就労移行支援の開業|指定申請の要件と流れ

就労移行支援の開業|指定申請の要件と流れ

就労移行支援は、一般企業などへの就職を希望する方に、知識や能力の向上のための訓練と就職の支援を行うサービスです。標準利用期間は原則24か月で、報酬は就労定着率によって大きく変わります。指定には人員・設備・運営の各基準を満たす必要があり、管理者やサービス管理責任者には資格・実務経験の要件があります。

  • 標準利用期間は原則24か月
  • 基本報酬は就労定着率で決まる
  • サービス管理責任者の実務経験は年数と従事日数の両方で判定する

はじめに

就労移行支援の開業を考えるとき、最初に立ちはだかるのが指定申請です。就労移行支援は、一般企業への就職を目指す障害のある方を、原則2年間という期限つきで支援するサービスです。「就職につなげること」そのものが実績として報酬に跳ね返る、特徴的な設計になっています。

この記事では、就労移行支援事業所の立ち上げに必要な人員・設備・運営の基準、指定申請の流れ、開業資金の目安を整理します。あわせて、就労定着率で基本報酬が区分される仕組みと、実績のない開業初年度の考え方も解説します。

なお、就労移行支援の基本報酬|就労定着率で決まる区分と単位数では、就職後6月以上定着率による区分と全35区分の単位数を一覧表で掲載しています。収支計画を作成する際は、あわせてご確認ください。

1. 就労移行支援とは|対象者と支援内容

就労移行支援は、一般企業などへの就職を希望する障害のある方に、知識・能力の向上、職場実習、職場探し、就職後の定着支援までを一体で行うサービスです。通所が原則です。

就労継続支援A型・B型が「働く場」であるのに対し、就労移行支援は「就職までの助走期間」を支えます。対象は次の方です。

  • 一般就労等を希望し、実習や職場探しを通じて適性に合った職場への就労が見込まれる方
  • 企業に雇用されているが、就労に必要な知識・能力向上の支援が一時的に必要な方
  • 原則65歳未満の方(要件を満たせば65歳以上でも利用できる場合があります)

標準利用期間は原則24か月

標準利用期間は原則24か月です。期間内に就職に至らなかった場合でも、必要性が認められれば市町村審査会の審査を経て最大1年の更新ができる取扱いです。

つまり利用者が長く留まることを前提としないサービスです。新しい利用者を迎え入れ続ける導線がないと稼働率は下がります。

2. 指定基準

就労移行支援の指定基準|人員・設備・運営

指定には人員・設備・運営の各基準を満たす必要があります。表の「利用者の数」は原則として前年度の平均利用者数で計算し、新規開設時は指定権者の定める推定値を用います。

職種配置基準補足
管理者1人支障がなければ他職種と兼務可
サービス管理責任者利用者60人以下で1人以上(60人超は40人ごとに1人追加)うち1人以上は常勤。実務経験と研修修了が要件
職業指導員・生活支援員合計で常勤換算により利用者数÷6以上それぞれ1人以上、いずれか1人以上は常勤
就労支援員常勤換算により利用者数÷15以上求職活動支援や実習先開拓の中心

常勤換算の数え方は関連コラム「常勤換算とは?」をご覧ください。兼務の可否は自治体の手引きで確認します。

参考までに、新規指定の場合の推定数を利用定員×0.9としています。定員10人であれば9人を基礎とし、職業指導員・生活支援員は常勤換算1.5人以上、就労支援員は常勤換算0.6人以上という計算になります。

また、同手引きでは、職業指導員・生活支援員について「それぞれ1人以上(1人以上は常勤・専従)」、就労支援員について「1人以上、かつ常勤換算で利用者数を15で除した数以上」と整理されています。就労支援員は常勤換算の数だけでなく、実人数で1人以上の配置が必要です。

