障害福祉事業は儲かる?|売上・人件費・利益率の仕組みと収支差率のデータ

障害福祉は儲かるか|売上・人件費・利益率の仕組みを公的データで整理

障害福祉事業は、公定価格で売上が読みやすい一方、利益率はサービス種別と稼働状況に大きく左右されます。給付費の売上は「単位数×1単位の単価×利用人数×利用日数」で決まり、経費の中心は人件費です。厚生労働省と福祉医療機構(WAM)が公表している収支差率のデータが、実際の水準を見るときの手がかりになります。

  • 売上は単位数・単価・利用人数・利用日数で決まる
  • 経費の中心は人件費
  • 収支差率は厚生労働省とWAMのデータで確認できる

この記事で分かること

障害福祉事業の収益構造について、売上が決まる仕組み、経費の中心となる人件費の比重、厚生労働省と福祉医療機構(WAM)が公表している収支差率のデータ、サービス別の違い、利益を左右する5つの要素、そして開業前に作る簡易シミュレーションの手順までを整理します。

はじめに

「障害福祉の事業は儲かるのですか」。開業のご相談で必ず出る質問です。結論から申し上げると、報酬が公定価格で決まっているぶん売上の見通しは立てやすい一方、利益率は決して高くありません。厚生労働省の令和7年障害福祉サービス等経営概況調査では、全サービス平均の収支差率は令和6年度決算で6.5%でした。サービス種別によっては赤字の事業所が半数近くに達しているという公的データもあります。

この記事では、売上がどう決まるのか、経費の中心は何か、公的な調査で収支差率がどの水準にあるのかを順に整理し、最後に開業前に作る簡易シミュレーションの手順まで説明します。数字はいずれも公表資料の年度を明記していますが、実際の収支は定員・稼働率・人員配置・地域区分によって大きく変わります。収益を保証するものではない点はあらかじめご承知ください。

この記事のポイント

    • 売上は「単位数×単価×利用人数×利用日数」で決まり、上限は定員で頭打ちになる
    • 経費の中心は人件費。給与費が収入の6割台を占めるサービスが多い
    • 全サービス平均の収支差率は令和6年度決算で6.5%(厚生労働省・令和7年経営概況調査)
    • 収支差率は一般企業の営業利益率とは計算の範囲が違うため、そのまま比べられない
    • 利益を左右するのは稼働率・人員配置・加算・固定費・運営上のミスの5つ
図解1障害福祉事業のお金の流れ

入ってくるお金

  • 訓練等給付費・介護給付費/国保連から入る公定価格の報酬。単位数×単価で計算する
  • 利用者負担額/原則1割だが、負担上限月額により実際は0円の方が多い
  • 生産活動収入/就労継続支援A型・B型のみ。給付費とは別のお金

出ていくお金

  • 人件費/給与、社会保険料、法定福利費。最大の費目
  • 固定費/家賃、水道光熱費、通信費、車両費、システム利用料
  • 賃金・工賃A型・B型。原則として生産活動の収益から支払う
※就労継続支援A型・B型は、給付費で運営する福祉サービスの会計と、生産活動の会計を区分して経理します。利用者へ支払う賃金・工賃を給付費から充てることは原則としてできません。

1. 結論:利益率はサービス種別と稼働率・人員配置で変わる

結論として、障害福祉事業は「公定価格で売上が読みやすいが、利益率は高くない事業」です。報酬は国が定めた単位数で決まるため、価格競争は起きません。その代わり、単価を自分で上げることもできません。利益は、定員に対してどれだけ利用があったか(稼働率)、基準を超える人員を置いていないか、算定できる加算を取れているか、で決まります。

実務上、開業前の収支計画で最も楽観的になりやすいのが稼働率です。定員が埋まる前提で計算すると、人件費と家賃は計画どおりに出ていくのに収入だけが届かない、という形で資金繰りが崩れます。稼働率6割・8割・10割の3本立てで計画を作ることをおすすめしています。

図解2給付費の売上が決まる4つの要素
1 単位数基本報酬+加算-減算。サービス種別、定員規模、人員配置、報酬区分で決まる
2 1単位の単価地域区分で10円〜11.4円台。事業所の所在地で決まり、動かせない
3 利用人数×4 利用日数唯一、事業所の努力で動く部分。定員が上限になる
※単位数と単価は制度で決まっているため、売上を伸ばす余地は実質的に「稼働率」と「算定できる加算」の2つに絞られます。

