就労継続支援B型の生産活動は何をすればいい?|仕事の作り方と工賃設計

B型の生産活動と工賃|仕事の作り方と工賃の設計手順

B型の生産活動は、利用者に働く場を提供する支援であると同時に、工賃の原資を生み出す事業でもあります。仕事の作り方には、企業からの受託、自主製品、デジタル系という3つの方向があり、利用者の特性などの5つの視点で選びます。受託単価を下げすぎないことと、生産活動収支から工賃を設計する順序が大切です。

  • 仕事の作り方は受託・自主製品・デジタル系の3方向
  • 生産活動は5つの視点で選ぶ
  • 工賃は生産活動収支から設計する

この記事で分かること

就労継続支援B型の生産活動について、何を基準に仕事を選ぶか、企業からの受託・自主製品・デジタル系という3つの作り方、受託単価を下げすぎないための考え方、生産活動収支から工賃を設計する手順、平均工賃月額と基本報酬の関係、そして開業前に作る生産活動シートまでを整理します。

はじめに

就労継続支援B型を始めるとき、最も答えの出しにくい問いが「どんな仕事をするか」です。結論から申し上げると、生産活動は「継続して提供でき、利用者の支援につながり、収支が成り立つ仕事」を設計するものです。この3つのどれが欠けても続きません。

工賃は生産活動の収益から支払います。指定基準では、生産活動に係る事業の収入から必要な経費を控除した額が、利用者に支払う工賃の総額以上となるようにしなければならないとされています。賃金および工賃の支払いに要する額は、原則として自立支援給付をもって充ててはならないとされています。つまり、生産活動の設計は、そのまま工賃の設計です。この記事では、仕事の作り方から工賃の組み立て方までを順に整理します。

この記事のポイント

    • 生産活動は「継続できる」「支援につながる」「収支が成り立つ」の3つを同時に満たすように設計する
    • 工賃の原資は生産活動の収益。給付費から工賃を支払うことは原則としてできない
    • 厚生労働省の調査では、取り組んでいる生産活動として最も多いのは軽作業(部品組立・検品・袋詰めなど)で60.2%
    • 令和6年度のB型の全国平均工賃月額は24,141円、前年度比106.6%(厚生労働省)
    • 開業前に生産活動シートの項目で計画を組み立てておくと、指定申請でも運営でも使える
図解1生産活動から工賃までの流れ
1 仕事を受ける・作る企業からの受託、自主製品の製造販売、農業、飲食など
2 生産活動収支収入から材料費、消耗品費、燃料費、水道光熱費、賃借料などの経費を差し引く
3 工賃として支払う差し引いた額が、利用者に支払う工賃の総額以上となるようにする
※福祉サービスの会計(給付費)と生産活動の会計は区分して経理します。就労支援事業会計の考え方に沿って処理してください。

1. 生産活動と工賃の基本

結論として、B型の生産活動は「利用者に働く場を提供する支援」であると同時に、「工賃の原資を生み出す事業」でもあります。この二重の性格を最初に押さえておくと、仕事選びの判断がぶれません。

厚生労働省の調査によると、生産活動の収益が利用者の賃金・工賃総額を下回っている事業所は56.5%に達しているとされています。裏を返せば、収支が成り立つ生産活動を作れるかどうかが、B型の運営で最も難しい部分だということです。

あわせて読みたい就労支援事業会計とは?|A型・B型・就労移行支援で必要な会計区分
図解2仕事を選ぶときの5つの視点

支援の視点

  • 利用者の障害特性や体調に合わせて工程を分けられるか
  • できることが増えていく段階を作れるか
  • 見学・体験の段階で魅力が伝わるか

事業の視点

  • 毎月、安定して量を確保できるか
  • 材料費や設備投資が過大にならないか
※どれか一つを優先すると偏ります。たとえば単価だけを見て選ぶと工程が難しくなり、支援しやすさだけを見ると収支が合いません。

