就労移行支援は、一般企業等への就職を希望する方に、知識・能力の向上や就職後の定着までを支援するサービスです。指定を受けるには法人格を持ち、人員・設備・運営の各基準を満たす必要があります。基本報酬は就労定着率で決まるため、開業初年度の考え方や就労選択支援との関係もあわせて整理しています。
- 基本報酬は就職後6月以上定着率で決まる
- 人員は管理者・サービス管理責任者に加えて職業指導員と生活支援員を配置する
- 管理者には資格要件がある
この記事で分かること
就労移行支援について、開業・指定申請から、開業資金、人員配置、管理者とサービス管理責任者の要件、就労定着率で決まる基本報酬、開業初年度の考え方、就労選択支援との関係、加算・減算、処遇改善加算、運営指導、労務管理までを1ページで体系的に整理した総合ガイドです。各テーマは個別の解説記事にリンクしています。
就労移行支援は、就職させた実績がそのまま基本報酬の区分になるサービスです。人を集めることよりも、就職と6か月の定着まで伴走できる体制をつくれるかどうかが、開業後の収支を左右します。
このページは、当サイトの就労移行支援に関する解説記事を、開業前から運営後までの順番に並べた総合ガイドです。各章の要点を先に示し、詳細は個別の記事へリンクしています。
1. 就労移行支援とは
就労移行支援は、一般企業等への就職を希望する方に、知識・能力の向上、職場実習、職場探し、就職後の定着支援までを一体で提供するサービスです。通所が原則で、利用者と事業所が雇用契約を結ぶことは通常ありません。
対象は原則65歳未満の障害のある方で、利用には市区町村による支給決定が必要です。65歳以上の方は、原則として65歳に達する前5年間に継続して障害福祉サービスの支給決定を受け、65歳到達日の前日に就労移行支援の支給決定を受けていた場合に引き続き対象となります。標準利用期間は原則2年(24か月)で、必要性が認められれば最長3年まで延長できます。
2. 指定申請の要件と流れ
指定を受けるには、法人格を持ち、人員・設備・運営の各基準を満たしたうえで指定権者へ申請します。全国一律の日数はなく、事前協議から指定まで3〜6か月程度を見込みます。
物件・人員・書類は並行して進めます。就労移行支援は実習先や求人開拓の体制も問われるため、開所前から企業とのつながりを準備しておくと、指定後の立ち上がりが早くなります。
3. 開業資金と資金繰り
開業資金は「初期費用」と「開所後の運転資金」の2階建てで考えます。給付費の入金はサービス提供月の翌々月のため、開所から最初の入金までの2〜3か月分の固定費を別枠で確保してください。
就労移行支援は生産活動による収入を前提にしないため、収入は給付費が中心です。定員が埋まるまでの期間と、基本報酬が低い区分から始まることの両方を織り込んで、保守的に見込んでください。
4. 人員配置と常勤換算
人員は、管理者とサービス管理責任者に加えて、職業指導員と生活支援員を合計で常勤換算により利用者数÷6以上、就労支援員を利用者数÷15以上配置します。職業指導員または生活支援員のうち、いずれか1名以上は常勤とします。
サービス管理責任者は利用者60人以下で1名以上、61人以上は60人を超えて40人またはその端数を増すごとに1名を加え、少なくとも1名は常勤です。配置数の算定に用いる利用者数は原則として前年度の平均利用者数で、新規指定時は基準に定める推定数を用います。なお、就労支援員には令和7年4月1日から、雇用と福祉の分野横断的な基礎的知識・スキルを付与する研修の受講が求められています。
5. 管理者・サービス管理責任者
就労移行支援の管理者の資格要件は、社会福祉主事任用資格を有すること、または社会福祉事業に2年以上従事したことのいずれかです。就労継続支援A型・B型では認められる「企業を経営した経験」が、就労移行支援では使えません。
サービス管理責任者は、サービス管理責任者等研修(基礎研修・実践研修)の修了、相談支援従事者初任者研修(講義部分)の修了、実務経験の3つをすべて満たして初めて配置できます。実務経験は年数だけでなく日数も要件で、相談支援業務は5年かつ900日以上、直接支援業務は8年かつ1,440日以上が原則です。
6. 物件・設備と利用定員
利用定員は原則10人以上です(令和6年4月の改定で従来の20人以上から引き下げられました)。多機能型の場合は就労移行支援の定員を6人以上とできます(多機能型全体の定員の取扱いは別途定めがあります)。設備は訓練・作業室、相談室、洗面所、便所、多目的室などが必要で、訓練・作業室は訓練または作業に支障のない広さを有し、必要な機械器具等を備えることとされています。
