放課後等デイサービスとこども性暴力防止法|監督等指針で確認されること

放課後等デイサービスがこども性暴力防止法の監督等指針で確認される内容

こども性暴力防止法は、令和8年12月25日に施行されます。放課後等デイサービスは、犯罪事実確認などが義務になる事業者として、こども家庭庁と自治体の両方から監督を受けます。令和8年10月1日には、こども家庭庁が監督の進め方と確認する観点をまとめた「監督等指針」を示しました。

  • 犯罪事実確認と情報管理はこども家庭庁が、犯罪事実確認とその他の安全確保措置は自治体が監督する
  • こども家庭庁は、毎年の定期報告をもとに、報告徴収・立入検査・指導を行う
  • 確認されるのは、対象職員の特定、確認の期限、いとま特例、情報管理規程、帳簿など
  • 犯罪事実確認を怠ると事業者名が公表され、報告徴収や立入検査を拒むと罰則の対象になる

はじめに

令和6年6月に成立したこども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)が、令和8年12月25日に施行されます。こどもと接する職員に特定の性犯罪の前科がないかを確認する「犯罪事実確認」や、確認した記録を適切に扱う「情報管理措置」などが、事業者の義務になります。

令和8年10月1日には、こども家庭庁が事業者をどう監督するかを定めた「監督等指針」が通知されました。あわせて、障害児通所支援の指導監査の通知(指定障害児通所支援事業者等の指導監査について)も改正されています。放課後等デイサービスは、こども家庭庁の監督と、自治体の運営指導・監査の両方で、この法律への対応を確認されることになります。

この記事では、監督等指針の内容を、放課後等デイサービスの事業者が押さえておきたい点に絞って整理します。

1. 放課後等デイサービスを監督するのは誰か

放課後等デイサービスのような児童福祉法の事業者は、法律上「犯罪事実確認実施者等」と呼ばれる義務事業者にあたり、求められる措置ごとに監督する役所が分かれています。

措置こども家庭庁所轄庁(自治体)
犯罪事実確認こども性暴力防止法に基づいて監督する児童福祉法などの業法に基づいて監督する
その他の安全確保措置監督の対象外(必要に応じて指導は行う)業法に基づいて監督する
情報管理措置こども性暴力防止法に基づいて監督する必要に応じて業法に基づく処分を行う

放課後等デイサービスの所轄庁は、指定を受けた自治体です。自治体は業法に基づいて、定期報告の受理、指導・助言、報告徴収・立入検査、命令・処分を行います。

法律の施行にあわせて児童福祉法なども改正され、事業者がこども性暴力防止法に違反した場合に、自治体が業法に基づいて行政処分を行えるようになりました。事業の運営基準にも、こども性暴力防止法に基づく措置を講じなければならない旨が定められます。

こども家庭庁と自治体は、定期報告の内容、立入検査の実施状況、違反の状況、指導や命令の状況などを共有します。必要に応じて、両者が協同で立入検査を行うこともあります。

あわせて読みたい運営指導 完全ガイド|確認される範囲と当日までの準備の全体像

2. こども家庭庁による監督の流れ

こども家庭庁の監督は、毎年の定期報告を起点に進みます。報告の中身に問題がありそうな場合や、通報があった場合などに、報告徴収や立入検査に進む流れです。

図解1こども家庭庁による監督の流れ
定期報告毎年5月末まで
→
報告の確認提出の有無・不備・中身
→
報告徴収・立入検査必要と認める場合
→
指導・命令・公表内容に応じて
このほか、犯罪事実確認記録の漏えいなどが起きたときの報告をきっかけに、報告徴収や立入検査が行われることもあります。

定期報告

義務事業者は、毎年4月30日時点の状況を、5月末までにこども家庭庁へ報告します。こども家庭庁は、期限までに報告があったか、報告事項に不備がないか、措置がきちんと講じられているかを確認します。報告がない場合や不備がある場合は、速やかに報告し直すよう求められます。

報告徴収

こども家庭庁は、定期報告の内容をもとに年間の実施計画を立て、必要と認めた事業者に対して、犯罪事実確認の実施状況や記録の管理状況について、文書で期限を決めて報告や資料の提出を求めます。期限までに応じない場合などは、罰則の対象になります。

立入検査

立入検査は、原則として事業所ごとに行われます。こども家庭庁の職員2名以上で行い、職員は身分証明書を携帯しています。

  • 原則として、対象の事業所、実施日、担当職員の氏名などが事前に通知されます。ただし、検査の目的に照らして事前の通知が適当でない場合は、通知なしで行われます
  • 事業の概要や事業所の図面など、必要な資料の事前提出を求められることがあります
  • オンライン会議システムを使って行われる場合もあります
  • 必要に応じて、利用者などから任意で話を聴くことがあります
  • 立入検査を拒んだ場合などは、罰則の対象になります

