第8期障害福祉計画の基本指針|令和9年度からの成果目標と事業所への影響

第8期障害福祉計画の基本指針|令和9年度からの成果目標と事業所への影響

令和8年3月31日に、障害福祉計画・障害児福祉計画の基本指針が全部改正されました(厚生労働省・こども家庭庁告示第4号)。市町村と都道府県は、この指針をもとに令和8年度中に計画をつくり、令和9年度から令和11年度までの3年間が第8期障害福祉計画・第4期障害児福祉計画の期間になります。

  • 成果目標は8つ。人材の確保・定着と生産性向上が新しい柱として加わった
  • 一般就労への移行は令和6年度実績の1.31倍以上が基本
  • 地域の計画は新規指定の可否にも関わるため、開業を考えるなら必ず見る

はじめに

「基本指針」と聞いても、日々の支援とは遠い話に思えるかもしれません。けれども、この指針は市町村と都道府県がつくる障害福祉計画の型枠であり、その計画は事業所の新規指定が認められるかどうかにも関わります。地域にどのサービスが足りていて、どこが飽和しているのか。その判断のもとになるのが、この指針から始まる一連の計画です。

令和8年3月31日、その基本指針が全部改正されました。令和9年度から令和11年度までの第8期障害福祉計画・第4期障害児福祉計画のための指針です。この記事では、告示の中身を事業所の実務の目線で整理します。

この記事のポイント

    • 告示は令和8年3月31日。計画期間は令和9年度から令和11年度までの3年間
    • 成果目標は8つ。第7期の7つに「人材の確保・定着と生産性向上」が加わった
    • 一般就労への移行は令和6年度実績の1.31倍以上、就労定着支援の利用者数は1.47倍以上
    • 就労選択支援は協議会の設置圏域ごとに1事業所以上
    • 重症心身障害児を支援する児童発達支援・放課後等デイサービスを各市町村に1か所以上
    • 事業所情報の公表率・更新率は100%が目標
    • 市町村・都道府県の計画は令和8年度中に作成される

1. 基本指針とは何か

基本指針は、市町村と都道府県が障害福祉計画・障害児福祉計画をつくるときの土台になる国の告示です。正式な名称は「障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針」といいます。

指針そのものが事業所を直接縛るわけではありません。ただし、指針を受けて市町村と都道府県が計画をつくり、その計画に書かれた必要量が、新しい事業所を指定するかどうかの判断材料になります。特に就労継続支援A型・B型や共同生活援助では、必要量に達していることを理由に指定が認められない場合があります。

図解1基本指針から事業所まで
国(基本指針)成果目標と活動指標の考え方を示す。令和8年3月31日告示
都道府県・市町村(計画)令和8年度中に、地域の実情に合わせて目標と必要量を定める
指定・整備必要量に照らして新規指定の可否が判断される。整備の補助も計画に沿う
事業所参入できる分野、求められる実績、連携先が決まってくる
指針は国が示す考え方です。実際の数値は地域ごとに違うので、自分の地域の計画を見るのがいちばん早道です。

2. いつの計画のための指針か

第8期の流れ
時期できごと
令和8年3月31日基本指針の告示(厚生労働省告示・こども家庭庁告示第4号)。平成29年厚生労働省告示第116号を全部改正
令和8年度市町村と都道府県が、第8期障害福祉計画・第4期障害児福祉計画を作成
令和9年度〜令和11年度計画期間(3年間)
令和11年度末成果目標の目標年度
※表は横にスクロールできます
多くの市町村では令和8年度中にパブリックコメントや協議会での検討が行われます。地域のニーズを伝えられる時期でもあります。

3. 6つの基本的理念

指針は、計画をつくるときに配慮すべき考え方として6つの理念を挙げています。

    • 障害者等の自己決定の尊重と意思決定の支援
    • 市町村を基本とした身近な実施主体と、障害種別によらない一元的な障害福祉サービスの実施
    • 入所等から地域生活への移行、地域生活の継続の支援、就労支援等の課題に対応したサービス提供体制の整備
    • 地域共生社会の実現に向けた取組
    • 障害児の健やかな育成のための発達支援
    • 障害者の社会参加を支える取組の定着

