就労移行支援とは?|対象者・サービス内容・指定基準と指定申請の注意点

就労移行支援とは?対象者・サービス内容・指定基準・指定申請の注意点をわかりやすく解説

就労移行支援は、一般企業等への就職と職場定着を支援する障害福祉サービスです。主な対象は、一般企業等への就職を希望する65歳未満の方で、65歳以上の方には別の取扱いが定められています。新たに利用する方については、本人の希望に応じて就労選択支援を利用する流れとの関係も整理しておく必要があります。

  • 対象は一般企業等への就職を希望する65歳未満の方が中心
  • 65歳以上は、65歳に達する前5年間の利用実績などで判断する
  • 就労継続支援A型・B型や就労選択支援との違いを踏まえて選ぶ

この記事で分かること

就労移行支援の制度概要、対象者と利用期間、サービス内容、就労継続支援A型・B型や就労選択支援との違い、指定を受けられる法人・定員・人員・設備基準、基本報酬、主な加算・減算、指定申請・開設時の注意点までをまとめています。

はじめに|就労移行支援は「事業所内で訓練を続ける制度」ではありません

就労移行支援は、一般企業等への就職を希望する障害のある方に対して、就労に必要な知識・能力の向上、職場体験、求職活動、職場開拓、就職後の職場定着などを支援する障害福祉サービスです。

制度の理解で特に重要なのは、事業所内でパソコン訓練や軽作業を続けること自体が目的ではないという点です。利用者本人の希望や適性に合った一般就労へつなげ、就職後も安定して働き続けられるよう、企業実習から定着支援まで一貫して支援することが、制度の中心にあります。

重要ポイント

就労移行支援は、事業所内での訓練だけを提供するサービスではありません。企業実習・求人応募・職場開拓・就職後6か月以上の定着支援まで実施できる体制を整えることが、指定申請でも運営でも求められます。

この記事の要点

    • 就労移行支援は、一般企業等への就職と職場定着を支援する障害福祉サービスで、標準利用期間は原則2年間(個別審査により最長3年間)です。
    • 対象は、一般企業等への就職を希望する原則65歳未満の障害のある方で、利用には市区町村による支給決定が必要です。
    • 利用者と事業所の間で雇用契約を結ぶことは通常ありませんが、生産活動で収益が生じる場合には工賃を支払うことがあります。
    • 利用定員は原則10人以上です(令和6年4月の改定で20人以上から引き下げ)。多機能型では就労移行支援として6人以上とできます。
    • 基本報酬は、利用定員と就職後6か月以上の定着実績(定着率)に応じて区分されます。
    • 指定を受けるには、法人格・定款、利用定員・人員配置・設備の基準を満たし、企業実習や就職後の定着支援まで実施できる事業計画が必要です。

1. 就労移行支援とは(制度の概要)

就労移行支援とは、就労を希望し、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる障害のある方に対して、就労に必要な知識・能力の向上、職場体験、求職活動、職場開拓、就職後の職場定着などを支援するサービスです。まずは制度の全体像を確認します。

項目概要
主な目的一般企業等への就職と職場定着
雇用契約原則なし(生産活動で収益が生じる場合は工賃を支払うことがある)
標準利用期間原則2年間(個別審査により最長3年間)
利用定員原則10人以上(多機能型は就労移行支援6人以上)
主な人員管理者、サービス管理責任者、職業指導員、生活支援員、就労支援員
基本報酬利用定員と就職後6か月以上の定着実績により区分

就労移行支援の目的は、事業所内で訓練を継続することではなく、利用者を本人の希望や適性に合った一般就労へつなげることです。パソコン訓練や軽作業などは、そのための手段の一つであり、利用者ごとに就職目標を設定し、企業実習、求人応募、面接、職場との調整、就職後の支援まで一貫して行う必要があります。

「事業所内訓練だけ」では不十分です

就労移行支援では、一般就労への出口を具体的に設計する必要があります。訓練メニューだけでなく、企業実習、求人応募、職場開拓、就職後の支援まで実施できる体制が重要です。

2. 就労移行支援の対象者

就労移行支援の主な対象者は、一般企業等への就職を希望する65歳未満の障害のある方で、支援を受けることにより通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる方です。具体的には、次のような方が想定されます。

  • 就職に向けて、生活リズムや体調管理を整える必要がある方
  • 就労経験がなく、職業準備や企業実習が必要な方
  • 離職後の再就職に向けて、応募・面接等の支援が必要な方
  • 特別支援学校等を卒業後、一般就労を目指す方
  • 一定の要件の下で、労働時間の延長や休職からの復職に向けた一時的な支援が必要な方

