事業所の形態には、複数のサービスを組み合わせる多機能型事業所、本体とは別の場所に設ける従たる事業所、製品販売や待機のために設ける出張所の3つがあります。多機能型と従たる事業所はいずれも日中活動系サービスが対象で、利用定員や人員・設備の扱いがそれぞれ異なります。どの形態を選ぶかで指定申請の内容が変わります。
- 多機能型と従たる事業所の対象は日中活動系サービス
- 出張所は訪問系・日中活動系のいずれでも設けられる
- 形態ごとに利用定員と人員・設備の扱いが異なる
この記事で分かること
複数のサービスを組み合わせる「多機能型事業所」、本体とは別の場所に設ける「従たる事業所」、製品販売や待機のために設ける「出張所」の3つの形態について、対象となるサービス、利用定員、人員・設備・運営の基準の違いを整理します。
はじめに
「生活介護と就労継続支援B型を一緒にやりたい」「2つ目の作業場所を別の物件に構えたい」「製品を販売する店舗を出したい」。事業を広げようとすると、必ずこの3つの形態のどれかを検討することになります。
多機能型事業所・従たる事業所・出張所は、いずれも1つの指定の中に複数の場所や事業を含める仕組みですが、認められる要件も、必要な手続きも異なります。この記事では、それぞれの基準を整理します。
この記事のポイント
- 多機能型事業所は、生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型・B型のほか、児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援なども対象で、これらのうち2つ以上を一体的に行う形態です。全体で20人以上の利用定員が必要です(障害児通所支援のみで構成する多機能型は、利用定員の合計10人以上で足ります)。
- 従たる事業所は、主たる事業所と同一サービスを別の場所で行う形態です。従たる事業所に常勤・専従の従業者を1人以上確保する必要があります。
- 出張所は、製品の販売、待機、道具の保管、着替えなどを行う付属施設です。生産活動の一部を行う場合は出張所ではなく、従たる事業所として扱われます。
- 多機能型・従たる事業所では、利用定員の下限がサービスごとに緩和されます(生活介護・自立訓練・就労移行支援は6人以上、就労継続支援A型・B型は10人以上)。
1. 事業所の形態は3つある
| 形態 | 概要 | 主な対象サービス |
|---|---|---|
| 多機能型事業所 | 複数の異なるサービスを一体的に行う | 生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型・B型のほか、児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援など |
| 従たる事業所 | 主たる事業所と同一のサービスを別の場所で行う | 生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型・B型のほか、児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援など |
| 出張所 | 製品の販売、待機、道具の保管、着替えなどを行う付属施設 | 訪問系サービス(居宅介護など)、日中活動系サービス(生活介護、就労継続支援など) |
多機能型と従たる事業所は、いずれも日中活動系サービスが対象です。「別のサービスを足す」のが多機能型、「同じサービスを別の場所で行う」のが従たる事業所、と整理すると分かりやすくなります。
多機能型事業所
- 複数の異なるサービスを一体的に行う
- 「別のサービスを足す」
従たる事業所
- 主たる事業所と同一のサービスを別の場所で行う
- 「同じサービスを別の場所で」
出張所
- 製品の販売、待機、道具の保管、着替えなどを行う付属施設
2. 多機能型事業所
生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型・B型のほか、児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援なども対象で、これらのうち2つ以上の事業を一体的に行うものを多機能型事業所といいます。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 利用定員 | ●全体で20人以上(障害児通所支援のみで構成する多機能型は、利用定員の合計10人以上で足ります) ●各事業所において、事業ごとに定める以下の最低定員以上 ・生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援/6人以上 ・就労継続支援A型、就労継続支援B型/10人以上 |