理念は抽象的に見えますが、成果目標はここから導かれています。たとえば「地域生活への移行」という理念が、施設入所者を減らす数値目標になっているという具合です。

4. 成果目標の全体像

成果目標は8つの柱で構成されています。数値は「これを基本とする」という形で示され、実際の目標値は地域の実情に応じて市町村と都道府県が設定します。

第8期の成果目標(令和11年度末が目標年度)
主な数値の目安
1 福祉施設の入所者の地域生活への移行令和7年度末の施設入所者の6%以上が地域生活へ移行。施設入所者数は5%以上削減
2 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築退院後1年以内の地域における平均生活日数319.3日以上。再入院率は90日10.3%以下ほか
3 福祉施設から一般就労への移行等令和6年度実績の1.31倍以上
4 障害児支援の提供体制の整備等児童発達支援センターの中核的な支援機能の確保など
5 地域生活支援の充実地域生活支援拠点等の整備と、全ての日常生活圏域を支援対象にすること
6 相談支援体制の充実・強化等全ての市町村で基幹相談支援センター・地域生活支援拠点等・協議会を設置し連携
7 障害福祉人材の確保・定着、当事者視点に立ったケアの充実のための生産性向上各都道府県にワンストップ窓口を設置し、協議会と連携
8 障害福祉サービス等の質を向上させるための取組に係る体制の構築事業所情報の公表率・更新率を100%に
※表は横にスクロールできます
7番目の柱は第8期で新しく加わったものです。人手不足を計画の中で正面から扱う形になりました。

5. 施設入所者の地域生活への移行

令和7年度末時点の施設入所者のうち、6%以上が令和11年度末までに地域生活へ移行すること、あわせて施設入所者数を5%以上削減することが基本とされています。

今回の指針では、移行を進めるうえで本人の意思の確認が強く打ち出されています。地域移行等意向確認等に関する指針に従って意思決定支援を行い、全ての施設入所者について、地域生活への移行の意向と、その支障になっている要因、必要な支援まで含めて把握することが求められます。市町村はそれを協議の場で共有します。

施設の老朽化などで改築するときは、定員を見直してグループホームやショートステイの整備を併せて行うことを基本とする、という記載もあります。グループホームと短期入所の需要は、この方向のもとで増えていくと読めます。

6. 精神障害にも対応した地域包括ケア

精神科病院からの退院後、地域でどれだけ暮らせているかを測る指標が中心です。

精神障害に関する主な目標
指標目安
退院後1年以内の地域における平均生活日数319.3日以上
退院後90日時点の30日以上の再入院率10.3%以下
退院後180日時点の30日以上の再入院率17.4%以下
退院後365日時点の30日以上の再入院率25.7%以下
心のサポーターの養成令和15年度末までに全国で100万人となるよう、都道府県の将来人口を勘案して設定
住民のこころの状態K6という尺度を活用して評価
※表は横にスクロールできます
1年以上の長期入院患者数は、65歳以上・65歳未満・75歳以上・認知症の方と、年代等で細かく分けて把握することになりました。

再入院率が新しく目標に入ったことで、退院させて終わりではなく、地域で暮らし続けられたかどうかが問われる形になりました。グループホームや自立生活援助、地域定着支援を行う事業所にとっては、役割が重くなる部分です。

7. 福祉施設から一般就労への移行

就労系サービスを運営している事業所にとって、いちばん直接関わるのがこの柱です。

就労に関する目標(令和6年度実績との比較)
対象目安
一般就労へ移行する者の総数令和6年度実績の1.31倍以上
就労移行支援からの移行令和6年度実績の1.14倍以上
就労移行支援事業所の実績利用終了者に占める一般就労への移行者の割合が5割以上の事業所を、全体の5割以上に
就労定着支援の利用者数令和6年度実績の1.47倍以上
就労定着支援事業所の実績就労定着率が7割以上の事業所を、全体の2割5分以上に
就労選択支援協議会の設置圏域ごとに1事業所以上を設置
※表は横にスクロールできます
「事業所のうち何割が一定の実績を出しているか」という形の目標が並びます。事業所ごとの実績が地域の数字に直結する構造です。

注目したいのは、就労選択支援を協議会の設置圏域ごとに1事業所以上置くという目標です。令和7年10月に始まったばかりのサービスで、地域によっては事業所がまだありません。整備が進んでいない地域では、参入の余地が大きいということでもあります。

もう一つ、就労支援のネットワークを強めるため、都道府県等が協議会(就労支援部会)等を設けて取り組むことも基本とされました。地域の就労支援のつながりに事業所として関わる機会が増えます。