なお、実際の利用には、市区町村による障害福祉サービスの支給決定が必要です。

65歳以上の方の取扱い

65歳以上の方は、原則として、65歳に達する前5年間に継続して障害福祉サービスの支給決定を受け、65歳到達日の前日に就労移行支援の支給決定を受けていた場合に、引き続き対象となります。

就労選択支援との関係

現在、新たに就労移行支援を利用する方は、本人の希望に応じて就労選択支援を利用できます。就労選択支援は、本人の希望、就労能力、適性、必要な配慮などを整理し、本人がより良い働き方を選択できるよう支援するサービスです。

令和9年4月以降は、就労移行支援の標準利用期間を超えて更新する場合、原則として就労選択支援によるアセスメントを受けた方を対象とする予定です。ただし、具体的な取扱いは国から改めて示される予定のため、施行前に最新通知を確認する必要があります。

図解2対象者と利用期間

対象者

  • 一般企業等への就職を希望する65歳未満の障害のある方
  • 支援を受けることにより通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる方
  • 利用には市区町村による支給決定が必要

65歳以上の取扱い

  • 原則として、65歳に達する前5年間に継続して障害福祉サービスの支給決定を受け、65歳到達日の前日に就労移行支援の支給決定を受けていた場合に引き続き対象

利用期間

  • 標準利用期間は原則2年間
  • 個別に審査し必要性が認められた場合は最長3年間
  • 「まだ就職していない」という理由だけで当然に延長されるものではない
令和9年4月以降、標準利用期間を超えて更新する場合は原則として就労選択支援によるアセスメントを受けた方が対象となる予定
※具体的な取扱いは国から改めて示される予定のため、施行前に最新通知を確認してください。

3. 就労移行支援の利用期間

就労移行支援の標準利用期間は原則2年間です。ただし、利用者の状況を個別に審査し、引き続き利用する必要性が認められた場合は、最長3年間の支給決定が可能です。

利用期間の延長は自動ではありません

延長の必要性、これまでの支援経過、就職の可能性、延長後の具体的な支援計画などを市区町村が個別に判断します。単に「まだ就職していない」という理由だけで当然に延長されるものではありません。

4. 就労移行支援のサービス内容

就労移行支援では、事業所内の訓練だけでなく、就職とその後の定着まで見据えた一連の支援を行います。主なサービス内容は次のとおりです。

  • 就職目標と支援計画の作成:本人の希望職種、これまでの経験、障害特性、得意なこと、課題、必要な配慮などを整理し、一般就労に向けた就労移行支援計画を作成します。
  • 職業準備・生活面の訓練:パソコン、事務、接客、清掃、軽作業、ビジネスマナー、コミュニケーション、生活リズム、健康管理など、本人の課題と希望職種に応じた支援を行います。
  • 通勤訓練:就職後に本人が自ら勤務先へ通勤できるよう、公共交通機関の利用、経路確認、時間管理、安全確認など、必要な通勤訓練を実施します。
  • 企業実習・職場体験:本人の心身の状況や希望に合った実習先を確保し、実習前の調整、実習中の状況確認、実習後の振り返りを行います。適切な受入先を複数確保できるよう開拓に努めます。
  • 求職活動・職場開拓:ハローワークへの求職登録、求人検索、履歴書・職務経歴書の作成、面接練習、面接同行、企業への働きかけなどを行います。
  • 就職後の職場定着支援:就職後も少なくとも6か月以上、本人や企業への相談、職場訪問、関係機関との調整などを行います。その後も支援が必要な場合は、就労定着支援事業所等へつなぎます。
  • 関係機関との連携:ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、相談支援事業所、医療機関、特別支援学校、企業等と連携し、就職と定着を支えます。

5. 就労継続支援A型・B型・就労移行支援・就労選択支援の違い

就労系サービスは名称が似ていますが、雇用契約の有無、利用目的、支援内容、利用期間が異なります。

項目就労継続支援A型就労継続支援B型就労移行支援就労選択支援
雇用契約ありなし原則なしなし
利用者への支払い賃金工賃原則なし※原則なし
主な目的雇用契約に基づく就労の継続生産活動・就労能力の向上一般就労への移行適性・希望等の整理と選択支援
利用期間一律の上限なし一律の上限なし原則2年間原則1か月
主な対象者雇用契約により働くことが可能な方雇用契約による就労が難しい方一般就労が見込まれる方就労先・働き方を検討する方
中心となる支援仕事の提供と職業支援生産活動と生活・就労支援訓練、実習、求職、定着作業体験、アセスメント、情報提供