管理者の資格要件|就労移行支援は「企業経営経験」が使えません

就労移行支援の管理者には資格要件があります。就労継続支援A型・B型とは要件の範囲が異なる点に注意してください。

サービス種別資格要件
生活介護、就労選択支援、就労移行支援次のいずれかに該当する者
●社会福祉主事任用資格を有する(社会福祉士、精神保健福祉士など)
●社会福祉事業に2年以上従事した
就労継続支援A型・B型次のいずれかに該当する者
●社会福祉主事任用資格を有する(社会福祉士、精神保健福祉士など)
●社会福祉事業に2年以上従事した
●企業を経営した経験を有する

就労継続支援A型・B型では「企業を経営した経験」が認められますが、就労移行支援では認められていません。企業経営の経歴だけで管理者に就任する計画は、就労移行支援では成り立ちません。多機能型でB型と組み合わせる場合も、就労移行支援側の管理者要件を別に確認してください。

兼務については、次の目安が示されています。

  • 管理者と別の職種を兼務する場合、常勤の従業者が勤務すべき時間数の半分以上は管理者として従事すること
  • 管理者のほかに兼務できるのは1職種のみ。3職種以上の兼務は業務に支障があるとみなされ、認められない
  • 管理者のみを兼務する場合、最大3事業所(移動時間30分以内)まで

多機能型事業所で就労移行支援と就労継続支援B型のそれぞれについて管理者・サービス管理責任者を兼ねる形は、2職種の兼務とみなされ認められます。一方、一の事業所で「管理者・サービス管理責任者・生活支援員」と3職種を兼ねる形は認められません。

サービス管理責任者の実務経験は「年数+日数」で判定します

サービス管理責任者の実務経験は、年数だけでなく従事日数もあわせて判定します。開業が延びる原因の多くがこの確認漏れです。

区分主な業務内容必要年数など
相談支援業務相談支援事業所、児童相談所、福祉事務所、市町村役場、障害者支援施設、障害福祉サービス事業所における相談支援業務、障害者職業センター・障害者就業・生活支援センターにおける就労支援に関する相談支援業務、特別支援学校の就学・進路・教育相談 ほか5年かつ900日以上
直接支援業務障害児入所施設、障害者支援施設、障害福祉サービス事業所、障害児通所支援事業所、老人福祉施設、保険医療機関などにおける介護業務、特例子会社・重度障害者多数雇用事業所における就業支援の業務、特別支援学校における職業教育の業務 ほか8年かつ1,440日以上
有資格者など社会福祉主事任用資格、児童指導員任用資格、保育士等を有する者、または訪問介護員2級以上相当の研修修了者が、相談支援業務・直接支援業務に従事した場合5年かつ900日以上
国家資格などによる業務医師、看護師、社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士、理学療法士、作業療法士、管理栄養士等の資格取得後の業務経験と、相談支援業務・直接支援業務の経験を併せ持つ場合いずれも3年かつ540日以上

就労支援分野の経歴でも、障害者就業・生活支援センター等での相談支援業務は相談支援業務に、特例子会社での就業支援は直接支援業務に区分されます。どの区分に当たるかで必要年数が変わるため、経歴書を作成して指定権者へ確認してください。

また、サービス管理責任者が欠如した場合や欠如の見込みがある場合は、サービス管理責任者欠如減算・個別支援計画未作成減算の適用が必要となることがあるため、速やかに指定権者へ報告することとされています。

実務経験の内容は国の告示に基づく全国共通の要件ですが、証明書類の様式や確認方法は指定権者によって異なります(様式番号は指定権者ごとに異なります)。

設備基準と利用定員

設備は訓練・作業室、相談室、洗面所、便所、多目的室などが必要です。訓練・作業室は訓練または作業に支障のない広さを有し、必要な機械器具等を備えることとされています。

  • 利用定員は10人以上(令和6年4月の改定で従来の20人以上から引き下げ)
  • 多機能型で運営する場合は定員の考え方が異なります
  • 消防法・建築基準法上の確認は物件契約前に行います