8. 障害児支援の提供体制の整備

障害児分野は、児童発達支援センターを中核にした体制づくりが軸になります。令和11年度末までに、各市町村で児童発達支援センターの4つの中核的な支援機能を確保することが基本とされました。

図解2児童発達支援センターの中核的な4機能

支援そのものの機能

  • 幅広い高度な専門性に基づく発達支援・家族支援
  • 地域の障害児の発達支援の入口としての相談

地域を支える機能

  • 地域の障害児通所支援事業所に対するスーパーバイズ・コンサルテーション
  • 地域のインクルージョン推進の中核
市町村単独で難しい場合は圏域での確保でも差し支えないとされ、センターが無い市町村では同等の機能を持つ体制の確保でも可とされています。

そのほか、令和11年度末までに次の体制を整えることが基本とされています。

    • インクルージョン推進のため、保育・子育て支援・教育等の関係機関が連携する協議の場を、都道府県と市町村に設置
    • 難聴児支援のための中核的機能を果たす体制を各都道府県に確保し、新生児聴覚検査から療育につなげる連携体制を整備
    • 主に重症心身障害児を支援する児童発達支援事業所・放課後等デイサービス事業所を、各市町村に少なくとも1か所以上確保
    • 医療的ケア児支援センターが協議の場に参画し、総合調整を担うコーディネーターを配置
    • 各市町村でも、医療的ケア児等に関する協議の場を設け、コーディネーターを配置
    • 障害児入所施設からの移行調整に係る協議の場を、各都道府県と指定都市に設置
    • 強度行動障害の状態にある児の状況と支援ニーズを把握し、関係機関が連携した支援体制を整備

障害児相談支援については、のぞまないセルフプランの解消が明記されました。相談支援専門員が足りず、やむを得ずセルフプランになっている状態を改める、という趣旨です。相談支援事業への参入を考える法人には追い風になります。

9. 地域生活支援・相談支援・人材・質の向上

地域生活支援の充実

地域生活支援拠点等について、市町村の全ての日常生活圏域を支援の対象とすることが基本とされました。加えて、拠点コーディネーターの配置、拠点の機能を担う事業所の担当者の配置、そして年1回以上、運用状況を検証・検討することが求められます。

強度行動障害の状態にある人についても、市町村または圏域で状況と支援ニーズを把握し、関係機関が連携した支援体制を整備することが基本とされています。

相談支援体制の充実・強化

令和11年度末までに、全ての市町村で基幹相談支援センター、地域生活支援拠点等、協議会を設置・整備し、これらを連携させることが基本とされました。基幹相談支援センターが協議会の運営に関わり、個別事例の検討を通じて地域の支援体制を整える形です。

人材の確保・定着と生産性向上

第8期で新しく柱になった部分です。各都道府県に人材確保や生産性向上に関するワンストップ窓口を設置し、あわせて職場環境改善や経営改善支援に向けて関係者が連携する協議会を設けて、窓口と連携させることが基本とされました。

「生産性向上」という言葉には身構えるかもしれませんが、指針では当事者視点に立ったケアの充実のための生産性向上という言い方をしています。記録や事務の負担を減らして、支援そのものに時間を使えるようにする、という筋道です。

サービスの質の向上

各都道府県・政令市・中核市における管内事業所の情報の公表率および更新率を100%にすることが基本とされました。障害福祉サービス等情報公表制度のことです。

公表は事業者の義務です。未報告や更新漏れは運営指導で必ず指摘されます。目標が100%になった以上、指定権者からの督促は今後強まると考えておいた方がよいでしょう。あわせて、請求の過誤をなくす取組や、適正な運営を行う事業所の確保も挙げられています。

10. 第7期から変わった点

図解3第7期と第8期の違い

第7期(令和6〜8年度)

  • 成果目標は7つの柱
  • 精神は早期退院率などで把握
  • 人材確保は成果目標の柱ではなかった
  • 就労選択支援は開始前

第8期(令和9〜11年度)

  • 成果目標は8つの柱
  • 退院後の再入院率が目標に加わった
  • 人材の確保・定着と生産性向上が独立した柱に
  • 就労選択支援を圏域ごとに1事業所以上
  • 心のサポーターの養成、K6による把握を追加
  • 長期入院患者数を年代等で細かく把握
数値の基準年度も変わりました。就労関係は令和3年度実績から令和6年度実績との比較に置き換わっています。

