月から遡って計算します。

5. 時間外労働の上限規制

2019年4月(中小企業は2020年4月)から、時間外労働の上限が罰則付きで法律に定められました。それまでは大臣告示による上限にとどまり、特別条項を使えば実質的に青天井でしたが、いまは上限を超えた時点で法違反になります。

数え方で間違いやすいのは、年720時間には休日労働を含まないのに、単月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内には休日労働を含むという点です。グループホームや短期入所のように、法定休日にも勤務が発生する事業所では、時間外だけを見ていると気づかないうちに100時間を超えます。

数え方の具体例

時間外労働休日労働合計
4月40時間8時間48時間
5月50時間16時間66時間
6月60時間30時間90時間
4〜6月の平均68時間(80時間以内なのでセーフ)

この例では、6月単月の90時間は100時間未満なのでセーフ、3か月平均も68時間でセーフです。ただし6月は45時間を超えた月としてカウントされ、この回数が年6回に達すると、それ以上は45時間を超えられなくなります。

もうひとつ注意したいのが管理監督者の扱いです。管理監督者には労働時間・休憩・休日の規定が適用されないため、上限規制の対象外です。ただし、名ばかり管理職として施設長を管理監督者扱いしている場合、その前提が崩れるとすべての時間外労働が未払残業として遡ってくることになります。

6. 特別条項をつける場合

限度時間(月45時間・年360時間)を超える可能性がある場合は、特別条項付きの36協定(様式第9号の2)を締結します。特別条項には、通常の協定事項に加えて次の事項を定めます。

  • 限度時間を超えて労働させることができる場合(できる限り具体的に定める)
  • 1か月の時間外労働+休日労働の時間数(100時間未満)と、1年の時間外労働の時間数(720時間以内
  • 限度時間を超えることができる回数年6回以内
  • 限度時間を超えた労働に係る割増賃金率(法定の25%を超える率とするよう努める)
  • 限度時間を超えて労働させる場合における手続(労使の協議、労働者代表への事前申入れなど)
  • 限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置

「限度時間を超えて労働させることができる場合」も、包括的な書き方では認められません。「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合」という枠組みのなかで、具体的な事由を書きます。「予算・決算業務」「大規模なクレームへの対応」「機械のトラブルへの対応」が国の例示です。障害福祉であれば、「感染症の集団発生に伴う勤務体制の変更」「災害等に伴う臨時の受入れ」などが考えられます。

健康福祉確保措置は、指針で9つの選択肢が示されています。医師による面接指導、深夜業の回数制限、勤務間インターバルの確保、代償休日・特別な休暇の付与、健康診断、連続休暇の取得、心とからだの相談窓口の設置、配置転換、産業医等による助言指導や保健指導です。協定に書いた措置は実際に行う必要があるため、自分の事業所で回るものを選びます。

なお、特別条項は「臨時的に」超える場合の備えです。毎月のように45時間を超えている状態は、そもそも人員配置か業務の組み方に問題があるというサインになります。

図解3締結から届出までの4ステップ
① 内容を決める対象労働者、事由、1日・1か月・1年の延長時間、休日労働の日数、起算日、有効期間
② 過半数代表者を選ぶ管理監督者以外から、投票・挙手等の民主的手続で選出。選出の記録を残す
③ 締結様式第9号(特別条項なら第9号の2)に記入。押印・署名は不要。チェックボックスを忘れない
④ 届出事業場を管轄する労働基準監督署長へ。有効期間の開始日より前に。控えは事業所に保管し、労働者に周知
※36協定は届け出て初めて効力が生じます。締結しただけで届出をしていない状態で時間外労働をさせると、協定がないのと同じ扱いになります。

7. 届出の実務(様式・電子申請)

使う様式

  • 様式第9号/一般条項のみ(限度時間の範囲内)
  • 様式第9号の2/特別条項付き
  • 様式第9号の3/新技術・新商品等の研究開発業務
  • 様式第9号の3の2以降/建設事業、自動車運転の業務、医業に従事する医師など、上限規制の適用が猶予されていた事業・業務(2024年4月から上限規制が適用され、それぞれ専用の様式が用意されています)

