被扶養者(異動)届は、従業員が家族を被扶養者にするときに提出します。被扶養者になれる親族の範囲と収入要件が定められており、続柄や収入の確認書類の添付が必要ですが、一定の条件を満たせば省略できます。国内居住要件や、配偶者の第3号被保険者の手続きもあわせて確認します。
- 被扶養者の範囲と収入要件を満たすかを確認する
- 続柄・収入の確認書類は条件により添付を省略できる
- 配偶者は国民年金第3号被保険者の手続きを同時に行う
この記事で分かること
従業員が家族を被扶養者にするときの「健康保険 被扶養者(異動)届 国民年金第3号被保険者関係届」について、被扶養者の範囲と収入要件、続柄・収入の確認書類と添付を省略できる条件、国内居住要件、第3号被保険者の届出、扶養から外れるときの手続きまでを整理します。
はじめに
社会保険の手続きのなかで、事業主から最も質問が多いのが被扶養者の認定です。「配偶者がパートを始めたが扶養のままでよいか」「別居している親を扶養に入れられるか」といった相談は、障害福祉サービス事業所でも日常的に発生します。
被扶養者(異動)届は、健康保険の被扶養者に関する届出と、被扶養配偶者の国民年金第3号被保険者関係届が一体化した様式です。1枚で2つの制度の手続きを行うため、記入漏れがあると両方に影響します。
この記事では、日本年金機構が公表している手続き案内をもとに、認定要件と添付書類の実務を整理します。
この記事のポイント
- 提出時期は、被扶養者の認定は事実発生から5日以内、被扶養者の削除(非該当)はその都度です。
- 認定の前提は、日本国内に住所(住民票)を有し、被保険者により主として生計を維持されていることです。
- 収入要件は年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)で、かつ同一世帯なら被保険者の収入の半分未満、別居なら仕送り額未満であることです。
- 月額換算では給与所得等は月額108,333円以下、雇用保険等の受給者は日額3,611円以下であれば要件を満たします。
- 被保険者と扶養認定を受ける方双方の個人番号を記載し、事業主が続柄を確認した旨を届書に記載すれば、続柄確認の添付書類を省略できます。
1. 被扶養者(異動)届が必要になる場面
- 従業員が結婚して配偶者を扶養に入れるとき
- 子が生まれたとき
- 親を扶養に入れるとき
- 配偶者が退職して収入がなくなったとき
- 扶養していた家族が就職・収入増などで扶養から外れるとき
- 扶養していた家族が死亡したとき
認定と削除のいずれも同じ様式で行います。削除の届出が漏れると、資格のない人が保険給付を受け続けることになり、後から医療費の返還を求められることがあります。
認定(事実発生から5日以内)
- 従業員が結婚して配偶者を扶養に入れるとき
- 子が生まれたとき
- 親を扶養に入れるとき
- 配偶者が退職して収入がなくなったとき
削除(その都度)
- 扶養していた家族が就職・収入増などで扶養から外れるとき
- 扶養していた家族が死亡したとき
2. 提出期限と提出先
| 届出の内容 | 提出時期 |
|---|---|
| 被扶養者の認定 | 事実発生から5日以内 |
| 被扶養者の削除(非該当) | その都度 |
提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所、提出方法は電子申請・郵送・窓口持参です。
なお、被扶養者になった日が事務センター(年金事務所)の受付日より60日以上さかのぼる場合は、扶養の事実を確認できる書類の添付が必要です。出生・婚姻・養子縁組(子が20歳以下の場合)を契機とする届出で、日本の戸籍があり双方の個人番号を記載している場合は不要とできます。
同一世帯でなくてもよい
- 配偶者(未届の事実婚関係を含む)
- 子・孫および兄弟姉妹
- 父母・祖父母などの直系尊属
同一世帯であることが必要
- 3親等内の親族のうち上記以外(伯叔父母、甥姪とその配偶者など)
- 内縁関係の配偶者の父母および子
3. 被扶養者の範囲
被扶養者になれる親族の範囲は、同居が必要かどうかで2つに分かれます。
| 区分 | 対象となる親族 |
|---|---|
| 同一世帯でなくてもよい | 配偶者(未届の事実婚関係を含む)、子・孫および兄弟姉妹、父母・祖父母などの直系尊属 |
| 同一世帯であることが必要 | 3親等内の親族のうち上記以外(伯叔父母、甥姪とその配偶者など)、内縁関係の配偶者の父母および子 |
別居している親を扶養に入れる場合、直系尊属であるため同一世帯である必要はありませんが、後述の仕送りの事実を確認する書類が必要です。
また、後期高齢者医療制度の被保険者は被扶養者になれません。75歳到達で自動的に扶養から外れるため、削除の届出を忘れないでください。
4. 収入要件の判定
収入要件は次の2つをいずれも満たす必要があります。
- 年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は年間収入180万円未満)
- 同一世帯の場合:収入が被保険者の収入の半分未満/別居の場合:収入が被保険者からの仕送り額未満
給与所得等の収入がある場合は月額108,333円以下、雇用保険等の受給者の場合は日額3,611円以下であれば要件を満たします。
