指定申請の審査で見られているのは、書類が1枚ずつ正しいかではなく、書類同士の整合性です。申請書と運営規程、勤務形態一覧表、平面図などの記載が食い違うと、補正や差し替えを求められます。書類が返ってくることと指定が受けられないことは同じではないため、差し戻しと補正・差替え依頼の違いも押さえておきます。
- 見られているのは書類同士の整合性
- 必要書類の不足や古い様式の使用が典型的な原因
- 就労継続支援では生産活動の内容も確認される
この記事で分かること
障害福祉サービスの指定申請で書類が返ってくる主な理由を10項目に整理し、「差し戻し」と「補正・差替え依頼」の違い、書類同士の整合性が見られる仕組み、就労継続支援で加わる生産活動の確認、そして提出前に自分でできるチェックの手順までを解説します。
はじめに
指定申請の書類が返ってくると、その月の指定に間に合わなくなることがあります。開所日がずれれば、家賃と人件費はその間も出ていきます。では、なぜ書類は返ってくるのでしょうか。結論から申し上げると、多くの場合、書類が1枚足りないという単純な理由ではなく、書類同士・人員・物件・事業計画のあいだで内容が食い違っていることが原因です。
この記事では、指定申請で補正や差し替えを求められやすい理由を10項目に整理しました。項目は、公的資料の確認事項に、実務でよく見る論点を組み合わせて編集したものです。公的資料とは、静岡市や広島市など指定権者が公表している案内、厚生労働省が示した指定のガイドライン(令和8年6月時点で案の段階)、就労継続支援の新規指定に関するガイドラインです。
この記事のポイント
- 指定権者は書類の形式だけでなく、運営規程・勤務形態一覧表・平面図・資格証の記載が互いに一致しているかを見ている
- 「差し戻し」と呼ばれるものの多くは、審査の過程での補正・差替えの依頼。指定そのものの拒否とは別
- 提出期限を過ぎて補正が終わらないと、指定は翌月以降になる
- 就労継続支援では、生産活動の内容と収支の見込みが確認される(生産活動シート)
- 事前協議で説明した内容と申請内容が食い違うと、審査が長引きやすい
1. 結論:見られているのは書類同士の整合性
結論として、指定申請の審査で見られているのは、書類が1枚ずつ正しいかどうかではなく、書類同士の内容が一致しているかどうかです。運営規程・勤務形態一覧表・平面図・資格証は、それぞれ別の様式ですが、同じ事業所の同じ計画を別の角度から書いたものです。どこか一つを直すと、ほかも直す必要が出てきます。
厚生労働省が令和8年6月に示した指定のガイドライン(案)でも、従業者の勤務体制と勤務形態、管理者やサービス管理責任者の経歴書における実務経験日数の充足、運営規程の記載漏れといった点を確認するという考え方が示されています。この資料は案の段階のものですが、審査で見られる観点を知るうえでは参考になります。
補正・差替えの依頼(多くはこちら)
- 審査の過程で、記載の不足や不一致について修正を求められる
- 期限内に直せば、予定どおりの指定日で進むことが多い
- 同じ箇所で往復が続くと期限に間に合わなくなる
受理されない・指定に至らない
- 提出期限を過ぎた、必要書類がそろっていない
- 事前協議を経ていない、様式が指定のものでない
- 虚偽の記載があった場合は指定しないとされている
2.「差し戻し」と「補正・差替え依頼」は違う
結論として、書類が返ってくることと、指定が受けられないことは同じではありません。審査の過程で記載の不足や不一致について修正を求められるのは通常の手続であり、期限内に対応できれば予定どおりの指定日で進みます。
問題になるのは、補正の往復が続いて提出期限を過ぎてしまう場合です。指定日は多くの指定権者で毎月1日ですから、期限を過ぎればそのまま1か月の遅れになります。実務では、指摘の一つひとつに個別対応するのではなく、指摘をきっかけに関連する書類をまとめて見直すほうが、往復の回数を減らせます。
書類・形式の問題(1〜6)
- 必要書類の不足、様式違い
- 申請書と運営規程等の記載不一致
- 人員配置・勤務時間の不足
- 資格・実務経験の証明が不十分
- 平面図・面積・設備基準の不整合
- 建築・消防など他法令の確認が未了
計画・手続の問題(7〜10)
- 定員・利用者見込みの根拠が弱い
- 就労系の生産活動・収支計画が具体性を欠く
- 申請期限・提出方法のミス
- 事前協議のあとに計画を変更している
3. 書類が返ってくる10の理由
結論として、補正や差し替えを求められる理由は次の10項目に整理できます。
理由1 必要書類の不足・様式違い