漏えいなどが起きたとき

犯罪事実確認の記録が漏えいするなどの重大な事態が起きた場合、事業者は直ちにこども家庭庁へ報告(速報)し、その後、決められた期限までに詳しい報告(確報)を行います。こども家庭庁は報告をもとに、被害の拡大防止、原因の究明、本人への通知などについて指導します。確報が期限までにない場合は、状況の確認や報告徴収・立入検査が行われます。

指導

報告や検査の結果、改善が必要と判断されると、助言や指導が行われます。行政指導を行う場合は、原則として文書で、指導の趣旨、求める措置とその方法、指導の責任者が示されます。事業者は期限までに改善状況を報告し、重要な事項は再度の報告徴収や立入検査で確認されます。

3. 監督で確認されること

監督等指針には、義務事業者について確認する観点が一覧で示されています。こども家庭庁が確認するのは、犯罪事実確認と情報管理措置に関する次の項目です。

項目確認されること
対象職員の特定法律上「教員等」にあたる職員を、ガイドラインの分類と、支配性・継続性・閉鎖性の3要件に基づいて正しく特定しているか
確認の期限職員の区分ごとに、決められた期限までに犯罪事実確認を行っているか
いとま特例特例の要件を満たしているか、期限内に確認し、確認までの間の措置を取っているか
情報管理管理責任者を置き、情報管理規程を守り、期限までに記録を廃棄・消去しているか
規程の提出・届出情報管理規程を提出し、変更するときは事前に届け出ているか
目的外利用の禁止確認記録を、決められた場合以外に使ったり、第三者に渡したりしていないか
漏えい時の対応重大な漏えいなどがあったときに、こども家庭庁へ報告し、本人に通知しているか
帳簿決められた事項を記載した帳簿を毎年度作成し、保存しているか

犯罪事実確認の期限

犯罪事実確認を行う期限は、職員の区分によって違います。

職員の区分確認の期限
新しく採用する職員教員等としての本来の業務に就かせるまで
施行時にすでに働いている職員2029年12月24日まで
確認済みの職員確認日の翌日から5年を経過する日の属する年度の初日から末日まで

施行時にすでに働いている職員のうち、2029年12月24日までに教員等としての業務に就かなくなった人は、確認の対象から外れます。

いとま特例

急な欠員などのやむを得ない事情で、業務に就かせるまでに確認する時間がなく、すぐに業務に就かせないと事業の運営に著しい支障が出る場合は、業務に就いた日から3か月以内(大規模な災害などの場合は6か月以内)に確認すればよいとされています。これを「いとま特例」といいます。

ただし、確認が終わるまでの間は、原則としてこどもと一対一にさせないなどの措置が必要です。また、やむを得ない事情に当たることを証明する書類を保存しておかなければなりません。監督では、この3点がそろっているかが確認されます。

情報管理と記録の廃棄

犯罪事実確認の記録を適切に管理するため、管理責任者を置き、情報管理規程を定めて守る必要があります。情報管理規程には、基本的事項と、組織的・人的・物理的・技術的な情報管理措置を定めます。規程は、初めて犯罪事実確認書の交付を申請する前に、原則として「こまもろうシステム」を通じてこども家庭庁へ提出し、変更するときは事前に届け出ます(中身が実質的に変わらない変更などは届出不要)。

記録は、次の期限までに廃棄・消去しなければなりません。

場合廃棄・消去の期限
確認から5年たったとき確認日から5年を経過した日の属する年度の末日から30日以内
職員が離職したとき離職日から30日以内
採用しなかったとき従事予定日(交付日が遅い場合は交付日)から30日以内
義務事業者でなくなったとき該当しなくなった日から30日以内

帳簿の作成と保存

決められた事項を記載した帳簿を、定期報告の基準日(4月30日)時点の状況で毎年度作成し、作成した日の翌日から5年を経過する日の属する年度の末日まで保存します。

なお、その他の安全確保措置は、こども家庭庁の監督の対象ではなく、自治体が業法に基づいて確認します。

4. 違反があった場合の公表と是正命令

犯罪事実確認を怠った場合は公表

犯罪事実確認を行う義務に違反していると認められると、こども家庭庁のウェブサイトで事業者名などが公表されます。公表されるのは、名称、代表者の氏名、所在地、違反があった事業所の名称と所在地、違反した規定、違反の内容、違反に関係する職員の数などです。違反が是正されたことが確認されると、公表は終了します。

