情報公表未報告減算は、WAM NETの障害福祉サービス等情報公表システムで、必要な報告をしていない事業所に適用される減算です。決算書(財務諸表)は、システム上「必須」と表示されていなくても報告が必要です。
- 減算は所定単位数の10%(施設・居住系)または5%(そのほかのサービス)
- 決算書は「必須」表示がなくても、省令上の報告義務がある
- 指導を受けても報告しないと、未報告の時点にさかのぼって減算
- 公開したくないという理由だけでは、決算書の報告は省略できない
はじめに
障害福祉サービス等情報公表制度では、事業所の基本情報や運営情報に加えて、法人の財務状況が分かる書類(決算書等)の報告も求められています。
ところが、WAM NETの入力画面では、財務状況の欄が「必須」と表示されていないことがあります。そのため、ほかの項目は入力して承認申請まで済ませたのに、決算書だけが未掲載のまま、という事業所があります。
この記事では、決算書の未掲載が運営指導で指摘されるのか、情報公表未報告減算はいつから適用されるのか、決算書を公開したくない場合はどうなるのかを、厚生労働省のQ&A(令和8年8月3日)に沿って整理します。
1. 情報公表未報告減算の仕組み
減算の内容と減算率
情報公表未報告減算は、令和6年度の報酬改定で設けられた減算です。障害者総合支援法第76条の3(障害児支援は児童福祉法第33条の18)にもとづく情報公表の報告をしていない事業所について、所定単位数から一定の割合を差し引きます。
減算の割合は、サービスの種類によって2つに分かれます。
| 区分 | 対象サービス | 減算 |
|---|---|---|
| 施設・居住系 | 療養介護、 | 所定単位数の |
| 上記以外 | 居宅介護、 | 所定単位数の5% |
たとえば就労継続支援B型で、1日の所定単位数が600単位の利用者であれば、5%の30単位が差し引かれ、570単位で算定します。
あわせて読みたい障害福祉サービスの加算と減算指定の更新でも報告の有無を確認される
令和6年4月からは、指定の更新を申請したときに、都道府県等が情報公表の報告がされているかを確認することになりました。
必須の報告項目が一部でも未報告であれば、都道府県等が未報告の事情を確認し、報告するよう指導したうえで更新の手続を進めます(令和6年度報酬改定Q&A VOL.1 問22)。運営指導だけでなく、指定の更新のときにも報告漏れが見つかるということです。
2. 情報公表で報告する情報
基本情報・運営情報・経営情報
報告する情報は、大きく次の3つに分かれます。決算書(財務状況)は基本情報の項目の一つで、経営情報とは別に報告します。
| 区分 | 主な内容 | 報告の時期 |
|---|---|---|
| 基本情報 | 法人・事業所の | 新規指定の |
| 運営情報 | 利用者の | 年1回の定期報告 |
| 経営情報 | 事業所の | 毎会 |
決算書として報告する財務諸表
財務状況の欄に報告するのは、直近の事業年度が終わった時点で作成した財務諸表です。施行通知では、原則として次の3つを報告するとしています。
- 事業活動計算書(損益計算書)
- 貸借対照表(バランスシート)
- 資金収支計算書(キャッシュフロー計算書)
就労継続支援A型・B型は、これに加えて就労支援事業の事業活動計算書なども報告項目に入っています。会計基準上、作成が求められていない財務諸表がある場合の扱いは5章で説明します。
あわせて読みたい就労支援事業会計とは?3. 決算書の未掲載は指摘の対象になるか
「必須」と表示されていなくても報告が必要
WAM NETのシステムでは、「必須」になっていない項目は空欄のままでも申請できてしまいます。財務状況もその一つです。
この点について、国のQ&Aは、省令上、財務状況は報告が義務づけられていると答えています。法人によっては作成しない財務諸表もあるため、システムの仕様上は必須項目になっていない場合があるものの、必要な財務諸表は報告しなければなりません(情報公表制度Q&A VOL.2 問1-2-1)。
必要な財務諸表を報告していなければ、運営指導で不備として指摘され、改善を求められる可能性があります。
WAM NETの表示
- 財務状況の欄は「必須」になっていないことがある
- 空欄のままでも申請できてしまう
- 作成しない財務諸表がある法人もあるための仕様
省令上の扱い
- 財務状況は報告が義務づけられている
- 必要な財務諸表は必ず報告する