添付書類の抜け、古い様式の使用、押印や日付の漏れです。令和8年4月から指定申請等の様式は全国統一の標準様式に移行しているため、以前ダウンロードした様式をそのまま使うと形式で戻されます。
理由2 申請書と運営規程等の記載不一致
サービス種別、定員、営業日・営業時間、職員の職種と員数、利用者負担に関する事項が、申請書、運営規程、重要事項説明書のあいだで食い違うケースです。定員を途中で変更したときに直し漏れることが多い箇所です。
理由3 人員配置・勤務時間の不足
勤務形態一覧表で常勤換算数が基準に届かない、管理者やサービス管理責任者の兼務の範囲が説明できない、営業時間に対して職員の勤務時間が足りない、といった指摘です。常勤換算は、事業所の就業規則上の常勤の勤務時間を基準に計算します。
理由4 資格・実務経験の証明が不十分
サービス管理責任者などの実務経験証明書で、従事期間だけでなく実際の従事日数が確認されます。前職の証明が取れない、業務内容が要件に該当するか判断できない、という形で止まることがあります。証明書の取得には時間がかかるため、内定の段階で着手してください。
理由5 平面図・面積・設備基準の不整合
平面図に部屋の用途と面積が記載されていない、定員に対して必要な面積が確保できていない、多目的室と訓練室の区分が説明できない、といった指摘です。静岡市は事前協議の際に、部屋の用途と面積を記載した平面図の持参を求めています。
理由6 建築・消防など他法令の確認が未了
建築基準法上の用途変更や、消防法令上必要な設備の設置が終わっていないケースです。広島市は、事業所開設に先立って建築部局・消防部局との協議が必要であり、用途変更が必要な場合があることを案内しています。指定申請の審査でも、用途変更や消防設備の完了が確認されます。
理由7 定員・利用者見込みの根拠が弱い
「地域にニーズがあると思う」だけでは根拠になりません。相談支援事業所や市区町村への確認、市町村障害福祉計画との整合など、どのように把握したかを説明できるようにしておきます。
理由8 就労系の生産活動・収支計画が具体性を欠く
就労継続支援では、生産活動の内容、取引先、収入の見込み、経費、工賃・賃金の原資が確認されます。「これから営業する」だけでは、継続的に工賃を支払える計画とは認められにくくなります。
理由9 申請期限・提出方法のミス
提出期限は指定権者ごとに決まっています。静岡市は指定を受けたい月の2か月前の1日まで、広島市は指定希望日の1か月前までを案内しています。期限を過ぎると、内容に問題がなくても指定は翌月以降です。
理由10 事前協議のあとに計画を変更している
事前協議で説明した内容と申請内容が食い違うと、審査は最初からやり直しに近くなります。物件の変更、定員の変更、人員体制の変更は、決まった時点で速やかに指定権者へ連絡してください。
実務のご相談で多いのは、理由3・理由4・理由6の3つです。いずれも、書類を書き直せば済むものではなく、人や物件の実態そのものを整える必要があるため、時間がかかります。
あわせて読みたい障害福祉サービスの人員基準とは?|配置する職種と常勤換算の考え方記載する内容
- 生産活動の分類(清掃、軽作業、製造など)と活動ごとの収入
- 生産活動の経費(材料費、消耗品費、燃料費、水道光熱費、賃借料など)
- 売上上位の取引先と、その取引先が関連企業かどうか
- 利用者へ支払う賃金総額・工賃総額
確認されるポイント
- 生産活動の収支が、賃金・工賃の支払額を上回っているか
- 経費がゼロになっていないか
- 一つの活動や一つの取引先に依存していないか
- 関連企業との取引が相場からかけ離れていないか
4. 就労継続支援は生産活動の確認が加わる
結論として、就労継続支援A型・B型では、人員・設備・運営の基準に加えて、生産活動が継続できる計画かどうかが確認されます。厚生労働省の「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン」では、新規指定時に確認する事項が示されています。具体的には、生産活動の具体的内容と収入見込み、利用者の募集方法、利用者ニーズの把握方法などで、あわせて生産活動シートも示されています。
このシートは指定後の運営状況の把握にも使われます。開業前の段階から、取引の見込みを契約書や見積りといった形で残しておくと、申請時の説明がしやすくなります。
5. 提出前チェックの手順
結論として、提出前に次の3ステップを踏むと、補正の往復を大きく減らせます。
- 定員/申請書・運営規程・重要事項説明書・平面図で同じ数字になっているか
- 営業日・営業時間/運営規程と勤務形態一覧表で矛盾していないか