2. 生産活動を決める5つの視点

結論として、生産活動は次の5つの視点で選びます。①利用者の特性に合わせて工程を分けられるか、②できることが増える段階を作れるか、③見学・体験で魅力が伝わるか、④毎月安定して量を確保できるか、⑤材料費や設備投資が過大にならないか。

実務のご相談では、①と④が両立しないという悩みが多く聞かれます。難しい工程の仕事は単価が高い一方、担える方が限られます。工程を分解して、簡単な部分と難しい部分を組み合わせられるかを見てください。

図解3厚生労働省の調査でみる生産活動の内容

取り組んでいる事業所が多い活動

  • 軽作業(部品組立、検品、袋詰めなど)60.2%
  • 清掃 28.6%
  • 雑貨製造(織物・縫製・皮革・木工など)20.3%

そのほかの活動

  • 菓子製造 13.5%
  • 農業(米・野菜・果物・花卉)11.4%
  • 近年はSNS運用、動画編集、グラフ作成などIT技術を活用した活動も
※出典:厚生労働省が2024年に行った調査(J-Net21「障害者就労継続支援A型・B型」2024年12月18日掲載による)。複数回答のため合計は100%になりません。

3. 仕事の作り方①企業から受託する

結論として、最も参入しやすいのが企業からの受託です。設備投資が小さく、必要な量を確保できれば安定します。厚生労働省の調査でも、取り組んでいる生産活動として最も多いのは部品組立・検品・袋詰めなどの軽作業で60.2%でした。

一方で、参入しやすい分野は単価も下がりやすく、受注が景気や取引先の都合に左右されます。地域の共同受注窓口へあっせんや仲介を相談する方法もあります。開業前の段階から、複数の企業に声をかけて見込みを作っておいてください。

4. 仕事の作り方②自主製品・飲食・農業など

結論として、自主製品や飲食、農業は、単価を自分で決められる点が強みです。受託と違って取引先の都合に左右されにくく、事業所の特色にもなります。

ただし、材料の仕入れ、在庫、販路、衛生管理といった事業運営の負担が増えます。菓子製造や飲食では、食品衛生法上の許可や施設基準への対応も必要です。初期投資が大きくなりやすいため、開業時から始めるのであれば、資金計画に必ず織り込んでください。

実務では、受託の仕事で日々の作業量を確保しつつ、自主製品を少しずつ育てるという組み合わせが取り組みやすい形です。

5. 仕事の作り方③デジタル・クリエイティブ

結論として、パソコンを使った作業は単価を高めやすい一方、担える方が限られます。近年では、SNS運用、動画編集、グラフ作成といったIT技術を活用した生産活動に取り組む事業所があります。イラストやマンガ制作、動画・アニメ制作といった分野に特化した事業所も出てきています。

この分野は、作業に必要なスキルを事業所側が教えられるかが分かれ目です。指導できる職員がいない状態で始めると、受注しても納品できません。開業前に、誰がどの工程を担うのかを具体的に決めてください。

図解4単価を考える3つのものさし
1 支援者1人あたりの時間売上その作業に職員が何時間張り付くかを含めて、1時間あたりいくらになるかを見る
2 工賃の目標から逆算目指す平均工賃月額×人数=必要な工賃総額。そこから必要な生産活動の収支を出す
3 相場と比べる同じ作業を外注した場合の相場を調べる。極端に安い単価は、次の取引の基準になってしまう
※単価を下げれば受注は取りやすくなりますが、一度下げた単価は上げにくく、工賃も上がらなくなります。

6. 受託単価を安くしすぎないための考え方

結論として、単価は「受注できるかどうか」ではなく「工賃をいくら払いたいか」から逆算します。厚生労働省の生産活動シートの解説でも、単価の妥当性を支援者の人時売上で比較するという考え方が示されています。

たとえば、平均工賃月額の目標を月2万円、利用者20人とすると、工賃総額は月40万円です。生産活動の経費が月10万円かかるなら、生産活動の収入は月50万円以上必要です。この逆算をせずに単価を決めると、いくら受注しても工賃が上がりません。