設備の面積の目安と、多機能型・従たる事業所の定員

設備基準について、指定権者が具体的な面積の目安を示していることがあります。指定申請の手引きでは、次のとおりです。

設備内容
訓練・作業室●部屋の広さは、利用者1人あたり2㎡以上を確保すること
●複数種類の活動を行う場合、活動の種類ごとに区分すること
事務室事業の運営を行うために必要な面積を有する専用の区画を設けること(間仕切りするなど他の事業と明確に区分する場合、同一の事務室でも可)
相談室利用者、相談員を含め4人程度が使用することを想定し、部屋の広さは4㎡以上を確保すること
手洗い設備便所内の手洗いとは別に設置すること
便所利用者の特性に応じたものを設置すること
多目的室●部屋の広さは、利用者1人あたり2㎡以上を確保すること
●利用者の支援に支障がない場合、相談室との兼用可。ただし、相談室と兼用する部分を除き、利用者1人あたり2㎡以上を確保すること

就労移行支援は個別面談や求職活動支援の比重が高く、相談室の使い勝手が支援の質に直結します。相談室と多目的室を兼用する場合、兼用部分を除いて利用者1人あたり2㎡以上を確保するという整理になっている点にも注意してください。

定員については、単独で指定を受ける場合は10人以上ですが、多機能型事業所または従たる事業所として設置する場合は6人以上となります。

形態内容
多機能型事業所生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型・B型のうち2つ以上を一体的に行うもの。全体で20人以上、かつ事業ごとの最低定員(生活介護・自立訓練・就労移行支援は6人以上、就労継続支援A型・B型は10人以上)が必要です。サービス管理責任者はサービスごとの必要員数にかかわらず利用者数60人以下で1人以上。相談室、便所・手洗い設備、多目的室などは支障のない範囲で兼用できますが、訓練・作業室はサービスごとに専用で設置します。
従たる事業所主たる事業所と同一のサービスを別の場所で行うもの。就労移行支援では6人以上。主たる事業所と合計した利用者数に応じた従業者を確保したうえで、従たる事業所に常勤・専従の従業者を1人以上(管理者及びサービス管理責任者を除く)確保します。両事業所間は概ね30分以内で移動可能な距離、事務室・相談室は兼用可でも訓練・作業室、多目的室、便所・手洗い設備は専用に設置、勤務体制と会計の管理は一元的に行い、同一の運営規程を定めることが求められます。
出張所本体事業所の付属施設として、製品の販売、道具の保管、待機、着替えなどを行う施設。生産活動の一部を行う場合は出張所ではなく、基準を満たしていれば従たる事業所として認められます。

「小さく始めて定着率の分母を抑える」という開業戦略を採る場合、多機能型や従たる事業所という選択肢も含めて検討できます。

就労移行支援に固有の運営基準

  • 実習の受入先を確保し、公共職業安定所等と連携して求職活動の支援を行うこと
  • 就職後も原則6か月以上、職場定着のための支援を継続すること
  • 利用者の就職状況等を都道府県知事に報告すること

生産活動・工賃・実費徴収に関する運営基準

就労移行支援でも、生産活動を行う場合は工賃の支払や会計の区分に関する運営基準が適用されます。就労継続支援だけの論点と誤解されやすい部分です。

区分内容
生産活動生産活動を行う利用者の利用時間、作業量などが過重な負担とならないよう配慮するとともに、生産活動の能率の向上が図られるよう利用者の障害の特性などを踏まえた工夫を行うこと
工賃の支払利用者に、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払うこと
会計の区分障害福祉サービス事業所ごとに経理を区分するとともに、障害福祉サービス事業の会計を、その他事業の会計と区分すること
利用定員の遵守利用定員を超えた受入れはしないこと
利用者負担の範囲●食事の提供に要する費用(食材料費及び料理などに係る費用に相当する額)、日用品費などは、あらかじめ利用者にサービスの内容・費用について説明し、同意を得たうえで実費相当額を徴収すること
●利用者から金銭を受け取った後は、領収書を交付すること
●定期的に精算し、余剰金が生じた場合、他の費目に充てるのではなく、利用者に返金すること

訓練の一環として受注作業を行う就労移行支援事業所では、その収入から経費を控除した額を工賃として支払う必要があります。就労支援事業会計としての区分経理も必要になるため、開業時に経理体制を設計しておいてください。