- 未掲載なら運営指導で指摘される可能性がある
入力しただけでは報告したことにならない
情報公表システムでは、事業所が入力した内容を承認申請し、都道府県等が承認してから公表されます。決算書を添付しても、承認申請をしていなければ報告したことになりません。
沖縄県も、承認申請の手続を行っていない場合は減算になることがあると案内しています。入力のあと、承認申請まで済んでいるかもあわせて確認してください。
4. 減算はいつから適用されるか
指摘を受けた時点ですぐ減算されるわけではない
決算書が未掲載だからといって、指摘を受けた時点で必ず直ちに減算されるわけではありません。
国のQ&Aでは、必須の報告項目が未報告であることが指定の更新や運営指導などで分かり、都道府県等が報告するよう指導しても報告しない場合に減算するとしています。その場合、減算は未報告の時点にさかのぼって適用されます。災害などのやむを得ない事情で報告できない場合は、減算の対象にしなくてよいとされています(令和6年度報酬改定Q&A VOL.1 問19)。
ケース別の減算が始まる時期
減算がいつから始まるかは、国のQ&Aで次のように示されています。
| ケース | 減算が始まる時期 | 根拠 |
|---|---|---|
| 令和7年度に | 指導を | 情報公表制度Q&A VOL.2 問1-3-1 |
| 令和8年度以降の | 毎年度の | 情報公表制度Q&A VOL.2 問1-3-1 |
| 新規指定を | 実施要綱で | 令和6年度報酬改定Q&A VOL.1 問21 |
| 就労選択支援の | 初回の | 情報公表制度Q&A VOL.2 問1-4-2 |
経営情報の報告期限は、毎会計年度終了後3か月以内です。3月決算の法人なら6月末が期限で、6月末までに報告しなければ7月から減算の対象になります。期限までに報告していれば、都道府県等の承認が期限後になってもかまいません(情報公表制度Q&A VOL.2 問2-3-4)。
減算が終わる時期
減算は、報告をして未報告の状態が解消した月まで続きます。報告が遅れるほど減算の期間が長くなります。さかのぼって減算されると、すでに請求した報酬の過誤調整も必要になるため、未掲載に気づいたら指導を待たずに報告してください。
都道府県等の運用も確認する
報告の期限や減算の扱いは、都道府県等の実施要綱や案内で具体的に定められています。たとえば岐阜県は、4月1日より前から指定を受けている事業者について、報告期限(7月末)までに報告がなければ、その年度の4月から減算すると案内しています。
「指導を受けてから報告すれば間に合う」とは限りません。提出先の都道府県等の案内を確認し、期限内に報告してください。
5. 決算書を公開したくない場合の扱い
「法人の現預金や経営成績を外部に見せたくない」という相談を受けることがあります。しかし、公開したくないという理由だけでは、財務状況の報告を省略できません。
ただし、会計基準上作成が求められていないなど、やむを得ない事情がある場合は、資産・負債・収支の内容が分かる簡易な計算書類で報告することが認められています(施行通知 Ⅲ-5(3)エ)。
| 状況 | 報告するもの |
|---|---|
| 原則 | 事業 |
| 会計基準上求められていない | 資産・負債・収支の |
| 公開したくない | それだけを |
なお、経営情報は、事業所ごとの数字をそのまま公表するのではなく、属性ごとにグループ分けした分析結果を毎年度公表するものとされています。
6. 支援プログラム未公表減算との違い
名前が似ている減算に、児童発達支援・放課後等デイサービスの「支援プログラム未公表減算」があります。どちらも「公表」に関する減算ですが、対象も手続も別のものです。
| 項目 | 情報公表未報告減算 | 支援 |
|---|---|---|
| 対象サービス | 障害福祉サービス・障害児支援の | 児童発達支援、 |
| 減算になる理由 | WAM NETの | 支援 |
| 減算 | 所定単位数の | 所定単位数の |
| 解消のしかた | 情報公表システムで | 支援 |
7. 未掲載が分かったときの対応
確認すること
- WAM NETの事業所情報で、財務状況の欄に直近年度の決算書類が載っているか
- 法人で作成している財務諸表を、すべて報告しているか
- 経営情報を、決算から3か月以内に報告しているか
- 入力したあと、承認申請まで済ませているか
- 複数の事業所やサービスがある法人は、登録しているすべての分を確認したか
