在宅支援と生産活動の適正化|令和8年4月の事務連絡と新規指定ガイドライン

在宅支援と生産活動の適正化|令和8年4月の事務連絡と新規指定ガイドライン

令和8年4月13日、就労移行支援・就労継続支援A型B型の在宅支援について、要件の遵守を徹底するよう求める事務連絡が出されました。eスポーツや植物の水やりを1日数回行うだけの活動など、公費による就労支援の生産活動として適さない可能性がある活動が散見されている、という指摘が背景にあります。

  • 在宅支援は、希望すれば使えるものではない。市町村が支援効果を認めた人が対象
  • 生産活動は「具体的な場面があるか」「能力向上が見込まれるか」など6つの観点で見られる
  • 在宅支援は令和9年度報酬改定で見直しが検討されている

はじめに

「在宅で、パソコンを使って、できる範囲で」。就労継続支援の現場では、通所が難しい方への在宅支援が広がってきました。本来、これは通所できない方に道を開く仕組みです。

ところが国は、在宅支援と称して就労支援の実態が認められない事業運営が散見されていると指摘しました。令和8年4月13日の事務連絡です。名指しされた例が具体的で、eスポーツ、植物の水やりを1日数回行うだけの活動、卓球教室や麻雀教室での手伝い、所定の場所に居ればよいというような活動が挙げられています。

まじめに在宅支援に取り組んできた事業所ほど、いま何を整えておくべきかが気になるはずです。この記事では、事務連絡と、その前提になっている新規指定ガイドラインの中身を、事業所の実務に落として整理します。

この記事のポイント

    • 事務連絡は令和8年4月13日。地方自治法に基づく技術的な助言という位置づけ
    • 在宅支援は、本人の希望だけでは足りない。市町村が支援効果を認めることが必要
    • 運営規程に、在宅で実施する訓練内容と支援内容を明記する
    • 1日2回の連絡等と日報、週1回の評価、月1回の訪問または通所が要件
    • 原則は対面。オンラインは要件を全て満たす場合に限られる
    • 緊急時に職員が速やかに駆けつけられる体制が必要
    • 令和9年度報酬改定で在宅支援の見直しが検討されている

1. 令和8年4月13日に出た事務連絡の中身

令和8年4月13日、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課から、都道府県・指定都市・中核市の障害保健福祉主管課あてに事務連絡が出ました。表題は「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における在宅支援の要件遵守の徹底について」です。

新しい要件を作った通知ではありません。すでにある要件を守らせるための念押しです。もとになっているのは次の3つです。

今回の事務連絡が拠り所にしている文書
文書内容
留意事項通知
(平成19年4月2日 障障発第0402001号)
在宅支援のアからキまでの要件。報酬を算定できるのは、この全てに該当する場合に限られる
令和6年度報酬改定等に関するQ&A VOL.8
(令和7年3月31日)問2
原則は対面での支援であること、オンラインが認められる場合、緊急時対応の考え方
新規指定ガイドライン
(令和7年11月28日 障障発1128第1号 別紙)
指定権者向け。新規指定時の確認事項と、既存事業所の運営状況の把握・指導の観点
※表は横にスクロールできます
事務連絡は、地方自治法第245条の4第1項に基づく技術的な助言という位置づけです。

2. 生産活動として適さない可能性がある活動

新規指定ガイドラインは、生産活動の適切性について、次のような活動を公費による就労支援の生産活動として適さない可能性がある活動として挙げています。

図解1国が名指しした例と、求められる姿

適さない可能性があるとされた例

  • eスポーツ
  • 植物の水やりを1日数回行うだけの活動
  • 卓球教室や麻雀教室での手伝いに相当するような活動
  • 所定の場所に居ればよいというような活動
  • 就労に必要な知識・能力の向上に寄与しない自習

求められる生産活動

  • 具体的な生産活動の場面がある
  • 一般就労に必要な能力の向上が見込まれる
  • 安定した生産活動収入につながる
  • 習得した能力が活かせる労働市場や求人が地域にある
  • 収入と支出が見合っている
活動の名前で決まるわけではありません。就労に必要な力が付くか、収益として成り立つか、という中身で判断されます。

誤解しないでほしいのは、eスポーツだから直ちに違反、という書き方ではないことです。ガイドラインの言い方は「適さない可能性がある活動」であり、審査のときに詳細を確認せよ、という指示です。とはいえ、名指しされた以上、この種の活動を生産活動として掲げるなら、なぜ就労につながるのかを説明できる準備を要します。