ここでいう年間収入には、給与収入のほか、障害年金・遺族年金・傷病手当金・出産手当金・失業給付などの非課税の給付も含まれます。所得税の扶養(課税所得ベース)とは判定が異なる点が、事業所からの質問が多いところです。
なお、扶養認定日が令和7年10月1日以降で、扶養認定を受ける方(被保険者の配偶者を除きます)が19歳以上23歳未満である場合、年間収入要件は150万円未満となります。学生であるかどうかは問いません。なお、年齢は扶養認定日が属する年の12月31日時点で判定します。
5. 添付書類と省略できる条件
続柄を確認する書類
原則として、被扶養者の戸籍謄(抄)本または住民票の写し(コピー不可・個人番号の記載がないもの)を添付します。いずれも提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものです。
ただし、次の両方に該当する場合は添付を省略できます。
- 被保険者と扶養認定を受ける方双方の個人番号が届書に記載されていること
- 上記の書類により、扶養認定を受ける方の続柄が届書の記載と相違ないことを事業主が確認した旨を届書に記載していること
収入要件を確認する書類
| 状況 | 確認書類 |
|---|---|
| 所得税法上の控除対象配偶者・扶養親族 | 事業主の証明があれば添付不要 |
| 退職した場合 | 退職証明書または雇用保険被保険者離職票の写し |
| 雇用保険の失業給付関係 | 雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知の写し |
| 年金受給中 | 年金額の改定通知書などの写し |
| 自営業等 | 直近の確定申告書の写し |
| 上記以外 | 課税(非課税)証明書 |
障害年金・遺族年金・傷病手当金・出産手当金・失業給付等の非課税対象となる収入がある場合は、受取金額のわかる通知書等のコピーが別途必要です。
その他の書類
- 内縁関係の場合:内縁関係にある両人の戸籍謄(抄)本および被保険者の世帯全員の住民票(コピー不可・個人番号の記載がないもの)
- 別居の場合:仕送りの事実と仕送り額が確認できる書類(振込明細書等)。ただし扶養認定を受ける方が16歳未満または16歳以上の学生の場合は不要
- 同居の確認は日本年金機構で行うため、原則として書類の添付は不要
状況別の添付書類
- 所得税法上の控除対象配偶者・扶養親族 → 事業主の証明があれば添付不要
- 退職した場合 → 退職証明書または雇用保険被保険者離職票の写し
- 雇用保険の失業給付関係 → 受給資格者証または受給資格通知の写し
- 年金受給中 → 年金額の改定通知書などの写し
- 自営業等 → 直近の確定申告書の写し
- 上記以外 → 課税(非課税)証明書
別途必要になるもの
- 障害年金・遺族年金・傷病手当金・出産手当金・失業給付等の非課税収入がある場合は、受取金額のわかる通知書等のコピー
6. 国内居住要件と海外特例
令和2年4月1日以降、被扶養者の認定には生計維持要件に加えて日本国内に住所を有する(住民票がある)ことが必要です。ただし、次のような場合は海外特例要件として認められます。
- 外国において留学をする学生
- 外国に赴任する被保険者に同行する者
- 観光、保養またはボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者
- 被保険者が外国に赴任している間に身分関係が生じた者で、同行する者と同等と認められる者
- 渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者(個別判断)
海外特例に該当する場合は、査証や在学証明書の写しなどとあわせて被扶養者現況申立書の提出が必要です。
原則(令和2年4月1日以降)
- 生計維持要件に加えて、日本国内に住所を有する(住民票がある)ことが必要
海外特例要件
- 外国において留学をする学生
- 外国に赴任する被保険者に同行する者
- 観光、保養、ボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者
- 被保険者が外国に赴任している間に身分関係が生じた者で、同行する者と同等と認められる者
- 渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者(個別判断)
7. 国民年金第3号被保険者の届出
従業員の配偶者が20歳以上60歳未満であり、厚生年金保険(共済組合等)の被保険者でない場合は、原則として国民年金の第3号被保険者となります。被扶養者(異動)届は第3号被保険者関係届と一体になっているため、1枚で手続きが完了します。
外国籍の配偶者を被扶養者(第3号被保険者)とする場合は、国民年金第3号被保険者ローマ字氏名届をあわせて提出します。
協会けんぽの被保険者の被扶養配偶者が第3号被保険者に該当しない場合は、備考欄に「扶養届のみ」「3号届なし」など第3号被保険者関係届が不要である旨を記載することで、健康保険被扶養者(異動)届のみの提出が可能です。
8. 被扶養者から外れるとき
扶養から外れる場合は、その都度、被扶養者(異動)届で削除の手続きを行います。あわせて次の書類を添付します。
- 資格確認書
- 高齢受給者証
- 特定疾病療養受療証
- 限度額適用認定証
- 限度額適用・標準負担額減額認定証
