虐待防止、身体拘束等の適正化、感染症対策、BCP、安全計画などは、運営基準で研修・委員会・訓練の実施が義務づけられています。実施頻度はサービス系統によって異なり、未実施の場合は減算の対象になります。いずれも利用者全員が対象で、月単位で報酬に影響するため、年間計画表で実施日と記録の保管まで管理する必要があります。
- 義務づけられた研修・委員会・訓練は、頻度がサービスによって異なる
- 未実施の減算は利用者全員・月単位で報酬に影響する
- 研修の対象者を取り違えないよう注意する
- 就労B型・就労移行では、身体拘束等の指針は必須、虐待防止の指針は基準上の義務ではない
はじめに
「年1回でいいのか、年2回なのか」「委員会は3か月ごとか」——義務化された研修・委員会は数が多く、頻度もばらばらです。まず全体像を1枚で押さえます。
自主点検チェックリスト
- 各委員会の議事録が、項目ごとに分かれて保管されているか
- 議事録に開催日・出席者・検討内容・従業者への周知方法が記載されているか
- 研修記録に日時・内容・出席者(署名または出席簿)が残っているか
- 新規採用者への研修実施記録があるか
- 感染症・自然災害それぞれのBCPが作成されているか(1本だけでは不足)
- BCPの研修・訓練の記録があるか
- 身体拘束等の適正化のための指針を整備しているか
- 各種指針・計画が最新の様式・内容に更新されているか
1. 年間実施頻度の早見表
| 項目 | 就労移行・A型・B型 | 共同生活援助 | 児発・放デイ |
|---|---|---|---|
| 虐待防止委員会 | 年1回以上 | 年1回以上 | 年1回以上 |
| 虐待防止研修 | 年1回以上 | 同左 | 同左 |
| 身体拘束等適正化委員会 | 年1回以上 | 年1回以上 | 年1回以上 |
| 身体拘束適正化研修 | 年1回以上 | 同左 | 同左 |
| 感染対策委員会 | おおむね3月に | 同左 | 同左 |
| 感染症の研修 | 年2回以上 | 同左 | 同左 |
| 感染症の | 年2回以上 | 同左 | 同左 |
| BCPの | 各年1回以上 | 各年1回以上 | 各年1回以上 |
| 非常災害の | 定期的に | 定期的に | 定期的に |
| 安全計画に | — | — | 定期的に |
| 地域連携推進会議 | — | 年1回以上 | — |
| 自己評価・保護者評価の | — | — | 年1回以上 |
感染対策の頻度は、訪問系・相談系では「委員会おおむね6月に1回以上、研修・訓練 各年1回以上」とされています。通所・居住系は上表のとおりです。自治体の集団指導資料で記載が分かれる例もあるため、所轄の指定権者の資料で最終確認してください。
2. 未実施の場合の減算率
| 減算 | 減算率 | 備考 |
|---|---|---|
| 虐待防止措置未実施減算 | 所定単位数の1% | 全サービス共通 |
| 身体拘束廃止未実施減算 | 施設・居住系は | 共同生活援助は |
| 業務継続計画未策定減算 | 施設・居住系は | 共同生活援助は |
| 支援 | 15% | 児発・放デイ等 |
| 自己評価結果 | 15% | 児発・放デイ等 |
いずれも利用者全員が対象で、月単位で報酬に影響します。1%でも、月の報酬が300万円なら3万円。複数が重なれば影響は一気に膨らみます。
虐待防止措置未実施減算・身体拘束廃止未実施減算・業務継続計画未策定減算の適用期間は「基準を満たさない事実が生じた月の翌月から、改善が認められた月まで」で、改善報告のタイミングによっては、3か月以上続くことも珍しくありません。一方、支援プログラム未公表減算と自己評価結果等未公表減算は、未公表・未届出の当月から適用され、公表・届出を行った月まで減算が続きます(月の途中で公表・届出をしても、その月は減算の対象です)。なお、この2つの減算には、改善計画の提出や3か月後の改善状況報告といった手続はありません。
あわせて読みたい身体拘束等の適正化|3要件・記録・減算率3. 就労継続支援B型・就労移行支援の指針・研修・減算
通所の就労継続支援B型・就労移行支援について、指針・委員会・研修・訓練と減算の関係を1つの表にまとめました。「指針を作る義務」と「委員会や研修を実施する義務」は別のものと考えてください。
| 区分 | 指針 | 委員会 | 研修 | 訓練 | 減算 |
|---|---|---|---|---|---|