未掲載が分かったら、すぐに必要な報告をしたうえで、指定権者に連絡して減算の扱いを確認してください。さかのぼって減算の対象になる場合は、請求済みの報酬の過誤調整が必要です。手続は自治体によって異なります。
ポイント
- ほかの項目を登録済みでも、財務諸表の報告漏れは指摘・減算のリスクがあります。未掲載が分かった場合は、速やかに指定権者へ確認し、必要な報告を行ってください。
よくある質問
いいえ。省令上、財務状況は報告が義務づけられています。システム上は空欄でも申請できてしまいますが、必要な財務諸表は報告してください(情報公表制度Q&A VOL.2 問1-2-1)。
指摘を受けた時点で直ちに減算されるわけではありません。都道府県等から報告するよう指導されても報告しない場合に、未報告の時点にさかのぼって減算されます。
ただし、報告期限を過ぎた時点で減算とする都道府県等もあるため、指摘を待たずに報告してください。
決算から3か月以内なので、6月末までです。期限内に報告すれば足り、都道府県等の承認まで済んでいる必要はありません。6月末までに報告しないと、7月から減算の対象になります。
国のQ&Aは、新規指定のとき以降に報告をしていれば、年1回の更新がないことだけでは減算の対象にならないとしています(令和6年度報酬改定Q&A VOL.1 問20)。ただし、内容が変わったときは更新が必要です。
経営情報は毎年度の報告が必要で、未報告なら報告期限の翌月から減算の対象です。都道府県等によって運用が異なることもあるので、提出先の案内も確認してください。
公開したくないという理由だけでは省略できません。会計基準上作成が求められていないなど、やむを得ない事情がある場合は、資産・負債・収支の内容が分かる簡易な計算書類で報告できます。
都道府県等の実施要綱で定める期限までです。期限までに報告しないと、期限の翌月から減算の対象になります(令和6年度報酬改定Q&A VOL.1 問21)。期限は都道府県等によって異なるので、指定の通知とあわせて確認してください。
共同生活援助や施設入所支援などは所定単位数の10%、就労継続支援や放課後等デイサービスなどは5%です。所定単位数で計算した報酬が月100万円の事業所なら、5%の減算で月5万円、10%の減算で月10万円が減ります。
まとめ
情報公表未報告減算は、WAM NETの情報公表システムで必要な報告をしていない事業所に適用され、所定単位数の10%または5%が減算されます。
見落としやすいのが決算書(財務状況)です。システム上「必須」と表示されていなくても省令上は報告義務があり、未掲載なら運営指導で指摘されることがあります。指導を受けても報告しなければ、未報告の時点にさかのぼって減算されます。経営情報も、決算から3か月以内の報告が毎年度必要です。
ほかの項目を登録済みの事業所も、決算書が抜けていないか、承認申請まで済んでいるかを一度確認してください。
情報公表の報告漏れが気になる方へ
障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。
WAM NETの登録内容の確認、決算書や経営情報の報告漏れのチェック、運営指導に向けた書類の確認などのご相談に対応しています。
詳しくは運営顧問のページをご覧ください。
関連記事
主な参考資料
- 厚生労働省「障害福祉サービス等情報公表制度に関するQ&A VOL.2」(令和8年8月3日)問1-2-1・問1-3-1・問1-4-2・問2-3-4 (出典)
- 厚生労働省「障害福祉サービス等情報公表制度の施行について」(障障発0423第1号、令和7年9月1日最終改正) (出典)
- 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1」(令和6年3月29日)問19〜問22 (出典)
- 島根県「情報公表未報告減算の取扱いについて」 (出典)
- 岐阜県「令和7年度障害福祉サービス等情報の報告について(依頼)」(令和7年6月29日) (出典)
- 沖縄県「情報公表制度における沖縄県への承認未申請事業所からの県への報告」 (出典)
※本記事は令和8年10月16日時点の情報に基づいています。

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。
これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。