あわせて読みたい常勤換算とは?障害福祉事業所向けに計算方法を解説

3. 就労定着率と報酬

就労定着率が報酬を決める仕組みと、開業初年度の考え方

収支を左右する最大の要素が基本報酬の区分です。区分は就労定着率、つまり自事業所から一般就労へ移行し、就職後6か月以上定着した方の割合で決まります。

  • 分子は、前年度と前々年度に一般就労へ移行し、就職後6か月以上定着した方の合計人数
  • 分母は、前年度と前々年度の利用定員の合計
  • 就労継続支援A型への移行は一般就労に含まれません
  • 区分は「5割以上」から「0割」まで、おおむね7段階です

開業初年度は「みなし区分」からのスタート

新規事業所は前年度・前々年度の実績がないため、一定期間は告示・留意事項に定めるみなしの取扱いで基本報酬を算定します。実績が利用できる時期や区分判定の方法は、指定時点の報酬告示・留意事項で確認してください。

この点は、開業計画を立てるうえで重要になります。みなし期間が終われば実績がそのまま単価になります。準備期間ではなく実績づくりの期間と捉えるのが実務的です。

初年度から意識しておきたいこと

  • 定員を大きくすると分母が大きくなり定着率が下がりやすくなります。小さく始める選択肢も現実的です
  • 就職させて終わりではなく、6か月定着してはじめて分子に入ります。定着支援まで担う体制を組みます
  • 誰がいつどの企業に就職し、いつ6か月に達したかを記録する台帳を開業初月からつくります

「就労移行支援体制加算」との混同に注意

名称が似ていますが、就労移行支援体制加算は生活介護・自立訓練・就労継続支援A型/B型の事業所が算定する加算で、就労移行支援事業所が算定するものではありません。就労移行支援では同じ実績が、加算ではなく基本報酬の区分として評価されます。なお、この就労移行支援体制加算については令和8年4月から、1事業所が年間に算定できる就労定着者数の上限が当該事業所の定員数までとされ、過去3年間に算定実績のある方は原則として算定できないこととされました。他サービスとの多機能型を検討している場合は、収支計画に影響します。

図解1就労定着率が報酬を決める仕組み
分子前年度と前々年度に一般就労へ移行し、就職後6か月以上定着した方の合計人数
÷
分母前年度と前々年度の利用定員の合計
=
就労定着率「5割以上」から「0割」までおおむね7段階の区分

初年度から意識しておきたいこと

  • 定員を大きくすると分母が大きくなり定着率が下がりやすい。小さく始める選択肢も現実的
  • 就職させて終わりではなく、6か月定着してはじめて分子に入る
  • 誰がいつどの企業に就職し、いつ6か月に達したかを記録する台帳を開業初月からつくる

開業初年度は「みなし区分」からのスタート

  • 新規事業所は前年度・前々年度の実績がないため、一定期間はみなしの取扱いで算定
  • みなし期間が終われば実績がそのまま単価になる
  • 準備期間ではなく実績づくりの期間と捉える
※実績が利用できる時期や区分判定の方法は、指定時点の報酬告示・留意事項で確認してください。
あわせて読みたい就労移行支援の基本報酬|就労定着率で決まる区分と単位数

令和6年度報酬改定と就労選択支援の影響

現行は令和6年度報酬改定に基づく運用ですが、令和8年度に臨時応急的な見直しが行われています(就労移行支援体制加算の適正化は令和8年4月、就労継続支援B型の基本報酬区分の見直しと新規指定事業所への応急的な報酬単価は令和8年6月)。次期の本改定は令和9年度予定です。押さえたい要点は次のとおりです。

  • 利用定員の下限が20人以上から10人以上に見直され、小規模での参入がしやすくなりました
  • 支援計画会議実施加算が地域連携会議実施加算に見直されました
  • 処遇改善加算の一本化により、賃金体系や就業規則の整備が加算取得の前提になりました