| 虐待防止 | 基準上の | 年1回以上 | 年1回以上 | 規定なし | 未実施は1% |
| 身体拘束等の | 必須 | 年1回以上 | 年1回以上 | 規定なし | 未実施は1% |
| 感染症・ | 必須 | おおむね3月に | 年2回以上 | 年2回以上 | 直接の減算はなし |
| 業務継続計画 | 指針ではなく | 規定なし | 年1回以上 | 年1回以上 | 未策定は1% |
表を読むときの注意点
- 虐待防止:減算になるかどうかは、委員会の開催・研修の実施・担当者の配置の3つで判断されます。指針を作っていないこと自体は、減算の理由になりません。ただ、事業所内のルールをはっきりさせるため、作成して運用しておくと役に立ちます。
- 身体拘束等の適正化:こちらは指針の整備が基準上の義務です。指針がない場合や、委員会・研修を実施していない場合は減算の対象になります。やむを得ず身体拘束等を行ったときは、その態様・時間・利用者の心身の状況・緊急やむを得ない理由を記録することも必要です。
- 感染症・食中毒の予防:直接の減算はありませんが、運営基準上の義務です。研修・訓練は、感染症BCPの研修・訓練と一体で実施できます。
- BCP:減算になるのは、感染症・自然災害のどちらか(または両方)の計画を策定していない場合や、計画に従った措置を講じていない場合です。研修・訓練をしていないというだけでは、この減算の要件にはあたりません。ただし、研修・訓練も運営基準上の義務です。
運営指導に備えて保管しておく資料
| 区分 | 確認して |
|---|---|
| 虐待防止 | 委員会の議事録/全職員への周知の記録/研修記録/虐待防止 |
| 身体拘束等の | 指針/委員会の議事録/周知の記録/研修記録/身体拘束等を |
| 感染症・ | 指針/委員会の議事録/周知の記録/研修記録/訓練記録 |
| 業務継続計画 | 感染症BCP・自然災害BCP/周知の記録/研修記録/訓練記録/見直しの記録 |
年間の組み方の例(就労B型・就労移行)
感染対策委員会を開く月(3か月ごと)に研修・訓練を重ねると、実施する月をまとめられます。
| 月 | 感染対策 | 感染症の | 感染症の | 虐待防止・ | BCPとの |
|---|---|---|---|---|---|
| 4月 | 開催 | — | — | — | 年度計画の |
| 7月 | 開催 | 1回目 | — | — | 感染症BCPの |
| 10月 | 開催 | 2回目 | 1回目 | 虐待防止・ | 感染症BCPの |
| 11月 | — | — | — | 虐待防止の | — |
| 1月 | 開催 | — | 2回目 | — | 感染症BCPの |
BCPの研修・訓練は年1回以上です。感染症BCPと自然災害BCPの両方の内容を、年間のどこかで必ず扱うように計画してください。虐待防止と身体拘束の委員会は一体で開催できますが、議事録はそれぞれの検討内容が分かるように残してください。
4. 年間計画表のつくり方
義務を「実施したかどうか」で管理すると必ず漏れます。実施日・記録の保管場所・次回期限の3点をセットで管理してください。
| 項目 | 実施時期 | 記録 | 最終実施日 | 次回期限 | 担当 |
|---|---|---|---|---|---|
| 虐待防止委員会 | 例:4月・10月 | 議事録 | |||
| 虐待防止研修 | 例:5月 | 研修記録・出席簿 | |||
| 身体拘束等適正化委員会 | 例:6月 | 議事録 | |||
| 感染対策委員会 | 4・7・10・1月 | 議事録 | |||
| 感染症研修・訓練 | 例:6月・12月 | 記録 | |||
| BCP研修・訓練 | 例:9月 | 記録 | |||
| 避難訓練 | 消防計画に準拠 | 記録 |
組み合わせて実施すると負担が減ります
- 虐待防止研修と身体拘束適正化研修は、同日に連続で実施できます
- 感染対策委員会をBCPの見直しの場として使うことも可能です
- 委員会はテレビ電話装置等の活用が認められています
ただし、記録は項目ごとに分けて残してください。1本の議事録に混在させると、運営指導で「どの委員会を年何回開催したか」を示せなくなります。
あわせて読みたい感染症対策とBCP|指針とBCPの違い・未策定減算5. 研修の対象者を間違えない
虐待防止研修の対象は、支援員だけではありません。調理員・運転手・事務職員・短時間勤務者を含む全従業者です。
