就労継続支援B型の生産活動は何をすればいい?|仕事の作り方と工賃設計

B型の生産活動と工賃|仕事の作り方と工賃の設計手順

B型の生産活動は、利用者に働く場を提供する支援であると同時に、工賃の原資を生み出す事業でもあります。仕事の作り方には、企業からの受託、自主製品、デジタル系という3つの方向があり、利用者の特性などの5つの視点で選びます。受託単価を下げすぎないことと、生産活動収支から工賃を設計する順序が大切です。

  • 仕事の作り方は受託・自主製品・デジタル系の3方向
  • 生産活動は5つの視点で選ぶ
  • 工賃は生産活動収支から設計する

はじめに

就労継続支援B型を始めるとき、最も答えの出しにくい問いが「どんな仕事をするか」です。結論から申し上げると、生産活動は「継続して提供でき、利用者の支援につながり、収支が成り立つ仕事」を設計するものです。この3つのどれが欠けても続きません。

工賃は生産活動の収益から支払います。指定基準では、生産活動に係る事業の収入から必要な経費を控除した額に相当する金額を、工賃として利用者に支払わなければならないとされています。賃金および工賃の支払いに要する額は、原則として自立支援給付をもって充ててはならないとされています。つまり、生産活動の設計は、そのまま工賃の設計です。この記事では、仕事の作り方から工賃の組み立て方までを順に整理します。

1. 生産活動と工賃の基本

B型の生産活動は「利用者に働く場を提供する支援」であると同時に、「工賃の原資を生み出す事業」でもあります。この二重の性格を最初に押さえておくと、仕事選びの判断がぶれません。

厚生労働省の調査によると、生産活動の収益が利用者の賃金・工賃総額を下回っている事業所は56.5%に達しているとされています。それだけ、収支が成り立つ生産活動を作ることは、B型の運営で最も難しい部分だといえます。

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生産活動を決める5つの視点

生産活動は次の5つの視点で選びます。①利用者の特性に合わせて工程を分けられるか、②できることが増える段階を作れるか、③見学・体験で魅力が伝わるか、④毎月安定して量を確保できるか、⑤材料費や設備投資が過大にならないか。

実務のご相談では、①と④が両立しないという悩みが多く聞かれます。難しい工程の仕事は単価が高い一方、担える方が限られます。工程を分解して、簡単な部分と難しい部分を組み合わせられるかを見てください。

図解1厚生労働省の調査でみる生産活動の内容

取り組んでいる事業所が多い活動

60.2%
軽作業(部品組立、検品、袋詰めなど)
28.6%
清掃
20.3%
雑貨製造(織物・縫製・皮革・木工など)

そのほかの活動

13.5%
菓子製造
11.4%
農業(米・野菜・果物・花卉)
※出典:厚生労働省が2024年に行った調査(J-Net21「障害者就労継続支援A型・B型」2024年12月18日掲載による)。複数回答のため合計は100%になりません。近年はSNS運用、動画編集、グラフ作成などIT技術を活用した活動も見られます。

2. 仕事の作り方

仕事の作り方①企業から受託する

最も参入しやすいのが企業からの受託です。設備投資が小さく、必要な量を確保できれば安定します。厚生労働省の調査でも、取り組んでいる生産活動として最も多いのは部品組立・検品・袋詰めなどの軽作業で60.2%でした。

一方で、参入しやすい分野は単価も下がりやすく、受注が景気や取引先の都合に左右されます。地域の共同受注窓口へあっせんや仲介を相談する方法もあります。開業前の段階から、複数の企業に声をかけて見込みを作っておいてください。

仕事の作り方②自主製品・飲食・農業など

自主製品や飲食、農業は、単価を自分で決められる点が強みです。受託と違って取引先の都合に左右されにくく、事業所の特色にもなります。

ただし、材料の仕入れ、在庫、販路、衛生管理といった事業運営の負担が増えます。菓子製造や飲食では、食品衛生法上の許可や施設基準への対応も必要です。初期投資が大きくなりやすいため、開業時から始めるのであれば、資金計画に必ず織り込んでください。