3. 生産活動の適切性を見る6つの観点

事業計画書の審査で確認される観点
観点説明できるようにしておくこと
具体的な生産活動の場面があるか誰が、どこで、何を、どれだけの時間行うのか
一般就労に必要な能力向上が見込まれるかその作業で身につく力と、それが就職でどう活きるか
安定した生産活動収入を得られるか取引先、受注の見通し、単価
習得した能力が活かされる労働市場や求人が地域にあるか地域の求人の状況と、作業内容とのつながり
生産活動の収益が適当か収入が支出と見合っているか
業務委託費が妥当か取引価格や単価が過大または過小に設定されていないか
※表は横にスクロールできます
これらは新規指定時の審査の観点ですが、既存事業所の運営状況の把握でも「生産活動シート」を使って収支や取引先が確認されます。

最後の2つは会計の話です。身内の会社に高すぎる委託費を払っていないか、逆に安すぎる単価で受けていないかという点が見られます。就労支援事業会計の区分経理ができているかどうかが、ここで問われます。

4. 在宅支援のアからキまでの要件

在宅支援で報酬を算定できるのは、留意事項通知のアからキまでの要件にいずれも該当する場合に限られます。ひとつでも欠けると算定できません。

在宅支援のアからキまでの要件
要件内容
就労の機会と生産活動等の機会の提供を通じて必要な訓練等が行われ、常に在宅利用者が行う作業活動・訓練等のメニューが確保されていること
1日2回は連絡、助言または進捗状況の確認等の支援が行われ、日報が作成されていること。内容や本人の希望に応じて1日2回を超えた対応も行うこと
緊急時の対応ができること
疑義が生じた際の照会等に対し、随時、訪問や連絡による必要な支援が提供できる体制を確保すること
職員による訪問、利用者による通所、または電話・パソコン等のICT機器の活用により、評価等を1週間につき1回は行うこと
原則として月の利用日数のうち1日は、職員による訪問または利用者による通所により、居宅または事業所内で訓練目標に対する達成度の評価等を行うこと
オが通所により行われ、あわせてカの評価等も行われた場合は、カによる通所に置き換えて差し支えない
※表は横にスクロールできます
イの「1日2回」とオの「週1回」、カの「月1回」は、記録で示せる形にしておきます。日報は必須です。

加えて、運営規程には在宅で実施する訓練内容および支援内容を明記しておく必要があります。実施した訓練内容・支援内容と、訓練状況・支援状況は、指定権者から求められたら提出できるようにしておきます。

訓練状況と支援状況については、本人の同意を得るなど適切な手続きを経たうえで、音声データ・動画ファイル・静止画像等をセキュリティが施された状態で保存し、求められたら個人情報に配慮して提出できるようにしておくことが望ましい、とされています。今回の事務連絡は、これを推進するよう求めています。

5. 事務連絡が徹底を求めた5つのこと

事務連絡は、特に事業所に留意してほしい観点として5つを挙げています。

    • 事前の本人の同意とアセスメントの徹底。希望があれば在宅を認めるというのは必ずしも適切ではない
    • 運営規程への明記の徹底と、訓練状況・支援状況の保存の推進
    • 週1回の評価等の徹底
    • 原則として対面での支援が求められることの周知
    • 緊急時の対応の遵守

いちばん重いのは1つ目です。在宅支援の対象は、在宅での利用を希望する人のうち、在宅での利用による支援効果が認められると市町村が判断した人です。本人が希望したから在宅にする、という運用は要件を満たしません。事前に本人の同意をとり、アセスメントを行い、市町村の判断を受けてから始めます。

6. 原則は対面。オンラインが認められる場合

Q&Aは、直接処遇職員は利用者の状態や訓練の進捗状況等を直接確認しながら指導や相談を随時行う必要があるとして、原則として対面での支援を行うことが求められるとしています。

オンラインによる支援が認められるのは、たとえば重度障害者で通所が困難であることなどを理由に、オンラインによる在宅での就労を希望する人であって、オンラインによる支援の効果が認められると市町村が判断した場合など、留意事項通知の要件を全て満たす場合に限られます。