指定権者が具体的な面積の目安を示していることがあります。ある中核市の手引きでは、訓練・作業室と多目的室は利用者1人あたり2㎡以上、相談室は4㎡以上、手洗い設備は便所内の手洗いとは別に設置することとされています。用途地域・建築基準法上の用途・消防設備の要否は、物件契約前に指定権者と消防に確認してください。
7. 基本報酬と就労定着率
基本報酬は「就職後6月以上定着率」と「利用定員」の組み合わせで決まります。定着率の区分は7段階で、定員20人以下の場合、定着率5割以上で1,210単位、定着率0で479単位と2.5倍以上の差があります。
定着率は前年度および前々年度の実績で判定します。定着率を高めるために利用者を選別し、正当な理由なく利用申込みを拒否することは認められません。なお、令和8年度報酬改定では就労移行支援の基本報酬の単位数は見直しの対象外です。
8. 開業初年度の考え方
新規事業所は前年度・前々年度の実績がないため、一定期間は告示・留意事項に定めるみなしの取扱いで基本報酬を算定します。実績が利用できる時期や区分判定の方法は、指定時点の報酬告示・留意事項で確認してください。
みなし期間が終われば、実績がそのまま単価になります。定員を大きくすると分母が大きくなって定着率が下がりやすいため、小さく始める選択肢も現実的です。誰がいつどの企業に就職し、いつ6か月に達したかを記録する台帳を、開業初月からつくっておいてください。
9. 生産活動と就労支援事業会計
就労移行支援でも作業や実習に伴う生産活動を行う場合は、給付費による事業と生産活動を区分して経理する必要があります。就労支援事業会計は、A型・B型と同じく就労移行支援も対象です。
多機能型でA型・B型と併せて運営する場合は、サービスごとに生産活動の会計を分けます。家賃や水道光熱費などの共通経費は、事業の実態に合った合理的な基準で按分し、その根拠を残しておいてください。
10. 就労選択支援との関係
新たに就労移行支援を利用する方は、本人の希望に応じて就労選択支援を利用できます。就労選択支援は、本人の希望・就労能力・適性・必要な配慮を整理し、本人が納得できる働き方を選べるよう支援するサービスです。
令和9年4月からは、就労移行支援を標準利用期間を超えて更新する場合について、就労選択支援によるアセスメントを活用する仕組みが予定されています。施行時の通知・Q&Aで最終的な取扱いを確認してください。
11. 加算・減算
加算は「要件を満たしたうえで、算定を開始する月の前月15日までに体制届を提出する」のが基本です。減算は、人員欠如・個別支援計画未作成・虐待防止措置未実施・身体拘束廃止未実施・BCP未策定・支援プログラム未公表など、体制の不備によって発生します。標準利用期間を超えて利用する場合も減算の対象です。
名称が似ている「就労移行支援体制加算」は、生活介護・自立訓練・就労継続支援A型/B型の事業所が算定する加算で、就労移行支援事業所が算定するものではありません。就労移行支援では同じ実績が、加算ではなく基本報酬の区分として評価されます。
12. 処遇改善加算
処遇改善加算の収入は、原則として加算額以上の賃金改善に充てる必要があります。計画書の提出、規程の整備、職員への周知、実際の賃金支払、実績報告までが一連の手続です。
令和8年6月以降は、Ⅰ・イ、Ⅰ・ロ、Ⅱ・イ、Ⅱ・ロ、Ⅲ、Ⅳなどの区分で要件を確認します。加算の区分を上げるより先に、いま算定している区分の要件を満たし続けられているかを点検してください。
13. 個別支援計画・研修・BCPなどの運営実務
個別支援計画の作成とモニタリング、虐待防止・身体拘束廃止の措置、感染症と自然災害のBCP、法定研修は、いずれも未実施が減算に直結します。年間の実施時期をカレンダーにして、記録とセットで管理してください。
就労移行支援では、実習先の開拓、求職活動の支援、就職後の定着支援の記録も重要です。個別支援計画に位置づけた支援と、実際の記録が対応しているかを毎月確認してください。
14. 変更届・体制届と請求
管理者や事業所の名称・所在地、加算の体制などが変わったときは、変更届または体制届を期限内に提出します。請求の返戻・過誤は、体制届の提出漏れと受給者証(支給量・支給期間)の確認漏れが主な原因です。
就労移行支援は標準利用期間の管理が請求に直結します。支給決定の期間と更新時期を利用者ごとに把握しておいてください。
15. 運営指導