障害福祉サービス事業所は、原則として様式第9号または第9号の2です。送迎車の運転をする職員がいても、それだけで「自動車運転の業務」の様式になるわけではありません。適用猶予の対象だった「自動車運転の業務」は、四輪以上の自動車の運転の業務に主として従事する者を指すためです。送迎が業務の一部にとどまる生活支援員や児童指導員は、通常の様式で足ります。

2021年4月からの新様式

  • 押印・署名が不要になった
  • 協定当事者が適正に選出されているかを確認するチェックボックスが新設された
  • 様式が一般条項と特別条項で分かれ、それぞれ記入欄が整理された

押印がなくなった分、誰がどう選ばれたのかを説明できる状態にしておくことが重要になります。選出の際の掲示物、投票用紙、議事録などを残しておきます。

電子申請と本社一括届出

36協定はe-Govから電子申請できます。そして、複数の事業所を持つ法人にとって大きいのが本社一括届出です。

従来、本社一括届出には各事業場の過半数代表者が同一であることが必要でしたが、2021年3月末から、電子申請による場合に限り、事業場ごとに過半数代表者が異なっていても一括届出ができるようになりました。労働保険番号、事業の種類、所在地、労働者数、協定の成立年月日など事業場ごとに異なる部分を除いて協定の内容が同一であることが条件で、事業場一覧表を添付します。

グループホームを複数箇所、日中活動と放課後等デイサービスを別事業所で運営している法人であれば、これだけで毎年の手間がかなり減ります。ただし紙の届出では従来どおりの要件ですので、一括届出を使うなら電子申請が前提になります。

8. 事業所ごとに必要という落とし穴

36協定は事業場単位で締結・届出します。法人単位ではありません。ここが、複数の事業所を運営する法人で最もつまずきやすいところです。

「事業場」は、場所的に独立しているかどうかで判断されます。同じ建物の中で就労継続支援B型と生活介護を多機能で運営しているなら1つの事業場ですが、別の場所にあるグループホーム、別の市にある放課後等デイサービスは、それぞれ別の事業場です。

したがって、原則としては事業所の数だけ、過半数代表者を選び、協定を結び、それぞれの所轄労働基準監督署に届け出る必要があります。本社でまとめて1通だけ出している、というのはよくある誤りです。

ただし、著しく小規模で、組織的関連や事務能力からみて独立性がないものは、直近上位の組織と一括して1つの事業場として扱われます。グループホームの世話人が数名だけといったケースはこれに当たり得ますが、判断は所轄の労働基準監督署によりますので、確認しておくのが確実です。

現実的な進め方としては、各事業所で代表者を選び、協定は同じ内容でそろえたうえで、電子申請の本社一括届出でまとめて出すのがいちばん手間が少なくなります。

図解436協定でカバーできない4つのケースと、管理監督者

36協定があっても、させられない

  • 満18歳未満の年少者/時間外労働・休日労働・深夜業は原則としてさせられない(労基法60条・61条)
  • 妊産婦が請求したとき/時間外・休日・深夜業をさせられない(労基法66条)
  • 育児・介護を行う労働者が請求したとき/1か月24時間・1年150時間を超える時間外労働をさせられない(育児介護休業法)
  • 3歳未満の子を養育する労働者が請求したとき/所定外労働そのものが免除される

そもそも上限規制の対象外

  • 管理監督者/労働時間・休憩・休日の規定が適用されない。ただし深夜割増は必要で、健康確保のための労働時間の状況の把握は義務
  • ただし「管理職だから管理監督者」ではない。職務内容・責任と権限、勤務態様の裁量、賃金等の待遇で実質的に判断される
年少者は36協定の対象にできない請求があったのに断ると法違反
※育児・介護を行う労働者の時間外労働の制限は、労働者からの請求があって初めて効力が生じます。就業規則や労使協定で対象外にできる範囲もあるため、自社のルールとあわせて確認してください。

