令和8年6月8日、障害福祉分野の指導指針が改正され、集団指導・運営指導マニュアルと監査マニュアルが公表されました。就労継続支援A型・B型と共同生活援助は3年に1回以上の運営指導が求められ、就労継続支援A型は新規指定の半年後を目途に初回の運営指導を受けることになります。
- 就労A型・B型・共同生活援助は3年に1回以上、その他は指定の有効期間内に1回以上
- 就労継続支援A型は新規指定の半年後が初回の目途
- 「確認項目及び確認文書」が整備され、原則としてそれ以外は確認しない
- 事業所側の自己点検が前提。法令遵守責任者の指揮で行う
はじめに
運営指導の仕組みが、令和8年6月に変わりました。令和8年6月8日付けで指導指針が改正され、あわせて集団指導・運営指導マニュアルと監査マニュアルが公表されています。障害福祉分野でこの種のマニュアルが整備されたのは初めてです。
変わったのは頻度と、確認の仕方です。とくに就労継続支援と共同生活援助を運営している事業所は、これまでより早い段階で運営指導を受けることになります。
この記事では、何がどう変わったのかと、事業所として何を準備しておけばよいのかを整理します。
この記事のポイント
- 就労継続支援A型・B型と共同生活援助は3年に1回以上。その他のサービスは指定の有効期間内に少なくとも1回以上
- 就労継続支援A型は新規指定の半年後を目途に初回の運営指導
- 指定後まもない事業所は、指定後3年以内に運営指導を受ける
- 「確認項目及び確認文書」が整備され、原則としてそれ以外は確認せず、提出も求めない
- 事業所側の自己点検が前提になった。法令遵守責任者の指揮で行うことが期待されている
- 集団指導は年1回以上。新規開設の事業所はおおむね1年以内に全て対象
1. 令和8年6月に指導指針が改正された
令和8年6月8日、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知として「指定障害福祉サービス事業者等指導指針」が改正されました。同時に次の2つが公表されています。
- 指定障害福祉サービス事業者等に対する集団指導・運営指導マニュアル
- 指定障害福祉サービス事業者等に対する監査マニュアル(処分基準の考え方の例を含む)
これまでの障害福祉分野には、介護保険分野にあるような運営指導・監査のマニュアルがありませんでした。自治体ごとに指導の内容や処分の判断に差が出ていたため、全国で共通の考え方を示すことがねらいです。
指導(行政指導)
- 集団指導 全事業者を対象に年1回以上。説明と情報提供が中心
- 運営指導 事業所ごとに実施。基準の遵守状況を確認し、助言・指導を行う
- いずれも行政指導であり、処分ではない
監査(行政調査)
- 不正や著しい基準違反が疑われる場合に実施
- 事実関係の確認が目的
- 是正の勧告・命令、指定の効力停止や取消につながることがある
2. 背景にある3つの数字
今回の見直しの背景には、社会保障審議会障害者部会に示された次の数字があります。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 令和5年度の運営指導の実施率 | 全国平均16.5%(最低1.0%、最高48.8%) |
| 内訳 | 障害福祉サービス事業所15.8%、障害児通所支援事業所18.8% |
| 国が所管する法人数 | 約920法人(2以上の都道府県にまたがる法人。令和6年12月時点) |
| 事業者向け研修の参加率 | 36.4% |
従来の指針でも運営指導はおおむね3年に1度とされていましたが、実際には6件に1件しか回れていませんでした。事業所数が増え続ける一方で自治体の体制が追いつかず、指導の頻度も内容も地域差が大きい状態が続いていたことになります。
3. 就労A型・B型・GHは3年に1回以上になった
改正後の指針では、運営指導の頻度がサービスによって分かれました。
| 対象 | 頻度 |
|---|---|
| 就労継続支援A型、就労継続支援B型、共同生活援助 | 3年に1回以上 |
| その他のサービス | 3年に1回までは求めないが、原則として指定の有効期間内に少なくとも1回以上 |
| 指定後まもない事業所 | 指定後3年以内に実施。ただし就労継続支援A型は新規指定の半年後を目途に初回 |
| 不適切な運営や報酬請求が疑われる事業所 | 優先的に実施 |
この3つのサービスが選ばれたのは、営利法人が運営する事業所数が急増しているサービス類型だからです。指定の有効期間は6年なので、従来は6年に1回でも指針上は足りていました。そこから3年に1回以上へと、実質的に倍の頻度になります。
