人員欠如減算の特例|令和8年6月開始・最大3か月の猶予と報告の手順

人員欠如減算の特例|令和8年6月開始・最大3か月の猶予と報告の手順

令和8年6月から、突発的な事情で職員が欠けたときに、人員欠如減算の適用を待ってもらえる取扱いが始まりました。欠員が基準人員の1割の範囲内であることと、ハローワーク等を使った採用活動を行っていることが条件です。使えるのは1年に1回だけです。

  • 猶予されるのは、欠員が生じた月の翌々月まで(最大3か月)
  • この間に人員基準を回復できれば、減算を一度も受けずに済む
  • 欠員が基準人員の1割を超えると、この特例は使えない
  • 欠員が生じた月の翌月までに、求人票の写しを付けて指定権者へ報告する

この記事で分かること

人員欠如減算の基本的な仕組みから、令和8年6月に加わった特例の対象、猶予される期間の数え方、満たすべき要件、報告の手順、1年に1回という制限まで整理します。障害福祉サービスと障害児通所支援の両方を対象にしています。

はじめに

職員が急に辞めた、家族の介護で長期の休みに入った。人員基準を満たせなくなると、これまでは短い期間で人員欠如減算が適用されていました。減算率は30%で、3か月以上続くと50%まで上がります。経営への影響は小さくありません。

令和8年6月から、突発的で想定が困難な事情による欠員については、一定の条件のもとで減算の適用を待ってもらえる取扱いが始まりました。診療報酬で先に導入された仕組みに足並みをそろえたもので、介護保険でも同時に導入されています。

ここでは障害福祉サービスと障害児通所支援を対象に、どういう場合に使えて、何をいつまでにすればよいのかを整理します。

この記事のポイント

    • 特例が使えるのは、欠員が人員基準上必要な員数の1割の範囲内にとどまる場合
    • 猶予されるのは、人員欠如が生じた月の翌々月までの間
    • ハローワーク等の無料の職業紹介事業を使った採用活動が前提になる
    • 欠員が生じた月の翌月までに、求人票の写しを添えて指定権者へ報告する
    • 使えるのは1年に1回だけ。サービス管理責任者等の欠如は対象外

1. 人員欠如減算のおさらい

先に、もとの減算の仕組みを確認しておきます。対象になるのは、生活支援員、世話人、職業指導員、就労支援員、看護職員、児童指導員など、人員基準上必要とされる従業者です。

減算がいつから始まるかは、欠員の大きさで変わります。必要な員数から1割を超えて減少した場合はその翌月から、1割の範囲内で減少した場合はその翌々月から、人員欠如が解消された月まで減算されます。1割の範囲内であれば、翌月の末日までに基準を満たせば減算は生じません。

人員不足の程度と減算の開始月
人員不足の程度減算が始まる月減算を回避できる期限
必要な員数から1割を超えて不足欠如した月の翌月から欠如した月のうちに解消すれば減算なし
必要な員数から1割の範囲内で不足欠如した月の翌々月から翌月の末日までに解消すれば減算なし
※表は横にスクロールできます

サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者の欠如は別に定められていて、欠如した月の翌々月から30%の減算となり、5か月以上続くと50%になります。

減算率は、減算が始まってからの期間で変わります。

減算率は30%、長引くと50%
減算の期間算定できる報酬減算率
減算の適用から3か月未満所定単位数の70%30%減
減算の適用が3か月以上続いたとき所定単位数の50%50%減
※表は横にスクロールできます
減算の基礎になる「所定単位数」は、各種加算を付ける前の単位数です。加算を含めた総単位数に70%・50%を乗じるものではありません。告示では「所定単位数に乗じる割合」として70/100・50/100と定められています。サービス種別によって対象となる職種や取扱いが異なるため、詳細は算定基準の告示と留意事項通知をご確認ください。

2. 令和8年6月から始まる特例の全体像

令和8年5月28日付で、障害福祉サービスと障害児通所支援のそれぞれの留意事項通知が一部改正され、同じ日付でQ&Aが示されました。内容は次のとおりです。

突発的で想定が困難な事象によりやむを得ない事情が生じ、人員基準上必要とされる員数から1割の範囲内で減少した場合、一定の要件を満たしていれば、人員欠如が生じた日の属する月の翌々月までの間、減算の適用が猶予されます。適用できるのは1年に1回に限られます。

言いかえると、1割の範囲内の欠員なら、これまで翌々月から始まっていた減算が、その翌月からに1か月ずれるということです。4月に欠員が出た例で言えば、6月分から始まっていた減算が7月分からになります。解消のタイムリミットで見ても、5月の末日までだったものが6月の末日までに延びます。

図解1特例がある場合とない場合

これまで(1割の範囲内の欠員)