| サービス管理責任者 | サービスごとに必要な員数に関わらず、利用者数が60人以下の場合、1人以上(利用者数が61人以上の場合、1人に、利用者数が60人を超えて40人を増す(または端数が増す)ごとに1人を加えた数以上) (例/利用者数61〜100人の場合、2人以上) |
| 従業者 | サービスごとに必要な員数を確保すること |
| 設備 | 相談室、便所・手洗い設備、多目的室などは、サービス提供に支障がない範囲内で兼用可(訓練・作業室は、サービスごとで専用に設置すること) |
多機能型のメリットは、サービス管理責任者を1人にまとめられる点と、利用定員の下限が下がる点です。単独で就労継続支援B型を行うと最低定員は20人ですが、多機能型なら10人で足ります。生活介護も、単独なら20人のところ6人まで下がります。
注意点は、訓練・作業室はサービスごとに専用で設置しなければならないことです。物件の広さを検討する段階で、この点を織り込んでください。
多機能型事業所は、同一敷地内で行うことも、異なる敷地で行うことも可能です。異なる敷地で行う場合は、概ね30分以内で移動可能な距離であることが求められます。
たとえば同一法人が同一敷地内で生活介護(定員6人)と就労継続支援B型(定員14人)を実施すれば、多機能型事業所(利用定員20人)となります。異なる敷地で実施する場合も、両者が概ね30分以内で移動可能な距離であれば同様に取り扱われます。
利用定員
- 全体で20人以上
- 障害児通所支援のみで構成する多機能型は、利用定員の合計10人以上で足りる
- 生活介護・自立訓練・就労移行支援:6人以上
- 就労継続支援A型・B型:10人以上
サービス管理責任者
- サービスごとの員数に関わらず、利用者数60人以下は1人以上
- 61人以上は、1人に、60人を超えて40人を増す(または端数が増す)ごとに1人を加えた数以上(例:61〜100人は2人以上)
従業者・設備
- 従業者はサービスごとに必要な員数を確保
- 相談室、便所・手洗い設備、多目的室などは支障がない範囲で兼用可
- 訓練・作業室はサービスごとに専用に設置
3. 従たる事業所
生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型・B型のほか、児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援なども、次の基準を満たす場合、「従たる事業所」を設置できます。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 利用定員 | ●主たる事業所と従たる事業所の利用定員の合計が20人以上であること(施設入所支援、就労継続支援A型を除く) ●従たる事業所において、事業ごとに定める以下の最低定員以上 ・生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援/6人以上 ・就労継続支援A型、就労継続支援B型/10人以上 |
| 人員 | ●主たる事業所、従たる事業所の利用者の合計数に応じた従業者を確保するとともに、従たる事業所において常勤・専従の従業者を1人以上確保すること(管理者及びサービス管理責任者を除く) |
| 設備 | ●主たる事業所、従たる事業所の間の距離が概ね30分以内で移動可能な距離で、サービス管理責任者の業務の遂行上、支障がないこと ●事務室・相談室は、サービス提供に支障がない範囲内で主たる事業所と兼用可。訓練・作業室、多目的室、便所・手洗い設備は、専用に設置すること |
| 運営 | ●利用申込の調整、従業者の指導、苦情処理などを一体的に行っていること ●主たる事業所、従たる事業所で相互の支援体制があること ●従業者の勤務体制や会計の管理を一元的に行っていること ●主たる事業所と同一の運営規程を定めていること |
押さえるべきポイントは3つです。
1つ目は、主たる事業所と従たる事業所は同一サービスを実施することです。生活介護の従たる事業所で就労継続支援B型を行うことはできません。
