就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに就労の機会と生産活動の機会を提供するサービスです。指定を受けるには法人格を持ち、人員・設備・運営の各基準を満たす必要があります。このページでは、指定申請から開業資金、人員配置、基本報酬と工賃、加算・減算、処遇改善加算、運営指導、労務管理までを1ページで体系的にまとめています。
- 雇用契約を結ばない形で就労・生産活動の機会を提供する
- 開業資金は初期費用と開所後の運転資金の2階建てで考える
- 基本報酬は平均工賃月額によって決まる
この記事で分かること
就労継続支援B型について、開業・指定申請から、開業資金、人員配置、サービス管理責任者、基本報酬、工賃、生産活動、就労支援事業会計、加算・減算、処遇改善加算、運営指導、労務管理までを1ページで体系的に整理した総合ガイドです。各テーマは個別の解説記事にリンクしています。
就労継続支援B型は、障害福祉サービスのなかでも事業所数が多く、開業のご相談も最も多いサービスです。一方で、開業してから「工賃が上がらない」「基本報酬の区分が下がった」「運営指導で記録の不整合を指摘された」といった相談も少なくありません。
このページは、当サイトの就労継続支援B型に関する解説記事を、開業前から運営後までの順番に並べた総合ガイドです。各章の冒頭に要点をまとめ、詳細は個別の記事へリンクしています。B型を体系的に理解したい方は、上から順にお読みください。
1. 就労継続支援B型とは
就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに就労の機会と生産活動の機会を提供する障害福祉サービスで、利用者には工賃を支払います。雇用契約を結び最低賃金以上の賃金を支払うA型、一般就労への移行を目的とする有期の就労移行支援とは、目的も報酬の考え方も異なります。
B型は年齢や体調に応じた柔軟な働き方ができる一方、工賃の原資を生産活動の収益から確保しなければならないという特徴があります。どのサービス種別で開業するかを迷っている段階では、対象者・報酬・運営の負担の3点を比べて判断してください。
2. 指定申請の要件と流れ
B型の指定を受けるには、法人格を持ち、人員・設備・運営の各基準を満たしたうえで指定権者へ申請します。全国一律の日数はなく、多くの指定権者では事前協議から指定まで3〜6か月程度を見込みます。
たとえば静岡市は事業開始のおおむね3か月前に事前協議、申請は指定希望月の2か月前の1日までと案内されています(2026年4月15日時点)。物件・人員・書類は順番ではなく並行して進めないと、どこか一つで工程全体が止まります。
3. 開業資金と資金繰り
開業資金は「初期費用」と「開所後の運転資金」の2階建てで考えます。給付費が入金されるのはサービス提供月の翌々月のため、開所から最初の入金までの2〜3か月分の固定費を、初期費用とは別枠で確保しておく必要があります。
公的機関のモデルでは、就労継続支援A型・B型の初期費用は約420万〜490万円とされています(J-Net21、2024年12月時点の一例)。融資の相談は、物件契約後ではなく、事業計画と収支計画を固めた段階で行うほうが通りやすくなります。
4. 人員配置と常勤換算
B型の人員基準は、管理者・サービス管理責任者・職業指導員・生活支援員の4職種です。職業指導員と生活支援員の総数は、常勤換算で「利用者数÷10」以上が最低ラインで、定員は原則20人以上(多機能型で組み合わせる場合もB型は10人以上)です。
報酬上は6:1・7.5:1・10:1の人員配置区分があり、どの区分で算定するかが基本報酬に直結します。「人数」「常勤換算」「常勤」「専従」はそれぞれ別の要件です。実際の指定申請では、勤務形態一覧表と雇用契約書の所定労働時間が一致しているかが確認されます。
5. サービス管理責任者
サービス管理責任者になるには、①サービス管理責任者等研修(基礎研修・実践研修)の修了、②相談支援従事者初任者研修(講義部分)の修了、③実務経験の3つをすべて満たす必要があります。実務経験は年数だけでなく日数も要件で、相談支援業務は5年かつ900日以上、直接支援業務は8年かつ1,440日以上が原則です。
基礎研修を修了しただけでは配置できません。実践研修の受講に必要なOJTは原則2年以上で、要件を満たす場合は6月以上に短縮できます。欠如したときの「みなし配置」は、すでに指定を受けた事業所の特例であり、新規開業の代替策にはなりません。
6. 物件・設備と消防
物件は契約前に、用途地域・建築基準法上の用途・消防設備の要否を、指定権者と消防に確認してください。契約後に是正が必要になると、改修費と開所時期の両方に影響します。