  • 4月に欠員が発生
  • 5月の末日までに解消できなければ減算
  • 6月分から30%の減算

特例を使う場合

  • 4月に欠員が発生
  • 4月・5月・6月は減算の適用を猶予
  • 7月分から30%の減算

3. 対象になる「やむを得ない事情」とは

令和8年5月28日付のQ&Aでは、「突発的で想定が困難な事象によりやむを得ない事情」の例として、次の2つが挙げられています。

    • 職員や家族の突発的な体調不良等により、1か月を超える不在が見込まれる場合
    • 職員の自己都合による急な離職等が複数重なった場合

いずれも「突発的で想定が困難」であることが前提です。定年退職や契約期間の満了のように、あらかじめ時期が分かっていた欠員は、この表現には当てはまりにくいと考えられます。判断に迷う場合は指定権者に確認してください。

あわせてQ&Aには、体調不良等で1か月を超える不在が見込まれる場合に求人を申し込むときは、職員の短期的な不在を補うためだけでなく、長期的に安定的な人材確保を図る観点から求人内容を検討すべきである、という留意が書かれています。短期のつなぎだけを想定した求人票では趣旨に合わない、ということです。

4. 猶予される期間の数え方

猶予されるのは「人員欠如の発生が生じた日の属する月の翌々月までの間」です。欠員が出た月を1か月目として数えるので、最大で3か月分になります。

図解24月に欠員が出た場合の流れ
4月欠員が発生。求人を申し込み、翌月までに報告
5月猶予。採用活動を続ける
6月猶予の最終月。ここまでに解消できるか
7月解消していなければ減算が始まる
大事なのは、6月中に人員基準を回復できれば減算を一度も受けずに済むことです。回復できないまま7月に入ると減算が始まり、解消した月まで続きます。

5. 特例を使うための4つの要件

通知では、次の4つが並べられています。求人の取組と労働時間の管理が柱です。

    • 公共職業安定所(ハローワーク)または福祉人材センター等の無料の職業紹介事業を活用して、職員の確保に係る取組を行っていること
    • 職員の確保にあたって民間職業紹介事業者を利用する場合は、医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者認定制度による適正認定事業者を含むこと
    • 無料の職業紹介事業を活用している場合でも、自ら採用情報をウェブサイトで公表するなど、積極的に取り組んでいることが望ましいこと
    • 一部の職員へ過度な業務負担とならないよう、職員の適正な労働時間管理を行い、体制の整備を図るよう努めること

3つ目のウェブサイトでの公表については、Q&Aで補足があります。自ら管理するホームページ等を有しない事業所については、この公表の要件は適用されません。ホームページがないことを理由に特例が使えなくなるわけではない、ということです。

図解3要件の読み分け

満たしていないと使えない

  • 無料の職業紹介事業を活用した採用活動
  • 民間紹介を使う場合は適正認定事業者を含める
  • 翌月までの報告と求人票の写しの添付

望ましい・努めること

  • 自社サイトでの採用情報の公表(サイトがなければ適用外)
  • 残った職員の労働時間管理と体制の整備

6. 報告の手順と添付書類

特例は黙って使えるものではありません。職員の確保に係る取組と、一時的に職員を確保できないやむを得ない事情を別紙様式に記載し、人員欠如の発生が生じた日の属する月の翌月までに、速やかに都道府県知事(指定権者)へ報告します。様式には、報告する時点で有効な求人票の写しを添付します。

ここで実務上いちばん大事なのは順番です。求人票の写しが必要なので、欠員が出たらまず求人を申し込む。報告書類を整えるのはそのあとになります。

図解4欠員が出てから報告までの手順
1. 欠員の確認不足が基準人員の1割の範囲内かを確認する
2. 求人の申込みハローワークや福祉人材センターへ申し込む
3. 様式の作成取組の内容とやむを得ない事情を記載する
4. 報告翌月までに求人票の写しを添えて提出する
提出先の窓口や様式の扱い、変更届出書を一緒に出すかどうかは指定権者によって異なります。提出前に確認してください。

7. 1年に1回の制限と起算点

この特例は1年に1回に限られます。Q&Aによると、起算点は「突発的で想定が困難な事象によりやむを得ない事情が生じ、人員欠如の発生が生じた日の属する月の翌々月の初日」です。

4月に欠員が生じた場合なら、6月1日から1年間が対象になります。翌年の6月1日以降でなければ、次に特例を使うことはできません。年度ではなく、この日から1年で数える点に注意してください。

