就労継続支援B型の事業所が、自ら所有・賃借する離れた農地で農業を行う場合、その農地は「従たる事業所」または「出張所」として整理できる余地があります。農地に建物がないことだけを理由に不可になるわけではありません。
- 一般的な出張所は、独立したサービス提供拠点ではない
- 離れた農地は「従たる事業所又は出張所」として扱う整理が示されている
- 出張所として整理する場合も、指定権者への届出と位置付けの確認は必要
この記事で分かること
出張所・従たる事業所・施設外就労の違いを比較表で整理し、B型事業所が離れた農地で農作業を行うときの設備・職員配置・判断の手順をまとめます。実務で使える判断フローチャートも掲載します。
はじめに
就労継続支援B型の事業所が、事業所から離れた農地を借りて農作業を行いたい。このとき、その農地を制度上どう位置付ければよいのか、というご相談をよくいただきます。
あわせて多いのが、「出張所では利用者の支援ができないと言われた」という話です。ただ、農地については厚生労働省が別の整理を示しており、建物がないことだけを理由に農作業ができなくなるわけではありません。
この記事では、出張所・従たる事業所・施設外就労の違いを整理したうえで、実務でどう判断していくかを順に見ていきます。
この記事のポイント
- 障害福祉サービスの指定は事業所ごとに行うため、一般的な出張所は独立したサービス提供拠点ではありません。
- ただし、B型等が事業所から離れた農地で農業を行う場合、厚生労働省は当該農地を「従たる事業所又は出張所」として取り扱う整理を示しています。
- 利用者の支援に支障がない場合は、基準に定める設備の全部または一部を設けなくても差し支えないとされています。
- 出張所には、従たる事業所のような「B型の定員10人以上」「常勤かつ専従の従業者1人以上」という独自要件は示されていません。
- 自法人の農地で自法人の生産活動を行う場合は、企業等から請け負った作業を事業所の外で行う施設外就労とは別に整理します。
- 実際の位置付けや変更届の要否は指定権者によって取扱いが異なるため、運用を始める前に確認します。
1. 「出張所では支援できない」は半分誤解
障害福祉サービスの指定は、原則として「サービス提供を行う事業所ごと」に行います。厚生労働省の2026年の指定ガイドラインでも、出張所は「製品の販売、待機、道具の保管、着替え等」を行う場所として例示されています。
このため、通常の出張所を第二のB型事業所のように扱い、そこで朝から帰宅までサービス提供を独立して完結させることを一般的に認めるものではありません。この点では「出張所では支援できない」という説明にも理由があります。
一方で、農地には例外的な整理があります。厚生労働省は、就労継続支援B型事業所等が事業所から離れた農地で農業を行う場合、その農地を「従たる事業所又は出張所」として取り扱うことを示しています。したがって、「出張所では利用者支援を一切してはいけない」とまで言い切るのは適切ではありません。
2. 農地には厚生労働省の特別な整理がある
厚生労働省の障害保健福祉関係主管課長会議資料では、就労継続支援B型事業所等が「事業所とは離れた場所に農地を取得して農業を実施する場合」について、当該農地は従たる事業所または出張所として取り扱うとされています。
さらに、利用者の支援に支障がない場合には、基準に定める設備の全部または一部を設けなくても差し支えないとされています。つまり、農地に事務室や訓練・作業室の建物がないことだけを理由に、直ちに農作業ができないということではありません。
3. 出張所・従たる事業所・施設外就労の違い
まず、混同されやすい3つの言葉を並べて整理します。
| 比較項目 | 出張所 | 従たる事業所 | 施設外就労 |
|---|---|---|---|
| 位置付け | 主たる | 主たる | 事業所の |
| 作業の性質 | 自法人の | 自法人の | 原則と |
| 代表的な場面 | 製品の | 第二の | 企業内等に |
| 離れた農地の扱い | 厚生労働省資料で | 農地が | 自法人の |
施設外就労は、企業等から請け負った作業を、企業内など事業所の外で行う形態です。利用者と職員が一緒に出向き、指定を受けた事業所の支援として取り扱われます。
これに対して、自法人が所有・賃借する農地で自法人の生産活動を行う場合は、請負作業ではありません。そのため施設外就労としてではなく、「その農地を指定上どう位置付けるか」という作業場所の問題として整理することになります。
あわせて読みたい施設外就労とは?|就労継続支援A型・B型の要件と職員配置4. 従たる事業所と出張所はどこが違うか
| 比較項目 | 従たる事業所 | 出張所 |
|---|---|---|
| 位置付け | 主たる | 主たる |
| B型の最低定員 | 10人以上 | 独自の |
| 専属職員 | 常勤かつ専従の | 従たる |
| 距離 | 主たる | 主たる |
| 代表的な用途 | 独立性の | 製品の |
従たる事業所は、制度上はっきりと「独立したサービス提供の場」として扱われます。そのためB型では、定員10人以上、常勤かつ専従の従業者1人以上といった要件があります。
これに対して出張所は、主たる事業所の補助的な場所として扱われます。農地を出張所として整理する場合も、農地だけで独立したB型事業所のような運営をするのではなく、主たる事業所との一体性が保たれていることが前提になります。
5. 農地に建物がなくてもよいのか
農地に建物がないことだけで、直ちに問題になるわけではありません。厚生労働省は、離れた農地について、利用者の支援に支障がなければ基準上の設備の全部または一部を設けないことを認めています。
ただし実務では、次の点を指定権者に説明できるようにしておく必要があります。
- 利用者が休憩できる場所をどう確保するか
- トイレをどのように確保するか
- 体調不良、熱中症、けが等が起きたときの対応
- 雨天・猛暑等で農作業ができない場合の対応
- 主たる事業所との連絡手段と移動手段
- 農具・機械を使用する場合の安全管理
設備を省略できるかどうかは、「基準に書いていないから不要」ではなく、「支援に支障がないと説明できるか」で判断されます。近隣施設の利用やテント・簡易トイレの設置など、具体的な方法を整理しておくと確認がスムーズです。