7. 生産活動収支から工賃を設計する

結論として、工賃は次の順序で設計します。①目標とする平均工賃月額を決める、②利用者数を掛けて工賃総額を出す、③生産活動の経費を見積もる、④必要な生産活動の収入を出す、⑤その収入を確保できる仕事の量を決める。

ここで注意したいのが経費です。生産活動シートでは、材料費、消耗品費、燃料費、水道光熱費、賃借料、減価償却費などを計上します。解説資料では、生産活動の経費がゼロになっていないかが確認のポイントとして挙げられています。何も経費がかからない生産活動は、通常は考えにくいためです。

また、生産活動に使う設備の減価償却費や、送迎とは別に材料や製品を運ぶ燃料費など、見落としやすい費目があります。開業前の段階で費目を洗い出しておくと、後から工賃を下げずに済みます。

図解5工賃と報酬の関係

平均工賃月額に応じた報酬体系

  • 前年度の平均工賃月額が高いほど、基本報酬の単位数が上がる
  • 工賃を上げる取組が、そのまま報酬にも反映される
  • 開所初年度は前年度実績がないため、指定権者の取扱いを確認する

もう一つの報酬体系

  • 一般就労への移行実績や地域連携の取組を評価する体系
  • 工賃実績によらない評価のため、支援の方向性で選ぶ
  • 報酬体系は年度単位で選択する
※令和6年度の報酬改定で平均工賃月額の算定方法に見直しがあったため、過去の実績と単純に比較しないよう注意してください。

8. 平均工賃月額と基本報酬の関係

結論として、B型の基本報酬は報酬体系の選択によって決まり方が変わります。平均工賃月額に応じた報酬体系を選ぶ場合、前年度の工賃実績が翌年度の単位数に影響します。工賃を上げる取組が報酬にも返ってくる仕組みです。

厚生労働省の令和6年度工賃実績によると、全国のB型の平均工賃月額は24,141円で、前年度比106.6%でした。ただし、これは全国平均であり、地域差も事業所差も大きい数字です。自分の事業所の目標は、地域の水準と生産活動の内容から設定してください。

あわせて読みたい就労継続支援B型の基本報酬|報酬体系の選択と単位数の考え方

9. 取引先の分散・営業・品質管理

結論として、取引先は最初から分散させます。生産活動シートでは、売上上位3位の取引先と、その取引先が関連企業かどうかを記載します。1社への依存が大きいと、その取引が終わった時点で工賃が払えなくなります。

営業は、開所してから始めるのでは間に合いません。指定申請の段階で生産活動の収入見込みが確認されるため、開業準備と並行して進めます。地域の共同受注窓口や商工会、既存の取引関係を活用してください。

品質管理も工賃に直結します。納期遅れや不良品が続くと、単価の引き下げや取引の終了につながります。工程ごとの確認手順を決め、職員が最終チェックを行う体制を作ってください。

図解6生産活動シートの主な記載項目

活動と収支

  • 生産活動の分類(清掃、軽作業、製造など)と活動ごとの収入
  • 生産活動の経費(材料費、消耗品費、燃料費、水道光熱費、賃借料など)
  • 生産活動収入の合計と収支

取引先と利用者への支払

  • 売上上位3位の取引先と、関連企業かどうか
  • 利用者へ支払う工賃総額
  • 延べ利用者数、開所日数、平均工賃月額
※このシートは新規指定時だけでなく、指定後の運営状況の把握にも使われます。開業前から同じ項目で計画を作っておくと、そのまま説明資料になります。

10. 開業前に作る生産活動シート

結論として、開業前の生産活動の計画は、厚生労働省が示している生産活動シートの項目に沿って作ると、そのまま指定申請の説明資料として使えます。

解説資料では、収入根拠となる委託契約書や請負契約書などの添付が求められ、生産活動の内容に記載した収入合計と生産活動収支が一致することとされています。開業前の段階では実績がないため見込みになりますが、見積書や覚書といった形で根拠を残しておくと、事前協議での説明がしやすくなります。