11. 事業所への影響

サービス種別ごとに見た影響
サービス読み取れること
共同生活援助・短期入所施設入所からの地域移行と、施設改築時の定員見直しが前提になっており、需要が増える方向
就労移行支援移行率5割以上の事業所を全体の5割以上に。実績が地域の数字として見られる
就労定着支援利用者数1.47倍以上。定着率7割以上の事業所を2割5分以上に
就労選択支援協議会の設置圏域ごとに1事業所以上。未整備地域では参入の余地が大きい
児童発達支援・放課後等デイサービス重症心身障害児を支援する事業所を各市町村に1か所以上。インクルージョンと保育所等訪問支援が重視される
相談支援のぞまないセルフプランの解消が明記され、相談支援専門員の確保が課題に
全サービス共通情報公表率・更新率100%。未報告は運営指導で指摘される
※表は横にスクロールできます
開業を検討しているなら、まず自分の地域の計画で、そのサービスの必要量が満たされているかを確認してください。

指針は国の考え方であって、数字そのものは地域ごとに決まります。令和8年度は、自分の地域の計画がつくられる年です。協議会やパブリックコメントの場で、現場から見たニーズを伝えられる時期でもあります。

よくある質問

Q
基本指針は事業所を直接縛るものですか。
A

いいえ。直接縛るものではありません。基本指針は市町村と都道府県が計画をつくるための国の告示です。ただし、その計画に書かれた必要量が新規指定の判断材料になるため、間接的には事業所の運営に影響します。

Q
成果目標の数値は、そのまま自分の地域の目標になりますか。
A

いいえ。なりません。指針の数値は「これを基本とする」という目安で、実際の目標値は市町村と都道府県が地域の実情を踏まえて設定します。自分の地域の数字は、その市町村や都道府県の計画で確認してください。

Q
第8期の計画はいつ作られますか。
A

令和8年度中です。令和8年3月31日に基本指針が告示され、これを受けて市町村と都道府県が計画を作成します。計画期間は令和9年度から令和11年度までの3年間です。

Q
成果目標が達成できないと、事業所に罰則がありますか。
A

いいえ。ありません。成果目標は市町村と都道府県が達成を目指すもので、個々の事業所に課される義務ではありません。ただし、就労移行支援や就労定着支援では、事業所ごとの実績が地域の数字を左右します。

Q
計画で必要量が満たされていると、新しく指定を受けられませんか。
A

受けられない場合があります。都道府県の計画で定める必要な量に既に達しているときは、指定をしないことができるとされています。就労継続支援や共同生活援助で実際に運用している地域があるので、開業前に指定権者へ確認してください。

Q
情報公表をしていないと、どうなりますか。
A

運営指導で指摘されます。障害福祉サービス等情報公表制度の報告は事業者の義務です。第8期では公表率・更新率を100%にすることが目標になったため、指定権者からの確認はこれまで以上に厳しくなると考えられます。

Q
就労選択支援を始めるなら、いまが良いタイミングですか。
A

地域によります。協議会の設置圏域ごとに1事業所以上という目標があるため、まだ事業所が無い圏域では歓迎されやすい状況です。まず地域の整備状況を指定権者に確認し、そのうえで人員と実施体制を検討してください。

Q
「生産性向上」とは、職員を減らせという意味ですか。
A

いいえ。そういう意味ではありません。指針は「当事者視点に立ったケアの充実のための生産性向上」という言い方をしています。記録や事務の負担を減らして、支援そのものに時間を使えるようにするという趣旨です。

まとめ

基本指針は、3年に一度、地域の障害福祉の方向を決め直す文書です。第8期では、地域移行と就労の数値が更新されたことに加えて、人材の確保・定着と生産性向上が新しい柱になりました。人手が足りないという現場の実感が、計画の項目として立てられた形です。

    • 令和8年度中に、自分の地域の計画を確認する
    • 開業を考えているなら、そのサービスの必要量が満たされていないかを指定権者に聞く
    • 就労系は、移行実績と定着率が地域の数字になることを意識する
    • 情報公表の報告と更新を済ませておく
    • 協議会やパブリックコメントの場で、現場から見たニーズを伝える

関連記事

主な参考資料

※本記事は令和8年9月21日時点の情報に基づく一般的な整理です。地域ごとの目標値や必要量は市町村・都道府県の計画によります。実際の取扱いは指定権者にご確認ください。

執筆者 永野将太(行政書士・社会保険労務士)
執筆者WRITER
永野 将太
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズ 代表

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。

これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。