この記事で分かること
空床型短期入所(空床利用型事業所)の仕組み、対象となるグループホーム、使用できる居室、人員配置、設備・定員、基本報酬(Ⅰ〜Ⅳ)、利用者負担、指定申請の流れ、運営上の注意点までをまとめています。
はじめに|空床型短期入所は「グループホームの指定だけ」では実施できません
障害者グループホームを運営していると、入居者の退居後や新規入居までの間に、居室が一時的に空くことがあります。この空室を活用して短期間の宿泊支援を提供する仕組みが、一般に「空床型短期入所」と呼ばれるサービスです。
正式には「空床利用型事業所」といい、グループホームとは別に短期入所の指定を受けることで、現に利用者が使用していない居室において短期入所を提供できます。制度の理解で特に重要なのは、グループホームの指定だけでは短期入所として報酬請求できないという点です。共同生活援助とは別に「短期入所」の指定を受ける必要があります。
重要ポイント
グループホームの指定だけでは、短期入所として報酬請求することはできません。共同生活援助とは別に「短期入所」の指定を受けたうえで、空床の管理、人員配置、定員、報酬区分、利用者負担を明確に分けて運営する必要があります。
この記事の要点
- 空床型短期入所(空床利用型事業所)は、グループホーム等の現に利用者が使用していない居室を活用して短期入所を行う形態です。
- 共同生活援助とは別に「短期入所」の指定が必要で、グループホームの指定だけでは報酬請求できません。
- 使用できるのは、現に利用者が使用していない居室に限られ、空床の発生・予約状況を管理簿で説明できる体制が必要です。
- 人員は、グループホーム入居者と短期入所利用者を合計した利用者数を基に判定します。
- 基本報酬は、成人(Ⅰ・Ⅱ)/障害児(Ⅲ・Ⅳ)と、同じ日の他サービス利用の有無により4区分に分かれます。
- 利用者からは、食事・光熱水費・日用品費等の実費相当額を、運営規程等に明記した上で受領できます。
1. 空床型短期入所とは
短期入所は、家族等の介護者が病気になった場合、休養を必要とする場合、冠婚葬祭その他の事情により、一時的に居宅での介護が難しくなった障害者・障害児に対して、宿泊を伴う支援を提供する障害福祉サービスです。
法令上の名称
「空床型短期入所」は実務上よく使われる呼び方です。指定基準では「空床利用型事業所」と定義されています。
空床利用型事業所は、対象となる施設の全部または一部にある「現に利用者が使用していない居室」を利用して短期入所を行う形態です。既存設備を活用できるため、短期入所専用の建物を新たに設ける場合と比べ、開設コストを抑えやすい点が特徴です。主な支援内容は次のとおりです。
- 食事、入浴、排せつ等の介助
- 夜間の見守り、服薬管理、緊急時対応
- 生活上の相談・援助
- 家族等のレスパイト支援
- 地域生活を継続するための一時的な受入れ
グループホームの指定だけでは請求できません
グループホームの指定だけでは、短期入所として報酬請求することはできません。共同生活援助とは別に「短期入所」の指定を受ける必要があります。
2. 短期入所の3つの事業形態
短期入所には、居室の確保の仕方によって次の3つの事業形態があります。
| 形態 | 概要 | 居室の考え方 |
|---|---|---|
| 併設型 | 本体施設と一体的に運営する短期入所 | 短期入所専用の居室を設ける |
| 空床利用型 | 本体施設の空いている居室を活用する短期入所 | 現に利用者が使用していない居室を使う |
| 単独型 | 併設型・空床利用型以外の短期入所 | 短期入所事業として必要な居室を確保する |
空床利用型は、短期入所専用の居室を常時確保する形態ではなく、本体施設の実際の空室を利用することが基本です。短期入所用として常に1室を空け、通常のグループホーム入居者には使用させない運営を想定する場合は、併設型等の別形態に該当する可能性があります。事前に指定権者へ運営方法を説明し、事業形態を確認してください。
3. グループホームで実施できる範囲
指定基準上、次の事業者が設置する施設は、空床利用型事業所の本体施設となることができます。
- 介護サービス包括型共同生活援助
- 外部サービス利用型共同生活援助
- 宿泊型自立訓練
- 障害者支援施設等の入所施設
日中サービス支援型グループホーム