2つ目は、従たる事業所に常勤・専従の従業者を1人以上確保することです。管理者とサービス管理責任者は、この1人には含まれません。
3つ目は、運営の一体性です。利用申込の調整、従業者の指導、苦情処理を一体的に行い、勤務体制と会計を一元管理し、同一の運営規程を定めることが必要です。実態として別々の事業所として運営されている場合、従たる事業所とは認められません。
たとえば利用定員20人の生活介護事業所であれば、主たる事業所14人・従たる事業所6人という配分が考えられます。両者は概ね30分以内で移動可能な距離である必要があります。
① 同一サービスを実施する
- 生活介護の従たる事業所で就労継続支援B型を行うことはできない
② 常勤・専従の従業者を1人以上
- 管理者とサービス管理責任者はこの1人に含まれない
③ 運営の一体性
- 利用申込の調整、従業者の指導、苦情処理を一体的に行う
- 勤務体制と会計を一元管理し、同一の運営規程を定める
- 実態として別々に運営されている場合は従たる事業所と認められない
4. 出張所
訪問系サービス(居宅介護など)や日中活動系サービス(生活介護や就労継続支援など)において、本体となる事業所の付属施設として、製品の販売、待機や道具の保管、着替えなどを行う施設を「出張所」として設置することが認められます。
主な活用例
- 従業者、利用者が生産活動などによる製品を販売する(生産活動の一部を行うことは不可)
- サービス提供に使用する道具などを保管する
- 従業者が次のサービス提供を行うまで一時待機する
- 従業者が着替えを行う
注意点として、生産活動の一部を行う場合は出張所ではなく、基準を満たしていれば従たる事業所として認められる取扱いです。「販売だけを行う店舗」は出張所、「作業もする場所」は従たる事業所、という切り分けになります。
設置にあたっては、従たる事業所における運営に関する基準(利用申込の調整、従業者の指導、苦情処理の一体的実施など)を満たす必要があります。設備については、サービス提供に支障がない範囲内で本体の事業所の設備を兼用できます。
あわせて読みたい施設外就労とは?就労継続支援A型・B型の要件と職員配置を解説5. 形態の選び方
| こうしたい | 検討する形態 |
|---|---|
| 別のサービスを追加したい(B型に生活介護を足すなど) | 多機能型事業所 |
| 同じサービスを別の物件でも行いたい | 従たる事業所 |
| 作った製品を売る店舗を出したい | 出張所(作業もするなら従たる事業所) |
| 事業所の外で企業から請け負った作業を行いたい | 施設外就労(別の制度) |
なお、事業所の新築・改築・増設や、従たる事業所の追加は、事前協議の対象としている指定権者が多くみられます。ある中核市の手引きでは、事前協議書類は変更日の3か月前の15日まで、変更届は変更日の2か月前の末日まで、と2段階の期限が設けられています。工事に着手する前に事前協議を完了させることも求められますので、物件を押さえる前に指定権者へ相談してください(期限は指定権者ごとに異なります)。
別のサービスを追加したい(B型に生活介護を足すなど)
- → 多機能型事業所
同じサービスを別の物件でも行いたい
- → 従たる事業所
作った製品を売る店舗を出したい
- → 出張所(作業もするなら従たる事業所)
事業所の外で企業から請け負った作業を行いたい
- → 施設外就労(別の制度)
実務上の注意点
「概ね30分以内」は移動時間で判断する
多機能型(異なる敷地の場合)も従たる事業所も、距離ではなく移動時間で判断します。地図上は近くても、渋滞や一方通行で実際の移動に時間がかかる場合があります。事前協議の際に、実測の移動時間を説明できるようにしておくと確認がスムーズです。
サービス管理責任者の業務遂行に支障がないか
従たる事業所の要件には「サービス管理責任者の業務の遂行上、支障がないこと」が含まれます。サービス管理責任者は両方の事業所の個別支援計画を作成しモニタリングを行うため、移動の負担が過大にならない配置を考えてください。
勤務形態一覧表は主たる・従たるで分けて作成する
勤務形態一覧表は、主たる事業所と従たる事業所で分けて作成します。ただし、管理者とサービス管理責任者については、従たる事業所への掲載を省略できる取扱いが一般的です。双方に配置する従業者は、配置する時間を分けて計上し、合計の勤務時間が常勤の勤務すべき時間数に達している場合、同じ職種であれば「常勤・専従」、異なる職種の場合は「常勤・兼務」で整理します。