新規採用者については、採用の都度実施することが求められます。年1回の集合研修だけでは、年度途中入職者が漏れます。動画やeラーニングを用意し、入職時に必ず受講させる運用が現実的です。
6. まとめ
法定研修・委員会は、内容の難しさより「回数と記録」の管理が勝負です。年度当初に一覧表を作り、実施のたびに日付を埋める。それだけで、1%〜15%の減算リスクの大半は回避できます。
就労継続支援B型・就労移行支援では、身体拘束等の適正化の指針は必須ですが、虐待防止の指針は基準上の義務ではありません。感染症対策は直接の減算がなくても運営基準上の義務なので、委員会・研修・訓練の記録をそろえておいてください。
頻度の解釈は自治体により細部が異なる場合があります。年間計画を固める前に、所轄の指定権者が公表する集団指導資料をご確認ください。
よくある質問
虐待防止研修と身体拘束適正化研修は、同じ日にまとめて実施できますか。
同日に連続して実施することは可能です。ただし記録は項目ごとに分けて残してください。1本の記録に混在させると、どの研修を年何回実施したかを示せなくなります。
委員会はオンラインで開催してもよいですか。
虐待防止委員会、身体拘束等適正化検討委員会、感染対策委員会は、いずれもテレビ電話装置等を活用して開催することが認められています。
研修の対象は支援員だけでよいですか。
全従業者が対象です。調理員、運転手、事務職員、短時間勤務者も含まれます。新規採用者には採用の都度実施する必要があるため、入職時研修に組み込む運用が確実です。
頻度が自治体の資料によって違うのですが、どちらに従えばよいですか。
感染対策の頻度などは自治体の集団指導資料で記載が分かれる例があります。年間計画を固める前に、所轄の指定権者が公表する最新の資料をご確認ください。
就労B型で虐待防止の指針を作っていないと、減算になりますか。
いいえ。虐待防止措置未実施減算は、委員会の開催・研修の実施・担当者の配置の3つで判断されます。就労継続支援B型・就労移行支援では、虐待防止の指針の整備は基準上の義務ではありません。ただし、身体拘束等の適正化のための指針は義務で、整備していないと身体拘束廃止未実施減算の対象になります。
BCPの研修・訓練をしていないと、業務継続計画未策定減算になりますか。
いいえ。令和6年度報酬改定のQ&A(VOL.1 問14)で、周知・研修・訓練・定期的な見直しの実施の有無は、業務継続計画未策定減算の要件ではないとされています。減算の対象になるのは、感染症・自然災害のいずれか(または両方)の計画を策定していない場合や、計画に従った措置を講じていない場合です。ただし、研修・訓練は運営基準上の義務なので、年1回以上実施して記録を残してください。
法定研修・委員会の年間計画づくりを支援します
障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、指定申請・報酬請求の実務と労務管理の両面を、ひとつの窓口でご相談いただけます。
静岡・神奈川・愛知を中心に、オンラインで全国に対応しています。「この加算は算定できるか」「この記録で足りるか」といった運営中のご相談も承っています。
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体系的に知りたい方はこちら障害福祉の報酬・加算 完全ガイド|報酬の決まり方と加算・減算の全体像主な参考資料
- 参考:「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(省令)」/「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準(省令)」/「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」/「各自治体が公表する集団指導資料」
- 参考:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1」(令和6年3月29日)問14
※本記事は令和8年10月27日時点の法令・告示・通知等に基づく一般的な整理です。指定権者の条例・手引き・個別運用、最新の報酬告示・Q&Aを必ず確認してください。

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。
これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。