2. 障害福祉事業の売上はどう決まるか

結論として、給付費の売上は「単位数×1単位の単価×利用人数×利用日数」で決まります。単位数はサービス種別・定員規模・人員配置・報酬区分ごとに国が定めており、1単位の単価は事業所の所在地の地域区分で決まります。つまり、売上のうち事業者が動かせるのは利用人数と利用日数、そして算定できる加算だけです。

ここで見落とされやすいのが、定員が売上の上限になるという点です。通所系のサービスでは、定員を超えて受け入れると定員超過利用減算の対象になります。売上を伸ばしたいからといって受け入れ人数を増やす、という発想が制度上とれない事業だということです。

あわせて読みたい障害福祉サービスの報酬計算|単位数・地域区分・請求から入金までの流れ

3. 主な経費|収入の6〜7割を人件費が占める

結論として、障害福祉事業の経費は人件費が中心です。厚生労働省の令和7年障害福祉サービス等経営概況調査(令和6年度決算)では、収入に対する給与費の割合は次のとおりで、いずれのサービスも6割台です。人員基準で配置する職員数が決まっている以上、人件費は簡単には減らせません。

図解3収入に占める給与費の割合(令和6年度決算)
生活介護
69.1%
就労継続支援B型
68.1%
児童発達支援
68.0%
放課後等デイサービス
64.4%
就労継続支援A型
64.3%
就労移行支援
64.2%
共同生活援助
62.9%
※出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)。目盛りは最大値69.1%を100%として表示しています。

人件費に次ぐのが家賃・水道光熱費・車両費・システム利用料といった固定費です。これらは利用者が何人いても変わらないため、稼働率が下がるとそのまま収支を圧迫します。売上に連動して減るのは、材料費や送迎の燃料費などごく一部です。

4. 公的データで見る収支差率

結論として、障害福祉サービスの収支差率はおおむね数%から10%程度の範囲にあります。まず、厚生労働省の令和7年障害福祉サービス等経営概況調査の結果です。全サービス平均は令和5年度決算6.7%、令和6年度決算6.5%でした。

サービス収支差率(令和5年度決算)収支差率(令和6年度決算)給与費割合(令和6年度決算)
放課後等デイサービス7.9%9.1%64.4%
児童発達支援8.1%7.8%68.0%
就労継続支援A型6.6%6.8%64.3%
生活介護7.1%6.3%69.1%
就労継続支援B型6.0%6.2%68.1%
就労移行支援8.2%6.0%64.2%
共同生活援助5.2%5.5%62.9%
全サービス平均6.7%6.5%
出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」。収支差率は加重平均。

もう一つの参考資料が、福祉医療機構(WAM)の経営分析参考指標です。こちらはWAMの融資先の決算データを集計したもので、赤字施設の割合まで公表されている点が特徴です。

サービス収支差率赤字施設の割合利用率
生活介護10.1%27.6%83.6%
就労継続支援B型8.7%31.9%80.6%
就労移行支援7.2%44.8%71.5%
放課後等デイサービス6.4%32.0%88.8%
共同生活援助3.6%41.5%86.1%
就労継続支援A型△0.6%49.0%79.0%
出典:福祉医療機構(WAM)「経営分析参考指標(2024年度決算分)ダイジェスト版」。開設後1年未満の施設は除かれています。

2つの調査で数字が違うのは、母集団が異なるためです。厚生労働省の調査は全国から抽出した事業所、WAMの指標はWAMの融資先が対象です。どちらか一方を「正解」として使うのではなく、幅として捉えるのが実務的です。共通して言えるのは、平均が黒字であっても、サービスによっては3割から5割の事業所が赤字だという事実です。

なお、収支差率は「サービス活動収益に対するサービス活動増減差額の割合」であり、一般企業の営業利益率や経常利益率とは集計の範囲が異なります。他業種の利益率と単純に並べて比較しないでください。

図解4サービス別の収益構造の違い

通所系(就労系・生活介護・児童系)

  • 収入は「1日いくら」の積み上げ。欠席が出るとその日の報酬が立たない
  • 定員が上限。空きが出ても職員は基準どおり置く必要がある
  • 就労継続支援は生産活動の収支が別にあり、賃金・工賃の原資になる

居住系(共同生活援助)

  • 入居していれば毎日報酬が立つため、通所系より稼働が安定しやすい
  • 住居ごとに家賃と消防設備の負担がかかり、空室がそのまま損失になる
  • 夜間支援の体制を組むと人件費が増える
※公的データでも、共同生活援助の利用率は86.1%と高い一方、収支差率は3.6%と低くなっています(WAM・2024年度決算分)。稼働が安定していても、固定費が重ければ利益は残りません。

