就労選択支援の基本報酬は単一の区分で、1日1,210単位です。他の就労系サービスと違い、継続利用を前提としないため、単位数は高くても算定できる日数が短いという特徴があります。開業を検討する際は、この収支構造を踏まえて計画を立てる必要があります。
- 基本報酬は単一区分で1日1,210単位
- 継続利用を前提としないサービス
- 単位数は高いが算定日数が短く、収支の考え方が異なる
この記事で分かること
令和7年10月1日に施行された新しいサービスである就労選択支援について、基本報酬の単位数と、他の就労系サービスと異なる算定の考え方を整理します。あわせて、開業を検討する際に押さえておくべき収支設計上の特徴を解説します。
はじめに
就労選択支援は、令和7年10月1日に施行された比較的新しいサービスです。本人が就労先や働き方について適切に選択できるよう、就労アセスメントを実施し、関係機関と連携しながら情報提供や助言を行います。
サービスの性格が他の就労系サービスとは大きく異なるため、報酬の仕組みも独特です。この記事では、基本報酬の単位数と、それを踏まえた事業設計の考え方を整理します。
この記事のポイント
- 基本報酬は就労選択支援サービス費として1,210単位(1日につき)の単一区分です。定員規模や実績による区分はありません。
- アセスメントを行う期間が限られているため、利用者一人あたりの算定日数が短く、継続的な利用を前提としない構造です。
- 稼働率ではなく、一定期間内にどれだけの人数のアセスメントを実施できるかが収入を左右します。
- 令和8年度報酬改定では基本報酬は見直しの対象外で、福祉・介護職員等処遇改善加算の対象サービスとされています。
1. 就労選択支援とはどのようなサービスか
就労選択支援は、障害のある方が就労先や働き方を選ぶにあたって、本人の希望、就労能力、適性等を客観的に整理する短期集中型のサービスです。作業場面等を活用した状況把握(就労アセスメント)を行い、その結果に基づいて情報提供や助言を行い、関係機関との連絡調整を担います。
従来、就労継続支援B型の利用にあたっては就労移行支援事業所等によるアセスメントが求められていましたが、その仕組みを発展させ、独立したサービスとして位置づけたものです。
事業を行うには、就労選択支援員の配置など所定の人員基準を満たし、指定を受ける必要があります。就労移行支援や就労継続支援などの実績が要件とされる点も、他のサービスとは異なる特徴です。
2. 基本報酬の単位数
就労選択支援の基本報酬は、次のとおり単一の区分です。
| 区分 | 単位数 | 算定単位 |
|---|---|---|
| イ 就労選択支援サービス費 | 1,210単位 | 1日につき |
就労継続支援や就労移行支援のように、利用定員や実績に応じて単位数が変わる仕組みはありません。どの事業所であっても、サービスを提供した日について同じ単位数を算定します。
単位数に1単位あたりの単価を掛けたものが実際の金額です。1単位の単価は10円を基本としながら、事業所の所在地に応じた地域区分と、サービスごとに定められた人件費割合によって上乗せされます。
3. 他の就労系サービスと決定的に違う点
(1)継続利用を前提としない
就労継続支援A型・B型や就労移行支援は、利用者が一定期間継続して通所することを前提としたサービスです。これに対して就労選択支援は、アセスメントの実施という目的が完了すれば利用が終わります。
つまり、定員を満たして稼働率を上げるという発想では収支が組み立てられません。一定の期間内に何人のアセスメントを実施できるかが、そのまま収入になります。
(2)単位数は高いが算定日数が短い
1日1,210単位という水準は、就労継続支援B型の最上位区分(定員20人以下・6:1で837単位)を大きく上回ります。1日あたりの単価としては高い設定です。
しかし利用者一人あたりの算定日数が限られるため、年間を通じた収入は、対象者をどれだけ安定的に受け入れられるかに依存します。
(3)関係機関との連携が事業の前提になる
対象となるのは、これから就労系サービスの利用を検討する方です。相談支援事業所、特別支援学校、ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、医療機関など、送り出し側との関係が事業の生命線になります。
① 継続利用を前提としない
- アセスメントの実施という目的が完了すれば利用が終わる
- 定員を満たして稼働率を上げるという発想では収支が組み立てられない
② 単位数は高いが算定日数が短い
- 1日あたりの単価としては高い設定
- 年間の収入は、対象者を安定的に受け入れられるかに依存
③ 関係機関との連携が事業の前提
- 相談支援事業所、特別支援学校、ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、医療機関
- 送り出し側との関係が事業の生命線
4. 収支をどう設計するか
就労選択支援の事業計画では、次の順序で試算するのが実務的です。