8. 特例が使えるケース・使えないケース

今回の特例が使えるかどうか
ケース今回の特例
生活支援員・職業指導員・就労支援員・世話人等が1割の範囲内で不足対象になり得る
同じ職種が1割を超えて不足対象外
サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者の欠如対象外
日中サービス支援型グループホームの夜間・深夜の世話人・生活支援員の欠如別のルールなので指定権者に確認
あらかじめ時期が分かっていた退職など、突発的とは言いにくい欠員対象外
求人の取組や報告といった要件を満たしていないとき対象外
すでにこの1年のうちに特例を使っているとき対象外
※表は横にスクロールできます

9. 現場で気をつけたいこと

猶予は最大3か月で終わります。その間に採用できなければ減算が始まり、3か月以上続けば減算率は50%になります。時間を買う仕組みであって、欠員そのものを解決するものではありません。

もうひとつは、残った職員の負担です。4つ目の要件が労働時間管理と体制の整備を求めているのは、欠員を現場の頑張りで埋め続けると、次の離職を招くからです。時間外労働が増えていないか、36協定の範囲に収まっているかを、猶予期間のうちに点検しておくことをおすすめします。

運営規程や勤務形態一覧表との整合も忘れずに。欠員の状態が続くときは、記載している職員数や体制と実態がずれていないかを確認してください。

よくある質問

Q
1割の範囲内かどうかは、どう判断しますか。
A

人員基準上必要とされる員数に対して、不足がどの程度かで判断します。1割を超えて減少した場合はこの特例の対象外で、これまでどおり欠如が生じた月の翌月から減算が適用されます。必要な員数の数え方はサービス種別によって違うので、勤務形態一覧表で実際の配置を確認してください。

Q
ハローワークに求人を出していれば要件を満たしますか。
A

無料の職業紹介事業を活用した取組は要件のひとつです。あわせて、報告の時点で有効な求人票の写しを添付する必要があります。民間の職業紹介事業者を使う場合は、医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者認定制度の適正認定事業者を含めることとされています。

Q
事業所のホームページがない場合はどうなりますか。
A

令和8年5月28日付のQ&Aで、自ら管理するホームページ等を有しない場合には、採用情報を公表する要件は適用されないとされています。ホームページがないことだけを理由に特例が使えなくなるわけではありません。

Q
報告はいつまでにすればよいですか。
A

人員欠如の発生が生じた日の属する月の翌月までに、速やかに都道府県知事(指定権者)へ報告します。通知の別紙様式に、職員の確保に係る取組と、一時的に職員を確保できないやむを得ない事情を記載します。

Q
サービス管理責任者が退職した場合も使えますか。
A

この特例は、従業者の人員欠如に関する取扱いとして設けられたものです。サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者の欠如による減算は別に定められており、この特例には含まれていません。

Q
猶予が終わるまでに採用できなかったらどうなりますか。
A

猶予は人員欠如が生じた月の翌々月までです。解消できなければ、その翌月から通常どおり減算が適用されます。減算が3か月以上続くと、減算率は50%になります。

Q
同じ年に2回目の欠員が出たときも使えますか。
A

特例は1年に1回に限られます。起算点は、やむを得ない事情が生じて人員欠如が発生した日の属する月の翌々月の初日です。年度で区切るのではない点に注意してください。

Q
定年退職で欠員になった場合も対象ですか。
A

対象になるのは「突発的で想定が困難な事象によりやむを得ない事情」が生じた場合です。Q&Aでは、職員や家族の突発的な体調不良等による1か月を超える不在と、自己都合による急な離職が複数重なった場合が例として示されています。あらかじめ時期が分かっていた退職は、これに当てはまるとは言いにくいところです。判断に迷う場合は指定権者へ確認してください。

まとめ

令和8年6月から、突発的で想定が困難な事情による1割の範囲内の欠員については、人員欠如が生じた月の翌々月まで減算の適用が猶予されます。使うには、ハローワーク等の無料の職業紹介事業を活用した採用活動と、翌月までの報告(求人票の写しを添付)が必要です。

使えるのは1年に1回だけで、起算点は欠如が生じた月の翌々月の初日です。サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者の欠如は対象外で、欠員が1割を超える場合も使えません。

いちばん大事なのは、猶予の間に人員基準を回復できれば、減算そのものを受けずに済むことです。4月に欠員が出た例なら、6月中に回復できれば減算はゼロです。

ただし猶予は時間を確保するための仕組みにすぎません。採用活動と、残った職員の負担への手当てを同時に進めてください。

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主な参考資料

※本記事は令和8年9月21日時点の情報に基づく一般的な整理です。特例の適用の可否、報告の様式や提出方法は指定権者の取扱いによって異なる場合があります。実際の手続きは指定権者にご確認ください。

執筆者 永野将太(行政書士・社会保険労務士)
執筆者WRITER
永野 将太
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズ 代表

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。

これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。