被保険者資格喪失届は、従業員が退職・死亡したときなどに提出します。資格喪失日の考え方が保険料の負担に直結し、月末退職と月途中退職とで控除の扱いが変わります。同じ月に資格取得と喪失があった場合(同月得喪)には、別の取扱いが定められています。
- 勤務時間の減少で加入要件を満たさなくなった場合も対象
- 保険料は資格取得日の属する月から、喪失日の属する月の前月まで発生する
- 資格確認書などは回収して添付する
はじめに
退職手続きのなかで、給与計算と並んでミスが起きやすいのが被保険者資格喪失届です。退職日が1日違うだけで、保険料の負担が1か月分変わってしまうためです。
障害福祉サービス事業所では、年度末や加算体制の見直しのタイミングで退職が重なることがあります。月末退職と月途中退職では給与から控除できる保険料が変わるため、退職日の決め方そのものが労務管理の論点になります。
この記事では、日本年金機構が公表している手続き案内をもとに、資格喪失届と保険料徴収の実務を整理します。
1. 資格喪失日と提出期限
資格喪失の事由と資格喪失日
資格喪失届が必要になるのは、退職・死亡のほか、勤務時間の減少により加入要件を満たさなくなった場合や、年齢到達により資格を喪失する場合です。資格喪失日は事由によって異なります。
| 事由 | 資格喪失日 |
|---|---|
| 退職 | 退職日の翌日 |
| 死亡 | 死亡日の翌日 |
| 70歳到達 | 70歳の |
| 75歳到達 | 75歳の |
特に間違いやすいのが「退職日の翌日」です。3月31日退職であれば資格喪失日は4月1日、3月30日退職であれば3月31日となり、後者は3月分の保険料が発生しません。
提出期限と提出先
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 届書名 | 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届/厚生年金保険 70歳以上 |
| 提出時期 | 事実発生から |
| 提出先 | 事務センターまたは |
| 提出方法 | 電子申請、 |
退職者の次の就職先での手続きや、国民健康保険・国民年金への切替えは、資格喪失の処理が完了しないと進みません。退職者に不利益が生じないよう、期限内の提出を徹底してください。
2. 保険料はいつまで発生するか
従業員が負担する保険料は、被保険者資格を取得した日の属する月から、喪失した日(退職日の翌日)の属する月の前月まで発生します。事業主は毎月の給与から前月分の保険料を控除できます。
| 退職のパターン | 資格喪失日 | 退職月の |
|---|---|---|
| 月の | 3月21日 | 2月分まで |
| 月末に | 4月1日 | 3月分まで |
賞与に対する保険料は、支給する賞与から控除できます。ただし、退職月に支給する賞与は、月末に退職する場合を除き、保険料控除の対象となりません。
同月得喪(同じ月に資格取得と喪失があった場合)
日本年金機構は、厚生年金保険の資格を取得した月の月末以前にその資格を喪失した場合は、厚生年金保険料の納付が必要になると案内しています。
たとえば4月10日に入社し、4月25日に退職した場合、資格取得と資格喪失が同じ月に発生します。この場合でも、その月の厚生年金保険料が発生します。短期間で退職した職員について、給与から保険料を控除し忘れると事業主負担が増えるため、入退社が同月内で完結したケースは給与計算時に必ず確認してください。ただし、同じ月のうちに国民年金の被保険者となった場合など、後日その厚生年金保険料が還付されることがあります。還付の案内が届いたら、被保険者負担分は事業主から本人へ返します。なお、健康保険料は還付されません。
障害福祉サービス事業所では、試用期間中の早期退職や、夜勤に馴染めず短期間で退職するケースが一定数あります。同月得喪は見落としやすい論点です。
あわせて読みたい社会保険料の納付と退職者の保険料徴収3. 年齢到達・死亡したとき
年齢到達による資格喪失
年齢到達による資格喪失は、退職と異なり自動的に発生します。
- 厚生年金保険は70歳到達で被保険者資格を喪失します。引き続き使用する場合は「厚生年金保険 70歳以上被用者該当届」を提出し、在職老齢年金の計算対象となります。
- 健康保険は75歳到達で資格を喪失し、後期高齢者医療制度に移行します。
70歳・75歳の到達日が近い職員がいる場合は、給与計算ソフトの設定とあわせて事前に確認しておくと、保険料の控除誤りを防げます。
死亡したときの手続き
従業員が死亡した場合も、資格喪失届の提出が必要です。資格喪失日は死亡日の翌日となります。資格確認書等を交付している場合は、被扶養者の分も含めて回収します。
あわせて、遺族に対する年金給付(遺族厚生年金)や埋葬料の請求など、遺族側の手続きが発生します。事業主として証明書類の作成を依頼されることがあるため、在職期間や報酬に関する記録を確認できるようにしておいてください。
4. 実務上の注意点
退職日の決め方を事前に説明する
月末退職か月末前日退職かで、保険料の負担が1か月分変わります。従業員が自ら退職日を選べる場面では、社会保険料と国民健康保険料・国民年金保険料のどちらを負担することになるかを含めて説明し、記録を残しておくと後の紛争を防げます。
離職票・雇用保険の手続きとあわせて管理する
社会保険の資格喪失届は5日以内、雇用保険の資格喪失届は10日以内と期限が異なります。退職手続きのチェックリストに期限を並べて記載しておくと、提出漏れを防げます。
よくある質問
3月31日退職の場合、資格喪失日は4月1日となり3月分の保険料が発生します。3月30日退職の場合、資格喪失日は3月31日となり3月分の保険料は発生しません。従業員本人の翌月以降の保険(国民健康保険等)の負担もあわせて確認してください。
資格を取得した月の月末以前に資格を喪失した場合は、保険料の納付が必要です。
退職月に支給する賞与は、月末に退職する場合を除き保険料控除の対象となりません。ただし賞与支払届の提出自体は必要です。
まとめ
資格喪失届の実務は、資格喪失日=退職日の翌日という原則を押さえたうえで、月末退職か月途中退職かによって保険料の控除が変わることを理解しておけば、大きな誤りは防げます。
あわせて、同月得喪の場合に厚生年金保険料が発生すること、資格確認書等を被扶養者分まで回収することの2点は、見落としが多い実務ポイントです。退職手続きのチェックリストに組み込んで運用してください。
退職手続きと労務管理を、あわせてご相談ください
障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、指定申請・報酬請求の実務と労務管理の両面を、ひとつの窓口でご相談いただけます。
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主な参考資料
- 参考:日本年金機構「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き」
- 参考:日本年金機構「退職した従業員の保険料の徴収」
- 参考:日本年金機構「適用事業所と被保険者」
※本記事は令和8年8月28日時点の法令・通知・日本年金機構の公表資料に基づく一般的な整理です。実際の届出にあたっては、管轄の年金事務所・事務センターの取扱い、健康保険組合の定め、最新の様式・記載要領を必ずご確認ください。

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