※就労移行支援で生産活動を行い収益が生じる場合は、工賃を支払うことがあります。

就労移行支援が適している事業計画

  • 利用者が目指す就職先・職種が明確になっている
  • 訓練内容が、就職に必要な能力や本人の課題と結び付いている
  • 企業実習先や求人情報を継続して確保できる
  • ハローワークや障害者就業・生活支援センター等と連携できる
  • 就職後6か月以上の職場定着支援を行える

反対に、利用者へ作業の場を長期間提供することが事業の中心である場合は、就労継続支援A型・B型の方が事業目的に合う可能性があります。想定する利用者像とサービス内容を整理した上で、事業種別を選択することが重要です。

図解1就労系4サービスの違い

就労継続支援A型

  • 雇用契約:あり/支払い:賃金
  • 目的:雇用契約に基づく就労の継続
  • 利用期間:一律の上限なし

就労継続支援B型

  • 雇用契約:なし/支払い:工賃
  • 目的:生産活動・就労能力の向上
  • 利用期間:一律の上限なし

就労移行支援

  • 雇用契約:原則なし/支払い:原則なし
  • 目的:一般就労への移行
  • 利用期間:原則2年

就労選択支援

  • 雇用契約:なし/支払い:原則なし
  • 目的:適性・希望等の整理と選択支援
※本文「5. 就労継続支援A型・B型・就労移行支援・就労選択支援の違い」を図解化したものです。

6. 指定を受けるための要件

就労移行支援事業所を開設するには、都道府県、指定都市または中核市へ指定申請を行い、障害福祉サービス事業者として指定を受ける必要があります。主な要件は次のとおりです。

  • 法人格を有していること
  • 定款の事業目的が整備されていること
  • 利用定員の基準を満たしていること
  • 人員配置基準を満たしていること
  • 設備基準を満たしていること
  • 運営規程、重要事項説明書、各種指針・マニュアル等を整備していること
  • 企業実習、求職活動、職場開拓、定着支援を実施できること

「許可申請」ではなく「指定申請」です

一般に「許可」と呼ばれることもありますが、法律上の手続は障害福祉サービス事業者としての「指定申請」です。申請先や事前相談の時期、提出期限、必要書類は自治体ごとに異なります。

法人・定款の確認

株式会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人、社会福祉法人など、法人の種類は問いません。既存法人で申請する場合は、定款の目的欄に障害福祉サービスを実施できる内容が記載されているかを確認します。必要に応じて、指定申請前に定款変更や登記を行います。

利用定員

原則10人以上(令和6年4月の改定で引き下げ)

就労移行支援の利用定員は原則10人以上です。令和6年4月の報酬改定で、従来の20人以上から引き下げられました。多機能型事業所では、就労移行支援の定員を6人以上とできます。多機能型全体の定員の取扱いは別途定めがあるため、あわせて確認してください。

定員は部屋の広さだけで決めるものではありません。職員数、想定利用者、訓練内容、実習・就職支援の実施体制、避難経路などを踏まえて設定します。

最低定員の取扱いは指定権者に確認する

最低定員の取扱いは、指定権者の手引きによって記載が異なります。ある中核市の手引きでは、就労移行支援の最低定員を10人(多機能型事業所や従たる事業所として設置する場合は6人)としています。運用や様式は指定権者ごとに異なるため、開設予定地の指定権者がどのように定めているかを、事業計画の段階で必ず確認してください。

多機能型事業所・従たる事業所については、同じ手引きで次のとおり整理されています。

区分内容
多機能型事業所生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援A型・B型のうち2つ以上を一体的に行うもの。全体で20人以上、かつ事業ごとの最低定員(就労移行支援は6人以上、就労継続支援A型・B型は10人以上)を満たすこと
従たる事業所従たる事業所において事業ごとの最低定員(就労移行支援は6人以上)を満たすこと。主たる事業所との距離は概ね30分以内で移動可能な距離とし、従たる事業所に常勤・専従の従業者を1人以上確保すること(管理者およびサービス管理責任者を除く)

多機能型ではサービス管理責任者をサービスごとに置く必要はなく、全体の利用者数が60人以下であれば1人以上とされています。設備は、相談室・便所・手洗い設備・多目的室などをサービス提供に支障がない範囲で兼用できますが、訓練・作業室はサービスごとに専用で設置します。従たる事業所では、事務室・相談室は主たる事業所と兼用可、訓練・作業室、多目的室、便所・手洗い設備は専用に設置するとされています。