5. サービス別の収益構造

結論として、同じ障害福祉でも、通所系と居住系、そして就労継続支援では収益の作り方が違います。

就労継続支援A型は、利用者と雇用契約を結び最低賃金以上の賃金を支払うため、生産活動の収益が確保できないと収支が合いません。指定基準でも、生産活動の収入から経費を差し引いた額が賃金の総額以上となるようにしなければならないとされています。WAMの指標で赤字施設の割合が49.0%と最も高いのは、この構造によるものと考えられます。

就労継続支援B型は雇用契約を結ばないため賃金負担は軽くなりますが、平均工賃月額が基本報酬の区分に直結する報酬体系を選ぶ場合、工賃を上げるほど基本報酬も上がる仕組みになっています。生産活動を安定させることが収益に直結します。

放課後等デイサービス・児童発達支援は収支差率が比較的高い一方、地域によっては新規指定の総量規制が行われており、そもそも開業できないことがあります。共同生活援助は稼働が安定しやすい半面、住居ごとの固定費と夜間の人員体制が収支を左右します。

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図解5利益を左右する5つの要素
1 稼働率定員に対する実際の利用。収入に直結し、下がっても人件費と家賃は減らない
2 人員配置基準以上に置けば質は上がるが人件費も増える。報酬区分と連動する配置もある
3 加算の算定体制届の提出や実績要件が必要。取り漏れは収入の取り逃がしになる
4 固定費家賃・車両・システム。稼働率が下がると重くのしかかる
5 運営上のミス減算、返戻、報酬返還。1件で数か月分の利益が消えることがある
※5番目は見落とされがちですが、影響が最も大きい要素です。人員欠如減算や個別支援計画の未作成減算は、気づかないまま数か月続くことがあります。

6. 利益を左右する5つの要素

結論として、利益の差は「稼働率・人員配置・加算・固定費・運営上のミス」の5つで説明できます。

このうち、開業前に決まってしまうのが固定費です。家賃と車両費は契約した時点で数年分が確定します。逆に、開業後に改善できるのが加算の算定と運営上のミスの防止です。実務のご相談でも、算定できるはずの加算を届け出ていなかった、あるいは記録の不備で減算になっていた、という形で収支が悪化している例が見られます。

とくに報酬返還は影響が大きく、返還に加えて加算金が課される場合があります。「利益を出す」より先に「取りこぼさない・返さない」体制を作るほうが、結果的に収支への効果は大きくなります。

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7.「売上が高い=儲かる」ではない理由

結論として、障害福祉事業では売上を増やす方法がそのまま費用増につながることが多く、売上規模と利益は比例しません。

たとえば、定員を増やせば売上は増えますが、人員基準に応じて職員も増やす必要があり、より広い物件も要ります。手厚い人員配置により高い報酬区分を取れるサービスもありますが、その配置を維持するための人件費が増えます。加算も同様で、加算の要件を満たすための研修・記録・体制整備には手間と費用がかかります。

就労継続支援では、生産活動の売上が増えても、その収益は原則として利用者の賃金・工賃に充てるものです。生産活動が伸びたぶんがそのまま事業の利益になるわけではありません。この点を誤解したまま収支計画を作ると、実際の手残りが計画と大きくずれます。

図解6簡易シミュレーションの作り方
手順1 収入を出す基本報酬の単位数×自分の地域区分の単価×想定人数×月の営業日数。加算は初年度は最小限で見込む
手順2 費用を出す職員の給与に社会保険料を上乗せし、家賃、水道光熱費、通信費、車両費、システム利用料を足す
手順3 稼働率を振る6割・8割・10割の3本を作り、6割でいくら不足するかを確認する
単位数は報酬告示で確認単価は地域区分で確認社会保険料は給与の約15%を加算初年度は加算を控えめに
※数字は必ず自分の定員・地域区分・人員配置で計算します。他社の平均値をそのまま当てはめた計画は、融資の面談でも説明できません。

8. 簡易シミュレーションの作り方

結論として、収支の見通しは3ステップで作れます。収入を出し、費用を出し、稼働率を振る、の3つです。

収入は、基本報酬の単位数に自分の地域区分の単価を掛け、想定利用人数と月の営業日数を掛けて計算します。加算は初年度から満額で見込まず、体制が整った月から加える形にします。費用は、職員の給与に社会保険料の事業主負担(おおむね給与の15%前後)を上乗せし、家賃、水道光熱費、通信費、車両費、システム利用料を足します。

