令和8年度の地域別最低賃金は、静岡県が時間額1,154円(57円増、令和8年10月15日発効)、神奈川県が1,279円(54円増、10月1日発効)、愛知県が1,195円(55円増、10月1日発効)に改定されます。就労継続支援A型の利用者は事業所と雇用契約を結ぶ労働者なので、職員と同じく新しい最低賃金以上の賃金を支払う必要があります。
- 発効日以降に働いた時間から、新しい金額が適用される
- 1日4時間・月20日の利用者は、月4,300〜4,600円ほど賃金が増える
- 利用者の賃金は生産活動の収益から支払い、給付費は充てられない
この記事で分かること
静岡県・神奈川県・愛知県の新しい最低賃金額と発効日、就労継続支援A型の利用者の月額賃金の変化、月給・日給で働く人の確認方法、発効日が給与の締め日の途中にあるときの計算、A型事業所が発効日までに確認することを整理します。
はじめに
地域別最低賃金は毎年秋に改定されます。令和8年度は全国加重平均が1,177円となり、前年度から56円引き上げられました。発効日は都道府県ごとに異なり、10月1日から12月2日にかけて順に発効します。
障害福祉の事業所では、職員の賃金だけでなく、就労継続支援A型の利用者の賃金にも影響します。この記事では、当法人が対応している静岡県・神奈川県・愛知県について、新しい金額と、事業所が発効日までに確認しておくことをまとめます。
この記事のポイント
- 静岡県は1,154円(10月15日発効)、神奈川県は1,279円、愛知県は1,195円(ともに10月1日発効)です。
- A型の利用者も労働者なので、最低賃金以上の賃金を支払います。
- 月給・日給で働く人も、時間額に換算して下回っていないかを確認します。
- 最低賃金が上がっても、生産活動の収益から賃金を支払う原則は変わりません。
1. 静岡・神奈川・愛知の新しい最低賃金
3県の改定額は次のとおりです。最低賃金は、正社員・パート・アルバイトなどの雇用形態にかかわらず、県内の事業場で働くすべての労働者に適用されます。
| 県 | 改定後 | 改定前 | 引上げ額 | 発効日 |
|---|---|---|---|---|
| 静岡県 | 1,154円 | 1,097円 | 57円 | 令和8年10月15日 |
| 神奈川県 | 1,279円 | 1,225円 | 54円 | 令和8年10月1日 |
| 愛知県 | 1,195円 | 1,140円 | 55円 | 令和8年10月1日 |
適用されるのは、本社の所在地ではなく、実際に働く事業場がある都道府県の最低賃金です。たとえば本社が静岡県にあり、神奈川県内でA型事業所を運営している場合、その事業所で働く職員と利用者には神奈川県の1,279円が適用されます。
製造業などには産業別の特定最低賃金もありますが、県の最低賃金のほうが高くなった場合は、県の最低賃金以上を支払います。静岡県でも、改定後の県の最低賃金が一部の特定最低賃金を上回るため、その産業で働く人にも1,154円以上の支払いが必要です。
2. A型の利用者の賃金はどう変わる?
就労継続支援A型は、事業所と利用者が雇用契約を結んで働く仕組みです。利用者は労働基準法・最低賃金法上の労働者にあたるため、職員と同じように最低賃金が適用されます。一方、雇用契約を結ばない就労継続支援B型の工賃には、最低賃金は適用されません。
1日4時間・月20日働く利用者の例
A型では短時間で働く利用者が多いため、1日4時間・月20日(月80時間)働く場合の月額賃金で比べます。
| 県 | 改定前 | 改定後 | 増える額 |
|---|---|---|---|
| 静岡県 | 87,760円 | 92,320円 | 4,560円 |
| 神奈川県 | 98,000円 | 102,320円 | 4,320円 |
| 愛知県 | 91,200円 | 95,600円 | 4,400円 |
同じ条件の利用者が20人いれば、賃金だけで1か月に8.6万〜9.1万円、1年で100万円を超える増加になります。雇用保険などの事業主負担も、賃金の増加に合わせて増えます。
最低賃金の減額特例
最低賃金法には、精神または身体の障害により著しく労働能力が低い方などについて、都道府県労働局長の許可を受けた場合に限り、最低賃金を減額して適用できる特例があります。許可を受けずに、障害があることを理由に最低賃金を下回る賃金を支払うことはできません。対象になるかどうかは、事業場を管轄する労働基準監督署に相談してください。
就労継続支援A型(雇用契約あり)
- 最低賃金が適用される
- 労働時間・休憩・年次有給休暇などの労働法令も適用される
- 雇用保険などの加入要件は職員と同じ
就労継続支援B型(雇用契約なし)
- 最低賃金は適用されない
- 工賃は生産活動の収入から支払う
- 平均工賃月額が基本報酬の区分に影響する
3. 月給・日給の人の確認方法
時給で働く人は、時給額が新しい最低賃金以上かを見れば確認できます。月給や日給で働く人は、時間額に換算して比べます。
| 賃金の形 | 確認の方法 |
|---|---|
| 時給 | 時給額を |
| 日給 | 日給額÷1日の |
| 月給 | 月給額÷1か月の |
比べる賃金には、基本給と、毎月決まって支払われる手当(職務手当など)を含めます。時間外・休日・深夜の割増賃金、通勤手当、家族手当、精皆勤手当、賞与などの臨時の賃金は含めません。
神奈川県の月給職員の計算例
月給20万円(基本給18万円、職務手当1万円、通勤手当1万円)、1か月の平均所定労働時間が160時間の職員の場合、比べる賃金は通勤手当を除いた19万円です。19万円÷160時間=1,187.5円となり、神奈川県の新しい最低賃金1,279円を下回ります。
支給総額が20万円あっても、最低賃金を満たしていないことになります。満たすには、通勤手当を除いた部分を204,640円(1,279円×160時間)以上にする必要があります。
処遇改善加算の手当は含められる?