定員・兼務・兼用の取扱いは指定権者によって異なるため、申請先の最新の手引きを確認してください。

7. 人員配置基準

主な人員配置基準は次のとおりです。配置数の算定に用いる「利用者の数」は、原則として前年度の平均利用者数を基礎とし、新規指定時は基準に定める推定数等を用います。

職種主な配置基準・注意点
管理者事業所ごとに1名。専従が原則ですが、管理上支障がない場合は兼務可能です。経歴により一定の資格・実務経験要件を確認します。
職業指導員1名以上。職業訓練、作業指導、職場適応に向けた支援などを担当します。
生活支援員1名以上。健康管理、生活面の相談、日常生活上の課題への支援などを担当します。
職業指導員・生活支援員の合計常勤換算で利用者6人に対して1人以上。職業指導員または生活支援員のうち、いずれか1名以上を常勤で配置します。
就労支援員常勤換算で利用者15人に対して1人以上。実習先の開拓、求職活動、就職後の定着支援等を担います。
サービス管理責任者利用者60人以下は1名以上。61人以上は、60人を超えて40人またはその端数を増すごとに1名を加えます。少なくとも1名は常勤です。

就労支援員の基礎的研修

令和7年4月1日から、就労支援員は「雇用と福祉の分野横断的な基礎的知識・スキルを付与する研修」の受講が求められています。ただし、令和10年3月31日までは経過措置があり、未受講でも就労支援員の業務に従事できます。採用後の受講計画をあらかじめ作成しておくことが重要です。

兼務を検討する際の注意点

管理者やサービス管理責任者などは、一定の場合に兼務が認められます。ただし、同じ勤務時間を複数職種の常勤換算数へ重複して算入することはできません。

多機能型、同一敷地内の他サービスとの兼務、法人役員の配置などは、勤務時間、職務内容、事業所間の距離、直接支援への支障の有無を確認し、勤務形態一覧表で明確に整理します。

常勤・専従の要件と、新規指定時の利用者数の数え方

人員配置基準では、人数だけでなく「常勤」「専従」の別と、算定に用いる利用者数の数え方が重要です。ある中核市の手引きでは、次のとおり整理されています。

職種必要員数
管理者1人(業務に支障がない場合、他の職種を兼務可)
サービス管理責任者利用者数60人以下の場合1人以上(61人以上の場合、60人を超えて40人を増す、または端数が増すごとに1人を加えた数以上)。1人以上は常勤
職業指導員・生活支援員それぞれ1人以上(1人以上は常勤・専従)。合わせて常勤換算で利用者数を6で除した数以上
就労支援員1人以上、かつ常勤換算で利用者数を15で除した数以上

職業指導員・生活支援員については、いずれか1人以上を「常勤かつ専従」で配置するという整理です。常勤であっても他職種と兼務していれば専従とは扱われないため、勤務形態一覧表で常勤・専従の該当者が1人以上いることを明示できるようにしてください。

就労支援員も、常勤換算15対1を満たしていれば足りるのではなく、実人数で1人以上の配置が求められます。定員10人程度の小規模事業所では常勤換算の計算結果が1人未満になりますが、それでも1人以上の配置が必要です。

配置数の算定に用いる利用者数は前年度の平均値を使用し、新規指定の場合は推定数として「利用定員×0.9」を用いるとされています。定員20人であれば利用者数18人として計算するため、職業指導員・生活支援員は常勤換算3人以上、就労支援員は常勤換算1.2人以上が目安となります。推定数の算式は指定権者によって異なる場合があるため、申請先の最新の手引きを確認してください。

図解3人員配置基準

職業指導員・生活支援員

  • それぞれ1名以上
  • 合計で常勤換算・利用者6人に対して1人以上
  • いずれか1名以上を常勤で配置

就労支援員

  • 常勤換算・利用者15人に対して1人以上
  • 実習先の開拓、求職活動、就職後の定着支援等

管理者・サービス管理責任者

  • 管理者:事業所ごとに1名(専従が原則。支障がなければ兼務可)
  • サービス管理責任者:利用者60人以下は1名以上
令和7年4月1日から、就労支援員は基礎的研修の受講が求められる(令和10年3月31日まで経過措置)同じ勤務時間を複数職種の常勤換算数へ重複して算入することはできない
※配置数の算定に用いる「利用者の数」は原則として前年度の平均利用者数、新規指定時は推定数等を用います。
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8. 設備基準