図解2在宅支援を始めるまでの順番
1. 本人の同意とアセスメント在宅での利用を希望しているか、在宅で支援効果が見込めるかを事前に確認する
2. 市町村の判断在宅でのサービス利用による支援効果が認められるかを市町村が判断する
3. 体制の整備運営規程への明記、作業メニューの確保、緊急時対応、記録の保存方法を決める
4. 開始と記録1日2回の連絡等と日報、週1回の評価、月1回の訪問または通所を続ける
オンラインで支援を行う場合は、指定権者への届出の際に、要件を満たしているかと緊急時対応が確認されます。

7. 緊急時の対応

要件ウの「緊急時の対応ができること」は、事故発生時、利用者の状態の急変時、災害の発生時などを想定しています。Q&Aは、事業所の職員が速やかに利用者の元へ駆けつけ、緊急時の対応が実施できる体制を整備しておく必要があるとしています。

遠方に住んでいることだけを理由にオンラインによる支援を不可とはしない、としつつ、緊急時対応が担保されないような地域の利用者へのオンラインによる支援は原則として認められないとも書かれています。距離ではなく、駆けつけられるかどうかで判断するということです。

8. 新規指定で変わること

令和7年11月28日のガイドラインは、指定権者向けに新規指定の進め方を示したものです。就労継続支援の指定を考えている法人にとっては、審査で何を見られるかの予告になります。

新規指定の流れと確認事項
段階確認されること
事前説明・確認制度の理解、運営に必要な知識の有無
事業計画書等審査生産活動の具体的な内容と収入見込み、生産活動シート、既存事業所の運営状況
専門家会議審査外部の専門家を交えた審査
指定申請審査・現地審査人員・設備・運営基準の確認
※表は横にスクロールできます
進め方は指定権者によって違います。専門家会議を置くかどうかも地域差があります。

審査の軸になるのは次の3点です。

    • 障害者支援や障害福祉制度、就労支援事業会計など、運営に必要な知識を有しているか
    • 利用者の就労の知識および能力を向上させる支援内容になっているか
    • 安定した収益が見込める生産活動を確保する計画になっているか

もうひとつ重要なのが、面談の相手です。ガイドラインは、面談や確認を行うときはコンサルティング会社や代理者ではなく、必ず法人の代表者、管理者、サービス管理責任者等に対して行うこととしています。さらに、事業計画書等の審査の開始から最初の運営指導までは、面談を行った法人の代表者等が一貫して事業運営を行うことが望ましいとされ、その旨をあらかじめ伝えることになっています。

指定を取った直後に代表者が入れ替わる、という形は想定されていないということです。開業を支援する立場としても、ここは押さえておく必要があります。

9. 安易な開業を勧める働きかけへの対応

ガイドラインは、「特段の知識等がなくとも事業所の運営は可能であり、高収益が実現できる」といった謳い文句で、安易な事業所の開設を他者に勧める不適切な行為を把握した場合、厚生労働省や他の指定権者へ情報提供することが望ましいとしています。そのための様式も付いています。

資料には、実際に見られる勧誘の例も並んでいます。売上の大部分が給付費だから未回収リスクがない、初期投資が少なく収益性・安定性が高い、総量規制で今後は出せなくなるから急げ、未経験でも本部のサポートで安心、といった言い回しです。

こうした勧誘に乗って指定を受けた事業所は、生産活動の中身と会計で行き詰まります。給付費は利用者への支援の対価であって、投資の利回りではありません。開業の相談を受ける側としては、まず生産活動の具体像と収支の見通しから詰めるべきところです。

10. 令和9年度改定で見直しの検討

事務連絡の末尾には、在宅支援について令和9年度障害福祉サービス等報酬改定において見直しを行うことを検討していると書かれています。

どう見直すかは示されていません。ただ、この事務連絡が出た経緯を踏まえれば、要件の明確化や、記録の求め方が厳しくなる方向が考えられます。在宅支援を軸にしている事業所は、いまのうちに要件どおりの記録が残せる運用にしておくのが安全です。改定を待ってから整えるのでは遅くなります。

11. いま事業所がやること

図解3在宅支援の自主点検リスト

書類で確認する

  • 運営規程に、在宅で実施する訓練内容と支援内容が書かれているか
  • 在宅利用者ごとに、市町村が支援効果を認めた経過が残っているか
  • 個別支援計画に在宅での支援が位置づけられているか
  • 日報が毎日作成され、1日2回の連絡等が分かるか

