前年度平均利用者数は、報酬算定や加算の届出に使う重要な数値で、人員基準の判断にも用いられます。サービスの種類や、新規指定・定員変更といった事業所の状況によって計算方法が変わります。いずれの計算でも、小数点第2位以下は切り上げて計算します。
- 報酬算定や加算の届出だけでなく、人員基準の判断にも使う数値
- 新規指定の場合は「定員数×90%」で計算する
- 定員を減らした場合は、通常の計算とは別の扱いになる
障害福祉サービスの報酬算定や加算の届出において、「前年度平均利用者数」は重要な数値です。
しかし、「開所したばかりで前年度の実績がない」「定員を変更した」など、事業所の状況によって計算方法が異なるため、「どの数字を使えばいいのかわからない…」というお声をよくいただきます。
この記事では、サービス種類ごと・状況ごとの前年度平均利用者数の考え方と計算方法を、わかりやすく整理してお伝えします。
📌 共通ルール:端数処理について
いずれの計算においても、小数点第2位以下は切り上げて計算します(例:4.01 → 4.1、4.11 → 4.2)。
前年度平均利用者数は「人員基準」の判定にも使う
前年度平均利用者数は、加算の届出や報酬算定だけの数字ではありません。人員基準そのものの判定にも使います。ある中核市の手引きでは、各サービスの人員基準の表に共通して次の注記が置かれています。
「利用者数は、前年度の平均値を使用。新規指定の場合、推定数(利用定員×0.9)」
つまり、次のような員数は、いずれも前年度平均利用者数をもとに算出することになります。
| サービス | 前年度平均利用者数を |
|---|---|
| 共同生活援助 | サービス管理責任者 |
| 短期入所 | 本体施設の |
| 就労定着支援 | 就労定着支援員 |
報酬区分の判定だけを見て「うちは実績が少ないから関係ない」と考えていると、人員基準の側で員数不足が生じることがあります。年度が替わって前年度平均利用者数が確定したら、加算の届出と勤務形態一覧表の両方を見直してください。
1 療養介護・自立訓練・就労選択支援・就労移行支援・就労継続支援A型・B型・短期入所・共同生活援助・施設入所支援の場合

これらのサービスでは、「前年度(4月1日〜翌年3月31日の12か月間)の実績があるかどうか」によって、使用する数値が変わります。
まず「前年度実績があるか」を確認し、ない場合はさらに事業所の開設・定員変更からの経過期間等に応じて計算方法を選びます。
前年度実績を使用します。
前年度の利用者延べ数 ÷ 開所日数
事業所を新設した、または定員を増やした時点からの経過期間によって、以下の①〜⑤に分かれます。
新設・定員増の時点から6か月未満の場合(新規指定申請の場合など)
定員数 × 90%
新設・定員増の時点から6か月以上1年未満の場合
直近6か月の実績を使用します。
直近6か月の利用者延べ数 ÷ 直近6か月の開所日数
新設・定員増の時点から1年以上の場合
直近12か月の実績を使用します。
直近12か月の利用者延べ数 ÷ 直近12か月の開所日数
新規指定時の「定員×90%」は、そのまま人員配置の前提になる
新規指定の場合の「定員数×90%」は、指定申請の段階で提出する勤務形態一覧表の前提そのものです。たとえば共同生活援助で利用定員10人の事業所を立ち上げる場合、利用者数は9人として扱い、世話人は常勤換算で9÷6=1.5人以上、といった形で必要員数を算出します。
開所当初は入居者が数人しかいなくても、必要な人員は定員の90%を前提に確保しなければなりません。開業時の資金計画では、この人件費の先行負担を必ず織り込んでください。
なお、就労定着支援の新規指定時の推定数は、ある中核市の手引きでも「過去3年間において就労定着期間が6か月に達した者の数×0.7」と示されており、他サービスとは考え方が異なります。
定員を「減らした」場合のルール(④・⑤)
定員減の場合は、上記①〜③とは別の扱いになります。
定員減の時点から3か月未満の場合
定員減前の前年度平均利用者数をそのまま使用
定員減から3か月以上経過し、前年度実績ができるまでの間
定員減後の直近3か月間の実績を使用します。
当該3か月間の利用者延べ数 ÷ 当該3か月間の開所日数