「概ね30分以内」は移動時間で判断
- 距離ではなく移動時間。渋滞や一方通行で実際の移動に時間がかかる場合がある
- 事前協議で実測の移動時間を説明できるようにしておく
サービス管理責任者の業務遂行に支障がないか
- 両方の事業所の個別支援計画の作成とモニタリングを担う
- 移動の負担が過大にならない配置を考える
勤務形態一覧表は主たる・従たるで分けて作成
- 管理者とサービス管理責任者は従たる事業所への掲載を省略できる取扱いが一般的
- 双方に配置する従業者は時間を分けて計上し、合計が常勤の勤務すべき時間数に達していれば、同一職種は「常勤・専従」、異なる職種は「常勤・兼務」
開業前チェックリスト
□ 追加したいのが「別サービス」か「同一サービスの別拠点」かを整理した
□ 多機能型の場合、全体20人以上・各事業の最低定員を満たすか確認した
□ 多機能型の場合、訓練・作業室をサービスごとに専用で確保した
□ 従たる事業所の場合、常勤・専従の従業者を1人以上確保した
□ 主たる事業所との移動時間が概ね30分以内であることを確認した
□ 運営規程・勤務体制・会計を一元管理する体制を設計した
□ 事前協議の要否と時期を指定権者に確認した
よくある質問
全体で20人以上です。あわせて、事業ごとの最低定員(生活介護・自立訓練・就労移行支援は6人以上、就労継続支援A型・B型は10人以上)を満たす必要があります。ただし、障害児通所支援のみで構成する多機能型は、利用定員の合計10人以上で足ります。
サービスごとではなく、事業所全体の利用者数で判定します。利用者数60人以下であれば1人以上です。
できません。主たる事業所と従たる事業所は同一サービスを実施する必要があります。別のサービスを行う場合は、多機能型事業所または別事業所としての指定を検討します。
生産活動の一部を行う場合、出張所ではなく従たる事業所として扱われます。出張所として認められるのは、製品の販売、道具の保管、待機、着替えなどです。
変更届の提出が必要です。事前協議を求める指定権者が多く、変更日の3か月前の15日までに事前協議書類、変更日の2か月前の末日までに変更届、という2段階の期限を設けている例があります。提出書類は、変更届出書、勤務形態一覧表、従たる事業所の平面図・写真(外観)、設備の概要、運営規程などです。
まとめ
多機能型事業所・従たる事業所・出張所は、いずれも「1つの指定の中で複数の場所や事業を扱う」仕組みですが、多機能型は別サービスの追加、従たる事業所は同一サービスの別拠点、出張所は販売・待機などの付属施設、と役割が分かれます。
共通する要点は、①移動時間が概ね30分以内であること、②運営を一体的に行うこと、③訓練・作業室など利用者が直接使う設備は専用で確保すること、の3点です。
事業拡大を検討する段階で、どの形態を選ぶかによって必要な物件の広さも人員も変わります。物件を契約する前に、形態を決めて事前協議に臨んでください。なお、事前協議の時期や運用は指定権者によって異なりますので、申請先の最新の手引きを確認してください。
多機能型・従たる事業所の設計から指定申請まで
障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、多機能型・従たる事業所の設計から、事前協議・指定申請までを一貫して支援します。開業支援は20万円〜、物件の検討段階から承っています。
静岡・神奈川・愛知を中心に、オンラインで全国に対応しています。判断に迷う点こそ、早めにご相談ください。
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主な参考資料
- 参考:厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」/指定権者が公表する障害福祉サービス等指定申請の手引き
※本記事は令和8年8月時点の法令・告示・通知等に基づく一般的な整理です。指定権者の条例・手引き・個別運用、最新の報酬告示・Q&Aを必ず確認してください。

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。
これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。