運用で確認する

  • 週1回の評価等を実施し、記録しているか
  • 月1回の訪問または通所による達成度の評価を行っているか
  • 緊急時に職員が駆けつけられる体制になっているか
  • 作業活動・訓練等のメニューが常に確保されているか
  • 生産活動の中身が、就労につながる説明のできるものか
どれも新しい要件ではありません。もともと満たしているはずの内容を、記録で示せる形にしておくということです。

在宅支援を使っている利用者が1人でもいるなら、次の運営指導では確実に見られると考えてください。日報、週1回の評価、月1回の訪問または通所。この3つの記録が揃っていないと、要件を満たしていないと判断される可能性があります。

よくある質問

Q
本人が希望すれば、在宅支援を始めてよいですか。
A

いいえ。始められません。在宅支援の対象は、在宅での利用を希望する人のうち、在宅での利用による支援効果が認められると市町村が判断した人です。本人の同意とアセスメントを行ったうえで、市町村の判断を受けてから始めます。

Q
eスポーツを生産活動にすると、指定を受けられませんか。
A

一概には言えません。ガイドラインの書き方は「適さない可能性がある活動」であり、直ちに認められないという表現ではありません。ただし審査で詳細を確認されるため、具体的な作業の場面、就労につながる能力、収入の見通しを説明できる必要があります。

Q
在宅支援の日報は、まとめて週に一度作成してもよいですか。
A

だめです。日報は毎日作成します。留意事項通知は、1日2回は連絡・助言・進捗状況の確認等の支援を行い、日報が作成されていることを要件にしています。後からまとめて書く運用は、要件を満たしていないと判断されるおそれがあります。

Q
月1回の訪問は、通所に置き換えられますか。
A

置き換えられます。要件カは、職員による訪問または利用者による通所のどちらでもよいとしています。さらに要件キにより、週1回の評価が通所で行われ、あわせて達成度の評価も行われた場合は、その通所に置き換えて差し支えないとされています。

Q
訓練の様子を録画しなければいけませんか。
A

義務ではありません。留意事項通知は、音声データ・動画ファイル・静止画像等をセキュリティが施された状態で保存しておくことが「望ましい」としています。ただし今回の事務連絡はこれを推進するよう求めているため、実施できる体制を整えておく方が安全です。

Q
遠方の利用者にオンラインで支援してもよいですか。
A

緊急時に駆けつけられるかどうかで決まります。遠方に居住していることだけを理由に不可とはしないとされていますが、緊急時対応が担保されない地域の利用者へのオンラインによる支援は原則として認められないとされています。

Q
コンサルティング会社に指定申請を任せてもよいですか。
A

面談は法人の代表者等が受ける必要があります。ガイドラインは、面談や確認はコンサルティング会社や代理者ではなく、必ず法人の代表者、管理者、サービス管理責任者等に対して行うこととしています。書類の作成を専門家に依頼すること自体が禁じられているわけではありません。

Q
令和9年度の改定を待ってから運用を整えてもよいですか。
A

おすすめしません。今回示された要件は新しいものではなく、すでに満たしているべき内容です。改定前であっても運営指導では現行の要件で確認されます。記録の形を先に整えておく方が、結果として手戻りが少なくなります。

まとめ

今回の事務連絡は、新しい規制ではありません。もともとある要件を守れ、という内容です。それでも出されたのは、在宅支援の名のもとに就労支援の実態がない運営が広がったからです。

まじめにやっている事業所にとっては、記録で示せるかどうかが分かれ目になります。日報、週1回の評価、月1回の訪問または通所。この3つが揃っていれば、在宅支援は堂々と続けられます。生産活動についても、なぜその作業が就労につながるのかを言葉にできるようにしておけば、審査でも指導でも困りません。

    • 運営規程に、在宅で実施する訓練内容と支援内容を書く
    • 在宅利用者ごとに、市町村の判断を受けた経過を残す
    • 日報を毎日作成し、1日2回の連絡等が分かるようにする
    • 週1回の評価と、月1回の訪問または通所を記録する
    • 緊急時に駆けつけられる体制を確認する
    • 生産活動の中身と収支を、説明できる形にしておく

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主な参考資料

※本記事は令和8年9月21日時点の情報に基づく一般的な整理です。審査の進め方や求められる記録の様式は指定権者によって異なる場合があります。実際の運用は指定権者にご確認ください。

執筆者 永野将太(行政書士・社会保険労務士)
執筆者WRITER
永野 将太
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズ 代表

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。

これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。