そのうえで、稼働率を6割・8割・10割で振ります。6割で赤字になるのは通常のことですが、その赤字が何か月続けられるかが運転資金の必要額です。開業前の資金計画は、この3本のシミュレーションと資金繰り表がそろって初めて意味を持ちます。

あわせて読みたい地域区分と1単位の単価|自分の地域の単価を確認する方法

よくある質問

Q
どのサービスがいちばん儲かりますか。
A

公表データ上、収支差率が高いのは放課後等デイサービスや児童発達支援ですが、これは平均であり、同じサービスでも3割前後の事業所が赤字です。また、地域によっては新規指定の総量規制で参入できません。サービスは「利益率が高いから」ではなく、地域のニーズと自分たちが提供できる支援から選ぶことをおすすめします。

Q
収支差率6.5%は、一般企業でいうと利益率6.5%ということですか。
A

同じではありません。収支差率はサービス活動収益に対するサービス活動増減差額の割合で、集計の範囲が一般企業の営業利益率や経常利益率と異なります。おおまかな水準感の把握には使えますが、他業種の利益率と並べて比較する使い方は避けてください。

Q
給付費で利用者の工賃を払ってもよいですか。
A

原則としてできません。就労継続支援では、賃金および工賃の支払いに要する額は原則として自立支援給付をもって充ててはならないとされています。賃金・工賃の原資は生産活動の収益から確保する必要があり、会計も区分して経理します。

Q
黒字になるまでどのくらいかかりますか。
A

一律の目安はありません。利用契約がどのくらいの速さで増えるかによります。給付費の入金がサービス提供月の翌々月であることも踏まえ、稼働率が上がるまでの赤字を何か月まかなえるかを、開業前に資金繰り表で確認してください。

Q
複数の事業所を開けば利益は増えますか。
A

管理部門を共有できる分の効率は上がりますが、事業所ごとに人員基準を満たす必要があり、人件費は事業所数に比例して増えます。1か所目が安定する前に増やすと、サービス管理責任者の確保が追いつかず、人員欠如減算につながることがあります。

Q
利益率を上げるために、まず何をすればよいですか。
A

算定できる加算を取り漏らしていないかの点検と、減算・返戻の防止です。新たな売上を作るより確実で、費用もほとんどかかりません。そのうえで、稼働率を上げるための相談支援事業所や関係機関との連携に取り組むのが順序としておすすめです。

まとめ

障害福祉事業は、報酬が公定価格で決まっているため売上の見通しが立てやすい事業です。一方で、収支差率は全サービス平均で6.5%(厚生労働省・令和7年経営概況調査、令和6年度決算)、給与費が収入の6割台を占めるという構造上、利益率が高い事業とは言えません。

平均が黒字であっても、福祉医療機構の指標では就労継続支援A型で49.0%、共同生活援助で41.5%の施設が赤字です(2024年度決算分)。サービス種別による差より、同じサービスのなかでの事業所ごとの差のほうが大きいと考えたほうが実態に近くなります。差を生むのは、稼働率・人員配置・加算・固定費、そして減算や返還を出さない運営です。

開業を検討する段階では、自分の定員と地域区分で収入を計算し、稼働率を6割・8割・10割で振ったシミュレーションを作ってください。そのうえで、6割でも耐えられる資金と体制があるかを確認することが、いちばん確実な準備になります。

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行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、指定申請だけでなく、人員配置の設計、就業規則や社会保険の手続き、処遇改善加算の取得までご相談いただけます。開業支援は20万円〜です。

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主な参考資料

  • 参考:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」/独立行政法人福祉医療機構(WAM)「経営分析参考指標(2024年度決算分)ダイジェスト版」/J-Net21(中小企業基盤整備機構)「障害者就労継続支援A型・B型」「放課後等デイサービス」/厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定」関係資料

※本記事は令和8年9月5日時点の法令・通知・公表資料に基づく一般的な整理です。記載した収支差率等は公表資料の平均値であり、個々の事業所の収益を示すものでも、収益を保証するものでもありません。制度・運用は改正や指定権者ごとの取扱いにより変わるため、最新情報は指定権者等へ必ずご確認ください。

執筆者 永野将太(行政書士・社会保険労務士)
執筆者WRITER
永野 将太
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズ 代表

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。

これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。