就労移行支援事業所には、主に次の設備が必要です。

設備主な確認事項
訓練・作業室予定する訓練・作業に支障がない広さを確保し、必要な機械器具等を備えます。
相談室相談内容が外部へ漏れないよう、間仕切り等によりプライバシーを確保します。
洗面設備・トイレ利用者の特性や定員に応じ、安全かつ衛生的に利用できる設備を整えます。
多目的室等サービス提供に必要な用途を踏まえて設けます。支援に支障がなければ、相談室等との兼用が認められる場合があります。
事務・保管設備事務作業を行う区画と、個人情報・支援記録を施錠して保管できる設備を確保します。

指定基準以外の関係法令

  • 建築基準法(建物用途、用途変更、避難経路等)
  • 消防法(消防用設備、収容人員、防火管理等)
  • 都市計画法・用途地域
  • バリアフリー関係法令・自治体条例
  • 食品衛生法など、訓練・生産活動の内容に関係する法令
物件契約の前に確認してください

指定権者、建築担当部署、消防署へ確認する前に賃貸借契約や内装工事を進めると、用途変更、追加工事、定員変更、開設延期が必要になることがあります。物件資料と平面図を準備し、契約前に事前確認することが重要です。

面積要件が具体的に示されている例

設備基準の「必要な広さ」は、指定権者が手引きで具体的な数値を示している場合があります。ある中核市の手引きでは、就労移行支援の設備基準は生活介護と同じ内容とされ、次のとおり整理されています。

設備内容
訓練・作業室利用者1人あたり2平方メートル以上を確保する。複数種類の活動を行う場合は、活動の種類ごとに区分する
事務室事業の運営に必要な面積を有する専用の区画を設ける(間仕切りするなど他の事業と明確に区分する場合は、同一の事務室でも可)
相談室利用者・相談員を含め4人程度が使用することを想定し、4平方メートル以上を確保する
手洗い設備便所内の手洗いとは別に設置する
便所利用者の特性に応じたものを設置する
多目的室利用者1人あたり2平方メートル以上を確保する。支援に支障がない場合は相談室と兼用可(ただし相談室と兼用する部分を除き、1人あたり2平方メートル以上を確保する)

面積の数値は全国一律の基準ではなく、指定権者の手引きで示される運用です。定員20人であれば訓練・作業室だけで40平方メートル以上、これに相談室・多目的室・事務室・便所・手洗いが加わります。物件の内見時に、この積み上げで必要面積を試算しておくと判断を誤りません。

多目的室と相談室を兼用する場合、兼用部分を差し引いてなお1人あたりの面積を満たす必要があるとされている点にも注意してください。また、便所内の手洗いとは別に手洗い設備を求める取扱いは、既存の事務所物件では追加工事になりやすい項目です。数値と兼用の可否は指定権者によって異なるため、申請先の最新の手引きを確認してください。

図解5定員と設備

利用定員

  • 原則10人以上(令和6年4月の改定で20人以上から引き下げ)
  • 多機能型は就労移行支援の定員が6人以上(多機能型全体の定員の取扱いは別途定めあり)
  • 最低定員の取扱いは指定権者の手引きによって記載が異なるため、申請先で確認する

設備(面積要件の例)

  • 訓練・作業室:利用者1人あたり2平方メートル以上
  • 相談室:4人程度が使用することを想定し4平方メートル以上
  • 事務室:運営に必要な面積の専用区画
  • 手洗い設備:便所内の手洗いとは別に設置
  • 個人情報・支援記録を施錠して保管できる設備
定員は部屋の広さだけで決めない(職員数、訓練内容、実習・就職支援の体制、避難経路も踏まえる)行政確認前に賃貸借契約や内装工事を進めない
※ある中核市の手引きの例です。開設予定地の指定権者がどのように定めているかを事業計画の段階で必ず確認してください。
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9. 基本報酬

就労移行支援の基本報酬は、利用定員と、就職後6か月以上の定着実績に応じて区分されます。就職者数だけでなく、就職後も継続して働けるよう支援した実績が報酬に反映される仕組みです。次の表は、就労移行支援サービス費(Ⅰ)・定員20人以下の場合の例です。

就職後6か月以上の定着率基本報酬
50%以上1,210単位/日
40%以上50%未満1,020単位/日
30%以上40%未満879単位/日
20%以上30%未満719単位/日
10%以上20%未満569単位/日
0%超10%未満519単位/日
0%479単位/日

※令和8年度の障害福祉サービス費等の報酬算定構造に基づく、利用者1人・1日当たりの単位数です。地方公共団体が設置する事業所、障害者支援施設で行う場合、養成施設等には別の取扱いがあります。

基本報酬区分の考え方

基本報酬区分は、原則として前年度および前々年度の就職後6か月以上の定着実績を基に判定します。定着率を高めるために利用者を選別し、正当な理由なく利用申込みを拒否することは認められません。