- 職員/常勤換算数が基準を満たしているか。管理者・サービス管理責任者の兼務の範囲を説明できるか
- 資格・実務経験/研修修了証と実務経験証明書がそろい、従事日数まで確認できるか
- 面積・区画/定員に対する必要面積を満たし、部屋の用途が平面図に記載されているか
- 他法令/建築基準法上の用途変更、消防設備の設置が指定日までに完了する見込みか
- 期限/指定権者が定める提出期限と提出方法(持参・郵送・電子)を確認したか
よくある質問
指定権者が定める提出期限までに補正が完了すれば、予定どおりの指定日で進むことが一般的です。まず、いつまでに直せばよいかを担当者に確認してください。
推測で直すと往復が増えます。どの基準に照らして何が不足しているのかを確認してから修正してください。あわせて、同じ論点が他の書類にも及んでいないかを見ておくと、次の指摘を防げます。
多くの指定権者が事前協議や事前相談を求めています。静岡市は事業開始のおおむね3か月前を目途に予約のうえ事前協議を行うよう案内しています。手続の要否と時期は指定権者に確認してください。
平面図や設備に関する書類は作り直しになります。建築・消防の確認も新しい物件で行う必要があるため、指定日が後ろにずれることが一般的です。変更が決まった時点で、早めに指定権者へ相談してください。
書類の整合性や様式の不備は事前に防げますが、人員が基準に足りない、工事が完了していないといった実態の問題は、書類では解決できません。専門家に依頼する場合も、人員と物件の確保は事業者側で進める必要があります。
厚生労働省の指定のガイドライン(案)では、事前相談は法人の代表者等と直接行うという考え方が示されています(令和8年6月時点の案)。実際の運用でも、代表者や管理者が計画を説明できる状態にしておくことが求められます。
まとめ
指定申請で書類が返ってくる理由の多くは、書類が1枚足りないという単純なものではなく、運営規程・勤務形態一覧表・平面図・資格証のあいだで内容が食い違っていることにあります。指定権者は、これらを別々の書類としてではなく、同じ計画を別の角度から書いたものとして見ています。
10の理由のうち、前半の6つは書類を作り直せば解決します。一方、定員や利用者見込みの根拠、生産活動の計画、事前協議後の変更といった後半の論点は、計画そのものの見直しが必要になるため時間がかかります。とくに就労継続支援では、生産活動の収支が賃金・工賃の支払額を上回る計画になっているかが確認されます。
提出前に、定員・営業時間・職員・資格・面積・他法令・期限の7点を横に並べて突き合わせてください。作成した本人以外が確認すると、思い込みによる見落としを防げます。
指定申請の書類作成と事前協議をご支援します
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、指定申請だけでなく、人員配置の設計、就業規則や社会保険の手続き、処遇改善加算の取得までご相談いただけます。開業支援は20万円〜です。
静岡・神奈川・愛知を中心に、オンラインで全国対応しています。運営規程・勤務形態一覧表・平面図・資格要件の整合を取ったうえで、指定権者の事前協議から申請までを一緒に進めます。物件の契約前、人員の採用前にご相談いただくと、後戻りを減らせます。
関連記事
主な参考資料
- 参考:厚生労働省「障害福祉サービス事業者等の指定のガイドライン(案)」(令和8年6月5日 社会保障審議会障害者部会資料)/厚生労働省「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン」(生産活動シート・解説資料を含む)/静岡市「指定障害福祉サービス等事業所の新規指定・指定更新・指定変更」/広島市「障害福祉サービス事業所等の新規指定等に係る事前相談及びスケジュール」/厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」
※本記事は令和8年9月5日時点の法令・通知・公表資料に基づく一般的な整理です。10項目は、公的資料に示された確認事項と実務上よく見る論点を組み合わせて編集したものです。厚生労働省の指定のガイドラインは令和8年6月時点で「案」の段階の資料であり、確定した運用ではありません。制度・運用は改正や指定権者ごとの取扱いにより変わるため、最新情報は指定権者等へ必ずご確認ください。

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。
これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。
