産前産後休業を取得した従業員は、健康保険・厚生年金保険の保険料が免除されます。免除される期間は、産前産後休業開始月から終了日の翌日が属する月の前月までです。申出書を提出できるのは休業中または終了後1か月以内に限られるため、提出時期に注意が必要です。
- 申出書は休業中または終了後1か月以内に提出する
- 休業期間が変わったときは変更(終了)届が必要
- 産後休業と育児休業の免除期間が重なる場合は産前産後休業が優先する
はじめに
産前産後休業の期間中は、健康保険・厚生年金保険の保険料が被保険者負担分・事業主負担分ともに免除されます。しかも、この免除期間は将来の年金額を計算する際に保険料を納めた期間として扱われるため、従業員の不利益にもなりません。
一方で、免除は自動的には始まりません。事業主が産前産後休業取得者申出書を提出することで初めて免除されます。提出できる期間にも制限があるため、休業に入る前の段階で手続きの流れを押さえておいてください。
女性職員の比率が高い障害福祉サービス事業所では、産休・育休は日常的に発生します。この記事では、日本年金機構が公表している手続き案内をもとに、実務を整理します。
1. 産前産後休業と免除される期間
産前産後休業と保険料免除の関係
産前産後休業とは、出産の日(出産の日が出産の予定日後であるときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から、出産の日後56日までの間で、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間をいいます。
ここでいう出産とは、妊娠85日以上の分娩をいい、早産・死産・流産・人工妊娠中絶を含みます。
多胎妊娠は98日
免除される期間
免除される期間は、産前産後休業開始月から、終了日の翌日の属する月の前月までです。産前産後休業終了日が月の末日の場合は、産前産後休業終了月までが免除されます。
| 休業の終了日 | 免除される最終月 |
|---|---|
| 月の | 8月分まで |
| 月の | 9月分まで |
資格喪失のときと同じく、「終了日の翌日」を基準に考えます。復帰日が月初か月末かで免除される月数が変わるため、復帰日の設定は本人と相談しながら決めてください。
2. 申出書の提出と期間の変更
申出書の提出時期と提出方法
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 届書名 | 健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書/変更 |
| 提出時期 | 産前産後休業を |
| 提出先 | 事務センターまたは |
| 提出方法 | 電子申請、 |
| 添付書類 | なし |
提出できる期間が「休業中または終了後1か月以内」に限られている点が重要です。復帰後しばらく経ってから提出漏れに気づいた場合、免除を受けられなくなるおそれがあります。休業開始の連絡を受けた段階で提出する運用にしておくのが安全です。
期間が変わったとき・早く終了したとき
産前産後休業期間を変更したとき、または産前産後休業終了予定日の前日までに産前産後休業を終了したときは、速やかに産前産後休業取得者変更(終了)届を提出します。
出産予定日と実際の出産日がずれることは珍しくありません。予定日を基準に申出をした後、実際の出産日が前後した場合は変更届が必要です。出産の報告を受けたときに、変更届の要否を確認する手順を入れておいてください。
事業主本人が被保険者である場合
日本年金機構は、事業主であっても被保険者であれば産前産後休業期間中の保険料免除の対象になると案内しています(育児休業を除く)。
代表者自身が出産する場合、役員報酬の支給を止めていても被保険者資格が継続していれば申出の対象になります。小規模な法人で見落とされやすい点です。
3. 育児休業との関係
産後休業と育児休業の免除期間が重複する場合は、産前産後休業が優先されます。産後56日の経過を待って育児休業に移行するため、育児休業等取得者申出書の対象期間は産後休業終了の翌日からになります。
産休から育休へ連続して移行する場合、それぞれ別の申出書が必要です。産休の申出だけで育休の免除も受けられるわけではない点に注意してください。
4. 復帰後の標準報酬月額の改定
産前産後休業から復帰し、短時間勤務などにより報酬が下がった場合は、産前産後休業終了時報酬月額変更届により標準報酬月額を改定できます。
- 対象は、産前産後休業終了日に当該休業に係る子を養育している被保険者および70歳以上被用者
- これまでの標準報酬月額と改定後の標準報酬月額との間に1等級以上の差が生じること
- 産前産後休業終了日の翌日が属する月以後3か月のうち、少なくとも1か月における支払基礎日数が17日以上であること
改定後の標準報酬月額は、1月〜6月に改定された場合は当年の8月まで、7月〜12月に改定された場合は翌年の8月まで適用されます。提出時期は「速やかに」、添付書類は原則不要です。
あわせて、3歳未満の子を養育する期間について従前の標準報酬月額で年金額を計算する養育期間標準報酬月額特例申出書の提出も検討してください。標準報酬月額が下がっても、将来の年金額が下がらないようにする仕組みです。
あわせて読みたい月額変更届(随時改定)の3要件と提出時期5. 実務上の注意点
人員基準と配置の調整を早めに始める
サービス管理責任者や児童発達支援管理責任者が産前産後休業に入る場合、人員基準を満たせなくなるおそれがあります。休業の申出を受けた時点で、代替の配置と指定権者への相談を並行して進めてください。社会保険の手続きだけでなく、指定基準への影響が事業運営上は大きな論点です。
健康保険の出産手当金・出産育児一時金は別の手続き
保険料免除は年金事務所への申出、出産手当金・出産育児一時金は協会けんぽ(または健康保険組合)への請求です。窓口が異なるため、休業前の説明資料に両方を並べて記載しておくと本人が迷いません。
免除中も届出は必要
保険料が免除されていても、算定基礎届や賞与支払届の対象からは外れません。賞与を支給した場合の届出も必要です(賞与保険料の免除は育児休業について別途の要件があります)。
よくある質問
産前産後休業をしている間、または産前産後休業終了後の終了日から起算して1か月以内です。この期間を過ぎると免除を受けられなくなるおそれがあります。
減りません。免除期間は、将来、被保険者の年金額を計算する際に保険料を納めた期間として扱われます。
妊娠85日以上の分娩であれば、早産・死産・流産・人工妊娠中絶を含めて出産に該当します。産後休業の期間について保険料免除の対象になります。
産前産後休業期間が変わるため、産前産後休業取得者変更(終了)届を速やかに提出します。
事業主であっても被保険者であれば、産前産後休業期間中の保険料免除の対象になります(育児休業は対象外です)。
まとめ
産前産後休業の保険料免除は、事業主の申出があって初めて受けられます。提出できるのは休業中または終了後1か月以内に限られるため、休業開始の連絡を受けた時点で提出する運用が最も確実です。
あわせて、出産日のずれによる変更届、育児休業への移行に伴う別の申出、復帰後の報酬月額変更届まで一連の流れとして整理しておくと、手続き漏れを防げます。
産休・育休の手続きと人員体制を、あわせてご相談ください
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主な参考資料
- 参考:日本年金機構「従業員が産前産後休業を取得したときの手続き」
- 参考:日本年金機構「厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)」
- 参考:日本年金機構「従業員が産前産後休業を変更・終了したときなどの手続き」
- 参考:日本年金機構「産前産後休業終了時報酬月額変更届の提出」
- 参考:日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」
※本記事は令和8年8月28日時点の法令・通知・日本年金機構の公表資料に基づく一般的な整理です。実際の届出にあたっては、管轄の年金事務所・事務センターの取扱い、健康保険組合の定め、最新の様式・記載要領を必ずご確認ください。

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