よくある質問

Q
工賃は給付費から支払ってもよいですか。
A

原則としてできません。賃金および工賃の支払いに要する額は、原則として自立支援給付をもって充ててはならないとされています。工賃の原資は生産活動の収益から確保し、会計も区分して経理します。

Q
生産活動の収支が赤字になったらどうなりますか。
A

工賃の原資が確保できません。指定基準では、生産活動の収入から経費を控除した額が工賃総額以上となるようにしなければならないとされています。運営指導でも確認される点です。赤字が続く場合は、単価、作業量、経費のどこに原因があるかを分けて検討してください。

Q
どんな仕事が工賃を上げやすいですか。
A

特定の業種が有利と言い切ることはできません。工賃を左右するのは業種そのものより、単価、作業量の安定、経費の管理です。同じ軽作業でも、単価と量の確保ができていれば工賃は上がります。

Q
開業時に自主製品から始めても大丈夫ですか。
A

材料の仕入れ、在庫、販路、衛生管理の負担が加わります。開所直後は利用者数も職員の習熟も十分でないため、受託の仕事で作業量を確保しながら自主製品を育てる形のほうが取り組みやすいと考えられます。

Q
平均工賃月額は全国平均を目標にすべきですか。
A

全国平均(令和6年度は24,141円)は目安の一つですが、地域や生産活動の内容によって水準は異なります。まずは自分の事業所の生産活動収支から実現可能な額を出し、そこから引き上げる計画を立ててください。

Q
取引先が関連企業でも問題ありませんか。
A

関連企業との取引そのものが禁止されているわけではありませんが、生産活動シートでは取引先が関連企業かどうかを記載し、相場からかけ離れた単価になっていないかが確認されます。契約書と単価の根拠を残しておいてください。

まとめ

就労継続支援B型の生産活動は、「継続して提供でき、支援につながり、収支が成り立つ仕事」を設計するものです。工賃は生産活動の収益から支払うため、生産活動の設計はそのまま工賃の設計になります。

仕事の作り方には、企業からの受託、自主製品・飲食・農業デジタル・クリエイティブ系の3つの方向があります。参入しやすい受託は単価が下がりやすく、自主製品は単価を決められる代わりに事業運営の負担が増えます。まずは受託で作業量を確保し、自主製品を育てる組み合わせが取り組みやすい形です。

単価は「受注できるか」ではなく「工賃をいくら払いたいか」から逆算してください。目標とする平均工賃月額から工賃総額を出し、経費を見込んで必要な収入を計算します。開業前の計画は、厚生労働省の生産活動シートの項目に沿って作っておくと、指定申請の説明にもそのまま使えます。

生産活動と工賃の設計から、B型の運営をご支援します

行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、指定申請だけでなく、人員配置の設計、就業規則や社会保険の手続き、処遇改善加算の取得までご相談いただけます。開業支援は20万円〜です。

静岡・神奈川・愛知を中心に、オンラインで全国対応しています。生産活動の収支と工賃の設計、就労支援事業会計の区分、報酬体系の選択まで、開業前から運営まで一緒に整理します。工賃が上がらない、生産活動の収支が合わないというご相談も承ります。

運営顧問(パートナー契約)の内容を見る

無料相談はこちら

関連記事

体系的に知りたい方はこちら就労継続支援B型 完全ガイド|開業・人員配置・工賃・基本報酬・加算・運営指導

主な参考資料

  • 参考:厚生労働省「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン」(生産活動シート・解説資料を含む)/厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」/厚生労働省「平均工賃(賃金)月額の実績について」(令和6年度)/J-Net21(中小企業基盤整備機構)「障害者就労継続支援A型・B型」/厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」

※本記事は令和8年9月5日時点の法令・通知・公表資料に基づく一般的な整理です。記載した生産活動の例は一般的な整理であり、特定の業種の成果を保証するものではありません。制度・運用は改正や指定権者ごとの取扱いにより変わるため、最新情報は指定権者等へ必ずご確認ください。

執筆者 永野将太(行政書士・社会保険労務士)
執筆者WRITER
永野 将太
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズ 代表

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。

これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。