処遇改善加算を原資とする手当も、毎月決まって支払われているものは、最低賃金と比べる賃金に含まれます。ただし国は、最低賃金を満たしたうえで賃金を引き上げることが望ましいとしています。処遇改善の手当を足してようやく最低賃金に届く、という賃金の組み方は見直しをおすすめします。
あわせて読みたい処遇改善加算 完全ガイド|区分の選び方から配分・実績報告までの全体像4. 発効日が給与の締め日の途中にあるとき
新しい最低賃金は、発効日以降の労働に適用されます。給与の締め日を待たずに、発効日当日の労働から新しい金額で計算します。
たとえば静岡県で、給与を月末締めで計算している事業所では、10月1日〜14日に働いた時間は改定前の1,097円以上、10月15日〜31日に働いた時間は改定後の1,154円以上で計算します。「11月分から切り替える」といった扱いにすると、10月15日以降の差額が未払いになります。
神奈川県・愛知県は10月1日発効です。15日締めや20日締めの事業所では、締め日の翌日から9月30日までと、10月1日以降を分けて計算してください。
5. A型事業所が発効日までに確認すること
発効日の直前に慌てないよう、次の項目を確認しておいてください。
- 利用者・職員全員の時給・日給・月給を、新しい最低賃金と比べる
- 雇用契約書・労働条件通知書の賃金額を更新し、本人に説明する
- 就業規則・賃金規程に金額を書いている場合は、あわせて改定する
- 給与計算ソフトの単価を、発効日に合わせて切り替える
- 求人票やハローワークの求人に載せている賃金額を直す
- 生産活動の収支と、賃金総額の見込みを計算し直す
6. 賃金の原資は生産活動の収益から
A型では、生産活動の収入から必要な経費を差し引いた額が、利用者に支払う賃金の総額以上になるようにしなければならないと、指定基準で定められています。また、利用者の賃金に訓練等給付費を充てることはできません。
最低賃金が上がると賃金総額も増えるため、これまで生産活動の収益で賃金をまかなえていた事業所でも、不足が出ることがあります。不足が続くと、指定権者から経営改善計画書の提出を求められるほか、基本報酬のスコアのうち生産活動の評価にも影響します。
最低賃金は毎年上がる前提で、作業単価の見直しや取引先との価格交渉、作業の効率化を、改定の前から計画的に進めておいてください。
あわせて読みたい就労継続支援A型の基本報酬|スコア方式と単位数の決まり方確認すること
- 生産活動の収益が、利用者の賃金総額を上回っているか
- 給付費を利用者の賃金に充てていないか
- 1年間でどれだけ人件費が増えるか
取り組むこと
- 作業単価・受注価格の見直しと価格交渉
- 作業の効率化と、収益性の高い仕事の開拓
- 賃上げの支援策(業務改善助成金など)が使えるかの確認
よくある質問
事業所がある神奈川県の最低賃金(1,279円)が適用されます。最低賃金は、実際に働く事業場の所在地で決まります。
適用されません。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばないため、最低賃金法の対象外です。ただし、B型事業所で雇用している職員には最低賃金が適用されます。
原則として下回ることはできません。試用期間中の人について最低賃金を減額するには、都道府県労働局長の許可が必要です。
毎月決まって支払われている手当であれば含まれます。ただし、最低賃金を満たしたうえで賃金を引き上げることが望ましいとされています。
発効日以降に働いた時間から新しい金額で計算します。締め日や支払月に合わせて切り替えるのではありません。
下回っていた期間の差額を支払う必要があります。地域別最低賃金を下回る賃金を支払った場合、最低賃金法により50万円以下の罰金の対象にもなります。
まとめ
令和8年度の最低賃金は、静岡県1,154円(10月15日発効)、神奈川県1,279円、愛知県1,195円(ともに10月1日発効)です。A型の利用者も労働者として最低賃金の対象になるため、職員とあわせて全員の賃金を確認してください。
賃金の引上げは、生産活動の収支にも直接影響します。発効日までの賃金の見直しと並行して、作業単価や受注価格の見直しも進めておくと、翌年度以降の改定にも対応しやすくなります。
最低賃金の改定に合わせた賃金の見直しをご相談ください
障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、A型の利用者・職員の賃金の確認から、雇用契約書・賃金規程の見直しまで、ひとつの窓口でご相談いただけます。
静岡・神奈川・愛知を中心に、オンラインで全国に対応しています。「最低賃金の改定後も利用者の賃金を生産活動の収益でまかなえるか」といったご相談も承っています。
関連記事
主な参考資料
- 静岡労働局「令和8年度『静岡県最低賃金』の改正を決定しました」
- 神奈川労働局「令和8年度『神奈川県最低賃金』を改正決定します」
- 愛知労働局「令和8年10月1日から愛知県の最低賃金が1,195円に改正されます」
- 厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」(令和8年9月3日)
※本記事は令和8年9月16日時点の情報に基づいています。最低賃金額や発効日は、各都道府県労働局の公表内容もあわせてご確認ください。

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