新規指定、年度途中の開設、休止・再開など、十分な実績期間がない場合には別途算定上の取扱いがあります。開設時期と指定権者の届出様式を確認し、適用する報酬区分を判断する必要があります。

実際の報酬額

国保連請求額は、基本報酬に各種加算・減算を反映し、地域区分ごとの1単位単価を乗じて計算します。利用者負担額や自治体独自加算等がある場合は、さらに個別の確認が必要です。

図解4基本報酬は定着率で決まる(サービス費(Ⅰ)・定員20人以下の例)
50%以上
1,210単位/日
40%以上50%未満
1,020単位/日
30%以上40%未満
879単位/日
20%以上30%未満
719単位/日
10%以上20%未満
569単位/日
0%超10%未満
519単位/日
0%
479単位/日
就職後6か月以上の定着実績が報酬に反映される原則として前年度および前々年度の実績を基に判定定着率を高めるために利用者を選別し、正当な理由なく利用申込みを拒否することは認められない
※令和8年度の報酬算定構造に基づく、利用者1人・1日当たりの単位数です。地方公共団体が設置する事業所等には別の取扱いがあります。

10. 運営基準で特に留意すべき事項

就労移行支援でも生産活動を行う場合、生活介護と同じ運営基準が適用されます。運営指導で指摘されやすい項目です。

区分内容
生産活動生産活動を行う利用者の利用時間、作業量などが過重な負担とならないよう配慮する。生産活動の能率の向上が図られるよう、利用者の障害の特性などを踏まえた工夫を行う
工賃の支払生産活動に係る事業の収入から、生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払う
会計の区分事業所ごとに経理を区分するとともに、障害福祉サービス事業の会計をその他の事業の会計と区分する
利用定員の遵守利用定員を超えた受入れはしない
利用者負担の範囲食事の提供に要する費用(食材料費および料理などに係る費用に相当する額)、日用品費などは、あらかじめ利用者にサービスの内容・費用を説明し、同意を得たうえで実費相当額を徴収する。金銭を受け取った後は領収書を交付する。定期的に精算し、余剰金が生じた場合は他の費目に充てるのではなく、利用者に返金する

就労移行支援は工賃の支払が必須ではありませんが、生産活動を行って収益が生じる場合は、収入から必要経費を控除した額を工賃として支払うことになります。「訓練だから工賃は支払わない」という整理は、生産活動の実態がある場合には認められません。

実費徴収については、定期的な精算と余剰金の返金まで求められます。昼食代を1食あたり定額で徴収したまま精算していない、という運用は認められません。

11. 主な加算・減算

就労移行支援には、職員体制や支援内容を評価する各種加算があります。次は代表例であり、すべての加算を網羅したものではありません。

主な加算概要
福祉専門職員配置等加算社会福祉士等の有資格者割合や常勤職員・勤続年数等の体制を評価します。
就労支援関係研修修了加算所定の就労支援関係研修を修了した就労支援員等の配置を評価します。
初期加算利用開始後の初期支援を評価します。
移行準備支援体制加算施設外支援等を通じた一般就労への移行準備を評価します。
通勤訓練加算所定の要件を満たす通勤訓練を実施した場合に算定します。
地域連携会議実施加算関係機関との会議により支援方針等を調整した場合に算定します。
送迎加算一定の要件を満たす送迎を行った場合に算定します。
福祉・介護職員等処遇改善加算賃金改善、キャリアパス、職場環境改善等の要件を満たす場合に算定します。

主な減算・算定制限

  • 利用定員を超えて利用者を受け入れた場合
  • 職業指導員・生活支援員・就労支援員の配置が不足した場合
  • サービス管理責任者が不足した場合
  • 就労移行支援計画が作成されていない場合
  • 標準利用期間を超える利用者の割合が基準に該当する場合
  • 身体拘束廃止、虐待防止、業務継続計画等の必要な取組が未実施の場合
  • 障害福祉サービス等情報公表制度への報告が未実施の場合
加算は「支援を行った」だけでは算定できません

加算ごとに、人員配置、支援内容、実施回数、対象者、計画への位置付け、記録、届出時期などの要件があります。算定前に要件を確認し、支援記録と国保連請求の内容を一致させる必要があります。