実務では、受託の仕事で日々の作業量を確保しつつ、自主製品を少しずつ育てるという組み合わせが取り組みやすい形です。

仕事の作り方③デジタル・クリエイティブ系

パソコンを使った作業は単価を高めやすい一方、担える方が限られます。近年では、SNS運用、動画編集、グラフ作成といったIT技術を活用した生産活動に取り組む事業所があります。イラストやマンガ制作、動画・アニメ制作といった分野に特化した事業所も出てきています。

この分野は、作業に必要なスキルを事業所側が教えられるかが分かれ目です。指導できる職員がいない状態で始めると、受注しても納品できません。開業前に、誰がどの工程を担うのかを具体的に決めてください。

3. 単価と工賃の設計

受託単価を安くしすぎないための考え方

単価は「受注できるかどうか」ではなく「工賃をいくら払いたいか」から逆算します。厚生労働省の生産活動シートの解説でも、単価の妥当性を支援者の人時売上で比較するという考え方が示されています。

たとえば、平均工賃月額の目標を月2万円、利用者20人とすると、工賃総額は月40万円です。生産活動の経費が月10万円かかるなら、生産活動の収入は月50万円以上必要です。この逆算をせずに単価を決めると、いくら受注しても工賃が上がりません。

生産活動収支から工賃を設計する

工賃は次の順序で設計します。①目標とする平均工賃月額を決める、②利用者数を掛けて工賃総額を出す、③生産活動の経費を見積もる、④必要な生産活動の収入を出す、⑤その収入を確保できる仕事の量を決める。

ここで注意したいのが経費です。生産活動シートでは、材料費、消耗品費、燃料費、水道光熱費、賃借料、減価償却費などを計上します。解説資料では、生産活動の経費がゼロになっていないかが確認のポイントとして挙げられています。何も経費がかからない生産活動は、通常は考えにくいためです。

また、生産活動に使う設備の減価償却費や、送迎とは別に材料や製品を運ぶ燃料費など、見落としやすい費目があります。開業前の段階で費目を洗い出しておくと、後から工賃を下げずに済みます。

平均工賃月額と基本報酬の関係

B型の基本報酬は報酬体系の選択によって決まり方が変わります。平均工賃月額に応じた報酬体系を選ぶ場合、前年度の工賃実績が翌年度の単位数に影響します。工賃を上げる取組が報酬にも返ってくる仕組みです。

厚生労働省の令和6年度工賃実績によると、全国のB型の平均工賃月額は24,141円で、前年度比106.6%でした。ただし、これは全国平均であり、地域差も事業所差も大きい数字です。自分の事業所の目標は、地域の水準と生産活動の内容から設定してください。

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4. 取引先・営業と開業前の準備

取引先の分散・営業・品質管理

取引先は最初から分散させます。生産活動シートでは、売上上位3位の取引先と、その取引先が関連企業かどうかを記載します。1社への依存が大きいと、その取引が終わった時点で工賃が払えなくなります。

営業は、開所してから始めるのでは間に合いません。指定申請の段階で生産活動の収入見込みが確認されるため、開業準備と並行して進めます。地域の共同受注窓口や商工会、既存の取引関係を活用してください。

品質管理も工賃に直結します。納期遅れや不良品が続くと、単価の引き下げや取引の終了につながります。工程ごとの確認手順を決め、職員が最終チェックを行う体制を作ってください。

開業前に作る生産活動シート

開業前の生産活動の計画は、厚生労働省が示している生産活動シートの項目に沿って作ると、そのまま指定申請の説明資料として使えます。

解説資料では、収入根拠となる委託契約書や請負契約書などの添付が求められ、生産活動の内容に記載した収入合計と生産活動収支が一致することとされています。開業前の段階では実績がないため見込みになりますが、見積書や覚書といった形で根拠を残しておくと、事前協議での説明がしやすくなります。