訓練・作業室、相談室、洗面所、便所などの設備要件に加え、事業所の形態(多機能型・従たる事業所・共同生活援助との併設など)によって求められる区画が変わります。
7. 基本報酬の決まり方
B型の基本報酬は「人員配置区分(6:1・7.5:1・10:1)」「利用定員」「前年度の平均工賃月額」の3つで決まります。令和8年6月1日から、平均工賃月額の区分の基準額がそれぞれ3千円引き上げられ、あわせて中間区分(A〜F)が新設されました。
令和6年度改定の前後で区分が上がっていない事業所は、この見直しの適用対象外です。また、令和8年6月1日以降に新規指定を受けた事業所は、当分の間、所定単位数の1000分の984で算定します(既存事業所は従前どおり)。
- 就労継続支援B型の基本報酬|平均工賃月額の区分と単位数(令和8年6月改定対応)
- 【令和8年6月施行】就労継続支援B型の基本報酬区分|見直しの内容と変更点
- 【令和8年6月施行】就労継続支援B型の報酬見直し|届出の流れと「対象外」の判定方法
- 【令和8年度報酬改定】就労継続支援B型の改正ポイント|留意事項通知の変更点
- 就労継続支援B型の報酬改定Q&A|令和8年度VOL.1・VOL.2の重要ポイント
- 令和8年度の臨時応急的な見直し|就労移行支援体制加算・B型基本報酬・新規指定事業所の報酬単価
- 地域区分と1単位の単価|級地ごとの上乗せ割合と計算方法
- 障害福祉サービスの報酬計算|単位数と単価・端数処理・利用者負担
8. 工賃向上計画と平均工賃月額
工賃向上計画は、目標額だけでなく具体的な改善策と工程を定める計画で、毎年度、評価と見直しを行います。平均工賃月額は基本報酬に直結するため、個別支援計画・就労支援事業会計と連動させて管理します。
平均工賃月額は令和6年度から見直された計算方法で算出します。年度の途中で計算方法を誤ると、翌年度の基本報酬の区分まで影響するため、算定の根拠となる支払記録を月ごとに残しておいてください。
9. 生産活動の設計
工賃の原資は生産活動の収益であり、給付費から工賃を支払うことは原則としてできません。生産活動は「継続できる」「支援につながる」「収支が成り立つ」の3つを同時に満たすように設計します。
厚生労働省の調査では、取り組んでいる生産活動として最も多いのは軽作業(部品組立・検品・袋詰めなど)で60.2%でした。令和6年度のB型の全国平均工賃月額は24,141円(前年度比106.6%)です。単価は「受注できるか」ではなく「工賃をいくら払いたいか」から逆算して決めます。
10. 就労支援事業会計
A型・B型・就労移行支援では、給付費による事業と生産活動(就労支援事業)を区分して経理する必要があります。会計区分ができていないと、工賃の計算根拠も説明できません。
就労支援事業会計は、工賃向上計画・平均工賃月額・運営指導での確認事項とすべてつながっています。開業前の段階で、勘定科目と帳簿の作り方まで決めておくと後から作り直さずに済みます。
11. 加算・減算
加算は「要件を満たしたうえで、算定を開始する月の前月15日までに体制届を提出する」のが基本です。減算は、人員欠如・個別支援計画未作成・虐待防止措置未実施・身体拘束廃止未実施・BCP未策定・支援プログラム未公表など、体制の不備によって発生します。
加算は取り漏らしより、要件を満たさないまま算定してしまう返還のほうが影響が大きくなります。算定を始める前に、要件・届出・記録の3点をそろえて確認してください。
12. 処遇改善加算
処遇改善加算の収入は、原則として加算額以上の賃金改善に充てる必要があります。計画書の提出、規程の整備、職員への周知、実際の賃金支払、実績報告までが一連の手続です。
令和8年6月以降は、Ⅰ・イ、Ⅰ・ロ、Ⅱ・イ、Ⅱ・ロ、Ⅲ、Ⅳなどの区分で要件を確認します。加算の区分を上げるより先に、いま算定している区分の要件を満たし続けられているかを点検してください。
13. 個別支援計画・研修・BCPなどの運営実務
個別支援計画の作成とモニタリング、虐待防止・身体拘束廃止の措置、感染症と自然災害のBCP、安全計画、法定研修は、いずれも未実施が減算に直結します。年間の実施時期をカレンダーにして、記録とセットで管理してください。
運営指導では「実施したかどうか」ではなく「実施した記録が残っているか」が確認されます。会議録、研修の受講記録、委員会の議事録は、開催日・出席者・内容が分かる形で残しておきます。
14. 変更届・体制届と請求
管理者や事業所の名称・所在地、加算の体制などが変わったときは、変更届または体制届を期限内に提出します。請求の返戻・過誤は、体制届の提出漏れと受給者証の確認漏れが主な原因です。
体制届と変更届は提出先も期限も別々です。人事異動や加算の変更が決まった段階で、どちらの届出が必要かを確認してください。
15. 運営指導