自治体の側から見れば、実施率を16.5%から引き上げる必要があります。これまで運営指導を受けたことがない事業所にも、順番が回ってくると考えておくのが現実的です。
4. 就労継続支援A型は新規指定の半年後に初回
就労継続支援A型だけは、扱いが別です。新規指定の半年後を目途に、初回の運営指導を受けるとされました。
開所から半年といえば、利用者がそろい始め、スコア方式の記録や賃金の支払いが動き出したころです。この段階で、体制が整っているかを確認されます。
半年でそろえておくもの
- 雇用契約書と労働条件通知書
- 賃金台帳、出勤簿、勤務形態一覧表
- スコア方式の根拠となる記録
- 個別支援計画とアセスメント、モニタリング
あわせて見られること
- 生産活動の収支と、賃金が生産活動収入から支払われているか
- 経営改善計画の要否
- 人員配置が届出どおりか
5. 確認項目及び確認文書が整備された
今回いちばん実務に効くのが、「確認項目及び確認文書」です。運営指導で何を見るか、どの書類を出してもらうかを、あらかじめ一覧にしたものです。
マニュアルには、運営指導では原則として「確認項目」以外は確認せず、「確認文書」以外の提出も求めないと書かれています。ただし内容に不備があり確認文書だけでは足りない場合は、追加の提出を求めることができるとされています。
サービスの質そのもの
- ケアマネジメントのプロセスに基づく支援が行われているか
- 個別支援計画、アセスメント、モニタリング
- 虐待や不当な身体拘束がないか
質を確保する体制
- 人員配置と勤務の実態
- 委員会、研修、マニュアルの整備と運用
- 記録の保存と情報公表
この仕組みは、事業所にとって準備すべき範囲がはっきりするという意味があります。何を見られるか分からないまま身構えるのではなく、確認項目に沿って先に点検できます。
一方で、確認項目に載っていなければ守らなくてよい、という話ではありません。マニュアルにも、事業者が守るべき法令は確認項目や確認文書に書かれたものに限らない、と明記されています。
6. 事業所側の自己点検が前提になった
マニュアルは、事業所が自ら点検することを前提に組み立てられています。業務管理体制で届け出ている法令遵守責任者の指揮のもとで自己点検を実施することが期待される、と書かれています。
多くの自治体が自己点検シートやチェックリストを用意しており、運営指導の事前または当日に提出を求められます。事前の点検で不適切な事項が見つかった場合は、当日の指導で原因分析と改善策の検討を行うという流れです。
つまり、自己点検で見つけて直しておくほうが、指摘されて直すより軽く済みます。点検した記録そのものが、体制が動いている証拠にもなります。
7. 集団指導は年1回以上、新規は1年以内
集団指導についても整理されました。全ての事業者を対象に年1回以上行うものとされ、対象の選び方は次のとおりです。
- 新たにサービスを開始した事業者は、おおむね1年以内に全てを対象として実施
- サービスの取扱い、報酬請求の内容、制度改正、虐待事案を含む過去の指導事例に応じて選定
マニュアルには、運営指導を受ける際は事前に集団指導を受講していることが望ましいとも書かれています。運営指導のねらいの1つが、集団指導で伝えた内容の理解度を確認することだからです。
参加者は管理者などの現場責任者が想定されています。オンラインやオンデマンド配信の活用も認められているので、開催案内が来たら管理者が出席する形を作っておきます。
8. 通知は原則1か月前。無通告もある
運営指導の実施通知は、原則として実施予定日の1か月前までに出されます。通知には、根拠規定と目的、日時と場所、担当者、事業所側の出席者、準備する書類、当日の進め方が書かれます。
準備する書類は原則として一次資料とされ、写しでも差し支えないとされています。事前提出資料は必須ではなく、自治体が指定申請書類や定期報告、事業所のホームページで確認できる情報は改めて求めないこととされました。
一方で、無通告での実施もあり得ます。不正請求のための文書の改ざんが疑われる場合や、虐待が疑われる場合など、事前に通知したのでは日常の状況を確認できないと認められるときです。この場合は指導開始時に通知が行われます。
なお、利用者の生命や身体に危害が及ぶおそれがあるときや証拠保全が必要なときは、運営指導ではなく監査(立入検査)として速やかに対応するとされています。
9. 大規模法人への業務管理体制の検査
複数の都道府県に事業所を持つ法人は、業務管理体制の検査を国が行います。ここも強化されました。
| 項目 | これまで | 見直し後 |
|---|---|---|