日中サービス支援型共同生活援助は、空床利用型事業所の対象から除外されています。短期入所を実施する場合は、併設型等の別形態としての指定・運営方法を指定権者と協議する必要があります。
空床型短期入所は、共同生活援助の「多機能型事業所」になるものではありません。共同生活援助と短期入所という別の障害福祉サービスの指定を、同じ施設で運営する整理になります。
4. 使用できる居室
空床利用型事業所で使用できるのは、現に利用者が使用していない居室です。例えば、次のような居室が想定されます。
- 入居者の退居後、次の入居者が決まるまでの空室
- 開設直後で、まだ入居契約を締結していない居室
- 入居定員の範囲内で、現に誰も使用していない居室
一方、入居者が入院・外泊しているだけで利用契約が継続し、私物が置かれている居室を第三者に使用させることは、占有関係やプライバシーの問題が生じます。このような居室を使用する場合は、指定権者への事前確認が不可欠です。
実務上の管理
空床の発生日、入居契約の有無、短期入所の予約期間を管理簿で整理し、「その日に使用可能な空床があったこと」を説明できる状態にしておくことが重要です。
5. 人員配置基準
グループホームと短期入所を同時に提供する時間帯
グループホーム入居者と短期入所利用者が同時に滞在する時間帯は、両者を合計した利用者数を基に、本体のグループホームに必要な生活支援員またはこれに準ずる従業者の数を確保します。
例
グループホーム入居者4人に短期入所利用者1人を受け入れる場合、原則として利用者5人として、本体施設の人員基準を判定します。
グループホームを提供していない時間帯
日中など、グループホームのサービス提供と同時でない時間帯に短期入所を提供する場合は、短期入所利用者数に応じて次の従業者を配置します。
| 当日の短期入所利用者数 | 必要な従業者数 |
|---|---|
| 6人以下 | 1人以上 |
| 7人以上 | 1人+6人を超えて6人または端数を増すごとに1人追加 |
したがって、短期入所利用者が1人だけであっても、日中に事業所内で過ごす場合は、原則として1人以上の支援従事者を配置する必要があります。
サービス管理責任者・管理者
短期入所には、短期入所独自のサービス管理責任者の配置基準はありません。そのため、短期入所専属のサービス管理責任者を新たに配置する必要はありません。
一方、短期入所事業所には管理者が必要です。管理業務に支障がなく、自治体の取扱いに適合する場合は、グループホームの管理者等との兼務を検討できます。
勤務形態一覧表の注意
共同生活援助と短期入所の双方で勤務する職員は、サービスごとの勤務時間や役割が分かるように整理してください。同じ時間を双方の配置数へ二重計上することはできません。
6. 設備基準
空床利用型事業所は、本体施設の居室であって、現に利用者が使用していない居室を用いることが前提です。本体施設として必要な設備を備え、短期入所利用者の支援に支障がない場合は、既存設備を活用できます。主な確認事項は次のとおりです。
- 居室の面積・定員
- 浴室、便所、洗面設備、食堂等の利用可否
- 利用者の障害特性に応じた安全対策
- 消防設備、避難経路、夜間の避難支援体制
- 建築基準法上の用途や使用方法
- 鍵、私物保管、感染症対策等の運用
指定申請前に消防・建築へ相談してください
グループホームの指定時に建築・消防上の確認を受けていても、短期入所の追加により利用形態や収容人員の扱いが変わることがあります。指定申請前に、消防署および建築担当部署へ改めて相談することが安全です。
7. 定員の考え方
空床利用型短期入所では、短期入所利用者を受け入れた結果、本体施設の共同生活住居・ユニット等の定員を超えることはできません。次の例で考え方を確認します。
| 本体の定員 | GH入居者 | 空床型短期入所 | 受入可否 |
|---|---|---|---|
| 5人 | 5人 | 1人 | 不可(定員超過) |
| 5人 | 4人 | 1人 | 原則可 |
| 5人 | 3人 | 2人 | 指定定員等の範囲内で検討 |
指定申請では、短期入所としての利用定員・受入上限、対象となる居室、空床がない場合の予約管理方法を明確にしておく必要があります。
8. グループホームの体験利用との違い
空床を使った受入れという点で似ているのが、グループホームの体験利用です。両者は、サービス種別と目的、必要な指定が異なります。
| 項目 | 空床型短期入所 | グループホームの体験利用 |