6. 農地に職員を常駐させる必要はあるか
出張所として整理する農地について、従たる事業所のように「常勤かつ専従の従業者1人以上」を固定配置しなければならないという独自要件は示されていません。したがって、利用者がいない時間まで農地に職員を常駐させる必要は、通常ありません。
一方で、利用者が農地で農作業を行っている時間については、利用者の状況や作業内容に応じて、必要な支援を提供できる職員体制を確保する必要があります。利用者だけを農地に残し、必要な支援が届かない状態にする運用は避けてください。
また、主たる事業所と農地の双方に利用者が分かれて活動する場合は、それぞれの場所で必要な支援ができるよう職員配置を組みます。B型事業所全体としての人員基準を満たしていることが前提です。
あわせて読みたい常勤換算とは?|障害福祉事業所の計算方法と考え方7. どこから「従たる事業所」になるのか
出張所と従たる事業所の境目は、名称ではなく運用の実態で判断されます。典型的な例を並べると、次のように整理できます。
出張所・作業場所として整理しやすい例
- 主たる事業所を利用の本拠点としている
- 作業内容に応じて、利用者と職員が農地へ移動する
- 農地に固定の利用定員を設定していない
- 農地専属の利用者・職員で独立運営していない
- 支援記録・職員管理・会計等を主たる事業所で行っている
従たる事業所の検討が必要になりやすい例
- 毎日ほぼ同じ利用者が農地へ直行直帰する
- 農地だけで朝から帰宅までサービス提供が完結する
- 農地に固定の利用定員・職員配置がある
- 主たる事業所とは別のサービス提供拠点として実質的に独立している
実態が「一体的かつ独立したサービス提供の場」になっている場合は、名称を出張所としていても、従たる事業所としての要件(B型の定員10人以上、常勤かつ専従の従業者1人以上など)が問題になる可能性があります。
8. 実務上の判断フローチャート
離れた農地をどう位置付けるかは、次の順番で確認していくと整理しやすくなります。
図解1 離れた農地の位置付けを決めるフローチャート
特に分かれ目になるのはSTEP3です。「毎日同じ利用者が農地へ直行直帰し、農地だけで一日の支援が完結している」状態であれば、出張所としての説明は難しくなります。
よくある質問
一概には言えません。一般論として、出張所は独立したサービス提供拠点ではありません。ただし、B型等が離れた農地で農業を行う場合については、厚生労働省が当該農地を「従たる事業所又は出張所」として扱う整理を示しています。そのため、農地で農作業に必要な説明や見守り等を行うことまで一律に禁止されていると考えるのは適切ではありません。
できる場合があります。建物がないことだけで不可とはされていません。農地については、利用者の支援に支障がなければ設備の全部または一部を設けないことが可能とされています。ただし、休憩場所・トイレ・安全管理などは別途確保が必要です。
いいえ。出張所には、従たる事業所のような「常勤かつ専従1人以上」という独自要件は示されていません。ただし、B型事業所全体の人員基準を満たしたうえで、利用者が農地で活動している時間に必要な支援ができる体制を確保する必要があります。
可能ですが、双方の場所で必要な支援が提供できる職員体制が必要です。日報等に、利用者ごとの活動場所と担当・同行したスタッフを記録しておくと、支援の実態を説明しやすくなります。
自法人の農地であっても、行っている作業が企業等からの請負作業であれば、施設外就労としての整理が必要になる場合があります。作業の発注元と契約の内容を確認し、どちらの整理になるかを指定権者に相談してください。
まとめ
- 離れた農地は、厚生労働省の資料上「従たる事業所又は出張所」として扱う整理が示されています。
- 出張所は一般に独立したサービス提供拠点ではありませんが、農地で必要な支援を一切できないという意味ではありません。
- 農地に建物がなくても、利用者の支援に支障がなければ設備の全部・一部を省略できる場合があります。
- 出張所には、従たる事業所の「常勤専従1人以上」「B型の定員10人以上」という独自要件はありません。
- ただし、利用者が農地で活動する時間は、必要な支援が提供できる職員体制を確保します。
- 実際の届出区分は運用の実態によって異なるため、開始前に指定権者へ確認します。
実務上の注意
「農地を借りたから自動的に施設内」「出張所と名付ければ自由にサービス提供できる」といった整理は避けてください。農地の利用形態、利用者の通所方法、活動時間、職員配置、主たる事業所との一体性を示したうえで、出張所・従たる事業所のどの位置付けになるかを指定権者に確認しておくことが安全です。
離れた農地での農作業の位置付けをご相談ください
障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。農福連携で農地を使うときの位置付けの整理、変更届の要否の確認、指定権者への説明資料づくりまで、ひとつの窓口でご相談いただけます。
静岡・神奈川・愛知を中心に、オンラインで全国に対応しています。「この農地は出張所と従たる事業所のどちらになるか整理したい」といったご相談も承っています。
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主な参考資料
- 厚生労働省「障害福祉サービス事業者等の指定のガイドライン」(2026年)
- 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」
- 厚生労働省 障害保健福祉関係主管課長会議資料(農福連携・離れた農地の取扱い)
- 厚生労働省中国四国厚生局「農福連携モデル 4タイプ」
- 厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」
※本記事は令和8年9月20日時点の情報に基づく一般的な整理です。個別の事業所における指定・変更届の取扱いは指定権者によって異なる場合があるため、実際の運用を始める前に所管自治体へご確認ください。

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。
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