- 第1に、対象となる方が地域にどれだけいるかを見込みます。特別支援学校の卒業予定者数、B型の新規利用希望者数、既存事業所からの移行検討者数などが手がかりになります。
- 第2に、1人あたりの標準的な算定日数を設定します。アセスメントの実施方法と期間によって変わります。
- 第3に、月間の受け入れ可能人数を、配置する就労選択支援員の数から算出します。
この3つを掛け合わせたものが月間の給付費の見込みです。就労継続支援のように定員×稼働率で計算する方法は当てはまりませんので、注意してください。
また、既存の就労移行支援や就労継続支援と併せて実施する事業所も多く見られます。人員の兼務の可否や、既存事業との関係については、指定権者に事前に確認しておく必要があります。
5. 令和8年度報酬改定での取扱い
令和8年6月1日施行の令和8年度報酬改定(臨時応急的な見直し)において、就労選択支援の基本報酬の単位数は見直しの対象とされていません。
同改定では福祉・介護職員等処遇改善加算の拡充が行われ、就労選択支援も対象サービスとされています。加算率は加算の区分に応じて設定されていますので、算定を予定する場合は最新の告示で確認してください。
つまずきやすいポイント
稼働率の発想で収支を組んでしまう
継続利用を前提としないサービスですので、定員×稼働率という計算方法は当てはまりません。受け入れ人数と算定日数から積み上げてください。
指定要件の実績要件を見落とす
就労選択支援の指定には、就労移行支援や就労継続支援等の実績に関する要件があります。新規に法人を設立して単独で参入することが難しい場合がありますので、要件は早い段階で確認してください。
送り出し機関との関係構築を後回しにする
対象者が自然に集まるサービスではありません。相談支援事業所や特別支援学校との関係づくりは、開業準備と並行して進めるべき業務です。
① 稼働率の発想で収支を組む
- 受け入れ人数と算定日数から積み上げる
② 指定要件の実績要件の見落とし
- 就労移行支援や就労継続支援等の実績に関する要件がある
- 新規法人の単独参入が難しい場合がある
③ 送り出し機関との関係構築の後回し
- 対象者が自然に集まるサービスではない
- 相談支援事業所・特別支援学校との関係づくりは開業準備と並行して
よくある質問
就労選択支援サービス費として1日につき1,210単位です。定員規模や実績による区分はありません。
アセスメントの実施内容と期間によります。算定できる日数の取扱いは告示および留意事項通知で定められていますので、指定権者に確認してください。
併設して実施する事業所は多く見られますが、人員の兼務の可否や設備の共用については指定権者の運用によります。事前協議で確認してください。
基本報酬の単位数は見直しの対象外です。処遇改善加算については拡充の対象とされています。
まとめ
就労選択支援の基本報酬は1日1,210単位の単一区分で、他の就労系サービスのような区分の複雑さはありません。その代わり、継続利用を前提としないという事業構造の違いが、収支設計に大きく影響します。
新しいサービスであるため、自治体ごとの運用も固まりきっていない部分があります。開業を検討する際は、地域の対象者数の見込みと、送り出し機関との連携体制を具体的に描いたうえで、指定権者と早めに協議を始めてください。
就労選択支援の開業を、報酬の設計から支援します
障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、指定申請と労務管理の両面を、ひとつの窓口でご相談いただけます。開業支援は20万円〜(税別)、物件や事業計画の検討段階から承っています。
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体系的に知りたい方はこちら就労選択支援 完全ガイド|対象者・指定要件・支援員・基本報酬・中立性主な参考資料
- 参考:厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造」/「介護給付費等単位数サービスコード表」/「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」/「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」
※本記事は令和8年8月27日時点の法令・告示・通知等に基づく一般的な整理です。単位数は厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年6月施行)」および「介護給付費等単位数サービスコード表」により確認しています。指定権者の条例・手引き・個別運用、最新の報酬告示・Q&Aを必ず確認してください。

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。
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