健康保険・厚生年金保険が適用される事業所を適用事業所といい、法人は原則として強制適用です。開業したときは新規適用届を提出し、被保険者資格取得届などもあわせて提出します。強制適用に当たらない場合には、任意適用申請という別の手続きがあります。
- 法人の事業所は原則として強制適用
- 新規適用届には提出期限と添付書類が定められている
- 被保険者になる人の範囲を確認して同時に届け出る
はじめに
障害福祉サービスの指定を受けるには、法人格が必要です。株式会社・合同会社・NPO法人・社会福祉法人のいずれであっても、法人事業所は、従業員が事業主一人だけの場合であっても健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所となります。指定申請の準備と並行して、社会保険の新規適用手続きを進める必要があります。
この記事では、日本年金機構が公表している手続き案内をもとに、新規適用の考え方と実務の流れを整理します。
1. 適用事業所と被保険者
社会保険の適用事業所とは
健康保険・厚生年金保険が適用される事業所を「適用事業所」といい、法律上当然に適用される強制適用事業所と、申請と認可によって適用される任意適用事業所に分かれます。
| 区分 | 範囲 |
|---|---|
| 法人事業所 | すべての |
| 個人事業所 | 常時5人以上の |
| 士業の個人事業所 | 令和4年10月から、 |
障害福祉サービス事業所は法人で運営されるため、法人を設立した時点で強制適用事業所に該当します。利用者の受入れ開始日や指定の効力発生日ではなく、法人として人を使用し始めた事実が基準になる点に注意してください。
被保険者になる人・ならない人
適用事業所に常用的に使用される70歳未満の人は、国籍・性別・年金の受給の有無にかかわらず厚生年金保険の被保険者になります。試用期間中であっても、報酬が支払われていれば対象です。代表者・役員も、法人から労務の対償として報酬を受ける場合は原則として被保険者となります。
パート・アルバイトについては、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上であれば被保険者となります。この基準を下回る場合でも、特定適用事業所・任意特定適用事業所等に使用され、次のすべてを満たす短時間労働者は被保険者になります。
- 週の所定労働時間が20時間以上あること
- 所定内賃金が月額8.8万円以上であること
- 学生でないこと
なお、この賃金要件(月額8.8万円以上)は廃止されることが決まっています。あわせて企業規模要件も、令和9年10月に従業員36人以上、令和11年10月に21人以上、令和14年10月に11人以上と段階的に引き下げられ、令和17年10月に撤廃される予定です。判定の際は最新の情報をご確認ください。
一方、次のような働き方は適用除外とされています。ただし、所定の期間を超えて引き続き使用されるようになった場合は被保険者となります。
- 日々雇い入れられる人
- 2か月以内の期間を定めて使用される人
- 所在地が一定しない事業所に使用される人
- 季節的業務(4か月以内)に使用される人
- 臨時的事業の事業所(6か月以内)に使用される人
※70歳以上の人は厚生年金には加入せず、健康保険だけに加入します(75歳以上は後期高齢者医療制度)。
2. 新規適用届の提出と書き方
新規適用届の提出期限と提出先
強制適用事業所に該当したときは、健康保険・厚生年金保険 新規適用届を提出します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出時期 | 事実発生から |
| 提出先 | 事務センターまたは |
| 提出方法 | 電子申請、 |
郵送の場合の宛先は事務センターです。封筒に送付先の事務センター名と郵便番号(大口事業所個別番号)を記載すれば、住所を書かなくても届きます。窓口へ持参する場合は管轄の年金事務所です。事務センターでは窓口相談・電話相談は行っていないため、内容の相談は年金事務所に行ってください。
あわせて読みたい被保険者資格取得届|従業員を採用したときの手続き新規適用届に添付する書類
| 事業所の区分 | 添付書類 |
|---|---|
| 法人事業所 | 法人 |
| 事業主が | 法人 |
| 強制適用と | 事業主の |
登記簿謄本および住民票は、提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものを提出します。取得から時間が経った書類は使えないため、指定申請用に取得した謄本を流用する場合は発行日を確認してください。
また、法人事業所の所在地が登記上の所在地と異なる場合や、個人事業所の所在地が住民票の住所と異なる場合は、賃貸借契約書のコピーなど事業所所在地が確認できる書類を別途添付します。障害福祉サービス事業所では、本店登記が代表者の自宅で、実際の事業所が別の物件というケースが多いため、この添付が必要になる場面が多くあります。
新規適用届の記入欄と書き方
とくに間違いが多いのは適用年月日と社会保険に加入しない人の内訳欄です。適用年月日を実際より遅く書くと、さかのぼって保険料を納めることになります。内訳欄は、パートやアルバイトを「加入しない」と書いた根拠(1週の勤務時間)を後から説明できるようにしておいてください。
あわせて読みたい常勤換算とは?|障害福祉事業所の計算方法と考え方3. 任意適用申請という選択肢
強制適用に該当しない事業所(常時5人未満の個人事業所や、適用除外業種の個人事業所)でも、任意適用申請を行うことで適用事業所になることができます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 要件 | 従業員の |
| 提出時期 | 従業員の |
| 添付書類 | 任意適用同意書/事業主世帯全員の |
| 適用年月日 | 厚生労働大臣の |
適用年月日が「申請日」ではなく「認可を受けた日」である点は、採用予定者への説明で誤解が生じやすいところです。加入時期を前提とした説明は避け、認可後に改めて案内するのが安全です。