12. 指定申請・開設時の注意点

就労移行支援の指定申請では、単に設備や人員を整えるだけでなく、就職と定着まで実施できる具体的な体制が必要です。開設前に、次の点を整理しておくとよいでしょう。

  • 一般就労につながる事業計画を作る:「パソコン訓練」「軽作業」などのメニューだけでなく、誰を対象に、どの職種への就職を目指し、どの企業で実習を行い、どのように求人を開拓するかを具体化します。
  • 実習先・企業ネットワークを準備する:開設後に一から探し始めるのではなく、実習受入先、求人開拓先、ハローワーク、障害者就業・生活支援センター等との連携を事前に準備します。
  • 職員の経歴・研修要件を早めに確認する:管理者、サービス管理責任者、就労支援員等の経歴、研修修了証、実務経験証明書を確認します。特に就労支援員は、基礎的研修の受講計画も整理します。
  • 物件契約前に法令適合を確認する:指定基準だけでなく、建築、消防、用途地域、バリアフリー等を確認します。物件資料、平面図、検査済証等を準備し、関係部署へ事前相談します。
  • 支援計画と記録様式を開設前に整備する:個別支援計画、日々の支援記録、実習記録、求職活動記録、企業との連絡記録、就職後の定着支援記録などを整備し、実際の支援と請求を一致させます。
  • 利用者を選別しない:定着率が基本報酬に影響しても、就職しやすい方だけを選び、正当な理由なく利用申込みを拒否する運用は認められません。
  • 自治体独自の手順を確認する:事前相談の回数、申請期限、現地確認、建築・消防資料、収支計画、雇用契約書類等の確認方法は自治体ごとに異なります。国基準だけで判断せず、指定権者の最新様式と手引きを確認します。
図解6準備に時間がかかる提出書類

外部に依頼するもの

  • 協力医療機関に関する協定書(協定先の確保と押印に時間がかかる)
  • 管理者の実務経験証明書(前職の法人に発行を依頼)
  • 消防用設備等検査済証の写し(消防設備工事の完了時期に左右される)

法人内で揃えるもの

  • 平均利用者数算定シート(勤務形態一覧表の添付書類)
  • 誓約書、暴力団員等の排除に関する誓約・照会に対する同意書、役員等名簿(役員全員分)
  • 事業開始届(指定申請とは別の届出)
  • 設備の概要(平面図とあわせて提出)
平面図には写真の番号と矢印を記載し、撮影位置と撮影方向を示すよう求められることがある撮影のやり直しを避けるため、撮影前に指定権者へ確認
※様式番号は指定権者ごとに異なります。

13. 就労移行支援事業所の開設までの流れ

開設希望日から逆算してください

指定申請の締切は、指定希望日の1〜3か月以上前に設定されることが多く、事前相談や補正期間を含めると、物件選定から開設まで数か月を要します。職員採用や工事を含め、余裕のあるスケジュールが必要です。

  • 事業計画の作成:利用者像、就職目標、訓練内容、企業実習、職場開拓、人員体制、収支計画を整理します。
  • 指定権者への事前相談:開設予定地、定員、平面図、事業内容、人員配置、開設スケジュールを相談します。
  • 物件・関係法令の確認:建築担当部署、消防署等へ確認し、必要な工事や手続を整理してから契約・工事を進めます。
  • 職員の採用・要件確認:管理者、サービス管理責任者、職業指導員、生活支援員、就労支援員を確保し、資格・研修・実務経験を確認します。
  • 指定申請書類の作成・提出:申請書、運営規程、勤務形態一覧表、平面図、事業計画書、収支予算書、各種マニュアル等を作成します。
  • 審査・現地確認・補正:指定権者の審査や現地確認に対応し、指摘事項がある場合は期限内に補正します。
  • 指定・サービス提供開始:契約書類、個別支援計画様式、記録、請求ソフト、加算届等を整備し、サービス提供を開始します。

提出書類で見落としやすいもの

申請書・付表・運営規程・勤務形態一覧表以外にも、準備に時間がかかる書類があります。ある中核市の手引きでは、次の書類が挙げられています(様式番号は指定権者ごとに異なる)。

書類実務上の注意
協力医療機関に関する協定書協定先の確保と押印に時間がかかる。早めに着手する
管理者の実務経験証明書前職の法人に発行を依頼するため、日数を見込む
平均利用者数算定シート勤務形態一覧表の添付書類として求められる
誓約書、暴力団員等の排除に関する誓約および照会に対する同意書、役員等名簿役員全員分の情報が必要になる
事業開始届指定申請とは別の届出として提出を求められる
消防用設備等検査済証の写し必要な場合に添付する。消防設備工事の完了時期に左右される
設備の概要平面図とあわせて提出する

平面図には、写真に対する番号と矢印を記載し、撮影位置と撮影方向を示すよう求められることがあります。日中活動系サービスでは外観の写真のみでよいとされる例もありますが、内観の写真まで求める指定権者もあります。撮影のやり直しを避けるため、撮影前に指定権者へ確認してください。