令和7年10月施行の就労選択支援との関係

令和7年10月1日から就労選択支援が始まっています。本人の就労ニーズや能力・適性、必要な配慮を短期間で整理し、適切な進路につなげるアセスメント型のサービスです。

施行時点では新たに就労継続支援B型を利用する方が原則の対象で、就労移行支援は希望に応じて利用する位置づけです。ただし令和9年4月からは、標準利用期間を超えて就労移行支援を利用する場合にもアセスメントが求められる予定とされています。

実績を積むと、就労定着支援・就労選択支援の指定が視野に入ります

就労移行支援は、一般就労への移行実績が他のサービスの指定要件につながります。開業から数年先を見据えるなら、次の2つのサービスを併せて計画できます。

サービス事業者要件
就労定着支援生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型・B型の指定を受けており、運営する1つの事業所で過去3年間に一般就労へ移行した者が3人以上いること(事業運営が3年に満たない場合でも、一般就労へ移行した者が3人以上いれば可)
就労選択支援就労移行支援・就労継続支援A型・B型のほか、障害者就業・生活支援センター事業の受託法人、自治体が設置する就労支援センター、障害者能力開発助成金による職業能力開発訓練事業を行う機関も対象。いずれも指定申請日から過去3年以内に3人以上の一般就労移行実績があること

就労定着支援の人員基準は、管理者1人(支障がない場合は他職種と兼務可)と、就労定着支援員(1人以上、常勤換算で利用者数を40で除した数以上)、サービス管理責任者です。サービス管理責任者は、一体的に運営する就労移行支援等のサービス管理責任者と兼務できますが、就労定着支援員との兼務はできません。利用者数は、新規指定の場合、過去3年間において就労定着期間が6か月に達した者の数×0.7で推定します。

就労移行支援では、就職後6か月の定着支援まで担うことが基本報酬の区分に直結します。その体制がそのまま就労定着支援の指定要件を満たす道筋になるため、実績の記録は開業初月から整えてください。

4. 開業までの流れと提出書類

就労移行支援の開業までの流れ

事前相談・事前協議の要否や時期は指定権者ごとに異なります。物件契約や採用の前に、希望指定日から逆算した手続日程を確認します。

① 事業構想と収支計画(12〜9か月前)

定員、対象、支援プログラム、想定する就職先を固めます。収支計画はみなし期間の終了後まで見通します。

② 法人設立・目的の追加(9〜6か月前)

指定を受けられるのは法人のみです。定款の目的に就労移行支援事業を明記します(既存法人は目的変更登記)。

③ 物件の選定と法令チェック(6〜4か月前)

設備基準に加え、建築基準法の用途、消防法の設備、契約の使用目的を確認します。

④ 人材の確保(6〜3か月前)

最大のボトルネックはサービス管理責任者です。確保できるかで開業時期が決まります。

⑤ 事前相談・事前協議

申請受付や事前協議には自治体ごとの締切があります。期限を過ぎると希望月での指定が難しくなるため、最新の手引きで確認します。

事前協議から指定までの標準的な日程

事前協議の時期は指定権者ごとに異なりますが、日程感をつかむ参考として、手引きが示す標準スケジュールを挙げます(毎月1日付けの指定が前提)。

時期手続
指定の3か月前の15日まで(厳守)事前協議(予約制)。事前協議書、平面図、建築物関連法令協議記録を持参し提出。その後約1週間の審査
指定の2か月前の7日まで(厳守)申請書類の1回目提出(予約制)。修正等で少なくとも3〜4回の打合せが必要
指定の2か月前の末日まで(厳守)申請書類の最終提出
指定の前月中旬〜下旬現地確認。現地確認までに備品の搬入、運営規程・勤務形態一覧表・重要事項説明の掲示を完了しておく
指定の前月末日指定通知書の送付
指定日毎月1日付けで指定

事業所の新築・改築・増設などを行う場合は工事着手前に事前協議を完了すること、事業内容を十分に理解している管理者などが手続きを行う(または同席する)ことも求められています。書類の不備等により、指定日が1か月単位で遅れることがある点も明記されています。