よくある質問

Q
工賃は給付費から支払ってもよいですか。
A

できません。就労継続支援B型の工賃の支払いに要する額は、自立支援給付をもって充ててはならないとされています。工賃の原資は生産活動の収益から確保し、会計も区分して経理します。

Q
どんな仕事が工賃を上げやすいですか。
A

特定の業種が有利と言い切ることはできません。工賃を左右するのは業種そのものより、単価、作業量の安定、経費の管理です。同じ軽作業でも、単価と量の確保ができていれば工賃は上がります。

Q
開業時に自主製品から始めても大丈夫ですか。
A

材料の仕入れ、在庫、販路、衛生管理の負担が加わります。開所直後は利用者数も職員の習熟も十分でないため、受託の仕事で作業量を確保しながら自主製品を育てる形のほうが取り組みやすいと考えられます。

Q
平均工賃月額は全国平均を目標にすべきですか。
A

全国平均(令和6年度は24,141円)は目安の一つですが、地域や生産活動の内容によって水準は異なります。まずは自分の事業所の生産活動収支から実現可能な額を出し、そこから引き上げる計画を立ててください。

Q
取引先が関連企業でも問題ありませんか。
A

関連企業との取引そのものが禁止されているわけではありませんが、生産活動シートでは取引先が関連企業かどうかを記載し、相場からかけ離れた単価になっていないかが確認されます。契約書と単価の根拠を残しておいてください。

まとめ

就労継続支援B型の生産活動は、「継続して提供でき、支援につながり、収支が成り立つ仕事」を設計するものです。工賃は生産活動の収益から支払うため、生産活動の設計はそのまま工賃の設計になります。

仕事の作り方には、企業からの受託、自主製品・飲食・農業、デジタル・クリエイティブ系の3つの方向があります。参入しやすい受託は単価が下がりやすく、自主製品は単価を決められる代わりに事業運営の負担が増えます。まずは受託で作業量を確保し、自主製品を育てる組み合わせが取り組みやすい形です。

単価は「受注できるか」ではなく「工賃をいくら払いたいか」から逆算してください。目標とする平均工賃月額から工賃総額を出し、経費を見込んで必要な収入を計算します。開業前の計画は、厚生労働省の生産活動シートの項目に沿って作っておくと、指定申請の説明にもそのまま使えます。

生産活動と工賃の設計から、B型の運営をご支援します

行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズは、障害福祉サービスに専門特化した行政書士法人です。代表の永野将太は行政書士と社会保険労務士の資格を併せ持ち、指定申請だけでなく、人員配置の設計、就業規則や社会保険の手続き、処遇改善加算の取得までご相談いただけます。開業支援は20万円〜です。

静岡・神奈川・愛知を中心に、オンラインで全国対応しています。生産活動の収支と工賃の設計、就労支援事業会計の区分、報酬体系の選択まで、開業前から運営まで一緒に整理します。工賃が上がらない、生産活動の収支が合わないというご相談も承ります。

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主な参考資料

※本記事は令和8年9月5日時点の法令・通知・公表資料に基づく一般的な整理です。記載した生産活動の例は一般的な整理であり、特定の業種の成果を保証するものではありません。制度・運用は改正や指定権者ごとの取扱いにより変わるため、最新情報は指定権者等へ必ずご確認ください。

執筆者 永野将太(行政書士・社会保険労務士)
執筆者WRITER
永野 将太
行政書士法人 障害福祉リーガルパートナーズ 代表

障害福祉分野に専門特化し、行政書士・社会保険労務士の資格を活かして、指定申請・開業支援から、人員配置、加算・減算、処遇改善加算、運営指導対応、労務管理まで幅広く支援しています。

これまで5,000件を超える相談に対応。法令・通知・行政実務を踏まえながら、制度上の正しさだけでなく、実際の事業所運営まで見据えた実務的な情報発信を行っています。