あわせて読みたい障害福祉サービスの指定申請とは?開業までの流れ

よくある質問

Q
就労移行支援の利用期間はどのくらいですか。
A

標準利用期間は原則2年間です。利用者の状況を個別に審査し、引き続き利用する必要性が認められた場合は最長3年間の支給決定が可能です。延長は自動ではなく、延長の必要性や支援経過、就職の可能性、延長後の支援計画などを市区町村が個別に判断します。

Q
対象となるのはどのような方ですか。
A

一般企業等への就職を希望する原則65歳未満の障害のある方で、利用には市区町村による支給決定が必要です。65歳以上の方は、原則として65歳に達する前5年間に継続して障害福祉サービスの支給決定を受け、65歳到達日の前日に就労移行支援の支給決定を受けていた場合に引き続き対象となります。

Q
利用者と雇用契約を結びますか。
A

通常は結びません。就労移行支援は一般企業等への就職と職場定着を支援するサービスで、事業所内での訓練だけでなく、企業実習・求人応募・職場開拓・就職後6か月以上の定着支援まで実施できる体制が必要です。

Q
利用定員は何人からですか。
A

原則10人以上です。令和6年4月の改定で、従来の20人以上から引き下げられました。多機能型事業所では、就労移行支援の定員を6人以上とできます。多機能型全体の定員の取扱いは別途定めがあるため、あわせて確認してください。

Q
人員配置基準はどうなっていますか。
A

管理者を事業所ごとに1名、職業指導員と生活支援員をそれぞれ1名以上配置し、両者の合計を常勤換算で利用者6人に対して1人以上とします。いずれか1名以上は常勤です。就労支援員は常勤換算で利用者15人に対して1人以上、サービス管理責任者は利用者60人以下で1名以上(61人以上は60人を超えて40人またはその端数を増すごとに1名追加)で、少なくとも1名は常勤です。

Q
就労支援員に研修の受講は必要ですか。
A

令和7年4月1日から、就労支援員には雇用と福祉の分野横断的な基礎的知識・スキルを付与する研修の受講が求められています。

Q
基本報酬はどのように決まりますか。
A

原則として前年度および前々年度の就職後6か月以上の定着実績を基に区分を判定します。定着率を高めるために利用者を選別し、正当な理由なく利用申込みを拒否することは認められません。新規指定や年度途中の開設など十分な実績期間がない場合は別途の取扱いがあるため、指定権者に確認してください。

Q
就労選択支援とはどのような関係にありますか。
A

新たに就労移行支援を利用する方は、本人の希望に応じて就労選択支援を利用できます。令和9年4月以降は、就労移行支援の標準利用期間を超えて更新する場合、原則として就労選択支援によるアセスメントを受けた方を対象とする予定とされています。

まとめ

就労移行支援は、障害のある方を一般就労へつなげ、就職後も安定して働き続けられるよう支援するサービスです。

指定申請では、法人・人員・設備・運営基準を満たすだけでなく、企業実習、求人開拓、求職活動、就職後6か月以上の定着支援を実施できる具体的な仕組みが必要です。開設前から企業や関係機関との連携体制を構築し、就職・定着までを見据えた事業計画を作成することが重要です。

当法人での対応例

障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、指定申請と労務管理の両面を、ひとつの窓口でご相談いただけます。

就労移行支援の指定要件・人員配置・設備の確認や、申請の進め方について、ご相談・助言を承っています。運営顧問では、実際の書類や運用を一緒に確認しながら進めます。

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関連記事

体系的に知りたい方はこちら就労選択支援 完全ガイド|対象者・指定要件・支援員・基本報酬・中立性

主な参考資料

  • 厚生労働省「障害福祉サービスの内容」
  • 厚生労働省「指定障害福祉サービスの人員、設備及び運営に関する基準について(解釈通知・令和7年3月31日改正)」
  • 厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年度)」
  • 厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業の適正な実施等について」
  • 厚生労働省「就労選択支援の円滑な実施について(令和7年9月30日)」
  • 厚生労働省「障害福祉サービス事業の設備・最低定員等に関する基準」

※本記事は令和8年7月時点の制度・資料に基づく一般的な解説です。自治体ごとの取扱い、指定申請の受付時期、必要書類等は異なる場合があります。実際の申請・加算届出・国保連請求等を行う際は、指定権者の最新の手引き・様式・個別回答をご確認ください。

執筆者 永野将太(行政書士・社会保険労務士)
執筆者WRITER
永野 将太
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズ 代表

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。

これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。