|---|---|---|
| サービス種別 | 短期入所 | 共同生活援助 |
| 主な目的 | 介護者の疾病・休養、緊急受入れ等 | 将来のグループホーム入居に向けた体験 |
| 必要な支給決定 | 短期入所 | 共同生活援助 |
| 算定報酬 | 短期入所サービス費 | 共同生活援助の体験利用報酬 |
| 必要な指定 | 短期入所の指定が必要 | グループホーム指定の範囲内 |
将来の入居を検討するための宿泊であれば体験利用、家族のレスパイトや緊急時の受入れであれば短期入所というように、利用目的と受給者証の支給決定に応じて整理します。
9. 基本報酬(Ⅰ〜Ⅳ)
福祉型短期入所の基本報酬は、利用者が成人か障害児か、また、同じ日に日中活動サービスまたは障害児通所支援等を利用したかによって、(Ⅰ)から(Ⅳ)までの4区分に分かれます。以下は令和8年7月現在の単位数です。
| 利用者 | 同日の他サービス利用 | 基本報酬 |
|---|---|---|
| 成人 | 日中活動サービスの利用なし | 福祉型短期入所サービス費(Ⅰ) |
| 成人 | 生活介護・就労継続支援B型等を利用 | 福祉型短期入所サービス費(Ⅱ) |
| 障害児 | 障害児通所支援等の利用なし | 福祉型短期入所サービス費(Ⅲ) |
| 障害児 | 放課後等デイサービス等を利用 | 福祉型短期入所サービス費(Ⅳ) |
成人の基本報酬
| 障害支援区分 | サービス費(Ⅰ) | サービス費(Ⅱ) |
|---|---|---|
| 区分6 | 923単位 | 602単位 |
| 区分5 | 784単位 | 527単位 |
| 区分4 | 648単位 | 318単位 |
| 区分3 | 583単位 | 240単位 |
| 区分1・2 | 509単位 | 173単位 |
サービス費(Ⅰ)は、区分1以上の成人に対して短期入所を提供した場合に算定します。サービス費(Ⅱ)は、短期入所の利用日に生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援A型・B型等を利用した場合に算定します。
障害児の基本報酬
| 障害児支援区分 | サービス費(Ⅲ) | サービス費(Ⅳ) |
|---|---|---|
| 区分3 | 784単位 | 527単位 |
| 区分2 | 615単位 | 279単位 |
| 区分1 | 509単位 | 173単位 |
サービス費(Ⅲ)は、障害児支援区分1以上の障害児に対して短期入所を提供した場合に算定します。サービス費(Ⅳ)は、短期入所の利用日に児童発達支援、放課後等デイサービス、共生型通所支援、基準該当児童発達支援または基準該当放課後等デイサービスを利用した場合に算定します。
算定例
障害児が学校終了後に放課後等デイサービスを利用し、その後短期入所へ宿泊した日は、原則としてサービス費(Ⅳ)です。放課後等デイサービス等を利用せず、短期入所事業所で日中から支援を受けた日は、サービス費(Ⅲ)の対象となります。
空床利用型事業所であっても、基本報酬(Ⅰ)〜(Ⅳ)の区分は同じです。利用当日の他サービスの利用状況を確認し、請求区分を誤らないようにしてください。
主な加算
| 加算名 | 令和8年7月現在の主な単位 | 注意点 |
|---|---|---|
| 短期利用加算 | 30単位/日 | 利用開始日から一定期間等の要件 |
| 食事提供体制加算 | 48単位/日 | 所得区分・提供体制等の要件 |
| 緊急短期入所受入加算 | (Ⅰ)270単位/日・(Ⅱ)500単位/日 | 緊急受入れの理由・記録等が必要 |
| 送迎加算 | 186単位/片道 | 送迎記録・対象者等の要件 |
| 処遇改善加算 | 所定単位数に率を乗じる | 区分別の体制届・賃金改善が必要 |
空床型で算定できない代表例
「単独型加算」は単独型事業所を評価する加算であり、空床利用型事業所では算定しません。
10. 利用者から徴収できる費用
短期入所事業者は、サービスの利用者負担額のほか、基準に基づき次の費用を利用者から受領できます。
- 食事の提供に要する費用
- 光熱水費
- 日用品費
- 通常の日常生活でも必要となる費用で、利用者に負担させることが適当なもの
費用の内容と金額は、あらかじめ運営規程、重要事項説明書、利用契約書等に明記し、利用者または家族へ説明して同意を得る必要があります。徴収時には領収証を交付します。
「家賃」として請求できるか