情報管理の義務違反は是正命令

犯罪事実確認の記録を適切に管理する義務に違反していると認められると、是正命令の対象になります。原則として、次の流れで進みます。

図解2是正命令までの流れ
行政指導自主的な是正を促す
→
実施状況の確認報告徴収や立入検査
→
弁明の機会命令の前に意見を述べる
→
是正命令文書で発出
こども家庭庁が必要と認める場合は、行政指導を経ずに弁明の機会の付与へ進むことがあります。緊急の場合は、弁明の機会が省かれることもあります。

是正命令を受けると、是正が認められるまで犯罪事実確認書の交付を受けられなくなります。新しく採用する職員の確認にも影響するため、命令に至る前に対応しておくことが大切です。

罰則と自治体による処分

こども家庭庁の報告徴収に応じない場合や、立入検査を拒んだ場合などは、罰則の対象になります。また、自治体は業法に基づいて行政処分を行うことができます。こども家庭庁は、監督の結果の概況を原則として毎年度1回公表します。

5. 施行までに確認しておきたいこと

監督等指針で確認される観点から逆算すると、放課後等デイサービスでは次の点を施行までに整理しておく必要があります。

  • 教員等にあたる職員の洗い出し(ガイドラインの分類と3要件で判断)
  • 施行時にいる職員の確認スケジュール(2029年12月24日まで)
  • 新しく採用する職員を業務に就かせる前に確認する流れと、間に合わない場合のいとま特例の書類
  • 管理責任者の選任と、情報管理規程の作成・提出
  • 帳簿の様式と保存の方法
  • 毎年5月末の定期報告の担当者
あわせて読みたい運営指導はどう変わったか|令和8年6月の指導指針改正と確認項目・確認文書

よくある質問

Q
放課後等デイサービスは、こども家庭庁と自治体のどちらの監督を受けますか?
A

両方です。犯罪事実確認と情報管理措置はこども家庭庁が、犯罪事実確認とその他の安全確保措置は自治体が、それぞれ監督します。両者は定期報告の内容や立入検査の状況などを共有し、協同で立入検査を行うこともあります。

Q
こども家庭庁の立入検査は、事前に知らされますか?
A

原則として、対象の事業所、実施日、担当職員の氏名などが事前に通知されます。ただし、検査の目的に照らして事前の通知が適当でない場合は、通知なしで行われます。

Q
定期報告はいつ行いますか?
A

毎年4月30日時点の状況を、5月末までにこども家庭庁へ報告します。帳簿も、この基準日時点の状況で毎年度作成します。

Q
今いる職員の犯罪事実確認は、いつまでに行えばよいですか?
A

施行時にすでに働いている職員は、2029年12月24日までに確認します。それまでに教員等としての業務に就かなくなった人は、確認の対象から外れます。

Q
報告徴収や立入検査に応じないと、どうなりますか?
A

罰則の対象になります。また、犯罪事実確認を行う義務に違反していると認められた場合は、こども家庭庁のウェブサイトで事業者名などが公表されます。

まとめ

こども性暴力防止法の施行後、放課後等デイサービスは、こども家庭庁と自治体の両方から監督を受けます。こども家庭庁は毎年の定期報告をもとに、必要に応じて報告徴収や立入検査を行い、対象職員の特定、確認の期限、いとま特例、情報管理規程、帳簿などを確認します。

犯罪事実確認を怠ると事業者名が公表され、情報管理の義務に違反すると是正命令の対象になります。施行の令和8年12月25日までに、対象職員の洗い出しと確認のスケジュール、情報管理規程と帳簿の準備を進めておいてください。

放課後等デイサービスの運営指導への備えについて

障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。

運営指導で確認される書類や体制の点検、こども性暴力防止法の施行に向けた社内の準備の進め方などのご相談に対応しています。

詳しくは運営指導対応のページをご覧ください。

無料相談はこちら

関連記事

主な参考資料

  • こども家庭庁「こども性暴力防止法に係る監督等指針の策定について(通知)」(令和8年10月1日 こ支性第121号)、別添1「こども性暴力防止法における犯罪事実確認実施者等に係る監督等の指針」、別添2「こども性暴力防止法における認定事業者等に係る監督等の指針」 (出典)

※本記事は令和8年10月6日時点の情報に基づいています。

執筆者 永野将太(行政書士・社会保険労務士)
執筆者WRITER
永野 将太
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズ 代表

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。

これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。