4. あわせて必要になる届書
新規適用届は「事業所」に関する届出です。実際に人を使用している場合は、被保険者に関する届出をあわせて提出する必要があります。
- 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届(従業員ごとに提出)
- 健康保険 被扶養者(異動)届 国民年金第3号被保険者関係届(扶養する家族がいる場合)
- 保険料口座振替納付(変更)申出書(口座振替を利用する場合)
資格取得届はマイナンバーまたは基礎年金番号が未記入の場合に返戻されます。入社手続きの段階で本人に確認し、確認できた番号を届書に記載してください。
5. 届出をしていない事業所への対応
日本年金機構は、加入手続きを行わず保険料の納付を免れている事業所(適用調査対象事業所)の把握に努め、加入指導等の取り組みを行っています。
- 加入を勧奨しても自主的に加入しない事業所のうち、従業員を使用する未適用事業所を中心に、年金事務所の職員による重点的な加入指導が実施されます。
- 重点的な加入指導を行っても加入手続きを行わない場合は、職員による立入検査で被保険者資格の有無の事実が確認され、必要に応じて職員の認定による加入手続きが行われます。
- 事業主には立入検査に対する受忍義務があり、検査を忌避したり質問に答弁しないことは許されません(厚生年金保険法第100条)。
正当な理由がなく検査を拒み、妨げ、もしくは忌避したときなどは、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となります(同法第102条)。加えて、届出漏れが判明した場合は事実が発生したときまで遡って資格取得届を提出し、遡って保険料を納付することになります。
6. 実務上の注意点
指定申請のスケジュールと同時に管理する
障害福祉サービスの指定申請では、法人設立・物件契約・人員確保が同時並行で進みます。新規適用届の「事実発生から5日以内」という期限は非常に短いため、法人設立日と最初の従業員の雇用開始日をカレンダーに落とし込み、指定申請の工程表に社会保険の手続きも組み込んでおくことをおすすめします。
人員基準の「常勤」と社会保険の加入は別の基準
障害福祉サービスの人員基準における「常勤」は、事業所が定める常勤職員の勤務すべき時間数に達しているかどうかで判断します。一方、社会保険の被保険者資格は4分の3基準や短時間労働者の要件で判断します。両者は目的の異なる基準であり、一致するとは限りません。常勤換算の計算と社会保険の加入判定を混同しないよう、シフト表と雇用契約書の内容を分けて確認してください。
健康保険組合に加入する場合
協会けんぽではなく健康保険組合に加入する場合は、健康保険に関する届出先や様式が異なります。届書の提出前に、加入する健康保険の運営主体を確認してください。
あわせて読みたい社会保険手続きの電子申請|GビズIDとオンラインサービスよくある質問
法人事業所は、従業員が事業主のみの場合を含めて健康保険・厚生年金保険の加入が法律で義務づけられています。役員報酬が支払われている限り、代表者1人の法人でも新規適用届の提出が必要です。
社会保険の適用は障害福祉サービスの指定とは無関係です。法人として人を使用し始めた事実が発生した時点から5日以内に届け出ます。指定の効力発生日を待つ必要はありません。
届出が提出されていないことが後で分かった場合、さかのぼって資格取得届を提出するとともに、事実が発生したときにさかのぼって保険料を納付することになります。早期に管轄の年金事務所へ相談してください。
法人(商業)登記簿謄本はコピー不可とされています。個人事業所の住民票も同様にコピー不可です。いずれも提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものを用意してください。
1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上であれば被保険者になります。4分の3未満でも、特定適用事業所等では週20時間以上・所定内賃金月額8.8万円以上・学生でないという要件をすべて満たせば被保険者となります。
まとめ
障害福祉サービス事業所の開業では、法人設立の時点で健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所に該当します。新規適用届の提出期限は事実発生から5日以内と短く、添付書類にも90日以内に発行された登記簿謄本という制約があるため、指定申請の準備と同時に段取りしておくことが実務上の要点です。
届出を行わないまま時間が経過すると、加入指導や立入検査の対象となるだけでなく、遡及して保険料を納付することになります。開業時に一度で整理しておくことが、結果的に最も負担の少ない進め方です。
指定申請と社会保険の手続きを、あわせてご相談ください
障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、指定申請・報酬請求の実務と労務管理の両面を、ひとつの窓口でご相談いただけます。
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主な参考資料
- 参考:日本年金機構「事業所が健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき」「新規適用の手続き」「任意適用申請の手続き」
- 参考:日本年金機構「適用事業所と被保険者」
- 参考:日本年金機構「厚生年金保険・健康保険などの適用促進に向けた取り組み」
- 参考:厚生年金保険法第100条・第102条
※本記事は令和8年8月28日時点の法令・通知・日本年金機構の公表資料に基づく一般的な整理です。実際の届出にあたっては、管轄の年金事務所・事務センターの取扱い、健康保険組合の定め、最新の様式・記載要領を必ずご確認ください。

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