運営指導では、個別支援計画・勤務形態一覧表・加算の算定根拠・支援記録の整合性が確認されます。書類は「作成した日付」ではなく「勤務や支援の実態」と一致していることが重要です。
基本報酬の区分の根拠となる就労定着の実績は、就職先・雇用開始日・6か月到達日が分かる資料で説明できるようにしておきます。
16. 労務管理
就業規則の整備、社会保険・労働保険の加入、労働時間の管理は、指定基準とは別に事業所として必ず必要です。常勤の所定労働時間の定め方は、常勤換算や加算の判定にも影響します。
就労支援員は企業訪問や実習同行で外勤が多くなります。直行直帰や移動時間の取扱いを就業規則で定め、勤怠記録と勤務形態一覧表が一致するようにしてください。
17. よくある質問
原則10人以上です。令和6年4月の改定で、従来の20人以上から引き下げられました。多機能型の場合は就労移行支援の定員を6人以上とできます。多機能型全体の定員の取扱いは別途定めがあるため、あわせて確認してください。
原則2年(24か月)です。利用者の状況を個別に審査し、引き続き利用する必要性が認められた場合は最長3年まで延長できます。標準利用期間を超えて利用する場合は減算の対象になります。
管理者とサービス管理責任者に加えて、職業指導員と生活支援員を合計で常勤換算により利用者数÷6以上、就労支援員を利用者数÷15以上配置します。職業指導員または生活支援員のいずれか1名以上は常勤とします。
就労移行支援では使えません。管理者の資格要件は、社会福祉主事任用資格を有すること、または社会福祉事業に2年以上従事したことのいずれかです。「企業を経営した経験」が認められるのは就労継続支援A型・B型です。
「就職後6月以上定着率」と「利用定員」の組み合わせで決まります。定着率の区分は7段階で、定員20人以下の場合、定着率5割以上で1,210単位、定着率0で479単位と2.5倍以上の差があります。
前年度・前々年度の実績がないため、一定期間は告示・留意事項に定めるみなしの取扱いで算定します。実績が利用できる時期や区分判定の方法は、指定時点の報酬告示・留意事項で確認してください。
就労移行支援事業所では算定できません。この加算は生活介護・自立訓練・就労継続支援A型/B型の事業所が算定するもので、就労移行支援では同じ実績が加算ではなく基本報酬の区分として評価されます。
認められません。定着率を高めるために利用者を選別し、正当な理由なく利用申込みを拒否することは認められないとされています。
新たに就労移行支援を利用する方は、本人の希望に応じて就労選択支援を利用できます。令和9年4月からは、標準利用期間を超えて更新する場合について就労選択支援によるアセスメントを活用する仕組みが予定されています。
18. まとめ
就労移行支援は、利用者を集めることよりも、就職と6か月の定着まで伴走できる体制をつくれるかどうかで収支が決まります。定員を大きくすれば分母が大きくなり、定着率は下がりやすくなります。
開業前は「人員・物件・定員・企業とのつながり」、開業後は「定着の記録・区分の根拠・届出」を軸に点検してください。各テーマの詳細は、本ページ内の各章からそれぞれの記事へ進めます。
就労移行支援の開業から運営まで、一貫してご支援します
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、指定申請だけでなく、人員配置の設計、就業規則や社会保険の手続き、処遇改善加算の取得までご相談いただけます。開業支援は20万円〜です。
静岡・神奈川・愛知を中心に、オンラインで全国対応しています。定員の決め方、就労支援員の確保、就労定着の記録の残し方、運営指導への備えまで、開業前から運営後まで一緒に整理します。
主な参考資料
- 参考:厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定」関係資料
- 参考:こども家庭庁・厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」
- 参考:厚生労働省「就労移行支援に係る報酬・基準について」
- 参考:厚生労働省「就労支援事業会計処理基準」
※本ページは令和8年9月7日時点の法令・告示・通知等に基づく一般的な整理です。指定権者の条例・手引き・個別運用、最新の告示・Q&Aを必ず確認してください。

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。
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