| 状況 | 使用する数値 |
|---|---|
| 前年度 |
前年度の |
| 新設・定員増から |
定員数 × 90% |
| 新設・定員増から |
直近6か月の |
| 新設・定員増から |
直近12か月の |
| 定員減から |
定員減前の |
| 定員減から |
定員減後の |
事業所の形態によって、合算・控除の処理が入る
前年度平均利用者数は、単純に1事業所の実績を割るだけで済まないことがあります。事業所の形態によっては、合算や控除の処理が入ります。
| 形態 | 利用者数の扱い |
|---|---|
| 多機能型事業所 | サービス管理責任者は、 |
| 従たる事業所 | 主たる |
| 短期入所 | 本体施設 |
| 施設外就労を | 施設外就労に |
特に注意したいのが施設外就労です。職業指導員・生活支援員は「全体の平均利用者数から施設外就労分を差し引いた数」で、サービス管理責任者は「施設外就労分を含めた数」で判定します。同じ事業所の中で、職種によって使う数字が変わります。
これらは指定権者の手引きによる整理であり、細部の運用が異なる場合があります。申請先の自治体の最新の手引きを確認してください。
前年度(12か月)実績あり
- 前年度の利用者延べ数 ÷ 開所日数
新設・定員増から6か月未満
- 定員数 × 90%
新設・定員増から6か月以上1年未満
- 直近6か月の利用者延べ数 ÷ 直近6か月の開所日数
新設・定員増から1年以上
- 直近12か月の利用者延べ数 ÷ 直近12か月の開所日数
定員減から3か月未満
- 定員減前の前年度平均利用者数
定員減から3か月以上(前年度実績ができるまで)
- 定員減後の3か月間の利用者延べ数 ÷ 当該3か月間の開所日数
多機能型事業所
- サービス管理責任者は事業ごとではなく事業所全体の利用者数で判定
- 利用者数60人以下は1人以上
従たる事業所
- 主たる・従たるの利用者の合計数に応じた従業者を確保
- 従たる事業所に常勤・専従の従業者を1人以上(管理者及びサービス管理責任者を除く)
短期入所(併設・空床利用型・単独型)
- 本体施設のサービス提供時間は、本体施設・短期入所の利用者数の合計を本体施設の利用者数とみなす
施設外就労(就労継続支援A型・B型など)
- 職業指導員・生活支援員は「全体の平均利用者数から施設外就労分を差し引いた数」で判定
- サービス管理責任者は「施設外就労分を含めた数」で判定
- 同じ事業所でも職種によって使う数字が変わる
2 就労定着支援の場合

就労定着支援は、利用者が月単位で登録・支援される仕組みであるため、「開所日数」ではなく「開所月数」で割る点が大きな特徴です。
また、前年度実績がない場合の新設時の計算式も、他のサービスとは異なります。
前年度実績を使用します。「÷ 開所日数」ではなく「÷ 開所月数」になる点に注意してください。
前年度の利用者延べ数 ÷ 開所月数
新設等の時点から6か月未満の場合(新規指定申請の場合など)
就労を継続している期間が6か月に達した者の数(過去3年間の総数)をもとに計算します。
就労継続6か月到達者の過去3年間の総数 × 70%
新設等の時点から6か月以上1年未満の場合
直近6か月の実績を月数で割ります。
直近6か月の利用者延べ数 ÷ 6
新設・増床の時点から1年以上の場合
直近12か月の実績を月数で割ります。
直近12か月の利用者延べ数 ÷ 12
| 状況 | 使用する数値 |
|---|---|
| 前年度 |
前年度の |
| 新設等から |
就労継続6か月到達者の |
| 新設等から |
直近6か月の |
| 新設・ |
直近12か月の |
前年度(12か月)実績あり
- 前年度の利用者延べ数 ÷ 開所月数
新設等から6か月未満
- 就労継続6か月到達者の過去3年間の総数 × 70%
新設等から6か月以上1年未満
- 直近6か月の利用者延べ数 ÷ 6
新設・増床から1年以上
- 直近12か月の利用者延べ数 ÷ 12
よくある質問
前年度(4月1日〜翌年3月31日の12か月間)の実績がある場合は、前年度の利用者延べ数を開所日数で割って算出します。就労定着支援だけは、開所日数ではなく開所月数で割ります。