あわせて、登記事項証明書の目的欄には「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」といった表記で、申請に係る事業を記載します。事業譲渡や吸収合併で運営法人が変更となる場合は、指定の効力が消滅するため、廃止届の提出と譲受法人による新規指定申請が必要です。

⑥ 指定申請書の提出(前月まで)

申請書、運営規程、勤務体制一覧表、資格証、平面図などを提出します。様式は自治体ごとに異なります。

⑦ 指定・開所(原則毎月1日)

開所後は請求事務、体制届、労働・社会保険の手続きが続きます。記録の整備は初月から習慣づけます。

指定申請で提出する書類

申請書のほかに提出する主な書類は次のとおりです。名称や様式に違いはあっても、確認される内容自体は指定権者を問わず共通しています。

区分提出書類
申請書指定申請書、サービス種別ごとの付表
法人関係法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)※目的欄に申請に係る事業について記載してあること/役員等名簿
建物・設備事業所(建物)の平面図、写真(外観のみ)/建物が法人所有の場合は登記事項証明書などの写し、賃貸の場合は賃貸借契約書の写し/設備の概要
運営運営規程/指定障害福祉サービス等の主たる対象者を特定する理由等(特定する場合)/利用者(入所者)又はその家族からの苦情を解決するために講ずる措置の概要/誓約書
人員従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表(平均利用者数算定シートを添付)/管理者の経歴書/管理者の実務経験証明書の写しなど/サービス管理責任者の経歴書/サービス管理責任者の研修修了証・資格証・実務経験証明書の写しなど
医療連携協力医療機関に関する協定書
その他暴力団員等の排除の規定に適合する旨の誓約及び所轄警察署長への照会に対する同意書/事業開始届/消防用設備等検査済証の写し(必要な場合)
報酬関係介護給付費等算定に係る体制等に関する届出書、介護給付費等の算定に係る体制等状況一覧表/処遇改善計画書(算定する場合)

書類作成のポイント

  • 写真と対応する番号・矢印を平面図に入れ、撮影した場所と向きを示します。外観の写真は1枚、必要に応じて2枚用意します。
  • 管理者がサービス管理責任者を兼務する場合、経歴書は1つにまとめて提出できる取扱いが一般的です。
  • 介護福祉士の資格を証明する場合、合格証の写しは認められません。資格証の写しを用意してください。

必要な部数や様式、添付書類の範囲は指定権者ごとに定められています。なかには、事前予約制の持参提出とし、提出までに何度か打合せを行う指定権者もあります。申請先の最新の手引きを確認し、早い段階で事前相談を行ってください。

5. 開業資金・ランニングコストの目安

A型・B型に比べれば初期投資は抑えられますが、人件費の比重は高くなります。地域差が大きいのであくまで目安です。

項目内容目安
物件費用敷金・礼金・仲介手数料・前家賃物件・地域条件により個別に積算
内装・設備工事間仕切り、相談室、トイレ改修事業内容・物件・設備に応じて個別に積算
備品・什器机、椅子、パソコン、ソフト必要な機器・システムに応じて個別に積算
法人設立・申請関係登記費用、専門家報酬法人形態・依頼範囲に応じて個別に積算
運転資金人件費・家賃の先払い分初回入金までのタイムラグと稼働率の立ち上がりを踏まえて試算

特に重要なのが運転資金です。請求から入金まで約2か月かかるうえ、開所直後は定員が埋まりません。赤字を織り込んだ計画が必要です。

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6. ミスが起こりやすい点と指定後の運営

ミスが起こりやすいポイント

サービス管理責任者が確保できず開業が延びる

実務経験年数の数え方は複雑で、本人の認識と要件が食い違う例が少なくありません。内定前に従事証明書と研修修了証で確認します。

物件を先に契約してしまう

消防法の用途変更や建築確認が必要と後から判明する例が多くあります。契約前に図面を持って窓口へ相談します。

事前協議の締切を知らずに逃す

事前協議の期限や必要書類は自治体で異なります。同じ県内でも政令市・中核市は別窓口です。

利用者確保の導線を開業後に考える

標準利用期間が24か月と短く、利用者は入れ替わり続けます。関係機関との関係づくりは指定申請と並行して進めます。

指定後の運営まで見据えた実務ポイント

支援の流れを記録でつなぐ

指定後に問われるのは、アセスメントから個別支援計画、記録、モニタリングまでのつながりです。同じ文面を並べるのではなく、計画との対応と本人の変化が分かる記録を残します。