| 書面検査 | 実地検査の対象以外は行っていなかった | 全ての国所管法人に2年に1回程度(年間450法人程度) |
| 実地検査 | 年間30法人程度 | 年間60法人程度(従来の約2倍) |
| 大規模法人 | ― | 100以上の事業所を運営する法人(24法人)は2年に1回程度の実地検査。法人本部だけでなく事業所にも実施 |
| 新たに国所管となった法人 | ― | 原則として業務管理体制の届出があった初年度に書面検査 |
あわせて、事業者向け研修を受講していない法人は、業務管理体制の一般検査の優先順位を上げることが検討されています。研修の案内が届いたら、受講しておくほうが安全です。
10. 事業所がいま備えること
今回の改正を受けて、事業所側で先にやっておけることは3つです。
記録の型を決める
- 個別支援計画とモニタリングの作成日・同意日をそろえる
- 勤務形態一覧表と出勤簿の突き合わせを月次で行う
- 委員会と研修の議事録を、開催のつど残す
体制を動かす
- 法令遵守責任者の指揮で自己点検シートを回す
- 集団指導に管理者が出席する
- 加算の算定根拠を加算ごとにまとめておく
とくに就労継続支援A型・B型と共同生活援助は、3年に1回以上という頻度が前提になります。年に1度は自己点検を回し、指摘されやすい点を先に直しておく運用に切り替えておくのが確実です。
よくある質問
就労継続支援A型であれば、新規指定の半年後を目途に初回の運営指導を実施するとされています。他のサービスでも、指定後まもない事業所は指定後3年以内に実施するとされているため、開所後3年のうちには順番が回ってくると考えておいてください。
運営指導では原則として確認項目以外は確認しないとされています。ただし内容に不備があり確認文書だけでは足りない場合は、追加の提出を求められます。また、守るべき法令が確認項目に書かれたものに限られるわけではありません。
多くの自治体が用意しており、運営指導の事前または当日に提出を求められます。事前の点検で不適切な事項が見つかった場合は、当日の指導で原因分析と改善策を検討する流れになります。
運営指導を受ける際は事前に集団指導を受講していることが望ましいとされています。国所管の法人については、研修を受講していない場合に業務管理体制の一般検査の優先順位を上げることが検討されています。
あります。不正請求のための文書の改ざんが疑われる場合や虐待が疑われる場合など、事前に通知したのでは日常の状況を確認できないと認められるときは、無通告で実施し、指導開始時に通知が行われます。
就労継続支援A型、就労継続支援B型、共同生活援助です。その他のサービスは、3年に1回までは求められていませんが、原則として指定の有効期間内に少なくとも1回以上実施するとされています。
あります。運営指導の過程で基準違反が著しいと認められた場合は、監査に変更して詳しく事実を確認することとされています。
2以上の都道府県に事業所がある法人は、業務管理体制の検査を国が行います。今回の見直しで、全ての国所管法人に2年に1回程度の書面検査を実施し、100以上の事業所を運営する法人には2年に1回程度の実地検査を行うこととされました。
まとめ
令和8年6月の改正で、運営指導は頻度も確認の仕方も、全国で足並みをそろえる方向に動きました。就労継続支援A型・B型と共同生活援助は3年に1回以上、就労継続支援A型は新規指定の半年後が初回の目途です。
確認項目及び確認文書が示されたことで、何を見られるかは事前に分かるようになりました。裏を返せば、知らなかったという説明が通りにくくなったということでもあります。
やることは変わりません。記録を残し、決めた体制を動かし、年に1度は自分で点検する。この3つを回していれば、通知が来てから慌てる必要はなくなります。
あわせて読みたい【令和8年度】障害福祉サービス事業者への運営指導|指導方針と確認されるポイント あわせて読みたい運営指導で報酬返還となるケース あわせて読みたい業務管理体制整備の届出とは|届出事項・事業所等の数え方・届出先と休止廃止・連座制主な参考資料
- 指定障害福祉サービス事業者等指導指針(令和8年6月8日障発0608第1号)
- 指定障害福祉サービス事業者等に対する集団指導・運営指導マニュアル(令和8年6月 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課監査指導室)
- 指定障害福祉サービス事業者等に対する監査マニュアル(令和8年6月 同上)
- 社会保障審議会障害者部会 第146回(令和7年3月14日)参考資料1「障害福祉分野における運営指導・監査の強化について」