新設または定員増の時点から6か月未満の場合は「定員数×90%」を用います。6か月以上1年未満は直近6か月の利用者延べ数÷直近6か月の開所日数、1年以上は直近12か月の利用者延べ数÷直近12か月の開所日数で計算します。
定員減の時点から3か月未満の場合は、定員減前の前年度平均利用者数をそのまま使用します。3か月以上経過し前年度実績ができるまでの間は、定員減後の直近3か月間の利用者延べ数÷その3か月間の開所日数で計算します。
いずれの計算においても、小数点第2位以下は切り上げます(例:4.01→4.1、4.11→4.2)。
いいえ。人員基準そのものの判定にも使います。共同生活援助のサービス管理責任者・世話人・生活支援員、短期入所の生活支援員、就労定着支援の就労定着支援員などの員数は、いずれも前年度平均利用者数をもとに算出します。
指定申請の段階で提出する勤務形態一覧表の前提になります。年度が替わって前年度平均利用者数が確定したら、加算の届出と勤務形態一覧表の両方を見直してください。
利用者が月単位で登録・支援される仕組みのため、開所日数ではなく開所月数で割ります。前年度実績がない場合も他のサービスとは計算式が異なり、新設等から6か月未満の場合は、就労を継続している期間が6か月に達した者の過去3年間の総数に70%を乗じて算出します。
まとめ
前年度平均利用者数の計算方法は、サービスの種類と事業所の状況(開設・定員変更からの経過期間)によって細かく異なります。誤った数値を使ってしまうと、報酬の過誤請求や加算の算定誤りにつながるおそれがあるため、慎重に確認することが大切です。
特に以下の点を押さえておいてください。
① 端数処理は「切り上げ」
小数点第2位以下は切り上げが原則です。四捨五入や切り捨てと混同しないようにご注意ください。
② 就労定着支援は「÷ 開所月数」
他のサービスが「÷ 開所日数」であるのに対し、就労定着支援は月単位で計算します。
③ 定員減・定員増で適用ルールが異なる
定員を増やした場合と減らした場合では、参照する期間の考え方が違います。混同しないよう整理しておいてください。
ご注意ください
前年度平均利用者数は、各種加算の届出・体制届・報酬算定など、幅広い場面で参照される重要な数値です。自事業所の状況がどのケースに該当するか不明な場合は、指定権者(都道府県・市町村)への確認や、専門家への相談をおすすめします。
実績に基づいて区分を上げる場合の届出期限
前年度平均利用者数が確定するのは年度が明けてからです。そのため、実績に基づく区分変更は、通常の届出期限に間に合わないことがあります。この点について、ある中核市の手引きでは例外が設けられています。
| 区分 | 提出期限 |
|---|---|
| 新たに | 算定する |
| 人員配置区分、 | 例外と |
| 区分を | 速やかに |
数字が下がる方向の届出は期限が「速やかに」とされている分、後回しになりがちですが、遅れると過大に受け取った報酬の返還につながります。前年度平均利用者数を計算し直したら、上がる方向・下がる方向のどちらであってもすぐに届出の要否を確認してください。
提出期限・提出方法は指定権者によって異なるため、申請先の自治体の最新の手引きを確認してください。
前年度平均利用者数の計算でお困りではありませんか?
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズでは、障害福祉サービスの報酬算定・加算届出に関するご相談をトータルサポートしています。
「自分の事業所はどのケースに当てはまる?」「正しく計算できているか確認したい」
そんなお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。
※本記事の内容は令和8年3月時点の情報に基づいています。最新の情報は厚生労働省のホームページや各自治体にてご確認ください。
関連記事

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。
これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。