最低基準と報酬・加算要件を分けて確認

人員・設備の最低基準と、加算や基本報酬区分が求める配置・取組の水準は一致しません。算定する報酬が固まった段階で、最低基準と加算要件の両面から勤務表を点検し、退職・休職・利用者増を見込んだ余裕を持たせます。

実務上の注意

開業前チェックリスト

□ 地域の求人・障害者雇用ニーズを調査した

□ 対象者像と就職目標を具体化した

□ 職業指導員・生活支援員・就労支援員・サビ管を確保した

□ 職場実習先・企業開拓の計画を作った

□ 訓練プログラムと就職目標の関係を整理した

□ 就職後6か月までの定着支援体制を作った

□ 就労定着実績を追跡できる管理方法を整えた

よくある質問

Q
就労移行支援の定員は何人以上必要ですか?
A

令和6年4月の報酬改定により、利用定員は10人以上とされています。従来は原則20人以上(離島等では10人以上)でしたので、小規模での参入がしやすくなりました。多機能型の場合は考え方が異なりますので、指定権者へご確認ください。

Q
開業初年度は基本報酬がいちばん低い区分になるのでしょうか?
A

いいえ。新規指定の事業所には、支援開始からの一定期間について中位の区分に該当するものとみなす取扱いがあります。実績がそれを上回れば実績に基づく区分で算定できます。ただしみなし期間が終われば、実績がそのまま単価に反映されます。

Q
就労移行支援と就労継続支援A型・B型は同時に開業できますか?
A

できます。多機能型事業所として複数のサービスを実施することは可能です。ただし人員配置や定員の考え方、設備の共用の可否が単独型とは異なりますので、早めに指定権者と協議してください。

Q
就労選択支援は、就労移行支援の開業に影響しますか?
A

令和7年10月の施行時点では、就労移行支援の利用にあたって必須とはされていません。ただし令和9年4月からは、標準利用期間を超えて利用する場合にもアセスメントが求められる予定です。詳細は今後の通知で示されます。

まとめ

就労移行支援の開業は、管理者・サービス管理責任者・職業指導員と生活支援員(合計で利用者数÷6以上)・就労支援員(利用者数÷15以上)という人員基準と、訓練・作業室や相談室などの設備基準を満たすことがスタートラインです。利用定員は令和6年4月から10人以上に緩和されました。

本当の難しさは指定を取ったあとにあります。基本報酬が就労定着率で区分される以上、就職支援と6か月間の定着支援を回し続けられる体制が、そのまま収益力になります。開業初年度のみなし期間を実績づくりの期間と位置づけられるかが、3年目以降の分かれ道です。

事前協議の期限や必要書類、設備の運用は指定権者ごとに異なり、制度も就労選択支援の施行で動いています。物件契約や人材採用といった後戻りできない決断の前に、管轄の窓口や専門家に確認する一手間が、いちばんの近道になります。

就労移行支援の開業を、計画段階から支援します

障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。就労移行支援の指定申請はもちろん、法人設立、物件の適否チェック、人員配置の設計、運営規程の整備まで一貫してお手伝いします。代表は行政書士と社会保険労務士を兼ね、就業規則や処遇改善加算といった労務面まで対応できます。

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主な参考資料

※本記事は令和8年8月26日時点の法令・告示・通知等に基づく一般的な整理です。指定権者の条例・手引き・個別運用、最新の報酬告示・Q&Aを必ず確認してください。

執筆者 永野将太(行政書士・社会保険労務士)
執筆者WRITER
永野 将太
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズ 代表

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。

これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。