短期入所の利用者負担に関する基準には、共同生活援助のような「家賃」は明記されていません。そのため、グループホームの月額家賃を単純に日割りして請求するのではなく、食材料費、光熱水費、日用品費等の実費相当額として整理するのが基本です。
1日500円等の定額設定
光熱水費等を1日500円のように定額設定すること自体が直ちに否定されるものではありませんが、実費相当額として合理的に説明できる金額とし、算定根拠や見直し方法を整備してください。自治体ごとの取扱いも確認が必要です。
11. 指定申請の主な流れ
空床利用型事業所の指定申請は、おおむね次の流れで進みます。
- 指定権者へ事前相談し、空床利用型としての運営方法を説明する
- 対象居室、受入定員、予約管理方法を確定する
- 建築担当部署・消防署へ相談し、必要な手続を確認する
- 勤務形態一覧表、人員配置計画、組織体制を作成する
- 運営規程、重要事項説明書、利用契約書、各種記録様式を整備する
- 短期入所の新規指定申請を提出する
- 必要な体制届・加算届を提出する
- 国保連請求ソフトを設定し、受給者証・契約情報を登録する
- 指定日以後に利用契約を締結し、サービス提供を開始する
申請期限や事前相談の時期、必要書類は自治体によって異なります。指定希望日の2〜3か月以上前を目安に協議を始めると安全です。
12. 運営・請求で注意したいポイント
空床型短期入所は既存のグループホームを活かせる一方、運営・請求では次のような点が問題になりやすいため、注意が必要です。
- 短期入所利用者を人員配置上の利用者数に含めていない
- 空室がない日や本体定員を超える日に受け入れている
- 短期入所の指定前に宿泊支援を提供している
- グループホームの体験利用と短期入所を混同している
- サービス費(Ⅰ)〜(Ⅳ)の区分を誤っている
- 短期入所用の契約書・重要事項説明書を作成していない
- 入退所日時、支援内容、食事、服薬、送迎等の記録が不足している
- 空床の発生状況や使用居室を説明できない
- 実費負担の金額・根拠・同意手続が不十分
- 共同生活援助と短期入所の職員配置を二重計上している
運営指導に備える記録
利用申込・受入判断、空床確認、受給者証確認、契約、個別の支援内容、入退所時刻、食事・服薬、事故・緊急対応、送迎、利用者負担の請求・領収まで、利用の流れが一連で確認できるように記録を整備してください。
まとめ
空床型短期入所は、グループホーム等の現に使用されていない居室を活用し、地域の緊急受入れや家族のレスパイトに対応できる有用なサービスです。
一方、共同生活援助とは別に短期入所の指定が必要であり、空床の管理、人員配置、定員、報酬区分、利用者負担を明確に分けて運営しなければなりません。特に、短期入所利用者を含めた人員配置と、成人のサービス費(Ⅰ・Ⅱ)/障害児のサービス費(Ⅲ・Ⅳ)の区分は、請求実務上の重要事項です。開設を検討する際は、具体的な受入方法と勤務体制を整理したうえで、指定権者、消防署、建築担当部署等との事前協議を行うことが、円滑な指定・運営につながります。
当事務所での対応例
当事務所では、静岡市・静岡県内を中心に、障害福祉サービスに特化した行政書士として、空床型短期入所(空床利用型事業所)の指定申請と開設後の運営をサポートしています。事業形態・対象居室の整理、共同生活援助との人員配置の調整、定員・受入上限の設定、消防署・建築担当部署との事前相談、運営規程・重要事項説明書・利用契約書・記録様式の作成、体制届・加算届、基本報酬区分の確認、国保連請求・運営指導対応まで、一連の手続をサポートします。
主な参考資料
- 厚生労働省令第171号「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」
- 厚生労働省告示第523号「指定障害福祉サービス等に要する費用の額の算定に関する基準」
- 厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年6月1日適用)」
- 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A」
※本記事は令和8年7月時点の国の法令・報酬資料に基づく一般的な解説です。自治体独自の申請様式、事前協議、消防・建築上の取扱い、報酬審査の運用があるため、実際の指定申請・請求時には所管自治体の最新の取扱いをご確認ください。