運営指導では、個別支援計画・勤務形態一覧表・加算の算定根拠・工賃の支払記録など、日々の記録の整合性が確認されます。書類は「作成した日付」ではなく「勤務や支援の実態」と一致していることが重要です。
実際の運営指導では、勤務実績と勤務形態一覧表の整合性から人員配置を確認されるケースが多くあります。指摘が重なると報酬返還につながるため、記録は毎月の締めのタイミングで点検してください。
16. 労務管理
就業規則の整備、社会保険・労働保険の加入、労働時間の管理は、指定基準とは別に、事業所として必ず必要です。常勤の所定労働時間をどう定めるかは、常勤換算や加算の判定にも影響します。
職員の入退職が多い時期は、人員基準と加算の要件の両方を割り込みやすくなります。労務と指定基準は、同じ勤務データを別の目的で見ているものだと考えて管理してください。
17. よくある質問
初期費用と運転資金を分けて考えます。公的機関のモデルでは就労継続支援A型・B型の初期費用は約420万〜490万円とされています(J-Net21、2024年12月時点の一例)。これに加えて、給付費が入金されるサービス提供月の翌々月までをしのぐ2〜3か月分の固定費を別枠で確保してください。
できません。サービス管理責任者の配置は指定基準上の要件です。欠如したときの「みなし配置」は、すでに指定を受けた事業所の特例であり、新規開業の代替策にはなりません。
職業指導員と生活支援員の総数は、常勤換算で「利用者数÷10」以上が最低ラインです。報酬上は6:1・7.5:1・10:1の人員配置区分があり、算定する区分によって必要な人数が変わります。
あります。用途地域・建築基準法上の用途・消防設備の要否は、契約前に指定権者と消防に確認してください。契約後に是正が必要になると、改修費と開所時期の両方に影響します。
原則20人以上です。多機能型で他のサービスと組み合わせる場合も、B型の定員は10人以上必要です。
前年度の平均工賃月額は基本報酬の区分に直結するため、区分が下がれば単位数も下がります。令和8年6月1日からは区分の基準額が3千円ずつ引き上げられ、中間区分(A〜F)が新設されました。
原則としてできません。工賃の原資は生産活動の収益から確保し、就労支援事業会計として区分して経理します。
全国一律の日数はありません。指定権者の事前協議の時期と提出期限から逆算します。静岡市は事業開始のおおむね3か月前に事前協議、申請は指定希望月の2か月前の1日までと案内されています(2026年4月15日時点)。
当分の間、所定単位数の1000分の984で算定します。令和8年6月1日より前から指定を受けている事業所は従前どおりです。
18. まとめ
就労継続支援B型は、指定申請の要件だけを満たせば運営できるサービスではありません。人員配置、平均工賃月額、生産活動の収支、会計区分、加算の要件、記録の整合性がすべてつながっており、どこか一つが崩れると基本報酬や加算に跳ね返ります。
開業前は「人員・物件・資金」、開業後は「工賃・記録・届出」を軸に点検してください。各テーマの詳細は、本ページ内の各章からそれぞれの記事へ進めます。
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行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、指定申請だけでなく、人員配置の設計、就業規則や社会保険の手続き、処遇改善加算の取得までご相談いただけます。開業支援は20万円〜です。
静岡・神奈川・愛知を中心に、オンラインで全国対応しています。物件の選び方、勤務形態一覧表の組み方、工賃と生産活動の収支設計、運営指導への備えまで、開業前から運営後まで一緒に整理します。
主な参考資料
- 参考:厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定」関係資料
- 参考:こども家庭庁・厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」
- 参考:厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」(工賃(賃金)向上計画・平均工賃月額)
- 参考:厚生労働省「就労支援事業会計処理基準」
- 参考:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21「業種別開業ガイド」
※本ページは令和8年9月7日時点の法令・告示・通知等に基づく一般的な整理です。指定権者の条例・手引き・個別運用、最新の告示・Q&Aを必ず確認してください。

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。
これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。