紛失等により回収できない場合は健康保険 資格確認書回収不能届を添付します。
配偶者が扶養から外れる場合は、国民年金第3号被保険者ではなくなるため、本人が第1号被保険者への切替手続きが必要です。事業所として、その案内までしておくと親切です。
国民年金第3号被保険者の届出
- 配偶者が20歳以上60歳未満で厚生年金保険(共済組合等)の被保険者でない場合は原則として第3号被保険者
- 被扶養者(異動)届は第3号被保険者関係届と一体。1枚で手続きが完了
- 外国籍の配偶者は国民年金第3号被保険者ローマ字氏名届もあわせて提出
扶養から外れるとき
- その都度、被扶養者(異動)届で削除の手続き
- 紛失等により回収できない場合は健康保険 資格確認書回収不能届を添付
- 配偶者は第1号被保険者への切替手続きが必要。事業所から案内しておくと親切
実務上の注意点
所得税の扶養と社会保険の扶養は別の判定
年末調整で用いる所得税法上の扶養と、健康保険の被扶養者は判定基準が異なります。障害年金や遺族年金は所得税では非課税ですが、健康保険の収入要件では収入に含まれます。年末調整の資料をそのまま流用しないよう注意してください。
パート収入が増えたときの見直し
扶養に入っている配偶者が事業所内でパート勤務している場合、シフト増により月額108,333円を超える月が続くと、扶養から外れる判断が必要です。あわせて本人自身が短時間労働者として被保険者になるかどうかの判定も生じます。
記載内容の確認連絡がある
日本年金機構は、記載内容や添付書類について事業主に電話等で確認する場合があると案内しています。届出の控えと添付書類の写しは、事業所側でも保管しておいてください。
実務チェックリスト
□ 認定は事実発生から5日以内に提出した
□ 被扶養者の範囲(同居が必要かどうか)を確認した
□ 年間収入130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)を確認した
□ 障害年金・遺族年金・失業給付などの非課税収入を収入に含めて判定した
□ 同一世帯なら被保険者の収入の半分未満、別居なら仕送り額未満であることを確認した
□ 双方の個人番号を記載し、事業主が続柄を確認した旨を届書に記載した
□ 別居の場合、仕送りの事実と金額が確認できる書類を用意した
□ 配偶者が20歳以上60歳未満の場合、第3号被保険者の欄を記入した
□ 削除の場合、本人・被扶養者の資格確認書等を回収した
よくある質問
過去の実績ではなく、認定を受ける時点以降の見込みの年間収入で判断します。給与所得等であれば月額108,333円以下、雇用保険等の受給者であれば日額3,611円以下が目安です。
雇用保険の基本手当は収入に含めて判定します。日額3,611円以下であれば要件を満たしますが、超える場合は受給期間中は扶養に入れません。雇用保険受給資格者証等の写しを添付します。
別居の場合は「収入が被保険者からの仕送り額未満」であることが要件です。金額の基準そのものではなく、親本人の収入と仕送り額の関係で判断されます。振込明細書等で仕送りの事実と金額を確認できるようにしてください。
被保険者と扶養認定を受ける方双方の個人番号を届書に記載し、事業主が続柄を確認した旨を記載していれば、添付を省略できます。出生や婚姻を契機とする届出で日本の戸籍がある場合も、添付を不要とできます。
後期高齢者医療制度の被保険者は健康保険の被扶養者になれません。75歳到達時に扶養から外れるため、被扶養者(異動)届で削除の手続きを行い、資格確認書等を回収してください。
まとめ
被扶養者の認定は、範囲(同居要件)・収入要件・国内居住要件の3点で判断します。実務では、所得税の扶養との違いと、非課税の給付も収入に含める点が誤りの起点になりがちです。
添付書類はマイナンバーの記載と事業主の確認によって大きく省略できます。届書の記載ルールを整えておくことが、手続きの負担を減らす近道です。
扶養の判定や社会保険の実務を、ご相談ください
障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、指定申請・報酬請求の実務と労務管理の両面を、ひとつの窓口でご相談いただけます。
静岡・神奈川・愛知を中心に、オンラインで全国に対応しています。パート職員の扶養の範囲や勤務時間の設計についても、加入判定とあわせてご相談いただけます。
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主な参考資料
- 参考:日本年金機構「従業員が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」
- 参考:日本年金機構「従業員の家族が海外居住の場合の手続き」
- 参考:日本年金機構「健康保険・厚生年金保険の適用関係届書」
※本記事は令和8年8月28日時点の法令・通知・日本年金機構の公表資料に基づく一般的な整理です。実際の届出にあたっては、管轄の年金事務所・事務センターの取扱い、健康保険組合の定め、最新の様式・記載要領を必ずご確認ください。

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。
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