9. 協定があっても時間外労働をさせられない人

36協定を結んでいても、法律上、時間外労働をさせられない人がいます。障害福祉の現場で実際に問題になりやすいのは、年少者と、育児・介護中の職員です。

満18歳未満の年少者は、そもそも36協定の対象にできません。18歳の誕生日を迎えるまでは、法定労働時間を超える勤務も、法定休日の勤務も、深夜業(原則として22時から翌5時)もさせられません。高校を卒業したばかりの職員を採用したときは、誕生日が来るまでシフトを分けて組む必要があります。

育児・介護を行う労働者から請求があった場合は、1か月24時間・1年150時間を超える時間外労働をさせられません。3歳未満の子を養育する労働者からの請求があれば、所定外労働そのものが免除されます。夜勤のあるサービスでは、深夜業の制限の請求とあわせて、シフトの組み方を先に決めておく必要があります。

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10. 変形労働時間制・夜勤との関係

障害福祉サービス事業所の多くは1か月単位の変形労働時間制を採用しています。変形労働時間制を入れていても、36協定が不要になるわけではありません。変形労働時間制は「どこからが時間外か」の線を引き直す制度であって、時間外労働をさせる根拠にはならないためです。

変形労働時間制での時間外の数え方

  • 1日単位/シフトで8時間を超える所定を定めた日は、その所定時間を超えた分。8時間以下の日は、8時間を超えた分
  • 1週単位/シフトで週40時間を超える所定を定めた週は、その所定時間を超えた分。それ以外の週は40時間を超えた分(1日単位で数えた分を除く)
  • 変形期間単位/変形期間の法定労働時間の総枠(暦日数÷7×40時間)を超えた分(1日・1週で数えた分を除く)

夜勤明けの日をどう扱うか、休憩をどこで取っているか、宿直の許可を受けているかによって、集計結果は大きく変わります。宿直は労働基準監督署長の許可を受けていれば労働時間規制の適用外ですが、許可を受けずに「宿直」と呼んでいるだけの勤務は、通常の夜勤(労働時間)です。この場合、時間外労働の集計が一気に膨らみ、36協定の上限に触れることがあります。

変形労働時間制の採用そのものにも、就業規則への記載または労使協定が必要です。36協定、変形労働時間制の労使協定、就業規則の3点は、必ずセットで確認してください

11. 罰則と、指定基準・運営指導との関係

36協定を締結・届出せずに法定労働時間を超えて働かせた場合、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性があります。上限規制(月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内など)に違反した場合も同じです。罰則の対象は法人だけでなく、実際に指示した管理者個人も含まれます。

障害福祉の事業所にとってさらに重いのは、指定基準・報酬との関係です。

  • 就労継続支援A型/利用者は労働者です。労働基準法違反があれば、指定基準に関わる問題として扱われます
  • 処遇改善加算/賃金改善の実績報告や職場環境等要件と、実際の労務管理は連動します。時間外労働の未払いがあれば、賃金改善の計算自体が成り立ちません
  • 人員基準/勤務形態一覧表と実際の勤務時間が食い違っていれば、人員基準を満たしていないと判断されるおそれがあります。時間外労働の管理は、そのまま勤務形態一覧表の信頼性の問題です

運営指導では、勤務形態一覧表と出勤簿・タイムカードの突合が行われます。時間外労働の実態が記録から読み取れるのに36協定がないという状態は、労働基準監督署に照会されるまでもなく、その場で説明を求められます。

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よくある質問

Q
残業代をきちんと払っていれば、36協定はなくてもよいですか。
A

いいえ。割増賃金の支払いと36協定は別の義務です。36協定を締結・届出せずに法定労働時間を超えて働かせること自体が労働基準法32条違反となり、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になります。

Q
職員が全員パートで、残業がほとんどありません。それでも必要ですか。
A

法定労働時間を超えて働かせる可能性が少しでもあるなら、締結・届出をしておくべきです。急な欠勤への対応や行事の準備など、予定していなくても発生します。なお、1日8時間・1週40時間を超えなければ36協定は不要です(常時10人未満の保健衛生業は1週44時間)。

Q
管理者(施設長)を過半数代表者にしてもよいですか。
A

その管理者が労働基準法上の管理監督者に当たる場合は、代表者になれません。管理監督者かどうかは、役職名ではなく、経営者と一体的な立場にあるか、出退勤に裁量があるか、地位にふさわしい待遇を受けているかで実質的に判断されます。判断に迷う場合は、管理者以外の職員から選出しておくのが安全です。

Q
過半数代表者は、どうやって選べばよいですか。
A

36協定を締結する者を選出することを明らかにしたうえで、投票、挙手、労働者の話し合い、持ち回り決議などの方法で選びます。事業主が指名したり、親睦会の代表を自動的に充てたりすることはできません。掲示物や投票結果など、選出手続がわかる記録を残しておいてください。

Q
グループホームが3か所あります。1通にまとめられますか。
A

協定自体は事業場ごとに必要です。ただし、事業場ごとに異なる部分(所在地、労働者数など)を除いて協定の内容が同一であれば、電子申請による本社一括届出でまとめて提出できます。2021年3月末からは、過半数代表者が事業場ごとに異なっていても一括届出が可能です。

Q
就労継続支援A型の利用者も、過半数の人数に入りますか。
A

入ります。A型の利用者は事業所と雇用契約を結んだ労働者ですので、過半数を計算するときの母数に含まれます。利用者数が職員数を上回る事業所では、過半数代表者の選出手続そのものを見直す必要があります。

Q
更新を忘れて有効期間が切れていました。どうすればよいですか。
A

速やかに新しい協定を締結し、届け出てください。届出は有効期間の開始日より前に行うのが原則ですが、切れている状態を放置するほうが問題です。空白期間に時間外労働をさせていた場合の対応も含めて、社会保険労務士にご相談ください。

Q
特別条項の「月45時間を超えられるのは年6回まで」は、どの1年で数えますか。
A

36協定の対象期間の起算日から1年間で数えます。年度で運用しているなら4月から翌年3月です。一方、2〜6か月平均80時間以内は、協定の対象期間や年度をまたいでも、直前の月から遡って計算する必要があります。

まとめ

  • 36協定がなければ、法定労働時間を1分でも超えた時点で違反。残業代の支払いとは別の問題
  • 締結は事業場ごと。代表者は管理監督者以外から、民主的な手続で選び、記録を残す
  • 上限は原則月45時間・年360時間。特別条項でも年720時間・単月100時間未満・2〜6か月平均80時間・年6回を超えられない
  • 届出は有効期間の開始日より前に。有効期間は1年が基本で、毎年の更新を運用に組み込む
  • 複数事業所があるなら、電子申請の本社一括届出で手間を減らせる
  • 年少者・妊産婦・育児介護中の職員は、36協定があっても制限がある
  • 36協定・変形労働時間制の労使協定・就業規則は必ずセットで確認する

当法人では、行政書士と社会保険労務士が同じ事務所に在籍しています。指定申請と同時に就業規則・36協定・変形労働時間制の労使協定を整え、開業後は勤務形態一覧表と実際の勤務の整合まで含めて継続的に確認しています。指定基準と労務管理は、勤務形態一覧表という同じ書類でつながっています。片方だけを整えても、運営指導では見抜かれます。

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36協定の締結と届出をご相談ください

障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、指定申請から日々の運営、労務管理までをひとつの窓口でご相談いただけます。

静岡・神奈川・愛知を中心に、オンラインで全国に対応しています。「夜勤や送迎を踏まえた協定の内容にしたい」「特別条項が必要かどうか判断したい」「届出の時期を管理してほしい」といったご相談を承っています。勤務形態一覧表や常勤換算との整合まで含めて確認します。

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※この記事は、労働基準法および同法施行規則、厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」等の公表資料にもとづいて整理したものです。制度は改正されることがあるため、実際の手続きにあたっては所轄の労働基準監督署または社会保険労務士にご確認ください。

執筆者 永野将太(行政書士・社会保険労務士)
執筆者WRITER
永野 将太
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズ 代表

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。

これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。

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